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2月25日(土)より公開される『クリミナル 2人の記憶を持つ男』、一見して普通のクライムサスペンスかと思いきや……いやいや、これがとんでもない超ド級の快作!観終わった後は1時間くらいニヤニヤニコニコが止まらず、心の底から幸せになれる映画でしたよ!その魅力を以下に紹介します。
1:クズなおじさんが大暴走!『君の名は。』のようだけど、そうじゃなかった!
筆者は勘違いをしておりました。“CIAエージェントの記憶が囚人に移植される”というあらすじを聞いて、「もしかして、私たち、入れ替わってる〜!?」的な内容かと思い込んでいたのです。ところがどっこい、そのCIAエージェントは序盤であっさりと死んでしまうので“入れ替わり”なんてことは起こりませんし、何よりも記憶を移植される囚人は、あの東京在住のイケメン高校生とは似ても似つかない、超ドクズのおじさんだったのです。
主人公がどれくらいクズかと言うと、列への割り込みや無銭飲食は序の口、カフェでグチグチ言ってきた若者には言葉ではなく暴力で訴え、チンピラから車を強奪だってしちゃいます。実は、彼は脳の一部が損傷しており、他者への思いやりや罪悪感といった感情を持ち合わせていないのです。『脳男』の主人公を悪に染め上げたような感じですね。
で、「脳に隙間があるから移植には最適じゃね?」ということで、そのクズおじさんにCIAエージェントの記憶が移植されるのですが、すぐには重要な情報を思い出してはくれません。しかも、そのクズおじさんが脱走して街を飛び出ちゃったのでさあ大変。CIA一同はテロから世界を救う前に、このクズおじさんをどうにかして捕獲しないといけなくなるのです(しかもタイムリミット付き)。なんだか滑稽ですね(実際に笑えます)。
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2:“クズ+ちょっぴりの優しさ=守ってあげたくなる”という方程式が成り立った!
本作の何よりの見所は、このクズおじさんに“優しさ”が目覚めていくことであると断言します。というのも、脳を移植される前のCIAエージェントはとっても善良なお兄さんであり、彼の記憶がだんだんとクズおじさんに蘇ってきて、そのクズい性格に良い(?)影響を与えていくのです。
ハイライトとなるのは、クズおじさんが蘇ってきた記憶を辿って、“CIAエージェントの妻の家”に行くシーンでしょう。彼はもちろん根がクズなので妻をふん縛って金品を奪って行こうとするのですが……おっと、これ以上はネタバレになるので書けない。ほかにも、クズおじさんが買い物をするシーンなどで、だんだんと“イイやつっぽさ”が見えてくるのにニヤニヤが止まりませんでした。
とにかく、クズにほんのちょっとの優しい性格を加えると、これほどまでに魅力的なキャラクターが生まれるんだ!ということと、ギャップ萌えというか“守ってあげたくなる”衝動にかられることだけはお伝えしておきます。『ザ・コンサルタント』で口下手なおじさんに萌えた映画ファンは全員観ればいいじゃないか!アニメ「おそ松さん」のクズな6つ子たちに萌えた女子の皆さんも全員観ればいいじゃないか!
この映画で“優しいだけの男”よりも、やっぱり少しくらい(少しじゃないけど)悪いところがあったほうが魅力的なのだと思い知りました。なぜ少女漫画でドSな性格の男がもてはやされるのか、なぜ「ドラゴンボール」のベジータが愛おしいのか、みっちりと学ぶことができるでしょう。
3:超豪華キャストが共演!アメコミ映画ファンも必見だ!
さてさて、本作で触れておかなければならないのは、映画にあまり詳しくなくてもその名前を聞いたことがある名優が共演していること、しかも過去のアメコミ映画に出演した超豪華キャストが勢ぞろいしているのです!
ケヴィン・コスナー:『マン・オブ・スティール』のジョナサン・ケント(スーパーマンの養父)
ゲイリー・オールドマン:『ダークナイト』のゴードン警部補
ライアン・レイノルズ:『デッドプール』のデッドプール
ガル・ガドット:『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』のワンダーウーマン
トミー・リー・ジョーンズ:『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』のチェスター・フィリップス(キャプテン・アメリカの上司)
はい、この時点でアメコミ映画ファンは全員観ましょう(命令)。それぞれが、各アメコミ映画の印象とは違う、特徴的かつ魅力的なキャラクターを演じているのがたまりませんよ。
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4:ジャンルはいったい何なんだ!?いい意味での“闇鍋感”も楽しもう!
本作の魅力の1つに「ジャンルがいい意味で統一されていない」ということがあります。具体的にはスパイアクション、カーアクション、タイムリミットのあるサスペンスなどが盛り込まれており、そこに“クズなおじさん萌え”という新ジャンルまでぶち込んでくるのです。クライムサスペンスかと思いきや、車やヘリコプターまで使ったド派手で壮大なアクションが連発するのでたまりませんぜ!
とは言え、まとまりがなくて散漫ということもなく、しっかりと伏線は回収され、ラストに向けて物語は収束していくのでご安心を。基本のプロットは、悪役サイドおよびCIAが“逃げ出したクズおじさんを捕まえて重要な記憶を聞こうと躍起になる”という単純なものなので、混乱することもないでしょう。
しかも本作には“ゲラゲラ笑えるコメディ”と“切ないラブストーリー”という要素までもあるのですよ!(※これについては後述します)どれだけジャンルが無法地帯なんだ!(※褒めています)
–{<コメディである理由はこれだ!>}–
5:実はコメディ映画?ゲイリー・オールドマンの無能っぷりにツッコめ!
さてさて、本作は前述したように、幅広いジャンルが混在しているわけですが、実はコメディと言っていいほどに“笑える”ところも盛りだくさんです。
クズおじさんのかわいさだけでもニヤリングが止まりませんが、さらなる爆笑を届けてくれるのが、ゲイリー・オールドマン演じるCIA支局長がバカ丸出しというか、直情的すぎるというか……いや、もうはっきり言ってしまいましょう、“無能”であることです。もはや無能の中の無能、THE KING OF MUNOU。彼の行動のほぼ全てに(良い意味での)ツッコミを入れられるので、愉快で仕方がありませんでした。
要するに、本作は“クズなケヴィン・コスナー VS アホなゲイリー・オールドマン”の極限バトルが勃発すると言っても過言ではないのです。お二人のファンであったらいろんな意味で大興奮することは間違いなし!仲の良い友達と観れば、鑑賞後の会話に花が咲くどころか満開になるに違いありません!(主にツッコミどころに対して)
そうそう、中盤のカーアクション、クライマックスのとあるシーンも、お腹を抱えてゲラゲラ笑えて幸せでした。これは「それは予想つかんかったわ!」という斜め上すぎる展開に対して笑いであるので、ぜひ皆さんも展開を予想してみることをオススメします(たぶん外れます)。
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6:実は切ないラブストーリーでもある!ガル・ガドットの“悲しみ”と“嬉しさ”が同居している表情に注目!
本作は前述したように超がつくほどの豪華キャストが出演しており、特にクズおじさんを演じたケヴィン・コスナーの悪逆ぶりとかわいらしさ、CIAエージェントの妻を演じたガル・ガドットの“悲しみ”と“嬉しさ”が同居した表情には、強烈な印象が残りました。
詳しくはネタバレになるので書けないのですが、このガル・ガドットの表情こそが、筆者がこの映画で一番感動したポイントでした。その卓越しら演技もさることながら、これまで少しずつ見えていた“想い”が溢れ出るシーンでもあるからです。
『ワイルド・スピード』シリーズや『バットマン vs スーパーマン』でガル・ガドットを知った方は、「こんなにすごい女優だったのか!」ときっと驚けることでしょう。“娘”との関係にもグッとくるものがありますよ。
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7:入れ替わってばっかり?不憫な役ばかりのライアン・レイノルズも要チェックだ!
本作で“記憶を移植されてしまう”男を演じたライアン・レイノルズは、実は過去の映画で身体を乗っ取られたり、入れ替わったりしていた忙しいお方です。
2015年の『セルフレス/覚醒した記憶』で、ライアン・レイノルズは大富豪の脳を移植された若者を好演していました。本作『クリミナル』とは“徐々に何かの記憶が蘇る”、“妻や子どもが重要な存在になる”など、共通点も多かったりします。
2011年の『チェンジ・アップ/オレはどっちで、アイツもどっち!?』はハリウッド版『君の名は。』と言うべき内容(?)です。家族や仕事に恵まれても“責任感”にお疲れ気味の男と、俳優の仕事がパッとしないけど独身でモテモテな男が入れ替わるというもので、「隣の芝生は青く見えるけど……」「自分の人生を見つけ直そう」という教訓も得られる、あなどれない作品でした。
で、そんな風に“別人格”を演じてきたライアン・レイノルズが、本作では冒頭であっさりと死んで、ケヴィン・コスナーの中で生き続ける(?)男を演じるわけで。出演時間は短いながらも、映画全体でその“存在”を感じさせる重要な役になっています。レイノルズファンにとっても必見でしょう。
8:実は感動的!“ラストのチラ見せ”をよく覚えておこう!
実は、本作は冒頭で“ラストをチラ見せ”していたりします。こうしたラストのチラ見せは“結末がわかってしまう”ためにストーリーへの興味が削がれる、という点で逆効果を生んでしまうことがままあるのですが……本作では全く違いました。このラストのチラ見せが、しっかりと物語全体に影響を及ぼしているのです。
それでいて、このラストのチラ見せがネタバレになっているということもありません。ぜひ、冒頭のこのシーンでの“言葉”をよく覚えておいてから、物語を楽しむことをおすすめします。伏線が丁寧に張られているおかげもあり、ラストには思いがけない感動がきっとあるはず!
前述したようにあらゆるジャンルの魅力が混在していることですし、物語はテンポよくラストに突っ走るので、万人が楽しめる快作と言い切っていいでしょう!映画ファンはもちろん、“クズなおじさん萌え”という新境地を開拓したい方に、この『クリミナル 2人の記憶を持つ男』を大プッシュでおすすめします!
(文:ヒナタカ)