(C)2016「君の名は。」製作委員会
『君の名は。』は2016年から2017年にかけて、興行収入250億円を突破する、とてつもない記録を打ち立てました。
本記事では『君の名は。』を劇場で5回観た筆者が、気付きにくい“盲点”をまとめてみます。
※本記事は筆者個人の解釈を元にしております。参考としつつ、みなさんなりの解釈を見つけてみていただけたら幸いです。
なお、1ページ目には大きなネタバレはありませんが、2ページ目からは重大なネタバレに触れていますので、まだ観ていない方はご注意ください!
- 1.男子高校生3人がカフェ巡りをしている理由は?
- 2.作戦会議の部屋にあった懐かしのアイテムとは?
- 3.背中合わせになっているクレーンが意味するものとは?
- 4.月の形が示すものとは?
- 5.空を飛ぶトンビにも注目!
- 6.瀧と三葉は時間のズレに気づいていた?
- 7.オープニングでの2人の身長差に注目!
- 8.『言の葉の庭』の物語はなくなっていたかもしれない?
- 9.三葉の父は、なぜ三葉に「お前は誰だ」と言った?
- 10.パラレルワールドが作られていた?
- 11.瀧は就職活動にめっちゃ苦労していた!
- 12.ラストシーンは“雨上がり”だった!
- 13.メインビジュアルにも秘密があった!
- 14.この『君の名は。』をスクリーンで観られることは、大変な幸運だ!
- 15.他にも色々!『君の名は。』関連記事!
1.男子高校生3人がカフェ巡りをしている理由は?
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瀧(中身は三葉)は、友達の司と真太に誘われて、東京のカフェに行きます。しかし、男子高校生の趣味がカフェ巡りなんて、ちょっと変わっていますよね。
カフェに行った時の会話をよく聞くと、司と真太は「あの木組みがいいね。」「手がかかってんなあ。」と、カフェの内装に感心していました。つまり、瀧を含めたこの3人は建築物に興味があった(建築物ファンだった)ために、カフェ巡りをしているんですね。
これは、瀧がスケッチで糸守町の絵を描けたことにもリンクしています。瀧は建築物好きで、風景や建物を気にしているからこそ、夢が覚めても絵としては覚えておくことができたのでしょう。(三葉の体に入っていた瀧が、デッサンの授業で建物を描いているシーンもありましたね)
ちなみに、瀧は糸守町の風景をはっきり覚えているわけではなく、スマホで飛騨の山並みを検索しながら絵を描いていたりもしていました。(小説版では「記憶の中の風景とマッチしている稜線を探している」とあります)
そういえば、瀧は奥寺先輩とのデートで、偶然(三葉がいた)飛騨の写真を見ていました。夢の中の記憶はすぐに薄れてしまうものですが、瀧は“現実”でその風景を見ることができたため、記憶に留めておくことができたのでしょう。
2.作戦会議の部屋にあった懐かしのアイテムとは?
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三葉(中身は瀧)とテッシーとさやちんが“作戦会議”をしていた部屋の扉には“廃部につき立ち入り禁止”の張り紙があり、そこには“1995.4”とも書かれていました。三葉のいる世界から数えて、もう18年前に廃部になっていたのですね。
他にも、扉には“天文部”、“マイコン部”、“アマチュア無線部”、“地質研究学部”の看板それぞれに大きな「×」が書かれており、部そのものもどんどん変わっていったようです。生徒数の少なそうな田舎の学校なので、部員が足りなかったのでしょう。
そして、その部室の中には、時代を感じさせる懐かしのアイテムがたくさん置かれています!
ゲーム機の“ファミリーコンピューター”と“プレイステーション”と“ゲームキューブ”、PS one Books(廉価版として発売されたバージョン)の『メタルギアソリッド』のパッケージ、シャープのパソコン“X68000”のほか、入り口近くの壁には若い人はまず知らないであろう“ペナント”が貼られていたりもしました。ペナントのひとつには“EXPO70”と書かれており、これは日本万国博覧会のものですね。
新海誠監督もTwitterで発言されています。
ありますよ。ほら。 https://t.co/oNkaM2Ap8n pic.twitter.com/n6Yf61hb9d
— 新海誠 (@shinkaimakoto) August 29, 2016
このうち、1995年“以前”を象徴するものはファミリーコンピューター、プレイステーション、X68000、ペナントですね。ゲームキューブやPS one Books版『メタルギアソリッド』は1995年以降に発売されたものなので、生徒の誰かがこっそり部屋に持ち込んで、教師の目を盗んで遊んでいたのかもしれません(笑)。
3.背中合わせになっているクレーンが意味するものとは?
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瀧が糸守町のスケッチをしていたとき、建設に使うクレーンが“背中合わせ”になっている画がありました。これは瀧と三葉それぞれを象徴しているのでしょう。オープニングでは、同じように瀧と三葉が背中合わせになっていたのですから。
よく見ると、左のクレーンのほうが高く、右のクレーンのほうが低くなっており、これはそのまま瀧と三葉の“身長差”を示しています(2人の身長差にはさらなる秘密があるのですが、それはネタバレになるので後に書きます)。
その他にも、瀧と三葉の2人を示しているアイテムに“茶柱”があります。終盤で三葉(中身は瀧)が持っていた湯のみの中のお茶には、茶柱が2本立っていたのです。“茶柱が立つ”というのは吉兆のしるし。この後の2人の“幸運”を示していたのでしょう。
※次ページからは大きなネタバレに触れています!
–{次ページからは大きなネタバレに触れています!}–
4.月の形が示すものとは?
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実は、作中では“月の形”が変化していっています。
(1)オープニングの一番初め:“真下に向いている三日月”
(2)三葉との入れ替わりがなくなったとき:“十字に交わった電線に重なる満月”
(3)瀧がスケッチを描いていたとき(クレーンの右に月がある):“左上向きの半月”
(4)飛騨の旅館での夜空:“右下向きの半月”
(5)瀧と三葉が“カタワレ時”に再会したとき:“右下向きの三日月”(彗星の進行方向と同じ向き)
(6)糸守町が救われた後、瀧の就職活動中:“十字に交わった電線に重なる満月”
結論から言えば、この月は “入れ替わりの現象が起きるか起こらないか”、“完全な世界になっているか”、“片方がいなくなった世界か”を示しているのではないでしょうか。
(2)の満月のとき、入れ替わりの現象は起きなくっているだけでなく、 三葉側の視点で“彗星が落ちて三葉たちや糸守町の人たちが亡くなった”という“結果”が提示されます。三葉が死んだことにより、3年前の瀧が彗星を見ていた世界と、三葉がいた世界が完全に“つながった”と考えられるのです。満月はそのような“完全”の象徴、電線が十字に交わっているのはそのまま2人の世界が交差していることを示しているのでしょう。
(3)と(4)では月は“半月”になっています。しかも、ラーメン店にいる瀧のシャツには“HALF MOON(半月)の文字”と“左上向きの半月の絵”が書かれていました。これは瀧が“もう片方(三葉)がいない世界”にいるということでしょう。
(5)では月は“三日月”へと変わっています。ここで連想したのは、かつて夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したことです。瀧は三葉の手のひらに“すきだ”と書いていたのですが、そのときに漱石が遠回しに“好き”を表現するために用いた“月”が出ているうえ、“三日月”と“三葉”という“名前”がシンクロしているのです!三葉が手を開いて“すきだ”を見る前にも、ちゃんと瀧が三葉に告白したことがわかるんですね。
そして、(6)では(2)と同じ“十字に交わった電線に重なる満月”が再登場しています。これも入れ替わりの現象が起こらなくなったこと、辻褄の合う完全な世界になったことを示していますが、(2)とは“三葉が生きている世界になった”ということにおいて、はっきりとした違いがあります。
そして2人は巡り会います。入れ替わりの不思議な力がなくても、偶然であるが、運命的でもある“魂が名前を覚えていた”という形で……。
5.空を飛ぶトンビにも注目!
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劇中には、“トンビ”が以下のように登場しています。
(1)瀧と司と奥寺先輩がラーメン屋で糸守町のことを聞いた後:上空に2匹のトンビが飛んでいる(とても高い位置に1匹、低い位置に1匹)
(2)そのすぐ後、瀧が壊滅した糸守町を見たとき:瓦礫を見下ろした画で、トンビが“低い位置”で飛んでいる
(3)瀧がご神体に向かうとき:曇り空にトンビが“高い位置”で飛んでいる
(4)大人になった瀧と三葉が出会う直前:入道雲をバックに、2匹のトンビ(黒い小さなシルエット)が“ほぼ同じ、ものすごく高い位置”で飛んでいる
このトンビは瀧の気持ちそのものでしょう。(1)は“三葉のいる場所には届かない”ということ、(2)は絶望的な気持ち、(3)は曇り空でも“三葉とまた会える希望”、(4)はまた三葉と巡り合うということ……“トンビが飛ぶ高さ”が感情の浮き沈み、希望の大きさを示していたのです。
ちなみに、入道雲はオープニングでも登場しており、瀧と三葉はそれぞれ入道雲に手を伸ばそうとしていました。入道雲は(2人が会うことができるという)“夢”や“希望”の象徴なのでしょう。なお、『時をかける少女』や『おおかみこどもの雨と雪』などの細田守監督作品にも、同じような形で入道雲が登場しています。
6.瀧と三葉は時間のズレに気づいていた?
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『君の名は。』で多くの人がツッコむのは、“2人が時間のズレに気づかないのはおかしい”ということです。確かに3年のズレなので必然的に曜日は異なりますし、スマホで日記もつけているのですから、“気付けよ!”と思うことは当然です。
しかし、瀧と三葉はそれぞれ“時間のズレに気づいていたけど、それを無意識的に見ないようにしていた”と思わせるところがありました。
その1つが、三葉(中身は瀧)がご神体へ行く“休日”の朝に制服を着ていて、妹の四葉に「なんで制服着とんの?」と言われることです。瀧は曜日のズレに気づいておらず、平日だと思い込んでいたのでしょう。
また、三葉が東京に瀧に会いに行った日は明らかに平日であり、三葉は学校をサボっていました。しかし、高校生の瀧が平日の午前中からデートをすることなんて、ありえないでしょう。当然、2013年の中学生の瀧は、デートなんてしておらず、電車の中で単語帳を使って勉強していたようでした。
その日のうちに糸守町に帰ってきた三葉は一葉おばあちゃんに髪を切ってもらい、次の日(彗星が落ちる、秋祭りの当日)にも三葉は学校を休んでいます。彼女は“瀧が自分のことを覚えていなかった”ということに混乱しすぎてしまい、“失恋”の気持ちも手伝って深く悩んだため、“時間がズレていた”という真実からも目を背けていたのではないでしょうか。
なお、三葉は自分で瀧と奥寺先輩のデートプランを考えていたはずなのに、その場所には行かず、待ち合わせ場所の四ツ谷駅や、その周り(瀧が三葉に電話をかけていたときの歩道橋や、ラストシーンの階段にも行っている!)をウロウロしています。おそらく、三葉は瀧と奥寺先輩が一緒にいるところを見たくなかったのでしょう。そのときには、もう瀧に恋をしていたのですから。
7.オープニングでの2人の身長差に注目!
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オープニングは、前述の(1)の“真下に向いている三日月”が示された後、瀧と三葉が背中合わせで立っているシーンから始まります。この時点では瀧と三葉はほぼ同じ身長なのですが、すぐに三葉の髪紐が解けて、同時に瀧の身長だけがぐっと伸びて三葉よりも身長が高くなるのです。
つまり、“3年前の中学生の瀧”が、パッと“高校生の瀧”へと変わっているのです(瀧の制服も中学から高校のものへと変わっています)。しかし、“高校生の三葉”は髪を切っただけで、身長を含めてそのまま姿でした。これは、3年分の歳をとった瀧が、(死んで時間の止まってしまう)3年前の三葉と入れ替わるという、後の展開を暗示していたのでしょう。
オープニングでは瀧と三葉が大人の年齢になっていたり、憂いを帯びた表情で髪紐を見つめる三葉の姿もあります。ここから察するに、オープニングは“糸守町の人々が救われた後の世界”をも描いていると言ってもいいでしょう。
なお、ラストシーンで大人になった瀧と三葉が階段ですれ違ったとき、その身長はほぼ同じように見えました(瀧はちょっと猫背だったので、実際は瀧のほうが身長は高いかも)。こういうところでも、2人の時間の流れがわかるのです。
8.『言の葉の庭』の物語はなくなっていたかもしれない?
※以下の項目は、『言の葉の庭』の軽めのネタバレに触れています。核心的なネタバレではありませんが、未見の方はご注意ください。
序盤に登場した“ユキちゃん先生”は、新海誠監督の中編『言の葉の庭』の雪野百香里先生と同一人物とされています。
小説やパンフレットでは、なぜ東京にいたはずの雪野先生が糸守町に来ていたのか?ということは明言されていないのですが、雪野先生が授業をした2013年9月は『言の葉の庭』の劇中において、とある理由により休職していた雪野先生が、久しぶりに学校に訪れた時期と重なっていました。
おそらく、雪野先生は“復職するためのリハビリ”として糸守町で教鞭を取っていたのでしょう。『言の葉の庭』において、雪野先生は主人公の少年の孝雄に「みんなに知られていたと思ったけど、君は違う世界を見ていたのね」と言っており、それは“違う場所なら教師として受け入れられる”という自身の希望も示していたと解釈できます。
また、雪野先生の出演シーンはこれだけでありません。10月4日の秋祭り当日、避難の放送を流したさやちんが泣きながら連れて行かれるとき、雪野先生は後ろからさやちんを心配そうに見ていました。さらに、雪野先生は彗星が割れた光景も目撃していたのです。
『君の名は。』で糸守町のみんなが救われていなければ、『言の葉の庭』の物語はなかった(完結しなかった)、とも取れるのです。
※筆者の解釈であり、オフィシャルの見解ではございません。
–{ラストシーンにも秘密があった!}–
9.三葉の父は、なぜ三葉に「お前は誰だ」と言った?
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三葉の父は、突然仕事場に訪問して“彗星が落ちてみんなが死ぬ”と言い出した三葉(中身は瀧)を一度は出て行けと非難するものの、彼女が首を掴んだときは「お前は、誰だ!?」と問いただしています。
目の前の娘が違う誰かになっているなんて、いくら食ってかかられたとしても、普通では考えられることではありません。この「誰だ!?」は、三葉の父が宮水家および、故人である妻の双葉が糸守町で“特別視”されていた、常識的ではない価値観および“力”を持っていたことを知っていたからこそ、出てきた考えなのでしょう。三葉の父が宮水家の力に否定的なのは、「妄言は宮水家の血筋か」というセリフからもわかります
なお、三葉の父の経歴や過去は、特別編の小説『君の名は。 Another Side:Earthbound』で読むことができます。これから読む方のために詳細は伏せておきますが、三葉の父が彗星をどう思っていたか、最後にやってきた娘の三葉にどういう想いでいたかが、よくわかるようになっています。ぜひ、読んでほしいです。
余談ですが、彗星の名前の“ティアマト”とは、人間の女性の上半身と蛇の尾を持った姿をしている、メソポタミア神話の女神の名前です。ティアマトの体は2つに引き裂かれて、それぞれが川や山などの世界の素材となったと言われており、まさに名前が“彗星が2つに割れる”ことを暗示していたのです。
10.パラレルワールドが作られていた?
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彗星が落ちた秋祭りの日、2013年10月4日は、劇中で2回繰り返されています。
1回目の2013年10月4日:前日の夜に髪を切ってもらった三葉は学校を休み、夜にさやちんとテッシーと出会って、短い髪型に驚かれる。そして彗星の墜落により三葉は死ぬ。
2回目の2013年10月4日:再び三葉の体に転生した瀧は、朝から学校に行ってさやちんとテッシーと出会い、髪型を「前のほうがよかった?」と軽く流す(笑)。その夕方、御神体にいた瀧(中身は三葉)と三葉(中身は瀧)は再会を果たし、2人はもとの体に戻る。
つまり、三葉は死んでから、同じ日を(夕方から)もう一度“生き直して”いるのです。これは時間が巻き戻ったというよりも、“パラレルワールド”(もとの世界とは関係のない世界)が作られた、と解釈するべきではないでしょうか。
瀧がご神体の口噛み酒を飲んで三葉に転生するとき、瀧は“三葉が生まれてから彗星で死ぬまで”を見ていました。これは、三葉という命が生まれた世界が、再構築されたことを示しているようにも思えるのです。劇中歌「前前前世」の1フレーズ「むしろ0からまた宇宙をはじめてみようか」ともリンクしていますしね。
11.瀧は就職活動にめっちゃ苦労していた!
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瀧は就職活動中「スーツ姿が似合わない」と言われてしまったり、友人と違って内定がまだ0社という屈辱を味わっていました。このとき、街頭のテレビでは“彗星墜落から8年”とあるので、もう10月4日、瀧は通常であれば“内定式”が行なわれているであろう時期まで、就職活動をがんばっていたのです!また、瀧が面接官に必死に主張している内容は、彼が建築物ファンだったこととリンクしていましたね。
そしてラストでは春になり、瀧は無事に就職して、同じ通勤路で仕事に向かうという毎日を過ごしていたようです。ちゃんと就職できてよかった!
また、この“就職活動”という題材は、『君の名は。』と同じく川村元気さんがプロデュースを務めている、2016年10月15日公開の映画『何者』と共通していますね。
12.ラストシーンは“雨上がり”だった!
ラストシーンは、階段で(年上の)三葉が上から、瀧が下から来て、すれ違いそうになるも、瀧が呼び止める、というものでした。
この階段が表しているのは“時間”です。階段の上りが(瀧の)“通常の流れている時間”であり、三葉は瀧のいる時間に行くために階段(時間)を下っていると考えることができるのです。
これは、おばあちゃんの一葉が、「寄り集まって形を作り、ねじれて絡まって、時には戻って、途切れ、またつながり。それが組紐。それが時間。それがムスビ」と語っていたこともつながりますね。時間、人のつながり、それは一期一会の、とても大切なことなのです。
また、ラストシーンはじつは“雨上がり”でした。そこらに、水滴や水たまりが見えるのです。
映画の雨は登場人物の“涙”を表すことがままある(劇中でも瀧が雨の中、ご神体を目指すシーンがある)のですが、このラストでは“雨上がり”だけを映すことで、“これまでふたりは泣いてきたけど、その後の爽やかさだけが残っている”という素晴らしい表現になっています。
13.メインビジュアルにも秘密があった!
以下のメインビジュアルは劇中には存在しないシーンになっています。
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瀧は階段を登りながら三葉に「早く来いよ」と言っているようにも見えますが、三葉はそこにポケッと立っているだけ、もしくはその声が聞こえていないようにも見えるのです。これは、三葉が死んでしまい、瀧の時間に追いつけなくなっていたということを示している、彗星が落ちて三葉が死んでしまう世界の物語を示しているのではないでしょうか。
また瀧の体は影に隠れています。中盤のデートで、瀧からの夕食の誘いを断る奥寺先輩が“影のあるところ”に歩いていったのと同じように、これは瀧が“物語から離れている(物語の当事者ではない)”ことを示しているようにも思えました。
しかし、映画の本編のラスト、彼らは時を経て、運命的に巡り合う!これ以上のハッピーエンドがあるでしょうか!
14.この『君の名は。』をスクリーンで観られることは、大変な幸運だ!
中学生の瀧が、ただひたすらに美しい彗星を見たとき、テレビのリポーターは「このような現象を日本で目撃できていることは、この時代に生きる人たちにとって、大変な幸運と呼ぶべきでしょう」と語っていました。
この言葉は、まさにスクリーンでこの映画を観ている、我々観客と重なります。新海誠監督のいままでの作品の魅力が結集し、美しい背景描写、エモーショナルな音楽、感情をつねに揺さぶられるエンターテインメント性、大切なものや人を現実でも探したくなるメッセージ性、何度でも観たくなる奥深さ……『君の名は。』という作品は、作中で起こる“奇跡”と“運命的な巡り会い”と同様に、スクリーンで観られることが“幸運”と呼ぶほかのない、大傑作なのですから。
自分は5回観たおかげでこれらのことに気づけましたが、まだまだ気づいていないことはたくさんあるはずです。ぜひ、『君の名は。』をリピートする方は、さらなる“盲点”を見つけてみてください!
15.他にも色々!『君の名は。』関連記事!
ここまで14の盲点を解説してきましたが、これで『君の名は。』の全てを語り尽くせたわけではありません。
この奥深い作品をより堪能するために以下の記事も是非お読み頂き、みなさん自身の解釈も併せて作品をより深く堪能してみてください。
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(文:ヒナタカ)