(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
12月23日(土)からロードショー公開される『勝手にふるえてろ』は、綿矢りさの同名小説を原作に、どこかひねくれがちで自分勝手で夢見がちなヒロイン・ヨシカ(松岡茉優)24歳OLが、中学時代の同級生・イチ(北村匠海)に10年間も片想いし続けるも、会社の同僚・ニ(渡辺大知)に惚れられて大迷惑!?
そんな理想と現実の諍いが、いつしか自分自身の人生の理想と現実の諍いとも直面していくさまを描いた、本年度屈指の、そして末尾を飾る青春恋愛映画の快作です。
第30回東京国際映画祭上映時、キャスト陣とともに (C)2017 TIFF
監督は『恋するマドリ』(07)で新垣結衣、『東京無印女子物語』(12)で谷村美月、『でーれーガールズ』で優希美青&足立梨花といった、時の新進若手女優の資質を大いに引き出し、一方では女性の美醜をモチーフにした『モンスター』(13/高岡早紀主演)で世に衝撃を与えた大九明子。
そして本作はオムニバス映画『放課後ロスト/倍音』(14)、TUBEのミュージックビデオ春夏秋冬4部作を映画として一本にまとめた『渚の恋人たち』(16)に続いてタッグを組んだ主演の松岡茉優の魅力を最大限に引き出すとともに、性別を問わずすべての孤独な人々になにがしかの希望を与えれてくれる逸品にもなっています。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街vol.277》
というわけで、今回は大九監督に作品の魅力をとくと語ってもらうことにしました!
万人向けの作品というよりもヨシカ的な人にちゃんと届けたい
演出中の大九明子監督 (C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── 大九監督の作品は繊細さと大胆さが常に同居した作風が魅力で、ずっと見させていただいておりますが、お恥ずかしいことにデビュー作『意外と死なない』(99)だけ未だに見る機会がなくて、でもマスコミ向けに配布されたプレスシートの監督インタビューを読みますと、今回の『勝手にふるえてろ』のお話をいただいて原作を読んだとき、その『意外と死なない』と通じるところがあったのだとか。
大九明子監督(以下、大九) :『意外と死なない』は私が映画美学校の第1期生時代に撮った自主映画で、DVD化もされていませんので見てくださっている方も少ないとは思いますが、ときどき美学校の文化祭みたいなイベントで上映されることもありますので、もし機会がございましたら(笑)。
── その美学校のイベント上映で、染谷将太主演の『ただいま、ジャクリーン』(13)を見させていただいたこともありますので、今後もチェックを劣らないようにしたいと思います。そして今回の『勝手にふるえてろ』ですが、これまでの大九監督作品のエッセンスが見事なまでに詰めこまれた、現時点における集大成足り得ている感もある快作として、非常に堪能させていただきました。
大九:私の作品をずっとご覧になってくださってる方から、そうおっしゃっていただけるのってすごく嬉しいですね。確かに今回はもう、ぶち込みました(笑)。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── ヒロインのヨシカがイラスト好きなところからして『でーれーガールズ』(15)を彷彿させますが(笑)、それ以上に大九監督が描かれるヒロインは、常にどこか心にトラウマを抱えながら健気に生きていきますね。もっとも、健気に生きられないと『モンスター』(13)になってしまいかねないわけですが。
大九:上手いこと言いますね(笑)。
── 何よりも、ヨシカを『放課後ロスト(第3話・倍音)』(14)や『渚の恋人たち』(16)に主演した松岡茉優さんを持ってきているところも、大九映画の代表的ヒロインとして屹立しているように思えます。
大九:彼女とはこれまで短編ばかりでのおつきあいだったのですが、とにかく集中力がすごくて、それが長編になってもこんなに持続するものかと今回は驚かされましたね。もともと原作から脚本化していく際、私はヨシカに親友とかゲイバーのママとか相談相手がいるような都合のいいお話ではなく、ひとりでくすぶらせている孤独な女の子として置いておきたかったので、そう考えたときに『渚の恋人たち』の松岡さんの佇まいを思い出したんです。
── 映画でもドラマでも松岡さんを見ていて常に唸らされるのは、単に美しいとか可愛いとかの次元を超えて“良い顔”をしているというのが挙げられます。また、だからアップも良く似合うし、そんな彼女の長編主演映画をぜひ見てみたいと常々思っていましたが、今回それがついに理想的な形で叶えられたなと。
大九:そう、彼女の顔は見飽きないんですよ(笑)。本当に良い表情してくれると思います。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── ただ今回は役柄が役柄ですし、撮影に入る前のディスカッションなどもかなり?
大九:はい。たっぷりやらせていただきました。ヨシカってどういう人なんだろう?ってことから、とにかくこの映画は日常をくすぶらせていたりしている人たちにまっすぐ届けようと。
だから万人受けということは無理して狙わず、ヨシカ的な人にちゃんと届けようという話をしました。そうしたら、たとえば前半と後半の温度差をどうするかといった松岡さんからの質問もいろいろ出て来て、それに応えたりしながらお互い現場に臨んでいきました。
前半でのコンビニのシーンは、始まる前からウズウズした顔してたので、あ、こいつ何かやるな?と思っていたら、段取りでいきなりカウンターの上にピョンとアドリブで座ったりして、これかい! と(笑)。やはり打ち合わせで得たことをちゃんと彼女なりに咀嚼して作ってきてくれていると思いました。
── では後半部の彼女は?
大九:後半のほうがちょっと前半部に引きずられて可愛くなりすぎていたり元気すぎたりしちゃっていることがたまにありましたけど、そこは注意すると即理解してくれて、ピタッとこちらの意図に合わせてくれましたね。やはり事前に話をしておいてよかったです。
作劇の大きな転換部となるミュージカル・タッチの劇中歌
撮影現場の大九明子監督と主演・松岡茉優 (C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── そう、この作品、原作を読んでいる方はともかく、中盤以降ガラリと雰囲気が変わってしまうあたりに度肝を抜かされてしまうわけですが、ここではその詳細を明かせないにしても、その転換点となるのがミュージカル・タッチでヨシカが歌う劇中歌です。
大九:あそこは映像をモノクロにするとかアスペクト比を変えてみるとか、いろいろ悩んだのですが、そうするとお客さんが思考する時間ができちゃって、タイムラグができるのが逆にもったいないというか、それよりも見ている人にヨシカという人間をズバンと届けたい。ならば言葉で説明しようと。
ただし単に台詞でバーッということではなく、メロディをつけてみようという発想が後から湧いてきて、結果としてああいうシーンになりました。
── でも、あそこで彼女が突然歌いだすところに、全然違和感はないですね。やはりそこに至るまでの積み重ねが上手くできているからだと思われますし、またあのシーン自体のカッティングや音楽のリズムなどがちゃんとミュージカルの呼吸になっているので、ドラマとしての衝撃と共に映画的な昂揚感すらもたらされているので、見ている側もスッと入っていけます。
大九:ありがとうございます。最初にこのアイデアを出したときは、みなさんの顔色がちょっと変わりましたから(笑)。でも賛成してくれるプロデューサーもいて、そこから歌詞を考え、音楽の髙野正樹さんに5パターンくらい作っていただき、あえてひっかかりがあるように数曲を編み込ませて完成させていただきました。
また台詞のようにしたかったので、3拍子から4拍子に変わったりもしています。松岡さんはボーカルの先生から「こんなの歌じゃない!」と言われたそうですが、それは髙野さんのせいじゃなくて、私がそうお願いしたからだよと(笑)。
── また、そのときのリズムが前半部のヨシカと周囲の人々との交流するくだりのものと同一になっているので、なおさら巧みな対比が成され得ていると思いました。何よりも冒頭でヨシカが登場してしゃべりだした瞬間、これはメンドクサイ系の女の子の話かなと思うのですが、映画としての語り口がリズミカルだと見ている側は不思議と楽しくなってくる。
大九:それは嬉しいです。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── 要はそんなメンドクサイ系の女の子を見ている側が好きになれるかどうか? その点でこの映画は見事にヨシカを好きになれるし、応援したくなっていきます。そしてそれは、中盤の転換点以降のバランスも巧みで、それこそラストまでずっと見る側のシンパシーは持続してくれます。それがこの映画の何よりも見ていて心地いいところですね。
大九:ただ、松岡さん自身は演じていてつらそうではありました。もちろん役に共感してくれてはいるのですが、逆にシンクロしたまま現場にいたので、誰ともしゃべらないんですよ。本当に外界から閉ざして集中して役作りしてるんだろうなあと。
他の俳優さんたちも話しかけるのがためらわれるほどだったみたいです。終わってみて、今はメインの俳優さんたちと一緒にキャンペーンで回ったりして仲良くなっていますが、「あのときはしゃべれなかったねえ」って。
── では、友人役の石橋杏奈さんとも?
大九:石橋さんが演じる来留美も、本当は心のどこかでヨシカが見下しているような微妙な役柄ですから(笑)。その意味でヨシカの理想の友人は、趣里さんが演じた金髪の店員なわけですけど、実際に自分を救ってくれるのは……? というところでヨシカは落涙するわけです。
そういえばインの前に松岡さんから「石橋さんとは一度も一緒に仕事したことないけど、どういう人ですか?」と質問されて、「パブリックイメージとは違って、ボーイッシュで面白い人だよ」と答えたら、「へ~」と、もうそれだけでインした後も何もしゃべらず、そのあたりのプロフェッショナルな感覚は松岡さんならではのものだなあと感服しましたね。今はもうふたりともすごく仲良くしてますけどね(笑)。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── ヨシカと来留美たちの職場の仮眠室の雰囲気も独特でしたね。
大九:あれは原作の中にもあるのですが、会社内でのオンとオフとでもいいますか、デスクで作業しているときと、女だけが固まって靴を脱いでいるときの状態とかの落差で、処女がどうのとか結構狂暴な話をしているのですが、社会人として一生懸命形を作っていかなきゃとがんばって生きている女の子たちの健気な部分が出ているところだなと思えたんです。だから個々は絶対に可愛らしく、狂暴な話をしていても健気に思えるような画を撮ろうと。
── 薄暗闇の中のスマホの点滅とか、ちょっと切ない感じも出ていますね。
大九:そうですね。女の子独自のいたいけといいますか悲哀とでもいいますか、そこも意識しました。
── またそこで寝ている来留美のまつ毛にヨシカが瞠目したり、本当はヨシカってどこかしら来留美に憧れてもいるのかなあとも。
大九:そうなんですよ。本当はそうなのに素直になれなくて、というのがヨシカなんです。本当は憧れているくせに、恋愛も人生も謳歌している来留美のことをちょっと馬鹿にしちゃう。それはやっかみでしかないんですけどね。
–{ニのような面倒臭い男って割と嫌いではないです(笑)}–
ニのような面倒臭い男って割と嫌いではないです(笑)
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── 対する男たちですけど、同性としてはもう感情的に見てしまいましたね。特にヨシカにつきまとうニ(渡辺大知)は「もう少し空気読めよ!」と近くにいたら思わず言ってしまいそうなほどで(笑)。一方でヨシカが憧れ続けているイチ(北村匠海)のクールな佇まいには、奇妙なリアリティが感じられました。
大九:あ、そうですか(笑)。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── いや、実は私も先日同窓会があったとき、似たようなことがありまして……というのはともかく(笑)、でもイチもニも「こういう奴いるよな」とか、特に二に関しては、「ああいったこじらせ男子って、意外にヨシカみたいな女子と相性が合うのかな?」とか、映画を見終わった後もしばらくの間、いろいろ考え込んでしまいましたね。
大九:私自身は小説を読みながら、ニがどんどん可愛くなってきて惚れちゃったとでもいいますか(笑)、ああいう面倒臭い男って割と嫌いじゃないんですよ(笑)。だから、そんな二に私自身が言われたいことやされたいことなどを、映画では好き放題に描くことにしました。ラストシーンなんて完全にそうですね。
シナリオの段階でもヨシカはたとえ宅配の人でも部屋の玄関の中に入れない。いわば玄関は彼女にとっての結界なわけですけど、それをいかにしてニが破るのか? みたいなことも含めて、いかに二をかっこよく描くか?
── だからラストで彼が急にかっこよくなるわけですね。確かに、あそこで彼の顔がガラッと変わるんですよ!
大九 また、シナリオでそう書かれているにも関わらず、その撮影中に白石裕菜プロデューサーが飛んできて「これではヨシカがニに食われてしまう。ここはラストなんだから!」と言われて、「うるさいな、もう!」と思いつつ(笑)、「はいはい、わかってます。でもニはかっこよく撮りますし、それに負けるヨシカじゃないから」と。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── 実は映画を見ながら、ラストの前の段階で映画が終わってもいいのではないかと思えたのです。つまり、もう既に観客はみんなヨシカのことを好きになっていて応援しているのだから、それでいいのではないかと。でも、その後があるのであれば、観客のそういった想いを越えるものをニに持たせなければならない。映画はそこが非常に上手くいっていると思いました。つまりは、男の目から見て嫉妬の悔しさも味わいつつ、ラストのニはかっこよかった!
大九:ああ、なるほど(笑)!
── 撮り方も全体的にユニークですよね。たとえばマンションに集っての同窓会のくだりでは、ヨシカのハイヒールから始まり、スリッパが画面からフェードアウトして終わる。さりげなくも面白い繋ぎだと思いました。
大九:そうなんです。張り切ってた足元が、最後はつらい現実から逃げてしまうという感じでやってみたのですが、気づいていただけて嬉しいです。
── ヘンな感想ではありますけど、この映画のヨシカを見ながら、まるで自分自身を見ているような錯覚に陥りました。孤独であること、人とうまくコミュニケーションをとりたいのに上手くいかずに悶々としたり、それゆえに孤独に陥ることって、男女の別に関係ないと思えるのです。その意味でも、先ほど監督がおっしゃった「万人に向けてというよりも、ヨシカ的な人にちゃんと届けよう」という意図は見事に達成されていると思いますし、何よりも実は万人の中にヨシカ的な要素はあるのではないでしょうか。
大九:実は男の人には絶対受け入れられないだろうなと思いながら作っていたのですが、完成した後でいろいろな男性の方々から「ヨシカは俺だ」みたいな感想をいただくもので、驚きと同時にすごく嬉しいです。ありがとうございます。
性別を超越したところでの“人間”の魅力を描く大九監督作品
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── もともと大九監督作品は女の子にこだわって作られているような印象ですけど、たとえば『ただいま、ジャクリーン』の染谷君なんてかなり女の子っぽいというか、どこかしら性を超越した感もあります。
大九:言われてみれば(笑)。確かに私は、人生上手く渡り歩き切れてない感をくすぶらせていたり、鬱々しているような人が好きなんです。だから実は女の子に限らず、そんな人間を描いていけたらなと、いつも思っていますね。
── そういった性別がとっぱらわれて“人間”そのものの悶々とした部分を魅力として描く大九映画という大きな一面が、今回は特に大きく開花されている気もしています。話を最初のほうに戻しますと、『東京無印物語』(09)『ただいま、ジャクリーン』の趣里さんや、『でーれーガールズ』の前野智哉さんなど、これまでの大九監督作品に出ていた役者さんが美味しい感じで登場してくるのも、大九映画をずっと見てきたファンとしては楽しいものがありました。
大九:趣里さんは趣里さんありきで、あの店員役をアテ書きしました。彼女はもう本当にこの世のものとは思えないというか、まるで天女みたいに可愛く美しく、そして研ぎ澄まされた彼女の肉体がフィギュアみたいで素敵だと思って、じゃあ今回は金髪かぶして人形にしちゃえ! と(笑)。
── 思えば彼女から映画は始まるわけですが、実はそこである種の映画の象徴というか、方向性を示唆する存在にもなり得ているわけですね。
大九:駅員役の前野君も大好きな俳優さんです。『でーれーガールズ』で初めてご一緒しましたが、いいですよねえ。彼の顔が大好きなんです。もう見ていて飽きない(笑)!
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── そういった、どこか浮世離れした雰囲気のキャラが多数登場することによって、この映画はリアリズムの映画ではないなと思いながら見続けていくうちに、いつのまにか哀しいまでのリアルに満ちたものへと化していくという面白さが、この映画の最大の魅力ですね。しかも決して見る側を突き放すようなことはしない。
大九:そうですね。そういう意味で言いますと、今回は映像作家みたいなこととしてやりたいことは全部引っ込めようと心がけながら作ったんですよ。
たとえば、もともと私は1シーン1カット撮影とか好きで、チャンスがあればやってみようと思いつつ、シナリオを書いて実際ロケハンしたり松岡さんと話したりしていくうちに、これはそんなことをやる映画ではないなと。
ヨシカという人間をきちんと伝達する映画にしなくちゃいけないし、そこに変な作家性やらキャメラワークやらといった監督の匂いがしてはいけないと思ったんです。
だから歌のシーンも先ほど言いましたように、変なギミックで見る人の思考を停止させるのではなく、言葉でちゃんと誰からもわかるようにしたい。むしろ泥臭くやろうと思いました。
(C)2017映画「勝手にふるえてろ」製作委員会
── でもそういう風に心がけながら完成した作品が、見事なまでに大九監督作品になっていると、少なくともこれまでのファンが思えてしまうのも、また不思議ですね。
大九:ホント、そうですね(笑)。
── 音響も実験的な気配りがあります。ラストも卓球のピンポン・ラリーの音を効果的に挿入していますね。
大九:ピンポンのシーンを撮っているとき、あのラリーの音がすごくまろやかで素敵だったので、録音技師の小宮元さんに「この音、仕上げでなにかしらに使うから」とオンリーでいろいろなパターンを現場で録っておいてもらったんです。
卓球のシーンでニにバシンと心を射抜かれてハッとなったヨシカは、そこで一瞬でも彼のことをかっこよく見えただろうし、また今どきベタなレインボーブリッジを見て「綺麗」と素直に言えてしまう二を「今どき素直な奴っているんだな」とちょっと見直してみたり、そういった事象を思い出しながらラストの想いが高まっていければなあと。
つまりドッキンドッキンの代わりがカッコンカッコンなんです。
── 私はあの音を聞きながら、あの二人はこれから卓球でラリーを続けていくような関係が築かれていくのかなと思ってしまいました。
大九:あ、これからそう答えるようにします(笑)。
…………………………………………………………
この取材の直後、『勝手にふるえてろ』は第30回東京国際映画祭コンペティション部門で観客賞を受賞しました。
第30回東京国際映画祭授賞式にて(観客賞を受賞) (C)2017 TIFF
それは今までも、そして今回も、技巧的なことをひけらかすことなく、それでいて個性は見る人が見ればわかるようにできている。そんな万人に開かれた大九監督作品だから成し得た受賞ともいえるでしょう。
続いては12月23日(土)から始まる本興行で、多くのヨシカたちにこの快作に触れていただきたいと、切に願っています。
プロフィール:大九明子(オオク・アキコ)
第30回東京国際映画祭にて (C)2017 TIFF.jpg
1968年神奈川県出身。プロダクション人力舎スクールJCA第1期生となり、数々のバラエティやライヴに出演した後、制作サイドに転身。1997年、映画美学校の第1期生となり、『意外と死なない』(99)で監督デビューを果たす。その後、『恋するマドリ』(07)『東京無印物語』(12)『ただいま、ジャクリーン』(13)『モンスター』(13)『放課後ロスト/倍音』(14)『でーれーガールズ』(15)『渚の恋人たち』と作品を発表し続けている。
(取材・文:増當竜也)