仮面ライダーシリーズの新星・上堀内監督にインタビュー!ファン心を掴む演出の裏側にあるものとは

INTERVIEW

12月9日(土)に公開される『仮面ライダー平成ジェネレーションズFINAL ビルド&エグゼイドwithレジェンドライダー』。本作は、現在放送中の『仮面ライダービルド』とその前作の『仮面ライダーエグゼイド』の登場人物を中心に、レジェンドライダーとして、歴代の仮面ライダーたちが共闘する豪華な劇場版作品。

「ビルド&エグゼイド」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

そのメガホンをとったのは、これまでに仮面ライダーシリーズのスピンオフ作品やTVシリーズを手掛けられ、ついに劇場作品デビューを果たす上堀内佳寿也監督。

そこで、シネマズby松竹で特撮コラムを執筆するオジンオズボーン・篠宮暁が監督に直撃! ファン目線でじっくりとお話を伺いました。

オジンオズボーン・篠宮暁(以下、篠宮):早速ですが、どういう経緯で本作の監督に決まったんですか?

上堀内佳寿也監督(以下、上堀内):確か、「エグゼイド」の39話、40話の編集作業をした帰り道に、大森敬仁プロデューサーと映画の話をしていたんです。そしたら、「じゃあ、そういうことで。お願いします」と、さらっと。撮影所に僕の「えぇー!!」って声が響いてました(笑)。

篠宮:だいぶ早い出世ですよね?

上堀内:ほかの監督さんや周りの方々と話して「驚きました」っていうと、みんなから「こっちが驚いたよ!」って言われます。

篠宮:どういうところが評価されて、本作に抜擢されたと思いますか?

上堀内:若さ、でしょうか(笑)。ほかの監督と違うところって、若さからくる勢いくらいなんじゃないかな、と思います。

篠宮:そのあたりもふまえて、上堀内監督自身のことからお伺いしたいと思います。まず、この世界に入ったきっかけというのは?

上堀内:もともとは中学生くらいのときから、バラエティ番組のディレクターになりたいと思ってていたんです。それで、出身地である鹿児島のテレビ局に入って、情報番組やスポーツ中継などいろいろとやりましたね。

でも、映画も好きだったので、そっちの演出の道に興味を持ちました。それが、20、21歳くらいのときで、契約更新の時期だったこともあり、思い切って挑戦することにしたんです。

篠宮:そこから、どうやって東映へ?

上堀内:地方局時代に、地元の学生映画祭を1年間追いかけていたことがあって。そのとき、審査員の方々にプロデューサーの方もいらっしゃったので、映画の実行委員の人たちを交えて、そういう業界に興味があるという話をしていて。

東京にいる友人の家に居候して、なかなかうまくいかないなと思っていたときに、映画祭でお話したかたのつながりから紹介していただいたんです。『劇場版 さらば仮面ライダー電王 ファイナル・カウントダウン』に見習いで参加して、そこからずっとかな。

篠宮:ちなみに、子供のころは特撮を観ていなかったとか。「さらば電王」で特撮に触れて、それまでは興味がなかったけれど、やってみたら面白かったということですよね。

上堀内:そうですね。少なからず、特撮番組って子供向けの作品だと思いますし、コテコテのヒーローなのかなって思っていたんです。なので、最初は正直、自分がやりたいものと食い違うかもしれないという思いもありました。

でも、実際に現場に入ったら、スタッフもキャストもみなさんやはりプロですし、特にスーツアクターさんが印象的でした。アクションもそうですし、スーツを着た状態でのお芝居も、素直にかっこいいと思ったんです。

しかも、ドラマがちゃんとあって、合成があって、爆発とか特殊効果もあって、いろんな要素が集約されている作品なんだな、と。逆にこんなに面白いものはないんじゃないかって思いました。

篠宮:特にスーツアクターさんに魅せられて、ぐっと入りこんだんですね。

上堀内:はい。そこで、スーツアクターさんたちが僕にくれた「感情」がなかったら、ここまで続いていないかもしれません。

篠宮:今では上堀内監督のひと言で、みなさんが動くわけじゃないですか。それはどういう気持ちですか? 駆け出しのころに見て「かっこいいな」と憧れた人たちに演出をつけるというのは。

上堀内:どちらかというと、もともと憧れをもって入ってきたわけではないので、そこに対してテンションが上がるようなことはないですね。それこそ、監督やカメラマンさんも巨匠揃い、この世界でレジェンドと言われる方と一緒にやっているんですけど…まぁ、怖いもの知らずでした。

篠宮:もともと知っていればこそ、恐れ多い感覚もあるけれど、そうではなかった。

上堀内:普通に考えたら、そうなるんだろうなとは思います。でも、僕にとってはいろんなことを教えてくださる方たちでありつつ、一緒に作品を作っていく仲間という感覚のほうが強くて。だから、昔から今でも、高岩さんたちに対するアプローチは変わってないんですよね。

–{TVシリーズでのインパクトある演出の裏側を語る}–

篠宮:その後、現場を踏まれて、『仮面ライダーゴースト』の『アラン英雄伝』、『仮面ライダースペクター』を経て、ついにTV本編の『エグゼイド』と。31、32話最高でした。

エグゼイドとゲンムの共闘もよかったですし、なんといっても、39、40話のパラドの水中のシーン! めちゃめちゃ苦労したんじゃないかと。静と動がちゃんと出てる感じで、かっこよかったですね。

上堀内:あれも、大変でしたよ(笑)。

篠宮:ああいう撮影は監督が考えるんですか?

上堀内:話の大きな流れは先にあるんですけど、水中で撮影をしたいと提案したのは僕です。特撮のようなお子さんたちが見ている番組って、死という表現を直接的にできないという制約があるんですね。ただ、パラドが成長する話だったので大事にしたかった。

どういう表現ならいいか考えて、水中撮影をお願いしたら、みなさんが色々とやりくりしてくださって、撮ることができました。

篠宮:そうなんですね! クロノス登場回も担当されてますが、あの神々しい演出も最高でした。

上堀内: クロノスは登場シーンで音をなくす演出をしたんですが、あまりに無音の尺が長いと放送事故と判断されてしまうことがあるんです。ただ、あの時には大森プロデューサーが後押しで「大丈夫ですよ」っていってくれて、ギリギリ実現したんです。

そういうバックアップがあるから、新しいこともやれる。ひとりではできないですね。

篠宮:おお〜、サポートしてくれたわけですね。大森プロデューサーも、仮面ライダードライブをバイクではなく車に乗せたり、エグゼイドのキャラクタービジュアルでの挑戦もありますよね。

お話を聞いて、チャレンジングな点で相性がいいのかなと思ったんですが。大森さんも特撮作品のファンだからというわけではないですし、そういうところも似てるのかなと。

上堀内:そういわれると、近い部分はあるかもしれないです。大森さんは、ふわっとしていそうなのに、すごく芯があって、面白いかただと思います。こういうのが好き、嫌い、っていうのがはっきりしていて、それをちゃんと言ってくれるのでやりやすいです。

篠宮:ちなみに、上堀内監督が演出されるときにこだわっているポイントはどこですか?

上堀内:どんな細かいところにも感情がちゃんとあるんだよ、というところですね。いちばん感じてほしいのは、アクションとお芝居って別モノじゃないということ。感情が動いたから戦うわけで、そこにアクションが付いてくる。

スーツアクターさんも素面の役者さんの芝居でも、行動と感情は共存しているので、その感情がちゃんと伝わるように出そう、というのは常に心がけています。

篠宮:それがあるから、観てる側にぐっとくるものがあるんですかね。

上堀内:それが伝わっているなら、いちばんうれしいですね。

篠宮:監督として自分の強みだな、と思うところはありますか?

上堀内:物怖じしないというか、恐れない、ということかなと思います。仮面ライダーシリーズとして築き上げられてきたものがあるなかで、何か新しいものを取り入れようとすると、やはり簡単にはいかないんです。

でも、普通じゃつまらないと思っているので、自分には何ができるかを常に考えてはいます。それが、強みというか、僕らしさといえるのかなと思います。

篠宮:上堀内監督の回は心にぐっとくる、ファンに衝撃を与えるシーンが多いので、TVシリーズでの活躍も楽しみです。「ビルド」では3、4話を担当されていましたが、それは期待値がすごく高いということじゃないですか。この2話はどうでした?

上堀内:3、4話は難しい、というお話も聞いていました。でも、実際にやらないとそれを痛感できないなと思ってやってみたら、やっぱり大変でした(笑)。

2話分、つまり正味1時間くらいしか放送されていない段階で、引き継ぎをしつつ、話の本筋を提示して、加速させて展開させていく、という両立をテレビの尺でやらなければいけない。全てのバランスが難しいんだなって思いました。

篠宮:いや〜、見事加速しましたね! 上堀内監督がどうしてファン心理をくすぐる演出ができるのか気になっていたんですが、そこはファンに寄せてはいないんですか?

上堀内:寄せていると言うか、どちらかというと僕が観たいものを撮っています。たとえば「平成ジェネレーションズ FINAL」のバイク戦も、「こういうの観たいな」というところから発展させたアイディアなんです。

自分がイチ視聴者として観たときに、どういうものをどういうテンポで観たいかな、というところは考えますね。

篠宮:なるほど。「平成ジェネレーションズ」は映画ならではの豪華さがあると思うのですが、映画とTVシリーズで違いを感じることはありますか?

上堀内:監督の仕事としては、そこまで大きな違いはないと思います。心構えとしては、TVシリーズは担当回の前後を含めて、1年間をつなげていく必要がありますが、映画はいろんな世界観があるなかで、ひとつの作品としてまとめ上げていく。それぞれの面白さがあると思います。

「ビルド&エグゼイド」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

篠宮:レジェンドライダーたちを見て、「あのときを思い出すなぁ」みたいなことってあるんですか?

上堀内:懐かしいという感情はもちろんあります。それと、僕がいうのもおこがましいですけど、それぞれが人間として、役者として、しっかり成長していることを感じました。

衣装合わせなんかで会ったときは「お、久しぶり!」って、軽い感じでしたけど、いざ撮影に入ると、その瞬間、瞬間で当時のことを思い出しました。1シーンの短い時間に存在感を残して、花を咲かせてくれる人たちに成長していることに、熱い気持ちになりましたね。

篠宮:先日テレビ番組の収録で、アンガールズ・田中卓志さんとご一緒したときに、「フォーゼ」で助監督だった上堀内さんが今回の映画で監督を務めて、感慨深かったというお話もされてました。

上堀内:セカンド助監督は現場を回していくポジションで、他の助監督よりキャストさんたちと関わる機会が多いんです。なので、余計にそう感じていただいたのかもしれないです。そんな方々と監督として再会できて、こちらも感慨深いものがありました。

篠宮:では、最後に本作の見どころを教えてください。

「ビルド&エグゼイド」製作委員会 ©石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

上堀内:劇場版の初監督作品ということで、いろんな想いを込めました。レジェンドなど豪華なキャストがそろっていて、さらにそのなかでビルドとエグゼイドがしっかりと芯になって話を引っ張っていってくれているので、楽しみに観ていただきたいです。

それと、これだけの仮面ライダーがそろうと、それぞれの正義というのが散りばめられているので、そこに注目して観ていただきたいですね。みんな、本当にいろんな想いで戦ってきたんだなって、感慨深い気持ちになれると思います。

篠宮:それぞれに違う正義があるというのは、平成ライダーのテーマのようなところでもありますもんね。

上堀内:その正義がひとつになったときに、みんなが集結するという壮大さもありますね。

篠宮:あの…口約束で結構なので、「いつか作品に出すよ」という宣言をしていただいてもいいですか? 掲載するときには、文字の色を薄くしておくので…。

上堀内:(笑)。出ていただける機会があったら、ぜひ出てください!

篠宮:いただきました! ありがとうございます!! ぜひ、よろしくお願いいたします!!

インタビューを終えて

今、最もファンから期待されてる上堀内監督にインタビューさせていただきましたが、いい意味でファンサービスしないことで、ファンの心に思いっきり刺さる映像を創りあげてるという点が印象的でした。

それが上堀内監督のライダー作品に対する愛情だということは作品を見ればわかりますので、映画公開を機に今一度、上堀内監督の担当回を見返していただければなと思います。

(撮影:井嶋輝文、インタビュー:オジンオズボーン・篠宮暁、文:大谷和美)