もう2017年も終盤。映画ファンが年間ベスト10の選定に悩みに悩む時期ですが、今年はマンガの実写映画化作品も豊作であったことをご存知でしょうか? ここでは、筆者が独断と偏見で選んだ「本当に面白かった!」と思った2017年のマンガの実写映画化作品ベスト10を紹介します!
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10位 『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』
(C)2017 映画「ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章」製作委員会(C)LUCKY LAND COMMUNICATIONS/集英社
公開前には配役やパッと見のイメージにネガティブな意見もみられましたが、いざ公開されてみると好評が相次いだ作品です。原作からの物語の再構成が抜群に上手く、新田真剣佑演じる虹村億泰(不良高校生)のハマりっぷり、スタンド(超能力)のCGのクオリティの高さは絶賛するしかありません。
“次回作におあずけ”されてしまった伏線が多いこともあり、個人的には続編を熱望しているのですが……今のところ発表はされていません。(ヤンデレになった小松菜奈をもっと観たい!) Blu-ray&DVDは2018年3月23日に発売予定ですので、原作ファンはもちろん、役者のファンも、騙されたと思って観てみてください。
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・原作ファンはあり?なし?実写版『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない』
9位 『銀魂』
(C)空知英秋/集英社(C)2017「銀魂」製作委員会
何が面白いって、「実写にすると◯◯だな!」「この写真どこかで見たことあるぞ!」といった、実写映画化そのものや役者本人をイジったギャグの数々。終盤にあった訴訟を恐れない限界ギリギリのパロディにもゲラゲラ笑えて幸せでした。
超豪華キャストが全力でバカをやっていることや、公開前に「実写化してどうもすみませんでした!」と福田雄一監督が謝ったり、小栗旬や菅田将暉による謝罪動画もアップされるという誠実(?)な宣伝も手伝ってか、2017年の実写邦画の中でNO.1の特大ヒットを記録。興行面でも評価面でも大成功作になりました。
難点を挙げるのであれば、ギャグが面白すぎるせいもあり、シリアスパートが間延びしてしまった印象があることでしょうか。しかし、シリアスパートにおいて“笑顔を見せない”悪役で堂本剛が抜群の存在感をみせているのでファンは必見でしょう。Blu-ray&DVDは現在発売中、公開が決定した続編にも大期待です!
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8位 『斉木楠雄のΨ難』
(C)麻生周一/集英社・2017映画「斉木楠雄のΨ難」製作委員会
前述した『銀魂』と同じく福田雄一監督×原作は少年ジャンプ連載中のギャグマンガという組み合わせで、『銀魂』の発表の後に情報公開されため、福田監督が「集英社っ! 明らかに発表のタイミング間違ったよね!?」とぶっちゃけたことも話題になりました。
この映画を語るには、絶対に橋本環奈の(『銀魂』よりもさらに限界突破した)“顔芸”を語らねばいけません。「顔芸だけで笑わせるなんてどうなんだ」と思っているそこのあなた、日本最高峰の美少女に良い意味で「ウゼェw」とツッコミながらゲラゲラ笑えるので、細かいことはどうでもよくなりますよ(※褒めています)! 山﨑健人の無表情のツッコミ役、38歳にして高校生役を演じた新井浩文もハマりすぎて最高です。
徹底的にくだらない(※褒めています)中身のない内容(※褒めています)であるため映画ファンからは賛否両論でしたが、ここまでギャグに振り切った内容であるならスガスガしいというもの。良い意味で「豪華キャストによる、笑えればそれでOKなコント集」として観ることをおすすめします。
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7位 『亜人』
(C)2017映画「亜人」製作委員会 (C)桜井画門/講談社
とにかく「アクションがノンストップで展開」「綾野剛が全力で笑わせにかかる」という2大特徴で大満足した作品です。原作映画から大胆な省略をすることで、109分というタイトな時間でまとめあげ、エンタメに特化した内容になったことも賞賛すべきでしょう
「本広克行監督がよくやる興ざめも良いところのカメオ出演や不自然な演出がある」「描写を省略しすぎてツッコミどころが多い」という難点もありますが、アクションに全振りしている内容なのでそれほど気になりません。役者のファンには大プッシュでおすすめします。
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6位 『無限の住人』
(C)沙村広明/講談社 (C)2017映画「無限の住人」製作委員会
原作の特徴を端的に述べるなら、時代劇、復讐譚、チャンバラ活劇、残酷描写も多め、ということ。これが『十三人の刺客』や『一命』などのエグめの時代劇を撮ってきた三池崇史監督の悪趣味さ(※褒めています)と相性が良すぎでした。大きな売りになっている1人VS300人(全員敵)のクライマックスも圧巻!
木村拓哉のやさぐれた演技は不死身の主人公にベストマッチ。福士蒼汰、戸田恵梨香、満島真之介、市川海老蔵、市原隼人という豪華キャストが、次々と刺客として立ちはだかって来るのもたまりません。演出や話運びに少し冗長なところもありますが、こちらも原作ファン、役者のファン、三池監督のファンには観なくてはならない1本と言えるでしょう。Blu-ray&DVDは現在発売中です。
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5位 『東京喰種トーキョーグール』
(C)2017「東京喰種」製作委員会
“原作からの再構成”と“美術と演出”がマンガの実写映画化作品の中でもトップクラスと言えるのが、この『東京喰種トーキョーグール』。大迫力のバトルシーン、原作のエピソードを無理なくまとめあげていること、残酷描写からも逃げていないなど、あらゆる方面から誠実さを感じられる力作に仕上がっていました。
特に感動したのは、蒼井優の“まさか”の役と、その後の“ハンバーグが食べられなくなる”シーンでしょうか。原作よりもさらに切羽詰まった“逃れない”哀しみに満ちており、窪田正孝の熱演も相まって夢中で観ることができました。Blu-ray&DVDは12月20日発売予定です。
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4位 『3月のライオン 前編/後編』
(C)2017 映画「3月のライオン」製作委員会
原作は様々な人間模様を並行して描く“群像劇”であったため、実写映画化は難しいな……と観る前は思っていたのですが、その不安が申し訳なくなるほどの完成度の高さを誇っていました。映画の後に原作を読んでみると、前後編それぞれで物語をまとめるために、工夫に工夫が凝らされていることがわかるでしょう。
主演の神木隆之介が素晴らしいのはもちろん、『SR サイタマノラッパー』シリーズの時と同じ人とは思えない凄味を見せつける奥野瑛太、負けるとDVを働いてしまう棋士を演じた甲本雅裕、サイコパスのクズオヤジを演じた伊勢谷友介など、脇を固める役者の存在感も並々ならぬものがありました。
監督は『るろうに剣心』シリーズや『ミュージアム』などのマンガの実写映画化作品で高い評価を得てきた大友啓史。原作のコメディシーンがかなり少なくなっていることには賛否両論がありましたが、個人的には監督の個性に合わせた結果であると納得できました。Blu-ray&DVDは前編、後編ともに発売中です。
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3位 『PとJK』
(C)2017 「PとJK」製作委員会
正直に言って、観る前は「女子高生と警察官が付き合うとかありえないな」と半笑いで観ていた(原作ファンの方ごめんなさい)のですが……驚きました。胸キュンどころか良い意味で胸が苦しいシーンが満載で、「1人で抱え込まないで」という尊いメッセージを多角的に伝える脚本が素晴らしく、確実に“映画でしかできない魅力”のある作品に仕上げていたのですから!
亀梨和也演じる警察官の“驚愕の告白”を開始15分に持ってきたのも英断でしょう(本当に驚きました)。劣悪な環境下で生きている高杉真宙の演技も卓越しており、原作のエピソードの取捨選択や、北海道函館のロケーションの見事の一言。テーマも教育上とても良いものになっているので、メインターゲットの中高校生女子だけでなく、大人(親御さん)にも観て欲しいです。
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2位 『帝一の國』
(C)2017 フジテレビジョン 集英社 東宝 (C)古屋兎丸/集英社
魅力を端的にお伝えするのであれば、「政治や選挙をとことんエンターテインメントに仕上げた手腕に脱帽!」、「原作マンガからの再構成と細かい改変もすごい!」、「豪華キャストによるキャラ萌えが半端ない」ということ! 逆転に次ぐ逆転の展開の面白さと、良い意味で極端なキャラクターの魅力に満ち満ちているので、観る人を選ばない、大人から子どもまでアツくなれることは間違いありません。
菅田将暉のリアクション芸も極限に達しており、ゲラゲラ笑って、それ以上に「バカだなお前……お前は本当にバカだよ……」と泣かされました。公式発表によると、観客の約9割が女性で、中でも20代以下の女性が8割近くを占めていたこともあったそうですが、この面白さは男性にも知ってほしい!
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1位 『ReLIFE リライフ』
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
『帝一の國』とどちらを1位にしようかどうか本気で迷いましたが、こちらを選びました。開始数分の27歳で無職の青年の“痛くて辛い現実”と、その対比となる高校生の生活が、“かけがえのないもの”、“美しいもの”として描かれているので、アラサーの筆者は胸を締め付けられました。
何より素晴らしいのは主演の中川大志。現在19歳(撮影時は18歳)にも関わらず、高校生役はもちろん、やさぐれた27歳も違和感なく演じきっているのですから! 2018年も中川大志は『坂道のアポロン』と『虹色デイズ』と、マンガの実写映画化作品への出演が続きますが、「この人なら大丈夫!」という安心感が尋常ではありません。
原作を読んだ人と読んでいない人でそれぞれ違った感動がある物語の再構成、クライマックスの“まさか”の展開と、ラストシーンの“キレ”には鳥肌が総立ちでした。原作へのリスペクトに溢れながら、“実写映画でしかできない”魅力(※これについては後述します)にも満ちている、大人にこそ観て欲しい傑作であると断言します。
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以上のベスト10に挙げた作品以外では、『ピーチガール』や『一週間フレンズ。』や『恋と嘘』なども、原作のエッセンスを存分に拾いつつ、2時間の映画に上手くまとめられていた優秀な作品でした。
マンガではなく小説が原作ですが、アニメ版の印象も強い『ハルチカ』と『氷菓』も原作をリスペクトし、実写映画ならではの工夫も存分に凝らされた素晴らしい作品に仕上がっていました。
とにかく、(マンガの実写映画化作品はもちろん)中高生向けのキラキラした恋愛映画を侮るなかれ! 大人の映画ファンも唸る、優れた作品が続々と生まれているのですから!
まとめその1:“実写映画でしかできない”こともあるんだ!
実写映画化と聞くと、「配役がイメージと違う」「実写映画化しないで欲しい」などと、批判の対象になってしまうこともままあります。キャラがデフォルメされて描かれるマンガと、生身の人間が演じる実写映画ではどうしてもギャップがあること、“そもそも”の部分で実写映画化には否定的な声があるのは致し方のないことです。
しかし、筆者は“実写映画でしかできない”ことも存分にあるため、実写映画化はとても意義のあることだと考えます。その理由の1つは、“役者の今しかない魅力を映し出せる”ということです。
マンガではなく劇場用アニメが原作ですが、実写映画版『心が叫びたがってるんだ。』は、芳根京子、中島健人、石井杏奈、寛一郎(佐藤浩市の息子さん)という優れた役者の“若いからこそ”の危うさや青春のみずみずしさを見事に切り取っていましたし、“生身の人間が演じてこそ”のミュージカルシーンの感動がありました。これらは、マンガやアニメ作品では絶対にできないことです。
劇場用アニメとしてリメイクされた『打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?』は、皮肉にも1995年に公開されたオリジナル版の“実写映画だからこその魅力”を再確認できる作品でした。登場人物が生身の少年少女だからこそ、“もう戻ってこない青春の輝き”を感じられるというのも、実写映画でしかできないことでしょう。
上記にあげた作品の中では、『ReLIFE リライフ』と『ハルチカ』が、まさに“役者の今しかない魅力を映し出した”映画でした。その魅力は、実写映画化作品に否定的な人にこそ、知ってほしいです。
まとめその2:実写映画化には“ギャグ”が適している?
マンガは(作品にもよりますが)キャラが極端な髪型をしていたり、衣装が奇抜なこともあるため、“実写映画化するとコスプレ感が否めない”という、どうしようもない問題があります。それは舞台などではOKでも、“信じられる世界を構築する必要がある”実写映画においては、無視できないことです。
ところが、『銀魂』や『斉木楠雄のΨ難』は、その“コスプレっぽい違和感”までもをギャグとして昇華。全編において「コスプレっぽいし学芸会のようにも見えますが、それが何か?」という精神に溢れており、観ていく内に「これはこれで」と違和感などどうでも良くなってきます(笑)。それは、福田雄一監督の良い意味での“ユルい”センスのおかげもあるのでしょう。これからも“ギャグマンガの実写映画化”は、成功例として続いていくのかもしれませんね。
(文:ヒナタカ)