2016年3月26日より公開の映画『無伴奏』で、斎藤工演じる祐之介の恋人役で大胆な濡れ場にも挑戦した、エマ役・遠藤新菜に、シネマズが単独インタビューを実施した。
映画『無伴奏』エマ役・遠藤新菜 シネマズ独占インタビュー
映画『無伴奏』より (C)2015 「無伴奏」製作委員会
映画『無伴奏』は直木賞受賞作家・小池真理子の半自叙伝的同名小説を『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』の矢崎仁司監督が完全映画化した作品。学生運動が盛んだった時代に多感な青春時代を過ごす1人の女子高校生を中心に、男女の悲喜こもごもな恋愛模様と時代の潮流を映し出す青春物語。主人公の響子を成海璃子が演じ、響子が想いを傾ける渉役を池松壮亮、渉の親友・祐之介を斎藤工、さらに祐之介の恋人・エマを遠藤新菜と、注目の若手が集結し当時の若者達の恋愛模様を描く。
本作で、ヌードや官能的なシーンなど、大胆な演技にも挑んだ遠藤新菜。non-no専属モデルなど、マルチに活躍する彼女の、女優としての素顔に迫った。
ヌードシーンは、完成後に観て恥ずかしさを覚えた
――今回遠藤さんが演じられたエマが最初登場した時「この子意地悪いタイプだな」と思ったんです。ところが、物語が進んでいくとその印象が「この子、本当はピュアな子なんだな…」って変わっていったんです。あれはそういう風に考えて演じられたんですか?
実際に撮影に入る前に、矢崎監督には「エマってどういう子なんですか?」みたいな質問はよくしてて、どう演じたらいいのかを探しはしました。けれど、途中から、難しいこと考えるよりも、とにかく「自分=エマ」になればいいんだと思うようになったんです。空き時間とかに、他の人と話すときも、みんなが「エマ」と呼んでくれて、そういうのもあって無意識にエマになれたんだと思います。
――今までの遠藤さんのイメージとはまるで別人のようだなって思ったんです。
自分でもそうだと思います。エマになっている時は、何の恥ずかしさもなかったです。それこそヌードのシーンもあるし、普段の自分だったら言えないようなこともエマだったから言えた。撮影が終わって、普段の自分に戻ったあと、試写を観て、エマが脱いでるシーンでは「ちょっと恥ずかしい……」と思ったぐらいですからね(笑)
——かなり大胆に脱いでいらっしゃいますもんね。
エマって素直だし、ストレートな子。だけど、笑っている姿を“単にハッピーな子”って感じには見せたくなかったんです。何かしらの“影”をもっている子でいたいなって。本編ではあまり彼女のバックボーンって語られないんですけど、それでも「何かある子だな」と感じてもらえるように演技したと思います。
あまり時代を意識せずに、あえて異端児になった
――今回の作品は、矢崎監督ならではというか、かなりタバコを吸うシーンが多いですよね。そこで火をつける時にマッチを使ってましたけど、あまり使われたことないのでは
そうなんです。だから、結構練習しましたね。みんなも、どういう風につけようかって練習してたくらいです(笑)何回か火がつかずにカットになったとかもありましたね。「シャッシャッシャッ……ごめんなさい!」みたいな(笑)
――つけたことないとなおさらそうですよね(笑)マッチもそうですけど、作品全体を通して、1970年前後のあの時代を見事に再現していましたね。経験したことがない時代を演じる上で気をつけたことなどありますか?
私が思うこの時代の女性って、今よりも話し方と立ちふるまいが上品なイメージがあったんです。乱れた言葉も使わないし「そうなの」という言葉ひとつをとっても、すごく綺麗な言葉だなって。でも、エマって多分今生きててもこの頃生きてても変わらない人物だと思ったんですね。話し方さえも、ちょっと個性的なキャラクター。なので、逆にその時代の女の子っぽさとか言うよりは、ちょっと異端児みたいに捉えてやってました。
映画『無伴奏』より (C)2015 「無伴奏」製作委員会
――当時のファッションはこうしてみると、今は逆にモダンでおしゃれだなって感じでしたね。
それこそ再度流行ってるような格好だったりして、見てて目においしいというか、楽しいですよね。
――作品中で、成海さんや遠藤さんの衣装がかなり用意されてて、それが変わるたびに「あ、これも可愛い」と思ってとても楽しかったですね。
嬉しいです。すごくお洒落なんですよね。全員、自分の個性のあるファッションを自由にしてて、素敵ですよね。
――ファッションの話に関連していうと、今回の作品のために、髪をかなり短く切られたんですよね。切ることに躊躇しませんでしたか?
なんか意外と抵抗は無かったんです。台本読んでて、エマの役を掴むのにちょっと時間がかかってて、あと一歩なにかきっかけがないとエマが入っていかないと思ったタイミングでスパっと切ったんです。そうしたら、解決したっていうか、みんなにも「エマっぽくなった」と言われて。髪を切ったことで、役に一気に近づけたので良かったと思います。
――いわゆる「セシルカット」という髪型ですよね。すごく似合っていらして、日本人でもないし、かといって欧米人でもない、不思議な美しさが漂っていましたね。
ありがとうございます。ただ……撮影が終わって、現実世界に戻った時にちょっとつらかったんですよね「けっこう短いな……」って(笑)
–{斎藤工に預けた“濡れ場”}–
音楽がかかせない家、歌は今後もやっていきたい
――少しプライベートなお話をお聞きしたいのですが、遠藤さんのお母さんは「TOY BOY」を歌ったKAYOKOさん。小さいころからお母さんの影響もあって、歌手になるのが夢でずっと歌われていたんですよね?
そうですね。高校時代にはバンドでインディーズデビューしたりもしてます。
――どうしてそこから俳優の道へ?
元々は音楽以外やりたいと思ってなかったんですよね。お芝居もモデルも最初は考えてなかったんです。バンドをやめた後に、その当時預かってもらっていた事務所の方がに「演技のワークショップに行ってみない?」って言われて、そこまで深く考えずに行ったんですね。ところが、それが実は映画のオーディションだったんです。ワークショップで勉強しているところから審査するオーディションだったんで……(笑)そんなことも知らずに、ただ一生懸命がんばってワークショップに打ち込んでたら、合格して主演が決まったんです。
――田崎恵美監督の『海にしずめる』ですね。
それで現場に入ったら、覚えることの量は多かったんですけど、とても楽しかったんです。「演技の才能があるわけでない」と思って、ある意味ふっきれて演技していたんですけど、観てくれた人の感想とか聞くと「良かったよ。役者続けなよ」って感想いただいたりして。それで楽しくなって続けていたら、いつのまにか演技の世界のとりこになってました。
――じゃあ、もう音楽はやらない?
でも、音楽はやっぱりベースとして絶対にかかせないんですよね。家では、父も母も音楽人で、誰かが曲を弾き始めたら誰かが歌っているような家庭なんです。母なんか、テレビを見てて流れてる曲を急にすごい大声で歌い始めたりするくらいですから(笑)
――楽しそうな家ですね!
会話よりも音楽がナチュラルな家庭に育ったせいもあって、歌がない生活は考えられないんですよね。だから音楽は今後もやっていきたいです。
「何でもやってください」斎藤工に身をあずけた
――本作の話に戻るのですが、今回いわゆる「濡れ場」が話題になっていますが、non-noの専属モデルをされている遠藤さんにとっては、かなり抵抗があったんじゃないかと思うのですが。
自分自身の中では、そこまでこだわった抵抗はなかったんですよね。自分自身は大丈夫だけど、周りのことは考えました。それを見た人がどう思うのかとか、今いる周囲の人がどういう風に感じるのかとか、もちろん親とか「お父さんとかどう思うのかな?」とかは思いましたね。あと、おっしゃったように、non-noの専属で、濡れ場やヌードになるのってあまり無いんじゃないかと思って。
でも、non-noの編集部の方々もいい意味で異端児みたいな扱い方をしてくれてて、編集長をはじめみんな試写も観にきてくれて「素晴らしい作品でした」と言ってくれたんです。しかも「協力するよ」とまで言ってくれて、すごく嬉しかったですね。なんか自分以上に周りがそんなに抵抗なく見てくれていることで、とても安心しました。
映画『無伴奏』より (C)2015 「無伴奏」製作委員会
――濡れ場も、ただシーツかぶせて、ベッドが揺れているみたいな感じじゃなくて、かなりリアルでしたよね。斎藤工さんとは、事前に絡み方とかは打ち合わせしたのでしょうか?
むしろしなかったですね。事前打ち合わせ無しで、テストからガッツリでした(笑)
――テストからガッツリですか!
それこそもう私より十何年とやってこられている先輩なので「どうやりますか?」っていうのも変じゃないですか。そういうのを聞くのって違うよなって思って、結局リードしてもらった方がいいと思ったんです。それで、始まる直前に一言だけ「何でも大丈夫ですので、何でもやってください」って言ったら、すごいガッツリしてくださったので、逆に助かりました。
――ネタバレになるのであまり言えないのが残念なのですが、ものすごく大胆なシーンで、“エロ”というより”エロス”だなって思ったんです。とにかく綺麗だと思って観てました。
ラブシーンの典型的な2人の愛情表現というよりは、何か色んな要素があそこに入ってるじゃないですか。憎しみもあるし。でも愛情もあるといえばあるし、祐之介(斎藤工)の愛情が誰に向いてるのかっていうのも微妙なところだったりするし。エマだけは、もしかしたら祐之介にまっしぐらで、嬉しいと思ってるかもしれないけど、恥じらいとか全部がつめ込まれてる。すごく複雑なシーンだと思うんですね。だから、そういってくださるのがすごく嬉しいです。
――すべてのシーンがとても美しくて、あの映像美は矢崎監督ならではですよね。監督に対してはどんな印象を持たれましたか?
監督の印象は、口数は少ないんですけど、それに反してこだわりがすごいと思いました。こうペラペラと「こうで、こうで、こうだから、よろしく!」っていうよりは、違った時に「何か違うんだよね」って一言しか言わないんです。逆に試されるので、その「なんか違う」を、どれだけ私がちゃんと読み取って監督のイメージに近づけるかっていうので、テストがすごく長いんですよね。テストだけで10回やったりとかするので。時間かけて焦らずに、ちゃんと撮ってくださる監督だなというのが一番の印象ですね。
――今後挑戦してみたい役は?
本当にどんな役をいただいても楽しめる自分でいたいと思ってます。技術的な部分はまだまだですけど、根性だけは自信があって、何に対しても全く屈せずに取り組むので、とにかくたくさんやりたいですね。しいて言うなら、ちょっと殺人鬼のようなサイコパス的な役とかやってみたいです。今回の役を演じさせてもらって、なおさらもっと役者として、自分自身をひろげていきたいと思いました。
スタイリスト:江頭三絵
ヘアメイク:宮本真奈美
ネックレス、ピアス:somnium
ブラウス、スカート:VL by VEE
映画『無伴奏』は2016年3月26日より新宿シネマカリテ他全国ロードショー。
(取材/黒宮丈治)
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