(C)2017 Twentieth Century Fox Film Corporation
現在公開中の『グレイテスト・ショーマン』は、全米で公開9週目にして興行収入ランキング6位をキープするほどに口コミで評判を呼び、日本でも初登場1位かつ週末3日間で興行収入5億8000万円超の特大ヒットを記録しています。
『グレイテスト・ショーマン』のキャッチーで耳に残る音楽の数々、ミュージカルシーンの楽しさに魅了された方は多いことでしょう。ここでは、ミュージカルをもっと観たくなった方にオススメしたい、タイプ別に分けた25の映画を紹介するほか、さらに深い見識を得られる作品を、大ボリュームで紹介します!
【とにかく楽しい!明るい王道のミュージカル映画5選】
1:『ヘアスプレー』(2007年)
とにかく「楽しい!」ミュージカル映画を観たければ『ヘアスプレー』を観れば間違いありません。おデブちゃんの主人公が大好きな番組に出演し夢を叶えていくという物語は王道で感情移入しやすいでしょう。人種や見た目への差別・偏見に立ち向かうという内容は『グレイテスト・ショーマン』に通じています。主人公の父親にクリストファー・ウォーケン、母親役になんとジョン・トラボルタというびっくりな配役も実にハマっていました。序盤に露出狂が唐突に登場する(しかもスルーされる)といったよい意味での素っ頓狂ぶりも見どころですよ。
2:『ドリームガールズ』
伝説的な黒人女性グループ“スプリームス”をモデルとした作品です。当時の音楽業界における理不尽な黒人差別が描かれており、主人公が黒人女性3人組ということもあって、昨年に日本でも大評判を呼んだ『ドリーム』を思い出す方も多いのではないでしょうか。興行主(プロデューサー)が客観的に見れば、強引でイヤなヤツというのも『グレイテスト・ショーマン』と一致しています。ショーでの歌唱はもちろん、“1人で”心情を吐露するミュージカルシーンも聞き所です。
3:『マンマ・ミーア!』
何よりの特徴は、日本人でも聞いたことのあるABBAの名曲の数々で彩られていること!男性キャストがピアース・ブロスナン、コリン・ファース、ステラン・スカルスガルド、ドミニク・クーパーとめちゃくちゃ豪華、物語は娘の結婚式に“父親候補”の3人がやってくるというもので、女性こそが共感しやすい内容と言えるでしょう。メリル・ストリープとアマンダ・セイフライドが母娘役で、どちらもキュートですよ。なお、10年ぶりの続編『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』が8月24日に公開予定です。
4:『メリー・ポピンズ』
古典的な作品からはこちらを。「スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス」や「チム・チム・チェリー」は日本人であっても聞いたことがあるでしょう。厳格だけどちょっとツンデレ気味な敏腕家庭教師が子供のころにやって来るという物語で、実写映像に2Dのアニメを融合する映像表現は、今観るとむしろ新鮮に映るのかもしれません。作品の精神性やイギリスの街並みは『パディントン1&2』に似たところもあります。その製作現場の裏側を描いた『ウォルト・ディズニーの約束』を合わせて観ると、さらに楽しめますよ。
5:『バーレスク』
シンガーソングライターのクリスティーナ・アギレラが主演を務めた映画です。ショーの数々をプロモーションビデオのように、テンポよく迫力の映像で見せていく様は、『グレイテスト・ショーマン』が好きな人こそがハマるのではないでしょうか。物語も王道のサクセスストーリー。ラブコメやサブキャラクターとの確執なども適度に盛り込まれているので、誰もが分け隔てなく楽しめるはずです。厳しい先輩を演じるシェールの存在感にも注目です。
この他では、日本でもおなじみの楽曲が詰まった名作中の名作『サウンド・オブ・ミュージック』、スマホや動画サイトなどの現代的なアレンジが多く加わった『ANNIE/アニー』(2014年)も、楽しいミュージカル映画としてオススメですよ。
【暗い気持ちになることも大切かも……悲劇的なミュージカル映画5選】
1:『レ・ミゼラブル』(2012年)
今までにも“「レ・ミゼラブル」の原作小説を映画化した作品”はありましたが、本作は“ミュージカルの映画化”です。全編のなんと95%ほどが歌唱シーンであり、しかも“吹替”を一切行わずに役者たちがその場で歌っている、規格外とも言える内容になっています。登場人物たちの何気ない行動や、人の縁が後の展開につながる物語は見事、善人または悪人という二元論で分けず、人間の魅力を丹念に描いていることにも特筆に値します。ヒュー・ジャックマンが『グレイテスト・ショーマン』とは正反対とも言えるキャラを演じていることにも注目です。
2:『オペラ座の怪人』(2004年)
前述の『レ・ミゼラブル』と同様に、古典的名作のミュージカル版を映画化した作品です。エミー・ロッサムが2人の男の間で揺れる美女を好演、観ているだけでうっとりする美しい美術、モノクロームのシーンもよいアクセントになっているなど、極めて堅実に作られた万人向けの内容になっているので、「オペラ座の怪人」の入門としてもオススメです。『300〈スリーハンドレッド〉』や『ジオストーム』のジェラルド・バトラーが怪人役で、「醜い顔っていう設定なのに、めっちゃイケメンじゃないか!」とツッコミたくなるところもありますが、その存在感と歌唱力はさすがの一言です。
3:『ファントム・オブ・パラダイス』
前述の「オペラ座の怪人」を現代風にアレンジしたほか、「ファウスト」や「ノートルダムのせむし男」や「ドリアン・グレイの肖像」の要素もミックスされたロックミュージカルです。何よりの特徴は、主人公の境遇がメチャクチャかわいそうということ! 音楽をプロデューサーに盗まれたばかりか、ハメられて無実の罪で投獄され、歯を抜かれて総入れ歯となり、脱獄したらプレス機に潰されて醜い顔になってしまい、あまつさえ憎むべきプロデューサーの元で人知れず働かざるを得なくなるという……これほどまでに主人公を不幸のどん底に落とす映画だったとは……。『キャリー』や『ミッション:インポッシブル』のブライアン・デ・パルマ監督の最高傑作との声も高い一作です。ラストは泣けますよ。
4:『スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師』
ティム・バートン監督×ジョニー・デップ主演という数々の名作を作り出した黄金コンビが手がける残酷絵巻です。R15+指定(他国ではほとんどが18禁指定)がされており、とくに“首切り”のシーンは目をそむけてしまうほどに残虐非道、お子様は絶対に観てはいけません。ジョニデ様の声はややハスキーですが、それこそが悲劇的な物語の雰囲気にマッチしていました。終盤では意外な展開が待ち受けており、よい意味でやるせない気持ちいっぱいになるでしょう。
5:『ダンサー・イン・ザ・ダーク』
賛否両論の映画の代名詞であり、観た後に鬱になる映画としても有名です。ミュージカルシーンが主人公の“妄想”、それもツライ現実の“現実逃避”のように描かれているということもポイント。詳しくは書けませんが、あの“カウントダウン(アップ”は(忘れたくても)一生忘れられなくなるでしょう。ラース・フォン・トリアー監督作品は、『奇跡の海』や『ドッグヴィル』など女性が精神的かつ性的に虐げられるものが多いのですが、だからでこそ「女性がいかに大変なのか」を知ることができる、実はフェミニズムに溢れているとも言えるのではないでしょうか。
※筆者はこちらの記事も書いていました↓
□『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が賛否両論である理由と、それでも観て欲しい理由をいま一度考える。
※5月9日にDVD&Blu-rayが発売予定の『ナラタージュ』でも『ダンサー・イン・ザ・ダーク』が引用されています↓
□『ナラタージュ』徹底解説!劇中の映画の意味は?小説からの改変で強まったテーマとは?
【意外に知られていない?実はスゴい日本のミュージカル映画5選】
1:『嫌われ松子の一生』
日本のミュージカル映画と聞くとピンと来ないかもしれませんが、1939年の『鴛鴦歌合戦』をはじめ、実は名作も多く作られています。大々的に公開された映画の中で、とくに支持を集めたのはこちらの『嫌われ松子の一生』でしょう。カラフルできらびやかなVFXで彩られたミュージカルシーンは、悲惨な現実とのギャップが激しく、むしろ悲劇性を増すという効果を生んでいます。主演の中谷美紀が素晴らしいことはもちろん、『シン・ゴジラ』の市川実日子が病弱な妹を演じていることも見逃せません。PG12指定ではやや甘いと思える性描写もあるのでご注意を。
2:『舞妓はレディ』
『ちはやふる』2部作や『君の名は。』(声の出演)などで大ブレイクし、歌手としても活動している上白石萌絵の映画初主演作品です。そのタイトルはオードリー・ヘプバーン主演の『マイ・フェア・レディ』のもじりで、内容の一部も踏襲されています。とくに“言語学者が女の子のなまり(方言)を矯正”させるという序盤の展開はほぼ同じ、楽曲の歌詞にパロディも見られました。『マイ・フェア・レディ』を観ておくと、「ここを参考にしているんだな」「ここが同じだな」と気づける楽しさがあるでしょう。京都の舞妓さんの仕事を知ることができるのも大きな魅力ですよ。
3:『TOKYO TRIBE』
井上三太のマンガを原作とした“世界初バトル・ラップミュージカル”と銘打たれた作品です。セリフの8割以上がラップで歌われており、出演者は佐藤隆太、窪塚洋介、染谷将太などと豪華で、叶美香、中川翔子、竹内力、ベルナール・アッカなど「ネタだろ!」とツッコミたくなる配役も盛りだくさん。サブキャラにYouTubeのオーディションで選ばれた演技初挑戦者がいたり、プロラッパーのYOUNG DAISが重要な役を演じていたり、鈴木亮平の肉体美がすごすぎたり、小学生男子にしか見えない女子高生の坂口茉琴のアクションが目立ちまくっていたりと、『レ・ミゼラブル』以上に規格外な内容になっていました。『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』などの園子温監督作の中でもとくに好き嫌いが分かれる内容であり、ハッキリ言って物語はめちゃくちゃですが、そのカオスっぷりも作品の魅力になっています。
4:『愛と誠』(2012年)
同名マンガの実写映画化作品で、1970年代当時の歌舞伎町の様子や、スカートがやたらと長いスケバンが再現されている、よい意味での“古臭さ”を売りにしているような作品です。妻夫木聡は、その歌唱力はもちろん、ボケボケな武井咲に対するツッコミもキレキレで、あらためてスゴい役者であると思い知らされました。真面目キャラにドハマりしている斎藤工、不器用かつ狂気的な役をこなしている安藤サクラも実に魅力的です。ミュージカルナンバーを2番まで歌ってしまうこともありテンポは鈍重、三池崇史監督らしい悪趣味さも炸裂しており、お世辞にも万人向けとは言えませんが、ハマる人にはハマるでしょう。
5:『心が叫びたがってるんだ。』(実写映画版)
厳密にはミュージカル映画ではありませんが、高校生たちがミュージカルを作り上げていく、ミュージカルの根本となる面白さや魅力は何であるのかを模索する内容と言っても過言ではないので選んでみました。同名のアニメ映画を原作としており、そちらではなかった描写もプラスされているほか、“生身の人間が演じてこそ”のミュージカルの魅力を感じられるなど、実写映画化の意義がたしかにある作品に仕上がっていました。中島健人と芳根京子などの若手俳優の魅力もこれ以上なく発揮されています。DVD&Blu-rayは3月7日発売予定です。なお、同作の脚本を手掛けた岡田麿里がはじめて監督を務めた劇場用アニメ『さよならの朝に約束の花をかざろう』が2月24日より全国公開です。
【絵でも音楽の魅力を見せつける!アニメのミュージカル映画5選】
1:『プリンス・オブ・エジプト』
さきほどの実写映画版『心が叫びたがってるんだ。』では、“生身の人間が演じてこそ”のミュージカルの魅力があるとは書きましたが、美麗な絵で綴られるアニメのミュージカルもやはり惹きつけられるものがあります。とくに音楽の魅力を強く感じられるのが、オープニングから荘厳な楽曲で迎えてくれる、この『プリンス・オブ・エジプト』ではないでしょうか。兄弟の確執を描いた物語としても、無理なくまとまっています。実写映画の『十戒』や『エクソダス 神と王』と見比べてみるのもよいでしょう。
2:『ノートルダムの鐘』
ディズニーアニメからはこちらをオススメします。『レ・ミゼラブル』と同じくヴィクトル・ユゴーの小説を原作としており、胸躍るファンタジーよりも、登場人物の心の揺れ動きを描いた重々しいドラマがメインとなっており、どちらかと言えば大人向けの内容と言ってもいいでしょう。吹替版は当時の劇団四季に所属していた舞台俳優が担当しており、そちらの評価も高くなっています。
3:『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』
根強いファンの多い、ハロウィンの定番とも言える作品です。不気味だけどカワいいキャラクター、怖いけれど耳に残る楽曲の数々、子供にもわかりやすいアドベンチャー、大人も共感できるラブストーリーなどがバランスよく展開しており、まさに老若男女が楽しめるでしょう。ミュージカル×ストップモーションアニメでは『ティム・バートンのコープスブライド』が共通点の多い作品であるので、そちらも観てみるとよいでしょう。
4:『ハッピーフィート』
ペンギンが何とタップダンスをするミュージカルです。監督が『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のジョージ・ミラーということもあり、ペンギンたちが一同に集結してブリザードに耐えたり、仲間キャラが不遜なヤツらだったり、新興宗教の教組のようなキャラが出てきたりと、マッドがマックスな要素がたくさんあるのが素敵です。終盤は環境問題を絡めつつ「こんな話になるなんて!」とツッコみたくなる意外な展開に……子供向けだと甘く思っていると、意外な辛辣さに驚けますよ。
5:『SING/シング』
厳密にはミュージカル映画とは呼べませんが、「今までふさぎ込んでいた者たちが歌うことで人生が輝き出す」というプロットの他、主人公の興行主が(不可抗力とはいえ)誇大広告を打ち出していたり、裏でクズいことをしていることなどが『グレイテスト・ショーマン』と共通しているので選んでいました。終盤の展開にもけっこう似ているところがありますね。日本でもおなじみの大ヒットナンバーが多数登場し、何ときゃりーぱみゅぱみゅの「にんじゃりばんばん」までもが歌われています。
【ひねくれ者にこそオススメ!変化球気味のミュージカル映画5選】
1:『シカゴ』
アカデミー賞で作品賞など6部門を受賞した有名な作品ではありますが、実は登場人物のほぼ全員が悪人というアウトレイジな内容です。富と名声を得るためには手段を選ばない彼らの行動はもはやスガスガしさを覚えるほどでした。実は“ミュージカルが苦手な方にもオススメできる”とも良く言われている作品で、それはミュージカルシーンになると“舞台(ステージ)”に切り換わるという演出になっているから。“道端いきなり踊りだす”という表現にどうしても違和感を覚えるという方は、『シカゴ』から慣らしてみるのがいいのかもしれません。
2:『ロッキー・ホラー・ショー』
カップルが古城に迷い込んでしまうことから始まるホラー……かと思いきや、ぜんぜん怖くはなく、奇っ怪な博士のパーティにただただ巻き込まれるというコメディ要素が強い作品です。批評家からはボロボロに酷評されたものの、劇中の展開にツッコミを入れたり紙吹雪を撒きながら観るという、今でいう“応援上映”のようなスタイルの鑑賞方法のおかげでカルト・ムービーとして愛されるようになっていきました。映画としてのバランスはお世辞にもよいとは言えませんが、唯一無二の魅力に溢れています。
3:『魔法にかけられて』
何よりの特徴は、ミュージカル映画の「いきなり何で歌い出すんだよ!」というツッコミそのものをギャグにしてしまっていること! 主演のエイミー・アダムスが“2次元のディズニーアニメから実写の世界にやってきたプリンセス”を好演しており、以降のディズニー映画で主流となっていく“王子様を待つだけじゃない女性像”が推されているのも大きな魅力です。物語はひねくれてはいるものの、基本的には楽しいミュージカルで彩られているので誰もが「面白かった!」と満足できるでしょう。他にも『ザ・マペッツ』という実写映画にも「いきなりミュージカルをみんなで歌ったので疲れたよ!」というメタ的な自虐ギャグがあります。
4:『イントゥ・ザ・ウッズ』
「赤ずきん」や「シンデレラ」などの誰もが知るおとぎ話を同時並行で描いていくという内容です。ディズニー映画史上に残る問題作と言っても過言ではなく、『シカゴ』に負けず劣らず登場人物の性格が最悪だったり、それぞれのおとぎ話が「ハッピーエンド?なにそれ?」なひねくれた結末を迎えたり、ツッコミだしたらキリがないほどに話そのものがメチャクチャだったりと、王道から外れまくっている作風は大いに賛否両論を呼びました。個人的には2人の王子が唐突に上半身をはだけさせながら歌うシーンで爆笑したので大満足です。キレイゴトが嫌いだという方、ジョニー・デップ様の変質者にしか見えない演技を期待する人にオススメします。
5:『ラビリンス/魔王の迷宮』
まだCG技術が未発達な時代(1986年)に作られたファンタジー映画で、主役の2人以外はほぼすべてマペット(人形)で演じられています。物語はさらわれた赤ん坊の弟をお姉ちゃんが助けに行くというシンプルなものですが、その摩訶不思議な世界観、一見すると気味が悪いけど次第にかわいらしく思えてくるサブキャラなど、他にはない魅力に満ち満ちていました。そして悪役の魔王を演じるのは、なんとデヴィッド・ボウイ! ミュージカルシーンは決して多くないですが、その存在感と歌声は一生忘れられなくなるくらいに強烈です。
–{【ミュージカル映画にまつわるおまけネタ】}–
【おまけその1:合わせて観て欲しい“見世物小屋”映画はこれだ!】
『グレイテスト・ショーマン』は、詩人・金子みすゞの「私と小鳥と鈴と」にある、“みんな違ってみんないい”に似た精神を持っています。同時に、アカデミー賞主題歌賞にノミネートされた「This Is Me」の歌詞にあるように、自身がマイノリティであっても、どれだけの逆境があろうとも、気高く生きていくという力強さも存分に表れていました。そのメッセージは普遍的かつ正論そのもの、間違いなく本作の美点であり長所と言えるでしょう。
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ただし、全体をテンポよく楽しいミュージカルでまとめ上げたために、そのマイノリティな人々の背景や、差別意識などのネガティブな部分が掘り下げられてはおらず、彼らのことを画一的に見すぎてしまうという危険性もはらんでいる、主人公のP.T.バーナム(実在の人物)は人としてかなりアウトなこともしているのに、そのことも軽く流されてしまっていると感じる部分もありました。
ここでは、ずっと楽しい内容だった『グレイテスト・ショーマン』とはある意味では正反対とも言える、サーカスがまだ“見世物小屋”として悪趣味なものとしても捉えられていた時代を描いた、2つのモノクローム映画を紹介します。合わせて観ると、『グレイテスト・ショーマン』では描かれていなかった、“裏”を理解できるかもしれません。
1:『エレファント・マン』
ジョゼフ・メリックという全身が奇形であった実在の人物を描いた作品です。確かな知性と純粋さを持っていても、“象人間”と呼ばれ人間扱いをされなかった男の人生を淡々と追う物語の中では、彼を醜いと蔑む者だけでなく、「彼も人間だ」と優しく接しようとする“偽善者”も登場します。親友となっていく医者でさえも「私も同じ穴のムジナかもしれない」と漏らすシーンは強烈な印象を残すでしょう。『ズートピア』とは別の視点で「差別の本質とは何か」を知れる名作です。
2:『フリークス』(別タイトル:『怪物團』)
1932年に公開された見世物小屋が舞台の映画で、本物のシャム双生児や小人症であった者が出演している映画です。その内容は、カネ目当てに結婚と毒殺を企む悪女がおり、彼女に騙されそうになっている小人症の男性を周りが心配し、何とか説得しようとするというもの。『グレイテスト・ショーマン』と同様に多毛症の女性も登場し、劇中では彼女が出産するシーンがあるのですが、その時のセリフが「こんなことを言っていいのか!」と色々な意味で驚けるものになっています。ジャンルはブラックコメディと言っても良く、ラストは刺激的すぎて受け入れらない人もいるかもしれません。
【おまけその2:インド映画のミュージカルもすごいぞ!】
『グレイテスト・ショーマン』を観た人が、「似ている!」とつぶやいている作品には、インド映画もあります。それは、現在も公開中であり、DVD&Blu-rayが発売されたばかりの『バーフバリ 王の凱旋』。たしかにゾウさんが登場する他、豪華絢爛なミュージカルシーン、一時たりとも飽きさせまいとする見せ場の連続など、共通しているところが多いですね。
『バーフバリ 王の凱旋』は「観た後は肌がツヤツヤしている」「仕事が捗る」「ぐっすり眠ることができた」などといった健康報告が相次いでおり、著名人も続々とその面白さを語っているなど、もう映画史に残る名作であり伝説であることが確定済みと言っても過言ではありません。
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いうまでもなく、インド映画は歌と踊りが大きな見どころであり、そのほとんどをミュージカル映画に分類しても間違いではないでしょう。『バーフバリ 王の凱旋』だけでなく、オールタイムベストに良くタイトルが挙がる『きっと、うまくいく』などの傑作インド映画を、この機会に観てみるのもよいと思いますよ。
ちなみに、映画レビューサイトIMDbで8.6点という『きっと、うまくいく』や『バーフバリ 王の凱旋』を超える超高評価を記録し、特大ヒットを記録したインド映画『ダンガル きっと、つよくなる』が4月6日より公開予定です。こちらにも大期待していますよ!
※『グレイテスト・ショーマン』とスタッフが共通している『ラ・ラ・ランド』の公開時に、以下の記事も書いていました。合わせて参考にしてみてください。↓
□これを観ておくと『ラ・ラ・ランド』がさらに楽しめる!10の映画
(文:ヒナタカ)