現在全国ロードショー中、直木賞受賞作家・小池真理子の半自叙伝的同名小説を、矢崎仁司監督が完全映画化した『無伴奏』で、渉(池松壮亮)の姉・勢津子役を演じた松本若菜に、シネマズが独占インタビューを実施した。
映画『無伴奏』松本若菜 シネマズ独占インタビュー
映画『無伴奏』は直木賞受賞作家・小池真理子の半自叙伝的同名小説を『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』の矢崎仁司監督が完全映画化した作品。学生運動が盛んだった時代に多感な青春時代を過ごす1人の女子高校生を中心に、男女の悲喜こもごもな恋愛模様と時代の潮流を映し出す青春物語。主人公の響子を成海璃子が演じ、響子が想いを傾ける渉役を池松壮亮、渉の親友・祐之介を斎藤工、さらに祐之介の恋人・エマをnon-noモデルの遠藤新菜と、注目の若手が集結し当時の若者達の恋愛模様を描く。
本作で、成海璃子が演じる主人公・響子の、心を揺れ動かす重要な役を演じた松本若菜。「うなぎ屋のかわいい看板娘」として注目を集め、その後、女優の道をひた走ってきた彼女が、本作の役をどう演じたのか。彼女のこれまでの歩みや、矢崎仁司監督への思い、そして今後の女優像などを伺った。
矢崎監督だからできた。映像化不可能と言われた原作。
――突然ですけど、実際にこうしてお会いするとやっぱりお綺麗ですね……
ありがとうございます(笑)嬉しいです。
――完成した画はもうご覧になられましか?
もちろんです。
――ご自身も出演されている映画ですが、観客として観た感想としてはいかがでしたか?
私の勝手な感想ですけど、今までの矢崎作品をさらに越えたんじゃないかなって思うぐらい素晴らしかったですね。周りの人にも「あの『無伴奏』をよく映像化できたね」ってよく言われるんです。矢崎監督だからできたと思うし、あの世界観は、矢崎ワールドがすごく出ているなと思いました。
――『無伴奏』では、数々の官能シーンが話題になっていますが、女性として観てどう感じられましたか?
素晴らしいなって思いました。中でも、池松壮亮さんと斎藤工さんの、男性同士のシーン。逆に女性が嫉妬してしまうぐらい色気があって、ズルいなーって思いましたね。男の人からすればまた違うかもしれませんが、絵画を見てるみたいな気分で、とにかく綺麗でしたね。池松さんのお尻すごい綺麗だし(笑)。あんな美しい男性同士のシーンって初めて観たなって。
高校生には出せない落ち着き感、色気を出すことをテーマに。
――松本若菜さんと矢崎仁司監督の出会いといえば、矢崎仁司監督の前作『××× KISS KISS KISS』ですよね。
『××× KISS KISS KISS』では、矢崎監督とお仕事ができるって聞いた時に「あの矢崎監督と一緒にできるんだ!」と興奮したのを覚えています。
――その際に矢崎監督にもインタビューさせてもらったんですけども「松本さんがとにかく美しくて『無伴奏』でも出演してもらうことになった」というお話をされてたんですよね。
嬉しいですね。矢崎監督に顔見せに声をかけていただいただ時点で、もう嬉しくてマネージャーさんに「絶対、絶対やりたいです!」って懇願したくらいですから(笑)それで、今回の『無伴奏』の脚本を読ませていただいて「これがどうやって映像化されるんだろう?」という興味が湧いたし、その世界観に入りたいという気持ちがすごく強かったですね。なので、出演できたことが本当に幸せです。
映画『無伴奏』より (C)2015「無伴奏」製作委員会
――今回の役は、池松壮亮さん演じる渉のお姉さん役ですよね。設定では「物凄い超絶美人」という役柄じゃないですか。映画内でも「女優さんみたいに綺麗」と評されてて。
そう!台本を読んでいる時から「女優さんみたいな人なんだよ」っていう台詞があって「ハードルあげるわーー!」って思いましたね。本当にメイクさんと衣装さんのおかげです(笑)
――実際に演じるときに、何か意識したことってありますか?
私の中での素敵な女性像というのは、常に“フラット”でいるというか、着飾ってない人なんです。お化粧ばっちりして綺麗なのも素敵だとは思うんですけど、内面から出る美しさみたいなところが、“大人の女性“だなって。
–{いつも「透明な女優」でいたい…}–
――憧れの女性という意味では、松本さんは以前、天海祐希さんを挙げてましたよね?そんな風に具体的なイメージみたいなのは今回の役ではありましたか?
イメージは特には持たなかったですね。あえて言うなら響子(成海璃子)とは真逆な雰囲気みたいなのを目指しました。矢崎監督からも「とにかく嫉妬されるような女性でいてくれ」と要望があったので、高校生である響子には出せない、落ち着き感みたいなのを意識した感じです。私、普段本当に色気がないので、色気を出したいっていうのは、今回のテーマでもありました。
――色気がないと仰ってますけど、過去のグラビアとかみるととてもセクシーじゃないですか。
いや、もうね、あれはね、もうね(笑)なんでしょうね。あれもひとつの役として頑張った感じですよ(笑)
「うなぎ屋の看板娘」から「透明な女優」へ
――そういえば「美人」というワードでいえば、松本さんは「うなぎ屋のかわいい看板娘」として話題になりましたよね。
ほんと、全然そんなことないんですけどね(笑)
――今回インタビューする時に、いろいろ調べてて「あ!この人かー!」って興奮しました(笑)そのあと役者としてデビューされて、初めて出演された「仮面ライダー電王」の時もお姉さん役でしたよね?割りとこう、ずっとお姉さん役だなって。
ああ、言われてみれば確かにそうですね。
――実際に私生活でもご兄弟は?
いや、実は末っ子なんですよ(笑)姉が2人いて。
――じゃあ、お姉さん役を演じるのって大変ですか?
そうですね。でも、逆に一番客観視できるというのもあります。姉だから出せる下の子への愛情とか接し方というのは、誰よりも多分、末っ子が分かっているんじゃないかなと。こうされたら嬉しいとか、実際に体験してきているので。
――お姉さまたちは地元ですか?
そうですね。
――地元っていうと、鳥取県米子市。同じ米子市出身の役者さんだと、山本舞香さんとかもいらっしゃいますね。
あっそう!同じ中学出身なんですよ。なんとか2人で米子を盛り上げたいですね!まだ、お会いしたことはないんですけど……(笑)
――やはり故郷・米子への想いは強いですか?
私、地元には22歳までいて、就職して働いていたこともあったので、地元愛は強いんです。だから、デビュー当時から「絶対いつか米子を舞台に映画を作る」ってずっと言い続けてるんです。
――就職までされていて、どうして東京で役者の道を選ばれたのですか?
一番大きな理由は、15歳の時にスカウトされたことです。ただ、その時はまだそんなこと意識できなかったんですけど、18歳で就職して、そこから自分の存在価値みたいなのを徐々に意識するようになった時に、その当時していた仕事は、私じゃなくてもできるんじゃないかな?と思うようになってきたんです。その時に、心の奥底に残っていた「女優」というワードがどんどん大きくなってきて。それで、22歳のときに挑戦するなら今が最後かもしれないと思い、そこからは早かったですね。自分で東京の住まいを見つけてきて、親には事後報告で「もう決めてきたから」みたいな感じでした。
――行動派なんですね。
そうじゃないと「もう私、前に進めない」と思ったんです。親も厳しかったので。
――『無伴奏』をはじめとして、今とても多くの作品に出演されていますが、今後こんな役をしてみたいとかありますか?
常に思っていることですけど、毎回違う役がきて、そこでいかに監督の意図に合ったものを作り込めるかが、私が目指すところです。そういう意味では、いつも“透明な女優”でいたいと思っています。それが今後も続いていく私の永遠のテーマですね。
スタイリスト:江頭三絵 ヘアメイク:山崎惠子
ブラウス、パンツ:paratiisi forme de l’eau,lac
映画『無伴奏』は、新宿シネマカリテほか全国ロードショー中。
(写真・文/黒宮丈治)
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