(C)Disney
3月4日(土)21時より、あの超大ヒット作『アナと雪の女王』がついに地上波で放送されます。雪や氷の映像表現、耳に残る主題歌「Let It Go」など、その魅力は枚挙にいとまがないですが、再び鑑賞すると“キャラクターの性格”が事細かに、魅力的に描かれた作品であることに気づきました。以下に紹介してみます!
※なお、以下からは『アナと雪の女王』の本編のネタバレが多分に含まれていますので、これからご覧になる方はご注意ください!
1:エルサが何よりも優先するのは“アナが喜ぶこと”だった
アナは子どものころから天真爛漫で、“考えるよりも先に行動してしまう”性格でした。大人になってからも、アナはソリに乗った時に「(スピードを出して)飛ばすの大好き!」と言ったり、クリストフがカウントする前に「3!」と自分で言って崖を飛び降りたりしていましたね。
一方で、その姉のエルサは子どものころから少し“大人”で、落ち着いて物事を考えるタイプでした。エルサが自分の魔法の力を恐れるあまり、ずっと部屋に閉じこもってしまうのは、アナとは対照的に“考えすぎてしまう”性格のせいでもあったでしょう。
そんなエルサですが、実は妹のアナには甘い性格であることが描かれています。たとえば、子どものころのアナは窓から見えるオーロラを見て、寝ているエルサを「お空が起きているわ!」と起こそうとしていました。エルサは「まだ寝ていなさい」と一度はアナをなだめようとしますが、アナに「雪だるまを作るのはどう?」と言われると笑顔になり、魔法を使って遊びに付き合ってあげるのです。
アナはエルサが作ってくれた氷柱に次々と飛び乗って喜んでいましたが、その飛び移るスピードが速すぎたために、魔法がすぐに追いつかなくなってしまいます。結果として“事故”でアナはエルサの魔法を頭に受けてしまうのです。
この一連の描写だけで、アナとエルサの姉妹の関係がはっきりと見えてきます。エルサは“喜んでくれるなら何でもしてあげる”というほどにアナが大好きなのですが、そのアナは行動に勢いがありすぎて、ちょっとエルサの“手にあまる”存在でもあるのです。
そのアナの猪突猛進っぷりは、エルサにとっては(両親を亡くしてしまったこともあり)「お姉ちゃんとして妹を守らなければいけない」という重荷にもなっていたのかもしれませんね。
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2:アナは戴冠式の日に、自分のことばかり考えていた?
エルサが21歳、アナが18歳の時、お城で戴冠式が行われます。アナは「戴冠式だー!」と喜び、そして「生まれてはじめて」を喜びいっぱいに歌っています。
この時にアナが歌っているのは「生まれてはじめて踊り明かすの」、「運命の人に出会えるかも」といった“自分の幸せ”でしたが……ずっと部屋にいて、扉を開けようとしなかったエルサのことは歌われていません。
一方で、実際の王位継承者であるエルサは「ひとりでいたい」「今日だけでも」と、自分の魔法の力がバレてしまうのではないかと、アナとは正反対に戴冠式のこの1日を恐れていました。
アナはそんなエルサの気持ちなど知る由もなく、その日に出会ったばかりのハンス王子と婚約し、エルサに「お部屋はたっぷりあるからいいでしょ?」と勝手に住まわせることまで勝手に決めようとしていました。アナは行動力がありすぎるあまり、戴冠式の主役であるはずの、久しぶりに会話ができるはずの姉のエルサのことを考えられていないのです。
3:アナは“無理やり”にでも大好きなエルサのことを考えないようにしていた?
もっとも、アナは子どものころからエルサのことが大好きなはず。だから、“エルサのことを考えていない”というよりも、“(エルサに迷惑をかけないように)無理やりにでもエルサのことを考えないようにしていた”というほうが正しいのかもしれません。
たとえば、アナはエルサの横に立つ時に「え?私もこっちに立っていいの?」と戸惑っていたり、エルサに「元気?」と声をかけられると「え?あたし?」と驚いていたりしています。
アナはアナで、エルサがずっと部屋に閉じこもって、妹の自分でさえも遠ざけていたことを、長いあいだ気に病んでいたのでしょう。そんなアナが、たくさんの人が集まる戴冠式の日に、エルサに(エルサが望んでいるように)触れないようにして、“自分の幸せ”だけを考えてしまうのも無理はないように思えます。
また、アナは歌いながら、お城に飾ってあった絵を見て「がんばれ、ジャンヌ」と言っています。言うまでもなく、ジャンヌ・ダルクはフランスを救った英雄です。アナは明確には口には出さなくても、王位を継承し、プレッシャーでいっぱいになっているエルサへ「がんばれ」と言いたかったのかもしれませんね。
そんなアナは、エルサとはじめはぎこちない会話をしていたものの、すぐに「チョコレートだ!」と笑いあうことができ、ウェーゼルトン公爵とダンスをして「あの人、かかとの高い靴を履いているわ!」と、何でもなさそうな話題を口にすることもできています。やっぱり、アナとエルサはお互いのことが大好きで、本当は気兼ねなく話し合えることができるんですね。
ちなみに、『アナと雪の女王』のBlu-rayには、“未公開シーン”として、アナがいろいろな衣装を着てエルサに見せてあげるというかわいらしいエピソードが収録されています。こちらもぜひ観ていただきたいです。
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4:オラフが生まれた理由とは?
雪だるまのオラフは、エルサが「Let It Go」を歌い、氷の城を作り出す直前に魔法で生み出されていました。結論から言えば、オラフは、エルサの「もっと(アナや誰かと)仲良くなりたい!」という思いが具現化した存在なのではないでしょうか。
オラフはとことんポジティブです。鼻に見立てたニンジンが顔に埋まりすぎて小さくなっても「ユニコーンみたいにかわいい!」と言って、ちゃんと鼻らしく見える位置に調整したときも「このほうがずっといい!」と肯定しています。クリストフをトナカイのスヴェンと同じ名前だと勘違いした時も「わかりやすいね!」とやっぱり肯定し、あまつさえスヴェンに噛まれそうになったときには「僕も大好きだよ!」と言っています。もはやポジティブすぎてクレイジーな勢いです(笑)。
それでいて、オラフはエルサが作り出したマシュマロウ(雪のモンスター)からアナたちを守るため「ここは僕に任せて逃げて!」と言ったり、クリストフが岩(トロール)たちに話しかけているのを見て「僕が気をひいておくから逃げて!」と言ったりと、自己犠牲をしてまでアナ(大切な人)を何度も救おうとしています。
そして、オラフは「愛とは、自分よりも誰かを大切に思うことだよ!」とアナに教えていました。これは、氷の城を作り「ずっと1人で生きていこう」、「これでいいの(Let It Go)」と、“自分のことだけを大切にしようとした”、“誰かと関わらないことを誓った”エルサとは対照的です(エルサが氷の城に引きこもろうとしていたことと、オラフが開放感たっぷりの夏を夢見ていたことも対照的ですね)。
つまり、氷の城を作る前にオラフを生み出したエルサは、本当はオラフのようにポジティブに他人と関わりたい、誰かを大切にしたいという気持ち(本音)があった、その気持ちの全てがオラフというキャラに投影されていると言っていいでしょう(マシュマロウも「帰って!お願い!」というエルサの意思の塊のような存在でしたね)。本当は、エルサは「これでいいの」とは思っていなかったのかもしれません。
そうそう、アナは子どものころ、トロールたちの力でエルサの魔法に関する記憶を無くしていました。この記憶が消失していくシーンをよく見ると“アナとエルサが一緒に遊んでいる”という記憶はそのまま残っていること、“お城の中(でエルサの魔法を使って遊んでいた)”での出来事が、“雪の積もっているお城の外”へ場所だけが変わっていることが示されています。その中には(生きてはいない)オラフそっくりの雪だるまを作った記憶もありました。
だからでこそ、アナもエルサも、オラフという名前を聞いて“子どものころを思い出す”ことができていましたね。オラフは、ずっと氷の城に閉じこもろうとしていたエルサの“本音”をアナに伝えるために生まれたのかもしれません。
–{ハンス王子が悪役であることはしっかり示されていた?}–
5:クリストフは一方的な価値観に囚われていた
クリストフは、アナに「出会ったその日に婚約するなんておかしいだろ」とツッコんだり、夏を恋しく歌っているオラフについて「誰かが(夏になると溶けてしまうことを)教えてあげないと……」とつぶやくなど、常識人的なところがありました。
だけど、クリストフはクリストフで、相棒のトナカイのスヴェンのセリフを“腹話術”で吹き替えるという変人っぷりを見せていました。ほかにもクリストフは「俺には友だちがたくさんいる」とも言っていましたが、その友だちとは“恋愛のエキスパート”であるトロールたちでしたね。
つまりクリストフには、“腹話術でクリストフ自身の気持ちを語るトナカイ”と、“うっとおしいくらいに恋愛観や結婚を押し付けてくるトロール”という、自分と同じ、または一方的な価値観を持つ友だちしかいないのです。
その狭い交友関係と一方的な価値観は、クリフトフがアナに言った「スヴェンに命令するんじゃない。俺が命令するんだ」というセリフにも表れています。しかし、この後すぐに(考えるよりも先に行動してしまう)アナはスヴェンに「ロープを引っ張って!」と命令しており、おかげでクリストフは助かることができていました。クリストフにとって、アナは新しい価値観を教えてくれる存在だったのでしょうね。
そして、クリストフはアナをお城に送り届けますが、去ろうとするのをスヴェンに止められます。この時にクリストフは腹話術を使わずに、「何を言っているのかさっぱりわからないな」と言っています。いままでスヴェンは勝手にクリストフに訴えていることを吹き替えられていましたが、ここではしっかり“自我”を持ち、親友のクリフトフを止めようとしていたのですね(だからでこそ、クリフトフは吹き替えをしなかったのでしょう)。
そういえば、映画の一番初めは“大人たちが湖の氷を切り出すという仕事をする”シーンであり、子どものころのクリスフトはその仕事を真似ようとしていました。彼は子どものころから“仕事一筋”だったのでしょう。
そのためか、大人になったクリフトフはサマーグッズを売っている小屋で「(冬になったおかげで氷が売れないから)俺の商売があがったりだ」など、自分の仕事を何よりも大切にしている物言いをしていました。
だけど、アナと出会った後のクリフトフは「俺の商売のことなんかどうでもいい」と言っていましたし、最後には壊れたソリの代わりの“最新モデル”を「返品不可よ!」ということでアナにもらうことも受け入れていましたね。やはり、クリフトフの一方的な価値観は、天真爛漫なアナのおかげで変わっていったのです。
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6:ハンス王子が悪役であることは“馬”でわかる!
ハンス王子が後半にいきなり本性を表して“悪役”となることに唐突さを覚えた方は多いでしょう。しかし、ハンスの乗っていた馬に注目すると、彼が本質的に善人ではないことが暗に示されていたように思えます。
たとえば、序盤にハンスの馬は、歌っていたアナとぶつかってしまっていました。それだけならまだしも、その後に馬はハンスの会釈を見習ったように頭を下げたため、あわや小舟に乗っていたアナが海に落ちそうになっているのです。
ここから伺いしれるのは、ハンスの馬は、“社会的な関係を良くする”というハンスの行動原理を、“会釈を真似する”という形で受け継いでいるのではないか、ということです。
ハンスの馬が落ちてきた雪にびっくりして、アナを置いて走り去ってしまうというシーンもありましたね。これも、“利害関係が一致しているときは協力するけど、自分のためなら見捨てたり裏切ったりする”というハンスの価値観そのままのように感じるのです。
一方で、クリストフは子どものころから、トナカイのスヴェンとニンジンを“半分こ”にして食べているなど、単なる利害関係だけでない、確かな友情(愛情)があることが示されていました。スヴェンとハンスの馬を比較してみると、彼らの“本質”が露わになっているのです。
また、ハンスは氷の城で兵士たちに反撃しているエルサに向かって「人々を苦しめるようなことはしてはいけません!」と言っています。まっとうな主張のようではありますが、このハンスのセリフには“エルサの気持ちを考えてあげる”という心境はみられません。ただの“否定”であり、それはエルサが誰かを傷つけないがために引きこもっていた時の価値観とほぼ同じです。やはり、ハンスは善人とは言えない、悪人だと疑わしきところがあったのです。
そうそう、戴冠式の日に、お城にいた子どもが「なんでこんな格好(正装)するの?そんなの僕に関係ないよ」と言っていました。この子どもは後で王国が冬になった時に「パパ、薪を見つけたよ!」と人々が暖を取るための行動していました。
この時にハンスも毛布を集めて人々の役に立とうとしていた……ように見えて、この子どもと違って着飾っているため、やはり“自分の顔を立てるため”の行動に思えてくるんですよね。
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7:最後に、エルサは恐怖に打ち勝っていた!
エルサが、ハンスに「アナが死んだ」という知らせ(ウソ)を聞かされた時……降り続いていたはずの雪が、空中でピタリと止まっていました。死んだアナは戻ってこない、自分のせいだ……そんなエルサの“もう取り返しがつかない”という後悔、時間の不可逆性が、“降る雪が止まる”という形で表れたのでしょう。
言うまでもなく、愛する妹のアナの死は、エルサがもっとも恐れていた出来事でしょう。しかし、トロールが「恐怖が身を滅ぼす」と言っていたように、エルサの恐怖は、愛する者を遠ざけてしまう原因そのものでもありました。
そして、(生きていた)アナは身を呈して、剣を振り下ろすハンスの前に立ちます。これは、オラフが言ってきた“自分よりも誰かを大切に思うこと”という愛そのものであり、“恐怖”なんてまったく顧みない行動なのです。
氷漬けになったはずのアナは“真実の愛”により、魔法が解けて助かります。エルサはこの時に、いかに恐怖に囚われていたか、アナと同じように他人を大切に思うためにはどうしたらいいかを、学べたのでしょう。それが、“氷の力をコントロールできる”という形で表れたのです。
エルサは、最後に「私スケートなんて滑れない……」と珍しく消極的であったアナを、思い切って誘って一緒に滑っていました。ここでも、エルサが大切な誰かのために行動するという“愛”を手にし、そして恐怖に打ち勝ったことが示されているのです。文句なしのハッピーエンドでした!
こうした、よく観ないと気付かない“盲点”や“対比”が『アナと雪の女王』には、もっとも、もっと、たくさんあるはず!ぜひぜひ、皆さんもまだまだ気づいていないキャラクターの魅力を探してみてください!
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おまけ:『アナと雪の女王』に後日談があった!
実は、『アナと雪の女王』には“後日談”と呼ぶべき作品があります。その1つが、『シンデレラ(2015年の実写映画版)』と同時上映され、現在は「ディズニー・ショートフィルム・コレクション」に収録されている『エルサのサプライズ』です。
その物語は「アナの誕生日をエルサががんばってお祝いしようとするけど、エルサが風邪を引いてしまった」というもので、仲良し姉妹のイチャイチャっぷりを最大限に楽しめる内容になっていました。
そして……実はもう1つ後日談と呼べる作品があります。それが『LEGO アナと雪の女王 オーロラの輝き』で、現在はディズニーの公式YouTubeチャンネルで、全4話を無料で視聴できるようになっているのです。
そのタイトル通り、おなじみのキャラクターがレゴになった姿で登場するのですが、本編と同じセリフやパロディが満載、アクションも迫力満点、本編で“名前だけしか登場しなかった”とある場所が描かれるなど、『アナと雪の女王』のファンにはたまらない内容になっていました(個人的にはクリストフの“学歴”に大笑い)。1話が5分とちょっとくらいなので、空き時間にすぐに観られますよ!
(文:ヒナタカ)