バットマンになることが夢だったオレ、『レゴバットマン ザ・ムービー』に大歓喜

映画コラム

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

僕が幼稚園児の時の夢は、「バットマン」になること!黒いゴミ袋でバットスーツを作るダークナイトな園児だった一方で、レゴで遊ぶことも大好きだった。

そして2017年、レゴ+バットマンという幼稚園児のオレ大歓喜映画『レゴバットマン ザ・ムービー』が公開!

CGアニメなのにレゴのストップモーションアニメかのような手作り感のある、まさにおもちゃ箱をひっくり返したような映像に、ユーモアセンスのあるセリフとドタバタな展開の本作は、笑って号泣できる傑作映画『LEGO ムービー』(2014年)に引き続いて楽しく、にぎやか!

しか〜し、この映画をその可愛らしい見た目から「どうせ子ども向け映画でしょ」と思いこんでしまうのはもったいない!心の中の幼稚園児が飛び跳ねる一方で、この『レゴバットマン ザ・ムービー』は大人だからこそ楽しめる点のある作品でもあるのだ!

大人になりきれない孤独な男=バットマンが、家族を得るまでのストーリー

本作でのバットマンは、ジョーカーをはじめとした悪者たちがゴッサムシティで起こす悪事を、スーパーメカと超絶アクションで解決するスーパーヒーロー……なのだが、実際のところ「ヒーローのオレ、カッケー!」という自己承認欲求の高い、自分大好きオトコ!

その上、執事のアルフレッドには「ヤダヤダヤダヤダ!」と2歳児並みの駄々をこねまくる、子どもっぽ過ぎる性格の持ち主。

しかしその一方で、バットマンの孤独っぷりはハンパではない。

幼くして両親を亡くしたため「家族」というものは記憶の彼方にあり、大富豪ではあっても広い家に執事のアルフレッドがいるだけ。

ひと仕事終えた後に暗い家の中、電子レンジで冷食をあたためてひとりで食べる姿は哀しくもおかしい。大人ならば、まるで自分のことを見ているような気がするはず…

さらに、ヒーロー仲間であるスーパーマンをはじめとしたジャスティス・リーグの面々にもパーティーに呼んでもらえず、ハブられる始末……友達も上手く作れなかった。

そんな自分大好きな孤高の男が、ひょんなことから孤児のディック・グレイソン、後にロビンとなる少年を養子にすることに。自分の秘密基地であるバットケイブが、何をしでかすかわからない子どもに荒らされてしまう!どうしよう!

しかし、そんなロビンとともに行動する中で、ロビンの成長を喜ぶなど特別な感情に気付くバットマン。その元にあるのは、今はもういない両親への思いと、家族への憧れ。

そしてゴッサムシティに危機が訪れた時、バットマンの父親代わりのアルフレッドと、バットマンとともに悪を打倒するゴードン本部長の娘のバーバラことバットガールがバットマンとロビンに加わることで、血のつながりはまったくないものの、「バットマンファミリー」と言えるようなチームを結成!

そう、本作は大人になりきれない男が、疑似家族が出来ることで成長していくというストーリーなのです。

子どものようにわがままで自分の世界を好み、自意識過剰でプライドが高い、大人になりきれない男が、これまで苦手だった子どもとの出会いにより父性を得て、家族を失うことへの怖さを克服し、仲間=家族を得る。

例えばスピルバーグ作品でも繰り返し語られてきた普遍的なストーリーは、自分の世界(仕事や遊び、趣味など)を第一にしたい大人だからこそ、身につまされながらも心あたたまるものに感じられるはず。

© 2017 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC.

バットマンの本質を、実写映画よりも捉えた作品!

「『ダークナイト』は傑作!」という、そこのあなた!レゴだからって『レゴバットマン ザ・ムービー』を甘く見てはいけない!

本作はバットマンの本質を、ある意味実写版よりも捉えている作品でもあるのだ!

同作では、ジョーカー率いる悪者軍団が全員自首してしまい、ゴッサムシティから犯罪がなくなることに。

ついに街に平和が戻った!と喜ぶはずが、バットマンは浮かない顔。なぜなら、倒すべきジョーカーをはじめとする悪者がいなくなるとバットマンは出動する必要がなくなり、存在意義がなくなってしまうから……。

そう、バットマンと宿敵・ジョーカーはコインの表裏の関係。その存在をお互いに支えあうことで成り立っているのだ。

ジョーカーは、バットマンに自分が特別な敵であることを認めて欲しい。しかしバットマンはそんなジョーカーに対して、「お前は必要ない。俺は誰も要らない」と言い放つ。その言葉にショックを受けるジョーカーは、まるで片思いの恋人のよう。

バットマンの存在意義とジョーカーとの関係性。これまでの「バットマン」シリーズで描かれたそのテーマが『レゴバットマン ザ・ムービー』では、その核心をわかりやすく提示しているので、バットマンファンは必見なのです!

次のページからは、本作のバットマンシリーズへのオマージュや、様々な映画から集結した悪役たちの一覧など、トリビアネタをご紹介!映画を見てのお楽しみにしたい方はご注意を!

–{バットマニアも大満足のオマージュネタが満載!}–

バットマニアも大満足のオマージュネタが満載!

バットマンファンといえば、『レゴバットマン ザ・ムービー』には歴代のバットマンネタが詰め込まれており、ファンは大歓喜すること間違いなし!

60年代のTVドラマ版「怪鳥人間バットマン」から「ダークナイト・トリロジー」、そして『バットマン vs スーパーマン』までの過去作品を網羅。これらの過去作がレゴで再現されるシーンも!

「怪鳥人間バットマン」は特にネタにされており、敵にパンチがヒットした時の効果音をマンガのような擬音で表現するネタや、『バットマン オリジナル・ムービー』(1966年)でバットマンが持って右往左往した爆弾、さらに「サメスプレー」など定番ネタが盛りだくさん!

このほか、主にコスチューム周りでの「バットマン」シリーズへのオマージュをいくつかご紹介!

●アルフレッドが着用するのは60年代のTVドラマ版「バットマン」のコスチューム。
●ロビンは本作の中で、原作通りナイトウィングのコスチュームを着用。
●TVアニメシリーズ「バットマン・ザ・フューチャー」のコスチュームも登場。
●トゥーフェイスの声を演じているのは、『バットマン』(1989年)でのハービー・デント役のビリー・ディー・ウィリアムズ。

これを楽しめるのも、物知りな大人のオタクだからこそだ!

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ヴォルデモートが!キングコングが!空前絶後のクロスオーバーが見られるのは、『レゴバットマン ザ・ムービー』だけ!

バットマンファンだけではなく、大人の映画ファンも本作を必見であるポイントは、子どもがオモチャで遊ぶようにレゴの世界観の自由さを活かして、「バットマン」シリーズ以外の映画の敵キャラクターも大挙登場すること!

レゴの街を、キングコングがぶっ壊しまくる!バットマンの行く手を、『ハリー・ポッター』のヴォルデモートと『ロード・オブ・ザ・リング』のサウロンというファンタジー界の二大最強悪役が立ちはだかる!

以下の悪役キャラクター達がドリームチームを組んでバットマンたちと戦うぞ!ワーナーチャンピオンまつりだ!

●クラーケン、メデューサ(『タイタンの戦い』/1981年)
●骸骨剣士(『アルゴ探検隊の大冒険』/1963年)
●グレムリン(『グレムリン』シリーズ)
●ヴォルデモート(『ハリー・ポッター』シリーズ)
●エージェント・スミス(『マトリックス』シリーズ)
●ダーレク(「ドクター・フー」シリーズ)
●西の悪い魔女、空飛ぶ猿(『オズの魔法使』/1939年)
●ヴェロキラプトル、ティラノサウルス・レックス(『ジュラシック・パーク』/1993年)
●サメ(『ジョーズ』/1975年)
●ギルマン(『大アマゾンの半魚人』/1954年)
●サウロン(『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズ)
●キングコング(『キングコング』シリーズ)

昔の映画が多いから、こちらも大人のオタクだからこそ楽しめるのだ!

ちなみに明言はされていないが、ワーナー・ブラザース作品なので、キングコングとともに暴れている怪獣はゴジラ(『GODZILLA ゴジラ』/2014年)という可能性も……キングコングとゴジラが激突する実写映画シリーズ「モンスターバース」よりも早い競演かも知れない!

子どもの心を忘れない、すべての大人にレゴが話題のこの春、必見の一作

バットマンに憧れた幼稚園児も、やがて大人になって自分の家族を作り、いまや子どもがその側に。レゴで遊びはじめる日も、もう少しかも。そう、家族がいることで大変なことがあっても、子どもは最高の相棒なのだ。

残念ながら大富豪にはなれなかったのでバットマンの夢は叶わなかったが、少年の肩にコートをかけ、「世界はまだ終わりじゃない」と勇気付けてやるような大人になりたいと思っている。

名古屋に「レゴランドジャパン」もオープンし、この春はレゴが話題。『レゴバットマン ザ・ムービー』は、大人になったらバットマンみたいなヒーローになりたい子どもはもちろん、かつて子どもだったすべての大人が必見の一作なのだ!

(文:藤井隆史)