毎年恒例の東京ゲームショウ(TGS)が今年もやってきました。
ただし今回のTGS2020は、9月23日(水)から27日(日)まで、オンラインでの開催となります。
もっともこれだけオンラインゲームが普及して久しい今のご時世、多くのゲーマーのみなさんにとってさほど違和感はないかもしれませんね。
さて、ゲーム感覚を活かした映画もこのところ当たり前のように作られ続けています。
今回はそんな作品を2本ご紹介。TGS参加の景気づけにでもぜひどうぞ!
ヒロインと一緒に戦場を駆け巡る『ブッシュウィック―武装都市―』
(C)2016 STUPE PRODUCTIONS LLC.
家族に会うため、地下鉄に乗ってニューヨーク州ブッシュウィックのある駅に降りた大学生のルーシー(ブリタニー・スロウ)。
ところが地上に出るや、そこは戦場と化していた!?
空はヘリや戦闘機が飛び交い、地上では銃撃戦が展開され、容赦なくミサイルがぶっ放されていく地獄絵図!
突然のことに戸惑いつつも逃げるほかないルーシーは、そこで謎の男スチューブ(デヴィッド・バイティスタ)と出会い、やがて自分も生き残るために闘わざるを得なくなります……。
もしも突然馴染みの町が戦場になったら? をシミュレーションしながら展開されていくサバイバル・バトル・アクション映画。
監督は教師VSゾンビ化したちびっ子たちの壮絶バトルをブラックユーモアたっぷりに描いた快作『ゾンビ・スクール』のキャリー・マーニオン&ジョナサン・マイロット。
今回も彼らのユニークなアイデアに基づく挑戦は冴えわたっており、何と本作は長回し撮影を駆使し、94分の上映時間の中、でたったの10カット!
これはどういうことかというと、これは見る側にヒロインともども戦場の臨場感を共有させようという試みなのです。
なぜこういうことになったのか? といった説明は二の次で、とにもかくにもいきなり戦場に紛れ込んでしまった者の混乱や勇気こそをメインに描くための方法論としてこれは有用ではあるでしょう。
まさに自分がサバイバル・ゲームに参加しているかのような醍醐味を味わえる作品です。
–{一人称映像のみで描かれる驚異の『ハードコア』}–
一人称映像のみで描かれる驚異の『ハードコア』
(C)2016 STX FINANCING, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
ロシア&アメリカ合作映画『ハードコア』(16)は、もっとゲーム感覚たっぷり!
あたかもシューティング・ゲームを彷彿させる一人称の映像のみで描かれる画期的な体感型SFバイオレンス・アクション映画です。
事故で瀕死の重傷を負ったヘンリーが、見知らぬ研究室で目を覚ましました。
そこには妻と名乗る科学者の女性エステルがいて、彼女の尽力でヘンリーはサイボーグとして生き長らえることが可能となったのでした。
しかし、最後に彼に声帯を取り付けようとしたところに謎の組織が乱入し、エスエルがさらわれてしまいます。
彼女を救出するために、ヘンリーは超人的能力を駆使して決死の行動に打って出るのですが……!
本作はもう本編の99%以上が主人公の主観映像で構成されていて、見る側の感覚としては3DではないもののゴーグルをつけてのVRアクション・ゲームをやっているかのような錯覚に陥ること必至。
主人公の顔などはほとんど画面に登場することなく(最後の最後に一瞬だけぼんやり反射で映るショットあり)、また声帯手術を施す前の身体なので台詞を吐くこともなく、本当に自分が愛妻の救出ミッションを敢行しているかのような気分になります。
一人称の視点で貫かれた映画はこれまでにもなかったわkではありませんが、本作はその代表格として今後の基軸となること間違いなしの出来栄えです。
何よりもバトルシーンの臨場感はハンパなく、ただしその手のゲームなどが不慣れな人は映像酔いしてしまうかもしれませんので、ちょっと覚悟を決めるか、映画館ではなく自宅などでの配信鑑賞であれば、休み休み見るのも一つの手かもしれません。
監督はロシアのパンクバンド“バイティング・エルボーズ”のメンバーでもあるイリヤ・ナイシュラーで、これが映画監督デビュー作となりますが、なかなかのセンスの持ち主のようで、次回作も楽しみな御仁なのでした。
(文:増當竜也)