『ひまわり』レビュー:初公開から50周年を記念してリバイバルされた不滅の名画!

映画コラム

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緊急事態宣言が解除され、日本全国の映画館もほぼ再開できたものの、正直興行がなかなか元通りになるまでには時間がかかりそうで、現在は多くのシネコンなどでは旧作の上映が行われています。

それはある意味、日頃は映画館でお目にかかれないものを見るチャンスともいえるかもしれません。

そういった状況の中、最初から2020年のリバイバル公開を目論んで準備されていた名作映画があります……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街473》

イタリア映画界の名匠ヴィットリオ・デ・シーカ監督、ソフィア・ローレン主演の『ひまわり』、1970年の初公開から50周年を記念してのHDレストア版での公開です!

戦争で行方不明になった夫を探す妻

映画『ひまわり』の舞台は第二次世界大戦下のイタリアです。

洋裁で生計を立てているナポリ娘ジョバンナ(ソフィア・ローレン)はアフリカ戦線行きを控えた陽気なアントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)と出会い、瞬く間に恋に落ちて結婚しますは、12日の結婚休暇はすぐに終わってしまいます。

アントニオは精神疾患を装って入院しますが、すぐにウソがばれてしまい、懲罰として極寒地獄のソ連戦線へ送られてしまうのでした。

やがて終戦。しかしアントニオは戻ってきません。

ジョバンナはようやく夫と同じ部隊にいた男から、彼が敗走中に雪原で倒れたと聞かされ、ソ連に赴くことを決意し、モスクワから地平線の彼方までひまわり畑が続くウクライナへ、その足跡を追い始めるのですが、やがて彼女に待ち受ける衝撃と痛恨の運命とは……。

ここから先のストーリーは、今やあまりにも有名な名作ゆえに、さほど映画に詳しくない方でもほぼほぼご存じではないかと思われますが(まあ、よくよく振り返ると『シェルブールの雨傘』ともよく似たお話ではありますが)、未だ見たことのない若い映画ファンや、これから初めてこの作品を見るラッキーな方々のために触れずにおこうと思います。

–{映画ファンを自認するなら見ておくべき名作中の名作}–

映画ファンを自認するなら見ておくべき名作中の名作

一口に映画ファンと言っても、その嗜好などは千差万別なわけですが、それでも映画ファンを自認するのだれば最低限見ておくべき作品はいくつかあるかと思われます。

『ひまわり』もその中に絶対含まれてしかるべき作品でしょう。

本作は簡単に言ってしまえば悲恋メロドラマですが、そのジャンルの中でも最高峰といっても過言ではないほどの美しさと哀しみの双方を讃えた真の名作ではないかと思われます。

まずはソフィア・ローレン&マルチェロ・マストロヤンニという『昨日・今日・明日』(63)『ああ結婚』(64)でも共演したイタリア映画界を代表する映画スターによる究極のコンビネーション。

またこの2作品を監督したのが、本作のヴィットリオ・デ・シーカ監督であり、彼もまた戦後のイタリア映画界で勃興する映画運動=ネオレアリズモの名手で、『靴みがき』(46)や『自転車泥棒』(48)『ミラノの奇跡』(51)など代表作多数。

特にデ・シーカ監督はソフィア・ローレンの明るく大らかな陽性の魅力を巧みに活かすことに長けており、逆にだからこそ悲劇の極致ともいえる『ひまわり』でも彼女の存在感を強く印象付けることも可能だったのでしょう。

おそらく本作は、ソフィア・ローレンが主演した映画の中で、もっとも世界的にもポピュラーな作品ではないかと思われます。

タイトルを見事に象徴する、地平線いっぱいにまでそびえるひまわり畑はヒロインの心情そのものを愛のスペクタクルと呼んでも過言ではないほどに引き立ててくれています。

そしてとどめをさすのが、悲しみの情緒をこれでもかと高らかに奏で上げるヘンリー・マンシーニの音楽で、本作を見たことがない人でも、この映画のテーマ曲を聴いたことがないという人はさぞ少ないことでしょう。

今回のリバイバルにおいては、初公開から50周年(何と、もう半世紀も経ってしまったのですね!)を記念してのHDレストア版でのお目見え。

銀幕の大画面で、あの壮大なるひまわり畑を堪能できる滅多にないチャンスを、くれぐれもお見逃しなきように!

(文:増當竜也)

※この記事は、劇場での鑑賞を必ずしも推奨するものではございません。みなさま各々のご判断で、ソフト販売/配信開始の後での鑑賞も併せてご検討ください。