背筋がゾッとします―映画『独裁者と小さな孫』公開初日トークショーレポ

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独裁者と小さな孫 初日舞台挨拶 想田和弘 森直人

現在公開中の映画『独裁者と小さな孫』の公開初日となった2015年12月12日に、東京・新宿武蔵野館で、映画監督・想田和弘氏と映画評論家・森直人氏によって本作に関してのトークショーが行われた。

運命を描くロードムービー『独裁者と小さな孫』

独裁者と小さな孫

映画『独裁者と小さな孫』は、2014年東京フィルメックスで観客賞を受賞した、イランの名匠、モフセン・マフマルバフ監督の最新作だ。架空の国で起きたクーデターをきっかけに、逃亡の旅に出た独裁者と彼の幼い孫がたどる運命を描くロードムービーとなっている。

独裁者と小さな孫

想田和弘監督は、本作の感想について「普通は感情移入しないだろなっていう人に対して感情移入するという、非常に珍しい経験をさせてもらえる」と語り、今回、民衆の一人でなく、独裁者に感情移入をさせるというのは、大きな選択だったと思います。普通は民衆を主人公にして描くほうが、やりやすいかもしれないですね。だけど、そうすると説教くさい映画になるかもしれないし、月並みな構図になるかもしれない。だけどここでがらりと反転させて、独裁者っていうのを主人公にして、その目線で描いてく。しかも、独裁者の視点で描くからと言って、独裁者に感情移入するようには作られていない。ここがすごいとこなんです」と本作の魅力に関して力説した。

–{背筋がゾッとする…}–

プロパガンダになりうるという森直人氏の言葉から、想田は「これを見てプロパガンダだと思う人はあまりいないと思うんですよ。彼の場合は恐らく描写っていうことに徹しているんだと思いますね。何かメッセージを伝えるだとか、観てる人にこういうメッセージを受け取って欲しいとか、そういうことは目指してなくて、世界を描写する。ただしそれは、彼の視点で描写するということ。ここの軽装性がさらなるポイントだと思うんです。別の凡庸な監督が撮ったら、こんな風に奥行きが深い映画にはならないと思います」と語った。

独裁者と小さな孫

本作は、架空の国が舞台。独裁者を主人公とした風刺性のある寓話として、想田は「本質的な構造を捉えたがゆえに、別のところで起きている現象にも非常に重なってくる。ある意味プロフェットというか、預言者のようなものを感じて、背筋がゾッとしますよね」と語った。

映画『独裁者と小さな孫』は、現在全国公開中。

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