【インタビュー】映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』主演・黒木華

映画コラム
リップヴァンウィンクルの花嫁 黒木華 インタビュー

岩井俊二監督の最新作『リップヴァンウィンクルの花嫁』が、本日2016年3月26日より公開となる。本作で主人公・皆川七海役を演じた主演の黒木華に、シネマズが独占インタビューをおこなった。

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』主演・黒木華シネマズ独占インタビュー

リップヴァンウィンクルの花嫁

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』より (C)RVWフィルムパートナーズ

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、岩井俊二監督にとって、日米カナダ合作映画『ヴァンパイア』(2012)以来の実写作品、日本の実写長編作品としては『花とアリス』(2004)以来約12年ぶりとなる最新作。主人公・皆川七海を黒木華が演じ、さらに七海に奇妙なバイトを次々と斡旋する安室役を綾野剛、七海が住み込みで働く屋敷のメイド仲間・里中真白役をCoccoが演じる。

本作が単独初主演となる黒木華。8ヶ月にも及ぶ長期間の撮影に挑んだ彼女が、七海とどう向き合い、そして演じたのか。岩井俊二監督や共演者について、さらに彼女のプライベートにも迫りながら話を伺った。

「自分でいいのかな?」主役に対してのプレッシャーがあった

リップヴァンウィンクルの花嫁 黒木華 インタビュー

――拝見させていただいて、見終わったあとしばらく放心状態で動けなかったんですよね。なんていうんでしょうか「涙を流さずに泣く」ってこういうことだなって、体がまるで溶けていくような感覚でした。

ありがとうございます。私も仕上がったものを観た時、同じ感じでした。しばらく、何も言葉を発せられなくて、言葉にできなくて、いろんな感情がありすぎて。

――単独主演は本作が初めてということでしたよね。

そうなんです。だから、自分がちゃんと物語を紡げているのかなって不安なとこはありました。でも、岩井さんの世界観とか映像の綺麗さとか、他のキャストの方に助けてもらっているなというのがすごくあって、物語を通して七海が、ちゃんと成長していけたと思います。

――最初に脚本を手にした時の印象はいかがでしたか?

すごく”生々しい”ところと”ファンタジー”が混在していて、岩井さんらしい素敵な話だなと思いました。これをどういう風に撮るのか?それを考えると余計想像が膨らみました。

――本作は撮影期間が8ヶ月にも及ぶ長期間だったそうですね。それくらい長いと、途中に他のお仕事などもありますよね。1つの役を時間かけて演じるのは大変だったのではないでしょうか?

しばらく間が開いてしまうときは、どうしても忘れているということはありました。現場に戻ってきたときに「七海はどういう女の子だったかな?」とか「どういうトーンで喋ってたかな?」とか悩んだりしたんですが、衣装を着て、岩井さんとお話をしていると、思い出していく感じでした。

――撮影現場での岩井俊二監督はどんな方ですか?

”ずっと撮ってる”という感じでした。岩井さん自身がカメラを持ちだして撮影されたこともあって、いつ撮られるかわからないようでした。それと、最初の脚本から、撮影がはじまってからどんどんシーンが足されていくんです。撮影をしながら「もうちょっと撮ろう」ということもあったし、その間に七海自身も、物語自体も濃くなっていったという感じでした。

――今回、おおがりな照明は使わずに、ほとんど自然光で撮影されたということですが、女優さん的には光が欲しいとは思いませんでしたか?

光がほしいというのはなかったですが、素が映るなとは思いました。

――素が映るという意味ではプレッシャーは大きかったのではないでしょうか?

そこに関してはあまり無かったのですが、自分が主役であることは、結構なプレッシャーでした。「大丈夫かな?自分でいいのかな?」って。

綾野剛、そしてCocco。魅力あふれる共演者たち

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――単独主演は初ですが、以前『シャニダールの花』では綾野剛さんとW主演でしたよね。今回も共演されていますが、綾野剛さんの印象は?

相変わらずおもしろい人でした。剛さん自体が持っている、独特の怪しい雰囲気と、何を考えているんだろうという興味を持たせる感じが、今回の役・安室にすごくあっているなと思いました。

――あの役は綾野剛さんしかいないなと観て思いました。

不思議な雰囲気でしたよね。もちろん剛さんじゃなければ、また違った感じになるんでしょうけど、どこか掴みどころがない安室は、剛さんだからこそ出せる雰囲気だったんだろうなと思います。

–{いつまでも心に残ってくれたら…}–

――もう1人重要な役・真白を演じたCoccoさん。黒木さんは、音楽人としてのCoccoさんのファンでもあるそうですね。

そうなんです。それもあって、今回共演する以前に、Coccoさんの主演の『KOTOKO』を観ていたんですが、その時に衝撃をうけたことを覚えています。まるで役を演じている感じではなくて、自分自身を削って、生身をさらしているような映画で、フィクションなのにフィクションと思えない感じでした。
その時に、すごい衝撃をうけて「どういう風に演技をされるんだろう」と思っていたんです。歌手の方だから、感性がすごいと思うんです。自分の気持ちや内面を言葉にして、人に晒していくことはすごいと思っていて、その分すごく自由な人なのかなと思ってたんです。

――実際は違った?

台詞はすごく忠実なんです。岩井さんも、もっと自由な感じでやる人かと思っていたと言うぐらい、すごく真面目な方。

――映画で観る印象とは違いますね。

台詞に忠実なのに、なんであんなに自然に”真白”としてそこにいるように見えるんだろうと思いました。そのおかげで、居てくださるだけで、私も七海になれちゃうんです。不思議な魅力がある人で、すごく刺激を受けました。あと、現場ではムードメーカーで、明るくて、たのしくて、人を気遣ってくれる人です。

今の時代を映す作品、そして理想の結婚相手

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――ちょっとプライベートなお話を聞かせていただきたいのですが、自宅で”うどん”を粉から作っているって本当ですか?

本当です(笑)

――なかなかうどんを粉から作らないですよね。

こだわらなければ簡単ですよ。作りたくなったら作っちゃうんです。パンも作ります。

――料理得意なんですね。

今の時代は“クックパッド”という神器があるので(笑)便利な時代だなって思います。

――ネットを使いこなしていますねー!そういえば、本作でも冒頭ネットを通じて彼氏を見つけるところからはじまりますね。

今っぽいなと思います。LINEのようなメッセージアプリも、すごくハードルが低いじゃないですか。嫌になればお互いにブロックできるし。それってすごいことだと思うんです。

――といいますと?

私が中学のときはすでに携帯はあったのですが、それよりさらに一歩踏み込みやすい感じがするんです。だけど、すごく遠い感じがする。私からすれば、会ったこともない人と合うのはハードルが高いし、ましてや結婚するなんて想像できない。ニュースでも「ネットで知り合った」なんて言葉が出てくるので、それが”今”なんだと思いました。だから七海ちゃん自身も今っぽい存在だなって思います。

――黒木さん自身の結婚観は?

結婚願望がないんです(笑)ただ、うちの母親が私を30歳で産んでいるので、目標というわけじゃないけど、なんとなくそうなのかなというのはあります。

――理想の結婚相手は?

お互いに自立して、ずっと感謝しあえるような相手が理想です。自立しているからこそ支え合えると思います。

自分がそうであったように、心に残る作品に

リップヴァンウィンクルの花嫁


映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』より (C)RVWフィルムパートナーズ

――作品の話に戻るのですが、最後に猫のかぶりものをして歩いてるシーン。あれが流れてきたときに「終わらないほしい」と思ったんですよね。最初上映時間を聴いて3時間って長いなって思ったのですが、岩井俊二監督が「いつまでも撮り続けたい映画だった」と言われていたように、僕も「いつまでも見続けていたい映画」だと思ったんです。

嬉しいですね。岩井さんに伝えます(笑)

――あのシーンはどういったタイミングで撮影されたんですか?

岩井さんが急にアイデアが浮かんだらしく「傾きながら歩いてくれ」とか言われて歩いた感じです。かぶりものをしているので、どこを歩いているかわからないから、ただ歩いているという感じでした。

――どうしてあの猫型のかぶりものを?

あれは、顔が見えないSNSの匿名性を表しているらしくて、それと七海ちゃんのSNSのアイコンが猫だからだそうです。

――これから観る方に、どういう風に観ていただきたいですか?

本当に淡々としているけど、物語のうねりがすごい作品。私が『リリイ・シュシュのすべて』を観て、いつまでも心に残ったように、今の時代の人たちがみて、この作品が、いつまでも心に残ってくれたらいいなと思います。

リップヴァンウィンクルの花嫁 黒木華 インタビュー

映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は、本日2016年3月26日より公開。

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(写真・文/黒宮丈治)

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