ライダーベルトってどうやって出来上がる?特撮ファンが気になる疑問を、篠宮暁がバンダイに直撃!

INTERVIEW

9月に放送が始まった『仮面ライダービルド』が盛り上がりを見せるなか、世のお父さんたちはクリスマスプレゼントにも悩む時期…ということで、特撮大好き芸人のオジンオズボーン・篠宮暁が株式会社バンダイを直撃!

ボーイズトイ事業部のライダーチームで玩具の企画を行っている井上さんとフナセンさんに、「DXビルドドライバー」の裏話を中心に、最新玩具や過去作品のベルトについても興味深いお話をたくさん伺いました。

さらに、フナセンさんが担当されている大人向けのライン・CSM(COMPLETE SELECTION MODIFICATION)については、後半でしっかりとご紹介します。

写真は企画担当の井上さん

篠宮:まずお二人について伺いますが、ライダーチームとして担当になってどのくらいになるんですか?

井上:僕らちょうど、ライダーチームとしては同期で『仮面ライダードライブ』の終盤(2015年4月)くらいに配属になりました。(2015年4月)

フナセン:そう、3年目ですね。

篠宮:じゃあ、『仮面ライダーゴースト』は頭からガッツリ関わって。

フナセン:そうですね。スタートしはじめくらいかな。

井上:エグゼイドは、まるまる企画のスタート段階から入っていた感じですね。企画担当としては、ビルドが2作品目です。まだまだ歴史が浅いなって(笑)。

でも、僕は以前アパレル事業部に、フナセンはベンダー事業部にいたときにも特撮に関わっていますし、事業部をまたいで同じ作品を担当できることがこの会社の強みでもあると思いますね。

篠宮:井上さんが主に子供向けの玩具、フナセンさんはCSM(大人向けのベルトシリーズ)をご担当されているとのことで、まずは子供向けの玩具についてお話を聞いていきたいと思います。ちょうど、この時期、クリスマスを意識した商品が発売されると思うのですが、2017年はどんな感じなんでしょうか?

井上:今年は、「DX ラビットタンクスパークリング」を12月9日(土)に発売します。仮面ライダービルドが使うアイテムで、缶を振り、プルタブを開けて変身ベルトにセットすると、ビルドがパワーアップするというアイテムです。ヒーローへの変身だけてなく、お風呂上がりに炭酸缶を開けるお父さんの姿への憧れなども体験してもらえたら、と。

これで、ビルドの新フォームに変身するわけですが、ビルドのパワーアップに先駆けて、11月19日(日)の放送で、万丈龍我がビルドドライバーを使って仮面ライダークローズに変身しました。

「DXビルドドライバー」は、元々仮面ライダービルドが各フォームに変身できるアイテムでしたが、11月に仮面ライダークローズの登場で、二人が変身するものになり、より魅力的になりました。そして、12月には、ビルドのパワーアップアイテムが発売されて、さらに遊びの奥行きが出て魅力的な商品になった、という感じです。

お話も盛り上がり、キャラクターにも愛着が湧いたりしてくるタイミングで、玩具展開もさらに盛り上がっていきます。

–{ライダーベルト開発の裏側}–

「DXビルドドライバー」ができるまで

篠宮:そもそも「DXビルドドライバー」はどういうところから、レバーを回すという発想に至ったんですか?

井上:子供たちが本能的にやりたくなるギミックをベルトづくりにおいてもメインギミックにしよう、ということを決めています。例えば、ボタンを押すとか、レバーを引くとか、ですね。そこで今回は、ぐるぐる回せるレバーがあると回したくなるよね、というアイディアが出てそちらに決まりました。

篠宮:へぇ〜。製作するにあたって、前年度のベルトは意識するんですか?

井上:どちらともいえます。ベースとしては一旦全部忘れましょう、と。ただ、玩具を作るうえで共通するところ、たとえば子供に伝わりづらいだとか、遊びづらいとか、大枠の反省点においては蓄積していき、次年度の玩具開発に活かします。

篠宮:「DXビルドドライバー」の開発で苦労された点は?

井上:全部ですね(笑)。レバーの回し心地とかも、作ってる段階でいろいろと調整しました。例えば、最初はレバーを回した際、連動して動く歯車型のギアの回転は一方通行だったけれど、売り場で子供たちはベルトを自分に着けず、正面に持ってレバーを逆に回すだろうから、逆回転もできるようにしなきゃいけないよね、とか。

あと、どうやって回したときに、光がきれいに出るかとか、回したときのシャカシャカという物理音が、玩具から出る変身音の邪魔をしないように、いかに静かにできるか、とか。

篠宮:今回のキーアイテムは「フルボトル」ですが、今回の売りは?

井上:キーアイテムというのは、コレクション性と変身の分かりやすさがポイントになっています。今までの仮面ライダーは「ゲーム」とか「偉人のおばけ」とか、仮面ライダー自体のモチーフからの要素を玩具に反映させることが多かったんですが、今回はそれをなくしました。

そして、子供たちが好きなものを組み合わせて変身する、という発想が出てきました。そこから、1個1個、固有のモチーフを表現できるアイテムってなんだろうと、形の検討をしました。

ボトル型なら、ペットボトルのジュースは子供たちにも馴染みがあるものですし、化粧品とか香水とかも小さいものを集めるときれいだよね、という発想でコレクション性にもマッチしました。

あと、僕らは、各アイテム単品でも楽しめる、ということも追求しているんです。フォーゼの「アストロスイッチ」なんかは、分かりやすい例ですね。

今回の玩具展開で、「DXビルドドライバー」は“過去最高に動くベルト“というのを裏テーマにしていて、ベルトのレバーを回すと、ほかの部分もあちこち動くんですけど、「フルボトル」単品では、振るとシャカシャカ音がする、というギミックを入れており、つい振りたくなってしまうところに単品遊びの要素を入れています。

それこそ、『仮面ライダービルド』を担当されている東映の大森敬仁プロデューサーが、玩具の試作チェック中、ずっと振り続けていたくらいなんです(笑)。

篠宮:これ、重さが絶妙ですよね!

井上:跳ね返りとか、手触りがいいですよね。それはもう、うちの設計担当などがこだわって、追求したところですね。振った時の気持ちよさとか、ベルトへ入れた時の感触とか、ベルトへの入れざまとか。

篠宮:「ライダーガシャット」のときはどうだったんですか?

(C)2016 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映

井上:「ライダーガシャット」の場合は、ゲームで例えたらベルトがハードウェアで、ライダーガシャットがソフトウェアという要素が色濃くあったので、各ガシャットのタイトルを強く打ち出すということに重点を置いていました。

それこそ、玩具の開発の音声はフナセンが担当したのですが、単品で鳴る、光る、というところで、単体遊びとしては音の部分に強いこだわりがありました。コンセプトによって、重きを置くところは変わってきますね。

篠宮:では、音声について、「ビルド」の小林克也さんはどういった理由で起用されたんですか?

井上:これまでのベルトは「引く」「押す」など、1回の動作で、変身するものが多かったのですが、ビルドドライバーは、レバーを自身の手で回し続けて変身するという今までと違う点があります。

今回のベルトは「創り出す」というテーマもあって、レバーを回している際の音はだんだん何かが出来上がっていく音をイメージしています。

そして、変身が“完成!”というとき、その「出来た!」というのが、伝わりやすい声はどんな声なんだろうと考えたときに、ランキング形式の情報番組で1位を発表するときの小林さんの声がすごく印象的だったので、これだ!と起用が決まりました。

ベルトの音声のコンセプトと伝えたいことが軸としてあって、そこに世の中にも刺さった実績があるイメージの声を加えていく事が多いですね。今回であれば、小林さんがナレーションを担当されていた情報番組を見たことがない子供たちにも大人と同じように刺さるんじゃないかと思っています。

篠宮:常にそういうアンテナを張って、生活しているんですか?

井上:世の中の時流というか、流行ったもの=人々に刺さったものなので、そこは常々気にしています。子供って大人よりも見てくれを気にしないし、建前がないので、素直に面白いかどうかを判断すると思うんです。

だから、世の中に流行ったものは子供も本能的に好きなんじゃないかと思っていますね。もちろん、それだけにあやかりすぎちゃってもダメだとは思っているので、いかに組み合わせて新しいものを生み出すか、というところは気にしています。

–{技術の進歩でパワーアップするアイテム}–

技術の進歩でパワーアップするアイテム

篠宮:技術の進化の面ではどうですか? 昔はベルトに音声が入っていなかったですし、LEDもなかったですよね?

井上:それは、大人向けグッズのパートで詳しくお話しましょうか。まさに技術の進化に合わせて、昔のアイテムをリニューアルしていますので。

フナセン:ただ、DXシリーズの玩具でも、「ドライブドライバー」のバーサライタとかいろんな技術を取り入れています。最新の技術ではないですが、玩具に取り入れるという面では、目新しいものになります。新しい技術も時間が経って量産性が生まれるとコストが下がり、玩具にも取り入れやすくなってくるんですね。

(C)石森プロ・東映

「オーズ」のオーメダルも、中に入っているチップはあの時期にようやく玩具にも取り入れることができるコストになって、実現したものなんです。

篠宮:その、技術に対する情報はどこから?

井上:技術面を追いかける専門のチームがいるんです。たとえば、「オーズドライバー」のように、非接触で音を鳴らすことができます、といった提案をしてくれるので、企画チームはその情報が頭に入っていて、ベルトにマッチする技術を取り入れていくという感じです。

篠宮:僕は『仮面ライダーBLACK』世代なので、テレビパワーの衝撃がすごかったです! テレビが光ったら、こっちも光る、という。

井上:それを開発した人は、技術担当の部署のスペシャルアドバイザーとして今も健在していますよ(笑)。

篠宮:武器についてはどうですか?

井上:今回は「創り出す」がテーマなので、武器のモチーフは工具系をイメージしています。工具系で子供たちが好きなものということで、ビルドのメイン武器は「ドリルクラッシャー」という、ドリル型の武器になりました。

また、モーターで武器が回るというのは、仮面ライダーの武器玩具としては初めての展開だと思います。メタルヒーローの玩具展開にはあったんですが、それをふまえてもかなり久々になりますね。

篠宮:ありましたね〜!  『特救指令ソルブレイン』に。

井上:実際に遊んでみてどうかとか、危なくないか、という子供のモニター調査もやるんですけど、「ドリルクラッシャーの」モーターが回ったとき子供たちの注目度はすごかったですね。

モチーフがまずあって、そこに付随して武器として成り立つ遊びってなんだろう、というのを考えていくのが、武器玩具の作り方になります。

篠宮:出来上がったときは、制作チームでも遊ぶんですか?

井上:作りながら何度も触っている感じですね。最近は剣、銃兼用の2モードチェンジというものが多いんですが、そこも東映の大森プロデューサーから「単純な切り替えではなく、ガチャガチャ組み替える遊び方がおもしろいのでは」というアイディアがあったので、ドリルを一回抜いて逆に挿すことでモードチェンジする、という動きを入れました。

篠宮:玩具によって、ギミックが面白かったりとか、組み替えが難しかったりとか、いろいろあると思うんですけど、ギミックを重視するのか、遊びを重視するのか。

井上:どっちもですね。そこは絶妙な…。

フナセン:そうですね。あとはお届けしやすい金額とか、そういう部分も含めて検討します。
もう少し値段を上げれば面白いことを追加できるけれど、広く手に取って遊んでいただける価格にもしたいので。そのなかで、しっかり楽しめる、シンプルで遊びやすい、というトータルバランスを考えていますね。

–{子供たちにとっての価値とは?}–

子供たちにとっての価値とは?

井上:子供たちにとって、ただ回せることだけでは価値にならないので、劇中と同様に「変身できている」という気持ちを沸き立たせることが大事だと思うんですね。どんなにすごいギミックの玩具で、遊びやすくても、劇中のようにカッコよく変身できなければ結局欲しくないよね、となるので、そこもひとつの要素ですね。

劇中の変身シークエンスも「よりレバーを回したくなる」ように番組制作陣が作り上げてくれたものです。

篠宮:街中で子供たちが玩具を持っている姿を見たとき、もちろんうれしいとは思うんですが、どんな気持ちなんですか?

井上:本当に感無量ですね。フルボトルを振っても振らなくても、ビルドドライバーにフルボトルを挿したときって変わらないじゃないですか。それでも、子供たちは必ずフルボトルを振ってから挿してくれるんですよ。

それは、子供たちに伝わったな、と感じる瞬間で、僕たちのゴールなんですよね。それが放送で伝わったというのは、開発スタートからそこまでの苦労が吹っ飛ぶような気持ちですね。

篠宮:桐生戦兎役の犬飼貴丈さんの振り方が、またかっこいいんですよね!

井上:アクション監督の宮崎さんに、ここがこう面白いポイントです、とベルトの説明をさせていただくんですが、どうしたらカッコよくなるかをずっと考えてくださるんです。

それで、いつも普通に振るだけだとつまらないから、ボトルを振る前にそれぞれ殴る動きをはさんでみよう、とか慣れたころに振りかたをアレンジしてみようとか、番組を通して提案していただくということもあります。

篠宮:万丈龍我の振りかたも面白いですね。

井上:子供たちがあれを見て、フルボトルを振ることで強くなった気分になってくれたら、もう最高ですね(笑)。

篠宮:では、レジェンドライダーに変身できる「フルボトル」などもありますが、レジェンドライダーと現行の変身ベルトを組み合わせるというのは、どうやって決まっていくんですか?

井上:いろんな考え方があるんですが、「ビルドドライバー」の遊び方がわかってくると、今度は「フルボトル」を集めたいとなるので、そこで人気のレジェンドライダーのキーアイテムを送り出している感じです。

篠宮:今夏の映画では、ビルドがエグゼイドの成分を抜き取ってましたけど、あれがどうなるのか、めちゃめちゃ気になってます。

井上:それはぜひ、劇場でチェックしてください!

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クオリティを追求した大人向けのベルトを展開するCSMについてのお話は、12月11日(月)公開予定です。

(写真:井嶋輝文、インタビュー:オジンオズボーン・篠宮暁、文:大谷和美)

(C)2017 石森プロ・テレビ朝日・ADK・東映