「エグゼイド&ゴースト」製作委員会 (C)石森プロ・ テレビ朝日・ADK・東映
現在放送中の『仮面ライダーエグゼイド』はゲームをモチーフにしたライダーです。特撮好きの筆者が、元週刊ファミ通編集長でゲームに精通している元上司・バカタール加藤に作品の感想を聞いてみたいと思っていたことからインタビューを実施。
12月10日(土)公開の映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』について、ジャスト初代ライダー世代のバカタール加藤が語ります!
パックマンが登場することの意味とは?
大谷 今回の映画はパックマンも登場しますし、ゲーム黎明期を知っている加藤さんにお話を伺うのにぴったりのタイミングだなと思ってお願いしたんですが、テレビ放送の番組は観てますか?
加藤 観たいとは思っていたんだけど、なかなか時間がとれなくて1回しか観れてません。でも、ゲームがどういう風に扱われているのかっていうのは気になってはいました。
大谷 主人公がゲームで患者さんとコミュニケーションをとっていたり、戦いの中でも横スクロール系のゲームをイメージしたものとか、音ゲーとか格闘系とかいろんなゲームが取り入れられてるんですよ。でも実在のゲームキャラクターが登場したのはパックマンが初です。映画はどうでしたか?
「エグゼイド&ゴースト」製作委員会 (C)石森プロ・ テレビ朝日・ADK・東映
加藤 まず、この映画はパックマンが敵であることに意味があるな、って感じました。
大谷 敵であることに意味がある、というと?
加藤 ゲーム創世期に生まれたインベーダーの次くらいに誕生したのがパックマンなんですけど、キャラクター性があって可愛かったり、主人公がカラフルになったり、ゲームに多様性が生まれるきっかけになった最初のゲームなんです。単純なアイコンですけど、パクパク何かを食べながら動く姿に愛嬌があるじゃないですか。その要素がうまく使われていたところがすごくよかったですね。
大谷 意志を持った最初のゲームキャラクターとゲームを扱った最新の仮面ライダーの戦いってことですね。
加藤 そうですね。元々のパックマンらしさも、時代の流れを感じるところもどちらもあって、僕はやっぱりパックマンのシーンで嬉しくなりました。
大谷 加藤さんと同年代くらいの方なら特に、懐かしさとか嬉しさを感じる方も多いんでしょうね。
加藤 ちなみにパックマンは今でも記録が更新されていたり、ギネスにも載っていたり、アメリカでは未だに愛されていて世界的にも人気がある。そういう意味では、ただのレトロゲームというよりゲーム史的にも意味がある、象徴的なゲームですね。
大谷 へぇ~! 私は知ってこそいましたけど、遊んだことはなかったし、そんなに歴史があるゲームだとは知らなかったです。
加藤 イマドキの人でも、ゲームをやっていなくても、きっとパックマンは知ってるでしょ? 黄色い丸が欠けただけの、食べかけのピザみたいなシンプルな見た目だけど、当時はまだその程度の表現しかできなかったんですよ。でも、ゲームのパッケージはちゃんと顔が描かれている。だから、あのシンプルなピザみたいな絵に、どれだけの思いが込められていて、今の人気につながっているか。そこに表情が生まれて、怖い顔になったり、巨大化して襲ってきたりするというのはゲームファンとして、感慨深いものがありますね。
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大谷 パックマンといえば、「仮面ライダーゴースト」とパックマンの敵のゴーストが掛かっていたんですね。劇中で語られるまでわからなかったんで「わぁ~!」って思いました!
加藤 うんうん。あれはすごい。パックマンと戦うことがどの段階で決まったのか、聞いてみたいですね。
–{ゲーム製作者と仮面ライダーの関係について}–
仮面ライダーとゲームの一周した関係
大谷 加藤さんは初代仮面ライダーを観ていた世代なんですよね?
加藤 そうです。仮面ライダー1号は自分が小学校低学年の頃ですね。その頃は当然「仮面ライダーってかっこいい!」という気持ちがあって、バイクが好きになったし、大きくなったら乗りたいって思うわけですよ。将来はバイクショップの店員になりたいな、とか。
大谷 仮面ライダーが、憧れの大人像みたいな感じ。
加藤 それが今の子供達って、バイクどころか車からも離れちゃってるじゃないですか。メカとかマシンを操縦する楽しさとか、モノとしてのカッコよさとか、古い男子的な価値観と変わってきている。じゃあそれに代わるものが何かと考えると、小さい頃から操縦する楽しさを感じられるものがゲームだったり、ゲームが上手い人がかっこいいみたいなことにもなってる。熟練や免許が必要なものって、遠いものになっているんじゃないかな。だから、ゲームが仮面ライダーのモチーフになることに時代の流れを感じるよね(笑)。
大谷 仮面ライダーが時代を映しているわけですよね。
加藤 そうですね。ゲームって、コンピューターができることのひとつでしかなかったし、もともとは異端児みたいなもので。僕が「ファミコン通信(週刊ファミ通の前身誌)」に入った頃はコンピューターの黎明期で、実用書や解説書を作っている人たちから見たら、コンピューターで遊んでる奴らっていう感じだったんですよ。ゲーセンなんて不良のたまり場だったし、クールジャパンとは程遠いものだった。
大谷 確かに! 実際には見たことないけど、不良ってゲーセンでカツアゲしてるイメージあります(笑)。
加藤 その中からいろんなゲームが生まれて、徐々に魅力的なものに変わっていったわけで、僕らはいかにゲームが面白くて素敵なものなのか、広めていかなきゃいけなかったんですよ。でも、今は小さい子供から大人まで誰でもやっているように、普及しきってひとつの文化として確立した。それが仮面ライダーのモチーフになっているっていうのは僕から見ると一周しちゃってるように見えるんですね。
大谷 見終わった後に「ゲームをやっていた世代が仮面ライダーを作る時代になっている」っていうお話もしてましたね。
加藤 僕はゲーム製作者の話を聞くことも多いんですが、彼らは「変身!」という言葉に、いかに子供時代にワクワクしたかというのを語るわけですよ。「俺がゲームを作ったら、仮面ライダーを見て感じたものをどう取り入れる?」「ゲーム的な表現にするならどうする?」って生まれたゲームもあるんです。仮面ライダーが子供達にとってかっこいいものであり続けてきたから、その感情をゲームっていう文脈に移植して、コンピューター上で操作して面白いものに置き換えてきたんですよね。それが今や、仮面ライダーを置き換えてきたゲームという文化を、さらに仮面ライダーの中に入れ直してみようってことになってるわけじゃないですか。そこが興味深いし、なるほどって思う部分もある。
大谷 時代の流れによって、入れ子式になってきていると。
「エグゼイド&ゴースト」製作委員会 (C)石森プロ・ テレビ朝日・ADK・東映
加藤 影響を与えたものがさらに返ってくる、っていう。パンチ、キックって、ゲームの必殺技のハシリじゃないですか。でも、そもそもライダーキックが先ですから。だから、ライダーが敵を倒して「ゲームクリア!」っていうのも一周してるんですよ。
大谷 おおお、なんだかわかるような混乱してきたような…。でも、ゲームはゲームでさらに進化してますよね。特に今年は家庭用のVRも発売されて。
加藤 そうなんですよ。「エグゼイド」でも、AR(拡張現実)とVR(バーチャルリアリティ)の両方が演出されているのが面白いですね。「ゲームスタート」で、劇中の現実世界にブロックなんかが現れるのがAR的で、最後に敵の中に入って戦うのがVR的。今時のゲームの技術やあり方が投影されているところもすごいなぁと思いました。
大谷 一方で、3頭身の変身フォームっていうのはゲームキャラの原点回帰でもありますよね。
加藤 そうそう。昔はスペック的に2頭身以上のキャラって動かせなかったから、その時代を思い起こさせるよね。ゲームキャラが人間みたいな頭身になったのはだいぶ後のことで、エグゼイドも変身のレベルが上がることで頭身が上がって自由に動けるようになるし、強くなる。そこはゲームの歴史として正しいというか、ゲーム文化に対するリスペクトを感じましたね。
–{お父さん目線でバカタール加藤が語る今作の魅力}–
大人が子供に見せるべきかっこいい姿を代弁するヒーロー
大谷 では、今作で特に加藤さんが見所だと思ったところは?
加藤 やっぱりひとつには、ヒーローの共演ですね。ヒーローが集まるとワクワクするのはゲームも一緒ですし。
大谷 「スーパーロボット大戦」的な?
加藤 たしかにゲームだと「スパロボ」とか「スマブラ」とか、お祭り的な感じですよね。別の世代のライダーが一緒に戦うところにまずワクワクするし、ライダー同士がどう絡んで、どういう立ち位置で一緒に戦うのか、いろんなシーンで描かれるのが楽しい。あと、「ゴースト」があの人物のアイコンで戦うところもある意味お祭りで。
大谷 そして、ある意味でゲームを彷彿とさせる要素でもありましたね(笑)。
加藤 それに、めちゃめちゃ濃い戦いでアクションシーンもすごくて、特に後半のノンストップアクションは圧巻でしたね。
大谷 それぞれのライダーの見せ場もしっかりとあって。アクションシーンのBGMで、それぞれのライダーの主題歌が流れるたびにドキドキしました。リアルタイムで観ていた当時のことを思い出して、懐かしい気持ちにもなるというか。
「エグゼイド&ゴースト」製作委員会 (C)石森プロ・ テレビ朝日・ADK・東映
加藤 ウチの子供達はもうライダーを卒業してしまったんだけど、「あのライダー好きだったじゃない?」って僕から誘ってみるのもいいなって思いましたね。そうそう、「ドライブ」の泊進ノ介が成長していたというか、男の魅力が上がってたのもグっときたところでしたよ。
大谷 別シリーズのアフターストーリーが描かれているところも嬉しかったですよね。
加藤 そうそう、ドライブは刑事として、エグゼイドは医者として人の命を守るっていうのが描かれていたのが、当たり前のようですごくよかった。それは子供たちにとって大事なメッセージだと思うんですよ。僕は命をかけて戦う大人たちが、それを仕事としてやっているのはかっこいいと思っていて。大人が一生懸命仕事を頑張っている姿がかっこいいものとして描かれているし、ライダーとしても医者としても戦うっていうところが一致していてかっこよくて、そこが意外と心に響きましたね。
大谷 人の命に関わる仕事じゃないけど、私も命をかけて仕事したいな、しなきゃなって、自分を省みました。大人にも刺さる部分だと思います。
加藤 ニュースでは医者とか警察とかの変な事件も報道されたりするけど、大多数の大人はそうじゃない。現実世界にも命をかけて人を助けようとする人がいるというのは、大人から子供へのすごく大事なメッセージだし、安心して見てほしい作品だなって思いました。父親としては息子に、弱きものを助け、仲間を助けなきゃっていうマインドを培ってほしいですしね。それが社会を動かすマインドだからね。そこをちゃんと描いている映画だなって思いました。
大谷 お父さん目線ですね~。
加藤 あと忘れちゃいけないのが、ヒロインのポッピーピポパポが可愛かったこと!
大谷 あれ?いい話をしていたのでは…?
加藤 でも「ゴースト」のあかりも可愛かったし、どっちも好みでした! 可愛い系と綺麗系、どっちがいいかなって迷いながら見てました。
大谷 これだからおじさんは…! それじゃ別のゲームになっちゃいますから(呆)!
仮面ライダーファンはもちろんゲームファンも必見の映画『仮面ライダー平成ジェネレーションズ Dr.パックマン対エグゼイド&ゴーストwithレジェンドライダー』は12月10日(土)公開です。お父さんもお子さんと一緒に観てみてはいかがでしょうか?
また、バカタール加藤のゲーム談義をもっと聞きたいという方は、餃子や美人コスプレーヤーさんが登場する番組などが見られる「世界で一番役に立たないゲームチャンネル」をチェックしてみてください!
バカタール加藤
週刊ファミ通編集長、週刊ファミ通主筆、Walker47編集長等を経て、現在はカドカワ(株)、BO編集部にて、ニコニコチャンネル「バカタール加藤の世界でいちばん役に立たないゲームch.」編集長を務める。
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(編集・文:大谷和美)