結成10周年を記念して2017年5月4日にLAで行ったライブへ、映画『美女と野獣』のテーマソングなどでおなじみの歌姫、アリアナ・グランデが訪れ、ネット上を騒がせたバンド「B.C.V.」。一体どんなバンドなのか気になる!
左から、南條耕平、西間木陽、小山将平、浅賀光太、加藤大清
そこで、帰国した彼らが5月18日に開催した「ラドンナ原宿」での凱旋ライブにて、インタビューを実施。アリアナが訪れた経緯や裏話、「B.C.V.」の魅力に迫ります。
また、彼らを絶賛する、漫画家の弘兼憲史先生からのリコメンドコメントもご紹介!
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エレキインストバンドのB.C.V.のメンバーは、リードギターを担当し、バンマスもつとめる小山将平、ベースの西間木陽、ドラムスの浅賀光太の3人。そして、加藤大清、南條耕平の2人がサポートメンバーとしてギターを担当する。
B.C.V.は、アメリカで60年代から活躍し、一大ジャンルを築いた「ザ・ベンチャーズ」や寺内タケシ、加山雄三、三根信広などをフィーチャー。20代から30代という若い世代のバンドながら、「ザ・ベンチャーズ」との交流もあるなど、実力は折り紙つき。
そんな彼らのライブでは、「ザ・ベンチャーズ」のカバーはもちろん、「Deep Purple」などのハードロックも演奏。さらに「津軽じょんがら節」や、アメリカでは歌舞伎ソングと呼ばれる「娘道成寺」などエレキインストに生まれ変わった日本の楽曲も。そのほか、「パリの散歩道」と「長崎は今日も雨だった」をコラボレーションするなど、客席を楽しませる工夫に満ちている。
また、お笑い好きという小山を中心とした、軽妙なMCも見どころ。浅賀によるモノマネなども交えながら、この日の話題はやはりLAの土産話。限られた時間のなか、LAで過ごした7日間を面白おかしく振り返った。
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── まずは、アリアナ・グランデさんがライブに訪れたときのお話を伺いたいです。
小山 会場が「The Baked Potato」という超老舗のライブハウスだったんですが、アリアナさんは4〜5ヶ月に一度くらい、ふらっと遊びに来られるそうなんです。それでたまたま、B.C.V.のライブに来てくださって。
加藤 僕が、GWじゃないとスケジュールが取れなくて。本当に偶然だったんです。
小山 当日は「ザ・ベンチャーズ」のメンバーさんだったり、矢沢永吉さんのバンマスをつとめるToshi Yanagi(トシ・ヤナギ)さんも来てくださって。来ている方がすごすぎて、逆に緊張しないくらいの感じでした。
そんななか、1ステージ目が終わったときに、耕平が「やばいです! アリアナ・グランデが来てます!」って。出会ってからの10年で一番テンションが高かったですね(笑)。
南條 …そんなでしたか(照)?
小山 正直、俺は『美女と野獣』のテーマソングを歌ってる人、というくらいの印象しかなかったけど、クールボーイな耕平がこんなに興奮するくらいすごい人なんだな、と。話しかけにいきたかったけど、「完全プライベートだから」と、コーディネーターさんに止められちゃって。でも、耕平は抜け目なかったね。
南條 サインをもらいに行っちゃいました。
小山 しかもボーイフレンドのマック・ミランと来ていて、アリアナさんに「私のサイン? 彼のサイン?」みたいなことを言われたんだよね?
南條 はい。それで、アリアナさんに「You」って伝えて、書いてもらいました。
小山 「You」って、ジャニーさんみたいでいいね(笑)。
西間木 アリアナさんは、1ステージ目の途中から2ステージ目の途中までいらっしゃったんですが、隣のファンに話しかけられて、騒ぎが大きくならないように出て行かれたみたいでした。
小山 「ごめん!」って感じのジャスチャーをしながら会場を出て行って。本当に、気を遣ってくださいました。そういえば、大清くんはCDを渡してたよね。アリアナさんに渡すと思わずにサインを書いたけど、俺らのサイン、いらなかったんじゃ…。
加藤 そこは、スペシャルサンクスってことで(笑)。
小山 ライブ会場ではそんな感じだったんですが、そんなすごい人が来たんだなって思いながら、ホテルに帰って。気になって調べてみたらインスタグラムのフォロワー数が世界2位なんですよ。あのジャスティン・ビーバーよりも多くて!
加藤 彼女のインスタに載ったら、第二のピコ太郎になるんじゃないかと、みんなでそわそわしましたね。
小山 俺はまぁ、そんなことはないかなと思ってたんですけど、ちょっと外に出てたら、西間木くんから電話がかかってきて。
浅賀 「将平、早く帰って来て! やばい! ピコ太郎になってる! 早く戻って来て!」って(笑)。
小山 そうそう。すごく焦ってるから、急いで戻ったら、アリアナさんがインスタに載せてくれてたんですよ。
加藤 そこから寝れなくなっちゃってね。
西間木 ムービーを載せられる「ストーリー」の投稿で、15秒くらいのライブ風景と、B.C.V.って書いてあるCDジャケットの動画を載せてくださってたんです。
小山 ストーリーは24時間しか観られないので、24時間以内にどうにかしないと、って慌てましたね。突然、バンドのアカウントを作ったりして。それにしても、日本の女の子たちの食いつきがすごかった。
加藤 「アリアナ・グランデが日本語使ってる!」って。
小山 8月の来日に向けて勉強されているという、日本語を使った投稿で。そしたら、ティーンたちがツイッターで、「アリちゃんが、ありがとうって言ってる!」「アリちゃんが日本語使ってる!」「アリちゃんって日本語使えるんだね!」って盛り上がってて。
シンデレラ“ピコ太郎”になれるかと思いきや、B.C.V.がなかったことになっちゃってた。「ありがとうB.C.V.」という投稿のB.C.V.がどっかいっちゃって、みんな“ありがとう”のほうに反応してて。
加藤 B.C.V.ってなんなんだろうね? って。
小山 我々、背景だとしか思われてなかったっていう(笑)。
–{アリアナが一番気に入ったメンバーとは?}–
小山 そういえば、アリアナさんが「ベースの子が一番よかった」って言ってたそうなんですよ。これは、本当に載せなくていい話なんですけど。
一同 (笑)。
西間木 ちょっと! それは載せてよ~!
── こうやってお話を伺っていてもトークに笑いがあふれているんですが、今日のライブでもすごく笑わせていただきました。
加藤 本当はエレキインストのバンドって、基本しゃべらないんですよね(笑)。
小山 B.C.V.のMCが長いのは、俺がお笑い好きというのがひとつ。それに、ミュージシャンをやっている父もMCが長くて、それを幼少の頃から見て育ってきたので。あとは、俺が好きな「スターダストレビュー」というバンドもMCが長いんです。なので、俺の好きな方の影響ですね。
加藤 それに、インストは歌詞がないので、楽曲だけだと単調になってしまうんですね。なので、しゃべりを入れてメリハリをつけるというのもあります。
小山 そうですね。年々長くなってます。
西間木 アメリカの話があったので、今日は時に。
小山 MCが長くなって曲を減らすこともあります(笑)。曲が少なすぎるって思われないように、最低10曲はやるようにしています。
加藤 喋ったあとに3曲連続やったりして、調整してますね。
–{ベンチャーズサウンドを継承していきたい}–
── 2017年で10周年ということですが、ベンチャーズをやり続けている理由や魅力を教えてください。
小山 もともと俺と大清くんが、「ザ・ベンチャーズ」狂いで音楽を始めていて。あと、耕平もですね。
南條 はい。
小山 浅賀くんと西間木くんは、俺が知り合った高校生の頃は、ベンチャーズを知らなくて。俺が洗脳した感じで、好きになってくれて。俺は幼少の頃から好きだから、魅力というよりも、それで育ったようなもんだけど、二人にとっては?
西間木 当時に聴いたベースラインが特徴的すぎて。リードベースというか、「もうメロディーなんじゃないの?」っていうくらい強烈なリフ(繰り返しのフレーズ)なんかを聴いた時の衝撃で、これを自分でも取り入れられたらな、と。そう思ってやり始めたところから、気づいたら10年ですね。
浅賀 僕は、独特のノリといいますか、最初に聴いた時に、これはコピーするのは難しいなと思ったんです。やっていくうちにだんだんと、それまでに聴いたり、練習していたものとはちょっと違う、独特のノリを少しずつ出せるようになってきたのかな、と。学ぶべきことはたくさんあるので、まだまだそこを掘り下げたいですね。
小山 今、完全にエレキサウンドをやってるバンドってあんまりいなくて。だから、伝統芸的な面もあると思うんです。そういう伝統を伝えるためにやってる、というのも半分くらいはあります。
加藤 次の世代にベンチャーズサウンド、エレキサウンドを継承していきたいという思いで、ソウルは持ちつつ、完全コピーではなく、最近のテクニックを取り入れたりしてますね。
── アレンジが大胆だな、と思いました。メタル要素もだいぶ入ってますよね。
小山 浅賀くんはどっちかというとメタル寄りのプレイなんで。
浅賀 そうですね。
小山 俺もメタルは好きなので、ベンチャーズに怒られない程度にメタル要素も入れるというテーマもあります。みんな、メタルも好きなんですよ。
浅賀 西間木くんの顔色が(笑)。
西間木 僕はメタルよりも、ジャズとかフュージョン寄りですね。
── 音作りへのこだわりなどはありますか?
小山 音作りに関しては、大清さんが一番こだわってる。俺は今日、モズライトを使っていなかったんですが、使う日はやっぱり、60年代のベンチャーズっぽい音を意識してますね。
南條 僕は、リバーブ(残響)とか、ディレイ(音を遅らせる)とか、そういうものを寺内たけしさんなどが使っているので、そこを重視しながら、忠実にやってます。
小山 リバーブとかディレイって、イマドキでいうとU2みたいな感じですけど、それとは違う、古き良き時代を感じさせる使い方をする20歳はこの子しかいない。時代に逆行したディレイの使い方をしてるんです。
南條 確かにそうかもしれませんね(笑)。
── では、最後に記事を読んでいる人へのメッセージをお願いします。
小山 エレキ世代の方々にも楽しんでいただけるのはもちろん、エレキを知らない世代の方々にも楽しんでいただけるように、工夫を凝らしてやっています。ぜひ、B.C.V.をきっかけに、ベンチャーズやエレキサウンドの魅力を知ってほしいです!
【弘兼憲史先生からのコメント】
B.C.V.を初めて見たのは、YouTubeで「越後獅子」の音源を探している時に関連動画として表示されたのがきっかけ。ベンチャーズバンドも数多く見ていたが、彼らの演奏力、そして表現力は圧倒的に抜きん出ていたので、瞬時に動画に引き込まれ、実際に都内のライブハウスに見に行くことにした。
実際のライブに行くと、YouTubeではとても表現しきれていないグルーヴと演奏力、表現力そしてMCの面白さに虜となり、応援している。
彼らの演奏はYouTubeでは表現できる域を超えているので、是非ライブハウスに足を運んで彼らのパフォーマンスに圧倒されて欲しい。ベンチャーズのカバーだけではなくカントリーやハードロック、昭和歌謡やGSといったナンバーまでB.C.V.の魔法にかかり「現代的なエレキインスト曲」として生まれ変わる様をお楽しみ頂きたい。
【B.C.V.からアリアナ・グランデへのメッセージ】
アリアナ・グランデは人の心を幸せにする歌を届けてくれるシンガー、先日彼女のコンサートでテロが起こってしまいました。亡くなられた方々のご冥福を心からお祈りするとともに、アリアナ・グランデさんにはこれからも歌声を多くの方々へ届け続けていただきたいと心から願っています。
【B.C.V.プロフィール】
2007年5月、小山将平、浅賀光太、西間木陽の3人で結成。ベンチャーズ、寺内タケシ、加山雄三、三根信宏といったエレキインストをフューチャーした若手実力派バンド。 小山と交流を深めていたLittle Terryこと南條耕平と共に、結成当初よりライブ活動を精力的にこなす。 2008年11月、YoutubeのCaravanを見て感動した加藤が、リズムギターのサポートメンバーとして加入。
公式サイト
YouTubeチャンネル
(インタビュー:大谷大・文:大谷和美)