『カイジ ファイナルゲーム』のレビュー|藤原竜也の演技に圧倒されまくり!

映画コラム

(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
 

みなさんはギャンブルやりますか?(私は一時期パチンコを、年間通してプラスマイナス0収支を貫きつつ、10年くらい趣味にして楽しんでました。その後禁煙に成功したら煙臭いパチンコ屋にいられなくなって、すっかりやらなくなりましたけど……)

「まあ、人生そのものがギャンブルさ」なんてウソぶくのもあながち外れてはいないことを痛感させられっぱなしの昨今ではありますが、そんな人生ギャンブルをテーマに据えた福本伸行の大人気コミックを映画化した快作シリーズの第3作にしてファイナルを謳う最新作『カイジ ファイナルゲーム』が1月10日より公開となります。

ご存じ「ざわ…ざわ…ざわざわ…」の調べに乗せて、転落人生まっしぐらのダメダメ青年カイジの極限状況一発逆転ギャンブルさばき!

そしてもちろんカイジを三度演じる藤原竜也のハイテンション演技も……

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街428》

もはやオリンピック級の快進撃なのでした!

オリンピック後の大不況日本での一発逆転ゲーム!

前作から9年ぶりとなる第3弾『カイジ ファイナルゲーム』の舞台は、何と2020年の東京オリンピック開催後の物価が高騰し(缶ビール1本が軽く千円を超えてます)、金を持つ強者以外はクズ扱いされるようになった近未来の日本!

まあオリンピックを開催した国が、最近ではギリシャのように急激な不景気に見舞われて国内大パニックに陥ることが往々にして起こり得るというのは、ちょっと世情に長けた方なら周知の事実。正直、今の日本のきな臭さや閉塞感などから鑑みても、この設定あながち大ボラとも思えません。

今回は原作者の福本伸行がオリジナル・ストーリーを構築し、自ら脚本も執筆。お金に関するシビアな実情を熟知し得た者ならではの説得力によって、もしかしたら現実にこんな未来が訪れるのでは? といった不安の中、我らがカイジは派遣会社のもとで肉体労働に従事しながら、その日暮らしを強いられています。

もっとも、いくら働いても月給の7割を会社が抜くといったブラック極まりない体制に憤りを覚えつつ……、では一体どうしたらよいのか?

そんなとき、カイジとはもはや腐れ縁ともいえる(?)ハンチョウこと大槻(松尾スズキ)が彼の前に現れ、美味しくも危ないギャンブル話を持ち掛けてきました。

どうも大金を持て余している老人が「若者救済イベント」などと称して、一攫千金のチャンスながらも案の定クリアするのは並大抵ではないギャンブル・ゲーム「バベルの塔」を開催するというのです。

ざわ…ざわ…ざわざわ…ざわざわざわ…

かくして三たび人生逆転ゲームに参加することになったカイジ。

しかし、この「バベルの塔」は単なる序章。

実はこの後、とてつもないギャンブル地獄が次々と彼の前に待ち構えているのですが……これ以上は劇場で確認すべし!

–{藤原竜也以外のカイジなんてもはや考えられない!}–

藤原竜也以外のカイジなんてもはや考えられない!

(C)福本伸行 講談社/2020映画「カイジ ファイナルゲーム」製作委員会
 

映画『カイジ』シリーズの妙味は、ダメ人間が命がけの一発逆転ゲーム(しかもその勝負はジャンケンとかシンプルなものが大半を占める)に賭け続けていくスリリングさと、金に対する人間の欲望を赤裸々に体現しながら、それがいつしか社会に対する訴えにも直結していくところにあると思います。

もっとも、そんな理屈よりも何よりも真っ先に、このシリーズのファンがもっとも待望しているのはカイジを演じる藤原竜也のハイテンション演技!

実は最初の映画化の際、主演が彼と聞いたときにあまりにも漫画のイメージとかけ離れているように思えたのですが(原作のカイジは逆二等辺三角形顔ですが、藤原竜也は丸顔)、いざ作品を見るとピカレスク極まりない世界観に負けない存在感で、見事に映画版のカイジ足り得ていました(彼自身も、この役に対しては大いに自負しているところがあることでしょう)。

もともと熱演型の彼は、古くは『バトル・ロワイアル』の頃から極限状況に追い込まれたときに叡知を発揮する役柄を得意としていますが、そんな彼が9年ぶりに演じるカイジは、そのテンションが一段とパワーアップしていて、とことんまで藤原パワーを堪能できる仕組みになっているのです。

またこうした彼の資質を巧みに映画的に引き出しているのがシリーズ第1作からずっと登板し続けている佐藤東弥監督で、今回は特にあうんの呼吸といったコンビネーションが画面から心地よく醸し出されており、また東京オリンピック後の大不況という設定の活かし方にしても、社会派的メッセージを巧みにエンタテインメントに変換させてくれています。

天海祐希や生瀬勝久、松尾スズキなど、かつてシリーズにお目見えした面々の再登場も嬉しいところですが、今回は政府の若き実力者を演じる福士蒼汰のピカレスクな個性が上手く引き出されています。

また老人を演じる伊武雅刀のいぶし銀の魅力にはぐっとくるものもありました。

でも、圧倒的なのはやはり藤原竜也!

彼なくして映画『カイジ』はありえない! と断言できるアルティメット・ハイテンション・パワー演技に大いに着目してください!

(ちなみに私、映画鑑賞中ついつい時計を見る癖があるのですが、この作品は2時間8分の長尺ながら一度たりとも時計を見ることなく、藤原“カイジ”の行動に瞠目していました!)

(文:増當竜也)

–{作品情報・公開情報}–

作品情報

タイトル
=カイジ ファイナルゲーム

公開日
=2020年01月10日

製作国
=日本

上映時間
=128分

ストーリー

2020年、国を挙げて盛大に開かれた東京オリンピックの終了を機に、この国の景気は恐ろしい速さで失速していった。
今この国では、金を持つ強者だけが生き残り、金のない弱者は簡単に踏みつぶされ、身を寄せ合うことで何とか今を生きていた―。
自堕落な生活を送っていたカイジは、派遣会社からクズと罵られ、薄っぺらい給料袋を手渡される。憤りを感じながらも一缶千円に値上がりしたビールを買うかどうか迷っていた。
「久しぶりだね、カイジくん」「ハンチョウ?」
声をかけてきたのはスーツに身を包んだ大槻だった。帝愛グループ企業のひとつを任される社長に出世したという。
「カイジくん。君もこんなところでくすぶっているタマじゃないだろ?」
「何が言いたいんだ?」「実はワシと組まないかと思ってね」
大槻が見せたのは一枚のチラシだった。【第5回若者救済イベント開催!バベルの塔】金を持て余した大金持ちの老人が主催するイベントで、一攫千金のチャンスだ。
「こんなもの無理だ!運否天賦のゲームで作戦の立てようもない」
「その通りだよ。だが裏を返せば、カラクリがわかっていれば勝てる可能性があるわけだ……」
ざわ…ざわ…ざわ…ざわ…
運命の歯車は動き出した。カイジを待ち受ける未来は天国か地獄か?日本中を奮い立たせる最後のギャンブルが今始まる―

予告編

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監督
佐藤東弥

脚本
福本伸行、徳永友一

出演者
藤原竜也、福士蒼汰、関水渚、新田真剣佑、吉田鋼太郎、松尾スズキ、生瀬勝久、天海祐希、山崎育三郎、前田公輝、瀬戸利樹、金田明夫、伊武雅刀

公式サイト
https://kaiji-final-game.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/kaiji_movie

配給
=東宝