(C)2020 「映像研」実写映画化作戦会議
(C)2016 大童澄瞳/小学館
このところ人気アイドルの映画出演がかなり増えてきているようで、20世紀後半のアイドル映画ブームなどに慣れ親しんできた世代としても、何やら懐かしさとともに日本の映画界に瑞々しい要素が再び加味されてきているようで、好もしく感じたりもしております。
そんな中で一番目立つのは、やはりアイドルユニットとして揺るぎない地位を保持して久しい乃木坂46の面々による映画出演でしょう。
今年も既に『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』で白石麻衣が、『ぐらんぶる』で依田祐希がヒロインに抜擢され、それぞれ好演していましたが、ここにきて更なる画期的な、まさにファンが悲鳴&感涙してしまう快作が登場!
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街505》
齋藤飛鳥、山下美月、梅沢美波の3人が主演する『映像研には手を出すな!』、もうこのタイトルだけでファンはニンマリ、9月25日の公開日が待ち遠しくて仕方がない! といったところでしょう。
個性豊かな3人組が結成した映像研のさらなる大騒動!
(C)2020 「映像研」実写映画化作戦会議
(C)2016 大童澄瞳/小学館
映画『映像研には手を出すな!』は大童澄瞳の同名人気漫画を原作にしたものですが、映画化の前に湯浅政明監督による傑作TVアニメーション・シリーズ(20)が、また実は今回の3人が主演したTVドラマ・シリーズ全6話(20)も存在します。
その伝だと本作はTVシリーズの続きを映画化したものともいえますが、映画の冒頭でTV版の荒筋が絶妙の編集で盛り込まれているので、TV版を未見の方でも全く問題なし!
さて、本作の舞台は湖に面した芝浜高校。
大・生徒会が絶大なる権力を持つこの高校の中で、壮絶なまでの人見知りながら究極のイマジネーションを持ち得る天才監督・浅草みどり(齋藤飛鳥)、カリスマ読者モデルとして人気を博しつつ俳優の両親からはアニメ禁止されているアニメーター水崎ツバメ(山下美月)、創作力は皆無ながらも金儲けが好きで対外交渉など抜群のプロデューサー金森さやか(梅澤美波)の3人はアニメーション制作のための映像研を結成し、「最強の世界」を目指しつつ、これまでに様々な騒動を繰り広げてきました(ここまでがTV版のお話)。
そして今、学校内に429の倶楽部、81の同好会がひしめきあい、もはや収拾のつかない状況と化している中、大・生徒会は部活動統廃合令を発布します。
かくして映像研はアニメ研究会と統合……となるはずが、金森の画策でロボット研究会と手を組むことになり、アニメ厳禁が親バレするのを恐れていたツバメは一安心。
金森は、映像研とロボ研のコラボによってロボット・アニメを制作し、さらには完成した作品を文化祭ではなく同人作品即売会“COMET-A”でお披露目して儲けようと考えていたのでした。
純粋にロボLOVEなロボ研の面々は、最初映像研の面々のぶっとび&へんちくりんな個性と行動に呆れつつも、ある瞬間(見てのお楽しみ!)から見事に共闘成立!
さらには資金稼ぎのために大・生徒会からもらった部室立ち退きの仕事で音響部を恐喝、いや接触した結果、唯一の部員・百目鬼(“どうめき”と呼びます/桜田ひより)の持つ音源ライブラリーを共有できるようにもなっていきます。
しかし音響部を立ち退かせること自体はできなかったのでお金をもらえず、金森は激怒。
さらには学校側から“COMET-A”参加も禁止させられ、やむなく文化祭を発表の場へと舵を切ることになりますが、そのうち浅草がスランプに陥り、急にロボを描けなくなってしまい……。
–{これからの才能の飛躍を期待させてくれる快作!}–
これからの才能の飛躍を期待させてくれる快作!
(C)2020 「映像研」実写映画化作戦会議
(C)2016 大童澄瞳/小学館
このように次から次へと問題起こしまくりの映像研と、彼女らに手を焼く大・生徒会の面々、さらには突然現れる謎の気象予報部の晴子(浜辺美波)は一体何をしでかしてしまうのか? などなど、ノンストップ・トラブル青春群像劇としてひた走っていくのが映画『映像研には手を出すな!』の本領といってもよいでしょう。
何よりもここに登場する面々それぞれの豊かな個性の発露は、若手ならではのイキの良さやら今後の可能性やら、いろいろ頼もしく映えわたってくれています。
中でも主演の乃木坂46の3名の、それぞれの柄を活かした好演は讃えられるべきですが、さらに特筆すべきはやはり齋藤飛鳥の映画女優としての資質を多大に秘めた存在感でしょう。
最初に彼女をTVで見たときから、どこかしらヨーロッパ映画の少女ヒロインが似合いそうな子だなと直感で思ったりしていたものですが(たとえれば『シベールの日曜日』『かもめの城』のパトリシア・ゴッジのような)、事実彼女が初主演した映画『あの頃、君を追いかけた』(18)で魅せた初々しくも瑞々しい好演を目の当たりにして、こちらの直感は確信に変わったものでした。
さらにTVドラマ『ザンビ』(19)におけるホラー・クィーンとしての憂いもなかなかのもので、とにもかくにも彼女は映像に潤いをもたらす逸材であることは間違いないと、ますます確信を深めていたところに、この『映像研には手を出すな!』です。
ここでの究極の人見知り&天才少女・浅草みどりは徹底して漫画チックな誇張で演じられており、これは一歩間違うとドッチラケになりかねない危惧もあったものの、齋藤飛鳥は天性のオーラ(としか言いようのない)で実に愛らしくも応援したくなるヒロイン像を構築し得ています。
監督はこれまで『高校デビュー』(11)『ヒロイン失格』(15)『映画賭ケグルイ』など、ちょっと誇張したコミカル青春映画に抜群の際を発揮し続ける英勉で、『あさひなぐ』(17)『ぐらんぶる』(20)など乃木坂46の面々を起用した作品群でも定評があるだけに、今回も齋藤飛鳥をはじめ山下美月、梅澤美波の女優としての長所を上手く抽出してくれています。
かつてアイドル映画といえば各方面からお子様ランチ的にバカにされてきたものですが、時を経た今となっては当時のアイドル映画からいかに多数の逸材を発掘してきたか、またそれらの作品群もダイヤモンドの原石のような存在であったことまで認知されてきています。
『映像研には手を出すな!』もその意味では、今後の才能の飛躍を大いに期待させてくれる作品として屹立しているのでした!
(文:増當竜也)