『浅田家!』レビュー:ファンが映画で見たかった二宮和也の魅力がここに!

映画コラム

(C)2020「浅田家!」製作委員会 

二宮和也といえば「嵐」としての秀逸なパフォーマンス活動はもちろんのこと、俳優としても数々の作品で印象深い演技を披露し続けています。

映画だけでもクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』(06)での好演をはじめ、山田洋次監督の『母と暮らせば』(15)ではその年の主演男優賞を独占、原田眞人監督の『検察側の罪人』(18)の検事役も新境地を開拓。

ただ、個人的にバラエテイ番組「ニノさん」(13~)などの明るさをこよなく愛してやまない身としては、彼はもっとコミカル&ヒューマニズムあふれるテイストの作品にもどんどん出演して良いのではないかと常々思っていました……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街507》

そんな折、10月2日より全国公開される彼の最新主演作『浅田家!』を見て、もう嬉しさで心の中は狂喜乱舞!

これはぜひともニノ・ファンはもとより、普段あまり映画と縁のない方、年に数本くらいしか映画を見ない方々にお勧めしたいコミカル&ヒューマン映画の快作なのでした!

家族コスプレ写真の数々で名を挙げた写真家の3・11

『浅田家!』は写真家・浅田政志とその家族のユニークな絆を実に微笑ましく描いた、ちょっとびっくりな実話を基にした作品です。

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浅田家の次男・政志(二宮和也)は子どもの頃に父・章(平田満)からカメラを譲り受けたことをきっかけに家族の写真を撮るようになります。

ただ、その写真というのが、今でいうコスプレとでも言いましょうか、家族全員で消防士に扮したり、レーサー、選挙演説などなどさまざまな衣装を家族全員に着せては写真を撮るという、一見キテレツながらも実に微笑ましいことを続けていました。

優しい父と母・順子(風吹ジュン)、弟の行動に呆れつつ、結局は付き合ってコスプレしてしまっている兄・幸宏(妻夫木聡)と、みんな政志に振り回されながらもそれがひそかに嬉しそう!?

やがて政志は本格的な写真家を目指して上京。最初はなかなか目が出ませんでしたが、幼馴染の恋人・春奈(黒木華)の計らいで開いた個展であの家族写真を飾ったことを機に写真集発売へこぎつき、しかもそれが木村伊兵衛賞を受賞したことで、一躍写真家として認められます。

やがて彼は自分たち以外の家族のさまざまな写真を撮るべく日本中を奔走し、そのつど好評を博していきます。

しかし、そんなさなか2011年3月11日、東日本大震災が勃発。

政志は仕事で撮った最初の家族の安否を気遣って被災地へ向かいますが、そこで彼は津波で流された大量の家族写真を洗浄しているボランティアの小野(菅田将暉)と出会い……。

–{二宮和也の陽性の魅力が好もしく描出!}–

二宮和也の陽性の魅力が好もしく描出!

とにもかくにも見る側を楽しく温かい気持ちにさせてくれる作品です。

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こんな風に明るい絆で結ばれた家族って本当に存在するのか!? などと正直驚きつつ、それはひとりひとりがちょっとした気配りや気遣いなどで、十分実現可能なことを知らしめてくれることでしょう。

何よりも主人公・政志を演じる二宮和也=二ノの、TVバラエティ番組などで良く見せてくれている屈託のない笑顔や明るいキャラクターがここではフルに、そして好もしく活かされています。

正直なところ、映画におけるニノは熱演型のシリアスな作品が多かったように思え、それはそれで魅力的ながらも、時には陽性のコメディも見てみたいと常々思っていただけに(実は以前、彼に取材させていただいた折、あなたのコメディ映画を見たいと言ったら「いやあ、コメディは難しいですよ」と笑顔で返されたことがありました)、今回の彼を見て実に我が意を得たり!

また彼に振り回されながらもまんざらでもない家族の面々の個性の描出もさりげなくユニークかつ着実に成されていて、彼らの存在あればこそのニノの魅力もさらに引き立つという相乗効果をもたらしているあたりも見逃せません。

その他、最初は彼と気づかないほど役にはまっている菅田将暉や、政志の写真を最初に認める出版社の酒飲み社長役の池谷のぶえの豪快さ、そしてときに優柔不断な政志を厳しくも優しくリードする恋人役の黒木華など、キャストのすべてが映画に貢献しているといっても過言ではないでしょう。

こうした成果は3・11以降の描写でも大いに活かされ、それゆえに後半はもう優しい感動の涙で画面が曇って見にくくなること必至。

監督の中野量太は『チチを撮りに』(12)『湯を沸かすほど熱い愛』(16)『長いお別れ』(19)など、一貫して家族の絆を通して人の生き死にを描くことに長けた才人ですが、今回も3・11というモチーフを背景にしながらも、持ち前ともいえる陽性であると同時に繊細でもある描出の数々によって、前向きな人間讃歌として屹立させてくれています。

個人的には今のところ本作が中野監督のベスト・ムービーではないかとまで思えてしまったほどでした。

一方では秋の到来とともにしっとりと落ち着いた雰囲気に浸りたい方々にもフィットする作品にも成り得ています。

日本はもちろんのこと、世界中の家族に大いに受け入れられることであろうコミカル&ヒューマン&ファミリー映画の快作として、ニノ・ファンはもちろんのこと、全ての世代に分け隔てなく気持ちの良い後味の感動を与えてくれる快作です!

(文:増當竜也)