映画を撮れないのは苦しいけど、くだらねぇ映画なら撮りたくない!『クズとブスとゲス』初日舞台挨拶

INTERVIEW
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はじめましての方もそうでない方もこんにちは。

八雲ふみねです。

01

突然のゲリラ豪雨にビックリ!!!
この季節、急な雨に注意ですよね〜。

さて。

八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.71
今回は。

『クズとブスとゲス』初日舞台挨拶模様をお届けします。


 

02

女を騙して金を巻き上げ、生計を立てて暮らす卑劣な男。
しかしヤクザの女に手を出してしまったために逆に恐喝されたその男は、新たな獲物に狙いを定める。
それはカタギになろうと必死にもがく前科者の恋人だった。
真っ逆さまに転がり続ける彼らの運命に、明日への希望はあるのだろうか…。

03

口当たりのいい映画ばかりが氾濫する現代の日本映画界に、殴り込みをかけるような映画が誕生した。
その名も『クズとブスとゲス』。
タイトルからして強烈ですが、メガホンを取ったのは、若干24歳にして『東京プレイボーイクラブ』で商業映画デビューを飾った奥田庸介監督。
今回は自ら主演も務め、社会適応力ゼロな人間たちが繰り広げる血と暴力と涙の物語を鮮烈に描き出しました。
その熱量はハンパなく、アクションはすべてリアルファイト、流れる血は本物。
本番中にビール瓶で自分の頭をカチ割り、病院送りになって撮影が中断したこともあったとか。
通常の映画づくりを無視したような規格外の作風に度肝を抜かれ、第16回東京フィルメックスではスペシャル・メンションが授与された一作です。

そんな『クズとブスとゲス』初日舞台挨拶に、奥田庸介監督と岩田恵里さんが登壇。
八雲ふみねが司会を務めました。

–{前作から4年。その間、奥田庸介が考えたこととは…。}–

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監督・脚本、さらにスキンヘッドの男役を自ら演じた奥田庸介監督。

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どうしようもないリーゼントの男。その恋人役を演じた、岩田恵里さん。
「はじめての映画出演作品の公開日。ドキドキしています」と、笑顔。
この日、リーゼントの男役の板橋駿谷さんも登壇予定でしたが、急性胃腸炎のため欠席。
「本人はすごく来たがってたんですけどね。(この場に立てなくて)悔しいと思います」と、板橋さんの思いを代弁する奥田監督。

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前作から4年ぶりとなった新作公開。
それまでには様々な出来事があり、映画制作から離れなければならない時期もあった奥田監督に、この4年間の思いを伺うと…。
「苦しかったですね」と、本音を吐露。

「映画に打ち込んできた人生なので、撮れないのは苦しかった。でも、くだらねえ映画は撮りたくない。表現の世界にいるのだから(中途半端なものを撮るぐらいなら)撮らない方がましだと思っていたんですが…。撮れないは撮れないで、やっぱり辛いんですよ」。
いわゆる“映画ビジネス”と自らのクリエイター魂。
理想と現実との狭間で苦しんだ経緯を赤裸々に語って下さいました。

そして、まさに命を削るように手がけた本作の制作について「今回は演出と出演で、肉体的にはキツかったですね。でも、これくらいのテンションでいった方がいいんじゃないかと。若いのにこじんまりとするのもね…」と、制作現場を振り返ります。

そう、とにかくこの映画、ハジけっぷりがすごいですからね。
ビール瓶で頭かち割って12針縫ったり、まさに命削ってます!?

–{映画初挑戦の女優から見た“奥田組”は○○な組?!}–

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一方、本作が初めての本格映画出演となった岩田さん。
「映画のオーディションを受けたのも初めてでした。撮影中は、映画の現場はこういうものかと思っていたのですが。皆さんから聞いたら違うみたいで(笑)。スタッフが男衆で、士気の高い現場でした」と、なかなか肝のすわった女優魂を披露。
すると奥田監督、「男臭…。臭かった?」と、言葉少なにヒロインをからかう一幕も。
一見コワモテですが、とてもナイーブでチャーミングな方なんですよね〜。
奥田監督の茶目っ気に、会場の雰囲気も和みました。

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フォトセッション終了後、本日残念ながら欠席となったしまった板橋さんと電話をつなぎ、奥田監督とトークするといったサプライズも。
「体調不良で出席出来ず、すみません。来ていただいた皆さん、ありがとうございました」と、電話の向こうで恐縮気味の板橋さん。
早く元気になって下さいっ!

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最後に「とても個人的な映画です。口当たりは悪いしイビツですが、暴力の先にあるものを感じ取って、共感してもらえたなら嬉しいです」と締めくくった、奥田監督。

実は私、『東京プレイボーイクラブ』の初日舞台挨拶でも司会を務めました。
その当時「才能のあるスゴイ監督が出てきたな」と驚き、それから奥田監督の次回作をずっと心待ちにしていました。
『東京プレイボーイクラブ』以降、映画を撮りたくても撮れない環境の中で鬱状態に陥り、精神が不安定な状態が続いたこともあったとか。
本作で彼が演じた“スキンヘッドの男”は、まさに奥田庸介そのもの。
映画を見ているとヒリヒリと心が痛くなるのですが、非情なまでの暴力描写の向こう側には奥田監督が持つ“優しさ”と“捨てきれない希望”があるように、私には感じました。
8月からは早くも次回作の撮影がスタートするという奥田監督。
これからも、自らのスタイルを追求したハジけた作品を期待しています。


それではまた次回、お会いしましょう。

お相手は、八雲ふみねでした。

サブ1

クズとブスとゲス
2016年7月30日から渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本:奥田庸介
出演:板橋俊谷、岩田恵里、奥田庸介、大西能彰、カトウシンスケ、芦川誠 ほか
©︎2015 映画蛮族

 

八雲ふみね fumine yakumo

八雲ふみね

大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。

八雲ふみね公式サイト yakumox.com