(C)2020「星屑の町」フィルムパートナーズ
『星屑の町』という舞台をご存じでしょうか?
1994年から25年にわたって全7作が公演されて愛され続けた大ヒット・シリーズがついに映画化!
数々の昭和歌謡に乗せて繰り広げられる、売れないおやじコーラスグループの喜怒哀楽は昭和も平成も令和も関係なく、永遠不滅の面白さを誇るとともに、舞台から映画への変換もまた大成功!
そして今回の映画化における大きな魅力のひとつに……
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街445》
のんがヒロインに抜擢されていることなのでした!
売れないコーラスグループと歌手志望の娘のコラボ!?
『星屑の町』という、いかにも昭和歌謡のようなタイトルにふさわしく、本作は長年鳴かず飛ばずの売れないコーラスグループ「山田修とハローナイツ」のお話です。
メンバーは、大手レコード会社の社員からいつのまにか歌う側に回ってしまったリーダー山田修(小宮孝泰)。
ボーカルは、大阪のミナミでくすぶっていた歌手・天野真吾(太平サブロー)。
コーラスはリーダーと、お調子者の市村敏樹(ラサール石井)、人情肌の込山晃(渡辺哲)、ひねくれ者の青木五郎(有薗芳記)、そして西一夫(でんでん)はハローナイツの借金を肩代わりするのを条件に、博多の焼き鳥屋と4人の子どもを妻に任せてメンバーになった途中参加者。
また、これといったヒット曲もないベテラン歌手のキティ岩城(戸田恵子)も、彼らと一緒に地方を回りながら細々と活動を続けています。
そんなあるとき、山田の生まれ故郷である東北の田舎町の青年団の誘いで、「山田修とハローナイツ」は歌謡ショーのためにやってきました。
彼らを出迎えたのは、修の弟・英二(菅原大吉)とその息子で青年団の啓太(小日向星一)、スナックの美人ママ治美(相築あきこ)とその娘・愛(のん)たち。
啓太は愛に恋心を寄せていますが、彼女はかつて歌手にしてあげると騙されて上京し、出戻ってきた苦い過去がありますが、今でも夢をあきらめていません。
やがてスナックで酔っ払った市村が、うっかり歌手にしてやると言ってしまったことから、翌日彼らの控室に愛がやってきてしまいます。
すったもんだの末に、愛の歌を聴いてみようということになりますが、これがまた実に上手くて……。
果たして「山田修とハローナイツ」は愛をメンバーの一員にするのか? それとも冷たく見捨てるのか?
一方、メンバー内でもこれまでの確執が一気に噴出し、ついには独立騒動まで持ち上がってしまうのですが……。
–{懐かしき昭和テイストとのんの魅力が見事にフィット!}–
懐かしき昭和テイストとのんの魅力が見事にフィット!
本作の愉しさは、懐かしき昭和歌謡とその雰囲気に乗せて、しがないおやじコーラスのドサ回りの旅を哀愁をこめてユーモラスに綴っていくところにあります。
こうした昭和テイストは、令和の今になると逆に新鮮に映えるところも多く、意外に若者層に受け入れられるのではないかとも思われます(また登場するハローナイツのおっさんたちが可愛いのです!)
そして今回、“今”の映画としての輝きを強めてくれているのが、やはりのんでしょう。
TV『あまちゃん』でのブレイクからいろいろあった彼女ですが、名作アニメーション映画『この世界の片隅に』で見事に復活し、今回は久々の、そして堂々の実写映画出演となりました。
最初は「あまちゃん」よろしく東北弁での(さすがに「じぇじぇじぇ」とは言いませんけど!?)勝気でごり押しの娘として登場しますが、やがて彼女がハローナイツの面々と一緒に歌い出すあたりのオーラは、いかにも昭和! といった魅力あふれる衣装やメイクの数々とともに、まさに映画女優ならではの輝きとしかいいようがないほどです。
また劇中は《恋の季節》《中の島ブルース》などの昭和歌謡が続々と登場しますが、舞台をずっと見てきたファンの方には、「山田修とハローナイツ」名義で発表された《MISS YOU》や今回のオリジナル《シャボン玉》を披露するあたりもお楽しみのひとつでしょう。
脚本は、原作舞台の生みの親として四半世紀にわたってシリーズを盛り上げてきた水谷龍二。
監督は森田芳光監督の助監督として活動し、その森田監督亡きあとに、彼の商業映画デビュー作『の・ようなもの』(81)の続編『の・ようなもの のようなもの』(16)で監督デビューを果たした杉山泰一。
ここでも師匠譲りのユーモアと、ダサさもまたオシャレと言わんばかりの逆転のセンスを駆使して、実にハイカラで楽しい喜怒哀楽の人情世界を繰り広げてくれています。
見終わって、少しのほろ苦さを心に抱きつつ、どこかしら笑顔になれる、そんな気持ちの良い老若男女が等しく楽しめる、それでいて意外にもデート・ムービーにも最適な作品ともいえるでしょう(見終わってあれこれ語り合えること必至!)。
(文:増當竜也)