現在公開中の映画『ReLIFE リライフ』は一見すると中高生向けの恋愛(青春)映画に思えるでしょう。実は、中高生はもちろんのこと、アラサーの大人こそが勇気と希望をもらえる傑作だったのです!
以下より、大きなネタバレのない範囲で、その魅力をお伝えします!
1:開始5分から胸を打つ!“痛くて辛い現実”がそこにはあった!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
本作のプロットは“27歳で無職(正確には就職活動中のフリーター)の青年が、1年限定で高校生に若返って人生をやり直す実験に参加する”というもの。もちろん現実ではあり得ない設定なのですが、開始5分でその27歳で無職の青年の“痛くて辛い現実”が描かれていることがミソでした。
具体的には、主人公は家の中ではよれよれのトレーナーを着ているのに、友人と飲に行くときはわざわざスーツを着て会社勤めっぽく振る舞っているのです。冒頭では主人公の「大きくなったら普通に卒業して、就職して……」というナレーションにかぶさって、“社会で普通に生きている人たち”が次々と映し出されているのも切ない!
“人生に失敗したアラサー”の心情を描いたこのわずかな時間だけで、筆者はガッチリと心を掴まれました。初めから“大人にならないとわからない辛さ”が提示されるため、大人こそが胸を締め付けられるのですから。
しかも、主人公が経験した“痛くて辛い現実”はこれだけではなかったのです。それは、映画の後半に明らかになるでしょう。
2:“ぼっち”のヒロインと“おせっかい”な主人公の恋路がいじらしい!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
本作のヒロインとなる女子高生は“成績優秀だけど周りとまったく関わろうとはしないために友だちが0人”という、いわゆる“ぼっち”なキャラクターでした。
一方、27歳から高校生に若返った主人公は“お人好しでおせっかい”なので、そんな彼女に積極的にかまってあげようとするのです。ついでに、主人公は(10年間のブランクもあったため)
彼女とは正反対に成績は壊滅的でした。
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
この“勉強はできるけどぼっち”な女の子と、“勉強はできないけどおせっかいで優しい”主人公との関係性、そしてやがて恋心に変わっていく様子が、とても繊細に、時にはコミカルに描かれていました。
2人は正反対の性格をしているようで、だからでこその“相性の良さ”もある、その極端な関係性の面白さと“恋に落ちた理由”を、言葉ではなく、映画としての表現でしっかりと示してくれるのです。
また、主人公の実年齢が27歳ということで「いやいや、10歳も年下の女子高生を好きになるとかありえねーし」などと、自分の恋心を否定しようとするのもカワイイものがありました。なお、主役2人だけでなく、その親友の恋路もめちゃくちゃキュートだったりしますよ。
3:『シン・ゴジラ』の市川実日子も出演!キャスト陣の熱演を見逃すな!
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本作は若手役者陣の熱演も大きな魅力。まずは、主人公を演じた中川大志さんが素晴らしい!彼は若干18歳なのですが、27歳の青年の時の“やさぐれ感”、そして17歳に若返った時の“おっさん臭さ”までもを見事に表現しています。
それでいて、ドラマ『監獄学園-プリズンスクール-』でも見せていた、熱のこもったコメディ・リリーフ的な役回りを完璧にこなしています。そのいい意味でマンガっぽい顔芸やリアクションだけでクスクス笑えます。彼のファンであれば、もう是が非でも観て欲しいです。
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
ヒロイン役の平祐奈さんは、原作コミックでも印象的だった“不器用な笑顔”を見事に再現しています。
その他、見た目はチャラいけど実は純情な男の子を演じた高杉真宙さん、ヒロインにとある嫉妬をしてしまう池田エライザさん、天真爛漫で人懐っこい岡崎紗絵さんと、若い役者陣たちの才能をはっきりと感じ取ることができるでしょう。
千葉雄大さんも、『黒崎くんの言いなりになんてならない』や『モヒカン故郷に帰る』とはまったく違う、ドSで鼻持ちならない役柄にぴったりマッチしていました。
なお、本作には『シン・ゴジラ』の出演でファン層を大きく拡大した市川実日子さんも出演しています。彼女がどういう役柄ではあるかは……これから観る人のために、秘密にしておきます。
4:“原作を先に読んだ人”と“原作を読んでいない人”それぞれに違ったサプライズがある!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
本作は、マンガアプリ「comico」で世界累計2100万ダウンロードを記録し、舞台版やアニメ版も好評を博した超人気コミックを原作としています。
筆者は映画の後に原作を読んでみたのですが……驚きました。なぜなら、この映画版は“原作を先に読んだ人”と“原作を読んでいない人”のそれぞれに、違ったサプライズが用意されていたのです!
そのサプライズが具体的にどういったものであるかは、ネタバレになるのでここでは一切書けません。しかし、“今まで勝手に認識していたことが覆される”という驚きに満ち満ちており、物語の方向性を大きく転換してく、ということだけはお伝えしておきます。
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
もちろん、筆者は“原作を先に読んだ人”だけが得ることのできるサプライズを体験できませんでした。ああ、原作ファンの方がうらやましい(先に映画を観ても最高です)!
また、映画のテクニックとして“観客だけが知っている事実がある”というものがあり、それが原作以上にそれが上手く使われているのも驚きました。これもまたネタバレになるから一切書けないのですが、切なくて胸が締め付けられる、ということだけはお伝えしておきます。
–{原作からの改変と、鳥肌総立ちのクライマックスが必見!}–
5:細かい改変がすべて上手い!映画としての“再構成”も見事だ!
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本作は2時間の尺に収めるために、原作のエピソードを換骨奪胎して作られています。それにより前述のようなサプライズが生まれ、映画としてのダイナミズムが追求されていることももちろん、細かいセリフにまで映画ならではのアレンジが加えられていることにも感動しました。
たとえば、主人公が夏菜さん演じる“年下”の先生に向かって、(自分とは違って)しっかりとした職業に就いて、しっかりしているのがすごい、と褒めるシーンがあります。
原作では、その言葉を聞いた先生は「ありがとう、若いってだけでナメられちゃうことも多くてさ」などと嬉しく思っていたのですが……映画の先生は「何目線で語っているの?」と一刀両断していました。
この褒め言葉は良くも悪くも“高校生らしくないおっさん臭い説教”であったのですが、それが映画の後半ではしっかりと主人公の長所に変化していきます。そのため、映画の序盤のこのシーンで“主人公を甘やかさない”ことが、しっかりと生きてくるのです。
さらに、コミュニケーション下手のヒロインが素っ頓狂なことを言って、続けざまに「足りない言葉ぐらい補完してください」と理不尽なことを強要するシーンがあります。映画ではその直前、彼女は「現代文でわからないところを職員室で質問していました」とも言っていました。
原作では、ヒロインは“テストで1カ所わからないところ”を質問していたのですが、映画でこのセリフを改変したおかげで“現代文でわからないところをわざわざ質問しに行っているのに、その自分が文章で思いを伝えるのが下手”というおかしみ、または彼女がひたむきに人の心を理解したいと願っているという心情がより際立っているのです。
“映画ならではの改変”が、こうした細かいところまで行き届いているという“丁寧さ”にも、筆者は感動しました。原作をそのままトレースするのではなく、映画では“映画ならでは”の魅力をとことん高めていく……本作の見事な脚本には、“マンガの映画化”というジャンルにおける“理想形”をも感じさせるのです。
6.原作では描かれていないラストに感動!クライマックスの5分間は鳥肌が総立ちだ!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
原作コミックの作者である夜宵草さんは「映画は舞台と同様、原作とはまた違ったエンディングで描かれています」と語っていました。この映画版のエンディングは、もはやこれしかない、積み上げてきた伏線が見事に回収される、完璧とも言える素晴らしいものでした!
主人公が下したとある“選択”は、彼のキャラクターをしっかりと理解し、なおかつ原作の数々の尊いメッセージをも拾い上げた、“愛”に溢れたものになっていました。
クライマックスの5分間で、これほどに鳥肌が立つとは、想像だにしませんでした。原作を読んでいなかった筆者でもそうなのですから、原作ファンの方の感動はどれほどのものなのでしょうか!
なおかつ、エンドロールに入る瞬間の“キレ”も素晴らしい!ケツメイシの名曲「さくら」をカバーしたエンディング曲も、心地良い余韻を残してくれました。
7:大人こそが“正しいこと”を思い出すことができる!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
本作の主人公は、初めて務めた会社で大人の醜さや理不尽さを経験し、それをどうすることもできなかった……と自分の無力さを思い知っています(原作者の実体験も反映されているのだそうです)。
しかし、本来おせっかいである主人公は、その苦い経験をしたのにも関わらず(あるいはだからでこそ)、思春期の高校生たちに大切で“正しいこと”をいくつも教えようとするのです。
その“正しいこと”とは“大人になると忘れてしまいがち”なことでもありました。主人公の言っていることはキレイゴトかもしれないけれど、それらの価値観を大切に思うことが重要なのではないか、と大人こそが気づくことができるのではないでしょうか。
“これから大人になる中高生”だけでなく、“正しいことを忘れしまいがちな大人”にも……いや、むしろ大人にこそ響く尊いメッセージがある。これが『ReLIFE リライフ』という作品における、最も大好きなことでした。
8:“追体験”できる僥倖に巡り会える、最高の青春映画だ!
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
原作コミックの第69話では、「思春期の高校生たちと関わらせることで、歳を重ねて鈍ってしまった感情を刺激するのもリライフ(実験)の目的の1つ」という言葉があります。それは、前述したような“大人になると忘れてしまいがちな大切な価値観”を呼び起こしてくれることはもちろん、映画版『ReLIFE リライフ』の魅力そのものも示していました。
宮城県仙台市を中心にしたロケーション撮影はとにかく美しく、フレッシュな役者陣の演技による数々の青春の1ページは、“決して戻ることはできない”出来事を追記体験させてくれます。これは、原作コミックにもない、映画でしか味わえない大きな魅力なのです。
(C)2017「ReLIFE」製作委員会 (C)夜宵草/comico
アラサーの(それ以上の年齢でも)大人が観れば、自分の青春時代を思い出し、あるいは“そうできなかった”青春を体験するという僥倖に巡り合うことができるでしょう。
それでいて、高校生に若返るというあり得ないファンタジーを描いておきながら、実は過去に戻ることのできない、現実で生きる全ての人達たちにエールを送っている……そんな映画『ReLIFE リライフ』が大好きです!老若男女を問わず、この傑作をおすすめします!
(文:ヒナタカ)