『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア②

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■「キネマニア共和国」

スター・ウォーズ トリビア 豆知識

いよいよ公開間近となった世界的人気シリーズ第7弾『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』ですが、そこに至るまでのシリーズのマコトかウソかの噂も含めたトリビア(というほどでもない小ネタ)のいくつかをご紹介……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街~vol.78》

おヒマつぶしにどーぞPART2!

シリーズ最高傑作の誉れも高い『エピソード5/帝国の逆襲』

『スター・ウォーズ』の大ヒットによってシリーズ化がなされ、その第2弾として製作された『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)は、最初、『三つ数えろ』(46)『リオ・ブラボー』(59)『ハタリ!』(62)『ロング・グッドバイ』(73)などの名脚本家リー・ブラケットに脚本を依頼しました。

彼女は『地球生まれの銀河人』『長い明日』などのSF作家としても著名で、エドモンド・ハミルトン夫人でレイ・ブラッドベリなどとも交流のある才女でしたが、意外にもこれが初のSF映画脚本。

しかし、初稿を書き上げた直後の78年3月18日に、彼女はガンで死去してしまいます。

ジョージ・ルーカスは脚本を幾度か推敲した後、ローレンス・カスダンに仕上げを依頼しました。

ジョージ・ルーカスは本作から監督を別に立て、自身はプロデューサーに専念することにしましたが、今回監督に抜擢されたのは『サウスダコタの戦い』(76)『特攻サンダーボルト作戦』(77)などのベテラン、アーヴィン・カーシュナー。

ドキュメンタリー出身でSFと縁のない彼はオファーに驚き、実際、最初は乗り気ではなかったようですが、ルーカス曰く、

「彼はハリウッドの監督が身に着けるべき映画的知識をすべて持ち得ていながらも、ハリウッドの垢にまみれていない。彼の登場人物のキャラクター作りのセンスは素晴らしいものがある」

こういった賛辞を受けて、カーシュナー監督も「映画の画面を人々の顔で満たそう」と承諾。

結果としてこれまでの6部作の中で最高傑作の誉れ高い名作が完成しました。

ヨーダの顔と名前のモデルは誰?

さて、『スター・ウォーズ』サーガに欠かせないライトセーバーは基本的に両手持ちで、これは東洋の剣術スタイルに倣ったものでもあり、『エピソード5/帝国の逆襲』(80)では当初フェンシングのような殺陣が予定されていたそうですが、ルーカスはそれを激しく拒絶し、結局は前作に即した殺陣となり、現在に至っています。

『帝国の逆襲』から登場するジェダイ・マスターのヨーダですが、顔のモデルはシリーズのメイクアップ・アーチスト、スチュアート・フリーボンとアインシュタイン博士をかけあわせて作られたものです。

ヨーダの名前に関しては、溝口健二監督作品の名脚本家・依田(よだ)義賢がモデルではないかという説もあります。
ルーカスは大阪芸術大学の映像学科長でもあった依田氏の世話になっていた時期があったとのことで、しかし99年に糸井重里氏が来日したルーカスに直接モデルのことを聞いてみたら「違う」と否定されたようです。

ちなみにジェダイという言葉の語源も、日本語の「時代」から来ているという説がありましたが(時代劇→ジェダイ劇)、これもルーカスは否定しています。

『帝国の逆襲』の冒頭、ルークが雪男のような怪物ワンパに襲われ、顔に怪我をします。
これはマーク・ハミルが撮影前に自動車事故を起こし、顔を怪我してしまったためで、いわば苦肉の策でもあったのですが、その後も傷痕がさりげなくも凄みを帯びながら、続く『エピソード6/ジェダイの帰還』(83)まで映されていったことで、ルークが暗黒面に落ちるか否かといったサスペンスが盛り上がることにもなりました。

ハン・ソロたちが宇宙船ミレニアムファルコンで小惑星帯を抜けながら逃げるシーンでは、岩石などにまじってジャガイモやスニーカーなども迫ってきますが、これは完全に特撮スタッフのお遊びです。

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–{ベイダーとはオランダ語で“〇〇”の意味?}–

ダース・ベイダーのベイダーとはオランダ語で“父親”の意味

『帝国の逆襲』のクライマックス、ダース・ベイダーがルークに向かって自分が父親であることを告げる衝撃のシーンは、公開前に秘密が漏れることを恐れて、ダース・ベイダーの台詞を「父親を殺したのはオビ=ワン・ケノビだ」と変えて撮影していました。

つまりルーク役のマーク・ハミルは事実を知らぬまま演じていたことになります。

巨悪の象徴が主人公の父親であったという設定から、このモトネタは石ノ森章太郎のマンガ『変身忍者嵐』ではないかという説が日本国内では流れたこともあります。
同作で敵の首領を倒した主人公が、その顔を見ると彼の父親であったというオチと、ジョージ・ルーカスが実は日本のマンガが大好きで買い漁っていたという噂から、そういった説が生まれてきたものと思われます。

真相はともかく、ルーカス自身は実の父親とかなりの確執があったとのことで、その想いがダース・ベイダーに反映されているという説が一番まっとうかなという気もします。

また、日本映画など東洋に魅せられていた彼なら、父親こそ男が乗り越えるべき最大の敵といった思想に至るのも、そう困難ではなかったのかもしれません。

そもそもダース・ベイダーの名前は“ダーク・ファーザー”をもじってつけられているという説もあります。
つまりベイダーは、オランダ語で父親“vader”という意味を持っているのです。

ちなみに『帝国の逆襲』の翌81年に公開された『さよなら銀河鉄道999』の悪役・黒騎士の正体が主人公・鉄郎の父親であったというオチは、『帝国の逆襲』のパクリではないかと、当時の『スター・ウォーズ』『999』双方のファンの怒りを買ったものでしたが、実際はどうだったのか、松本零士あたりに聞いてみたいものですね。

旧3部作最終編『エピソード6』サブタイトルは『帰還』or『復讐』?

『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80)は第1作『エピソード4/新たなる希望』(77)以上の喝采を受け、その波に乗せてのシリーズ第3作『スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還』(83)は、監督にリチャード・マーカンドを起用しました。

これはジョージ・ルーカスが彼のスパイ・サスペンス映画『針の眼』(81)を気に入ったからです。

この『エピソード6』、サブタイトル“RETURN OF JEDI”からしてお騒がせな存在で、当初脚本段階ではRETURN(帰還)だったところ、監督のリチャード・マーカンドが迫力がないと指摘し、REVENGE(復讐)と改題。

しかし、後にルーカスが「ジェダイは復讐なんかしない」と考えを改め、最終的にRETURNに戻ったのですが、日本では既に『ジェダイの復讐』という邦題でパブリシティが浸透していたことから、初公開時はそのままの邦題となりました。
その後本作は、シリーズの他作品も併せてさまざまな改変が行われ、2004年にDVDが発売されたときから『ジェダイの帰還』と改題されました。

ここで初登場した悪漢ジャバ・ザ・ハットは、もともと『新たなる希望』からハン・ソロと絡むシーンに出る予定で、実際に人間で撮影もされ、あとでストップモーション・アニメで表現されたキャラクターを合成する予定でしたが、技術的に上手くいかず断念。

またこのときは、今のようなナメクジのような体形ではなく人型のクリーチャーだったようで、結局『ジェダイの帰還』の際に形が決まり、後にシリーズ特別篇を制作したとき、『新たなる希望』にジャバのシーンをCG合成で挿入することになりました。

なお、このジャバ・ザ・ハット、雌雄同体という設定で、出産期になると体が女性化し、口調や性格も女性っぽくなるのだそうです⁉

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–{スピンオフされた惑星エンドアのイウォーク族}–

スピンオフされた惑星エンドアのイウォーク族

同じく今回初登場し、クライマックスの森のアクションを楽しく彩る惑星エンドアの毛むくじゃらな小人イウォーク族には、なぜか小さなものが好きなジョージ・ルーカスの趣味がもろに反映されているようです。

このイウォーク族、84年に『エピソード5』と『6』の間を舞台にしたシリーズのスピンオフ『イウォーク・アドベンチャー』としてTVムービー化され(DVDタイトルは『スター・ウォーズ/イウォーク・アドベンチャー 勇気のキャラバン』)、日本では85年に劇場公開。
さらにはその半年後を描いた『エンドア/魔空の妖精』(85/DVDタイトルは『スター・ウォーズ/イウォーク・アドベンチャー 決戦!エンドアの森』)も作られ、こちらも日本では87年に劇場公開されました。

なお、『ジェダイの帰還』から本2作とイウォ-ク族のウィケット・W・ウォリングを演じたワーウィック・デイヴィスは、その後もジョージ・ルーカスに気に入られ、彼が製作するロン・ハワード監督のファンタジー超大作『ウィロー』(88)で堂々主演を果たしました。
『ハリー・ポッター』シリーズ(01~11)のフィリウス・フリットウィック役でもおなじみですね。

チューバッカやイウォークたちに乗っ取られるAT-STの副操縦士ワッツ中尉役は、シリーズの共同制作者ロバート・ワッツが、操縦士マーカンド少佐にはリチャード・マーカンド監督が、またハン・ソロに爆弾の入ったザックを投げつけられるディアー大佐にはサウンド・デザインのベン・バートがそれぞれ扮しています。

ラスト、惑星エンドアの大団円シーンでアナキンやケノービ、ヨーダがフォースと一体化した霊体として登場しますが、『ジェダイの復讐』の邦題で劇場初公開された版および特別篇までのアナキンはセバスチャン・ショウが映っていたのに、『ジェダイの帰還』と改題されたDVD版以降はヘイデン・クリステンセンの姿に差し替えられています。
これに対してはファンの賛否が激しく飛び交い、中にはセバスチャン・ショウがラストで映っているものは『ジェダイの復讐』であり、ヘイデン・クリステンセンに差し替えられた版以降は『ジェダイの帰還』であるとする日本のファンも多数います。
(実は私も、この主張に賛成です)

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(文:増當竜也)

『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア①
『スター・ウォーズ』サーガのほんのちょっとしたトリビア③

映画『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』は2015年12月12月18日(金)18時30分、全国一斉公開。

スター・ウォーズ エピソード7 フォースの覚醒

予告編

公式サイト
http://starwars.disney.co.jp/movie/force.html

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
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