今回は映画と直接関係あるわけではありませんが、やがて大いに関係のある存在になることを祈りつつ、取材してきました……。
《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.69》
2015年11月22日(日)、東京都品川区のゲートシティ大崎ホールにて、第四回全日本声優コンテスト「声優魂」が開催されました!
公開最終審査に臨む24人の若者たち
「声優魂」とは、全国の中学・高校生および世界中の声優をめざす若者たちが集う《声の祭典》であり、同時に物語の創作を志す方々を対象とするシナリオ・原作部門、およびアニメのデザインを競うキャラクター部門の実施を通して、若き才能の応援・育成を行うものです。
この日は声優部門決勝大会として、国内21名&インターナショナル3名と、最終選考まで残った24名の最終審査を、公開形式で行いました。
まずは、最終選考まで残った24名の方々を記しておきます。
①青木明日香(高3/京都府 ※京都大会代表)②遠藤愛里(高1/長崎県)③大野満理奈(高3/東京都)④岡木陽夏(高3/長崎県 ※熊本大会代表)⑤香川みなみ(高3/島根県)⑥倉島琴美(高2/長野県)⑦小針彩希(高2/福島県)⑧指田のぞみ(高2/北海道)⑨篠崎那月(中3/愛知県)⑩瀧谷有紗(高1/大阪府 ※大阪大会代表)⑪武亮介(高2/福岡県)⑫竹内大生(高3/群馬県)⑬田代慎(高3/神奈川県)⑭丹後晴名(中1/東京都)⑮浜田祥平(高3/神奈川県)⑯藤井環(高3/神奈川県)⑰藤森ちひろ(高3/神奈川県)⑱古屋亜南(高3/山梨県)⑲前田沙良(中3/栃木県)⑳水口優衣(高1/愛媛県 ※高知大会代表)㉑山田美鈴(高2/鳥取県 ※鳥取大会代表)㉒イ・キップン(中2/韓国 ※大阪在住)㉓イ・ダソム(韓国)㉔リュウ・ダヒン(高1/韓国 ※東京都在住)
最終選考まで残った24名
必聴!審査員の適切なアドバイス
前半はTVアニメーション『ログ・ホライズン』第2シーズンの一シーンを4人一組でアフレコしてもらい、後半はラジオドラマのような掛け合い台詞を3人一組でやってもらいました。
ここで非常に面白かったのが、各グループは一度演技をした後で、小山悟(音響監督)、千葉繁(俳優・声優・音響監督)、長崎行男(音響監督)、百田英生(弊会理事 ※審査委員長)といった審査員のコメントをもらい、もう一度同じ演技をやってもらうのですが、ここでの審査員の一言一言のアドバイスが実に的確で、一度目よりも二度目の演技のクオリティがぐんと上がるのが実によくわかるのです。
前半審査はアニメのアフレコ
「みんな早口。自分がぴったり口が合っていると思ったときって、実は短いんです。少しこぼれるくらいの気持ちで」
「今回は声を変えるのではなく、自分の声で、気持ちをキャラクターに添わせて。絵に声を合わせるのではなく、気持ちを合わせてみよう」
「ひとつひとつの文章を気持ちの動きに合わせて区切って話すと、聞いている人に、より伝わります」
「表情が硬い。声の演技とは、顔の表情から作っていくものです」
「マイクから離れすぎないように。下ばかり向いていると、のどが詰まって声が出ない。台本も上にあげて」
「大声を出すのと、声を張るのとは違う。もっと距離感を大事に」
「横の人と話すときって普通は横を向くものだけど、困ったことに声優は前のマイクに向けて話さないといけないのです」
「ラジオドラマみたいなもので同性3人とかで演じるときは、声の高低差とかスピードとか、第一声の人に引きずられずに、各々個性を出すように」
「ト書きのない台本の場合、自分の台詞だけでなく、他の人の前の台詞や次の台詞などを参考にしながら役を作っていくと幅が広がります」
「声優の基本はお芝居です」
「あなたの声は宇宙にひとつしかないものだから、あなたの宝物なんですよ」
……などなど、これらのアドバイスは彼らにとってきっと貴重な、良き教えになったことと思います。
–{そして表彰式!}–
山口勝平や三木眞一郎からのエールそして表彰式!
審査終了後は、同日開催されていた声優魂応援プロジェクト「しながわ学声祭」の告知で、声優の山口勝平さんや大崎駅西口マスコットキャラクター“大崎一番太郎”くんたちが会場に駆けつけ、全てを出し切ったばかりの24名にエールを送りました。
「みんな楽しめた? 今はドキドキだろうけど、全国からここまで勝ち上がってここまできただけで、自信になっているはずです」
と、山口さん。
審査終了後、山口勝平さんや大崎一番太郎たちとともに
休憩後の第2部は、声優・三木眞一郎のミニ・トークイベントから始まりました。
「地方の人は標準語ができた上で、地元の言葉をしゃべれるというのは武器になるので、大事にしてほしい」
と、これまで声優魂の地方審査員として第1回高知大会、第2回高知大会、第2回京都大会と参加してきた三木さんならではのアドバイスでした。
続けて、いよいよ全部門の表彰式です。
●まずはシナリオ・原作部門受賞者・絵本カテゴリー(資格:制限なし)、最優秀賞は庄子静香(東京都)さんの『ピンクのカエル』。
左から中西悠歌、庄子静香(絵本最優秀賞)、幸田明子(ストーリー最優秀賞)、吉成友輝、降籏唯のみなさん。枠内は山口薫さん。
庄子さんはイラストの仕事をやってきたのですが、お子さんの出産を経て、絵本を描き始めるようになり、今回の絵本もお子さんが小さいとき、寝かしつけるときに思いついたお話を基にしたものとのこと。
「今回は自分の実力を試したくて参加させていただきましたが、絵本カテゴリーだけ年齢制限がなかったので『いいのかな?』 と思いつつ応募したのですが、授賞式に来て、やはり『いいのかな?』と(笑)。でも今回の受賞は自信につながりましたし、これをきっかけに表現の活動を広げて、いろんな作品を世に出していきたいです」
優秀賞は成友輝さん(東京都)の『アリとタンポポ』。
「これからも人が優しい気持ちになれて自分も頑張れるような、そんな作品を作っていきたいです」
●ストーリー・カテゴリー(資格:中学1年生~高校3年生)の最優秀賞は、幸田明子さん(高2/大阪府)の『キャンパス上の魔法使い』。審査員全員の大絶賛による受賞となりました。
幸田さんは3年ほど前から小説を書き始めるようになり、今回初めて応募した大会での受賞に動揺しつつ、ようやく嬉しさがじわじわ来始めているところでのコメント。
「実は今回、私は文字数を一ケタ間違えていて書き始めて、しかも締切日まで勘違いしていたんですよ(笑)。で、本当の締切ギリギリになってそのことに気づいて、慌てて書き直しました(笑)。私は小説が大好きで、書きたい話も昔からちゃんとあります。今はまだ地に足がついてないような心境ですが、これからも誰かの心に残るような、そして何よりも自分が本当に好きだと思える話を、自分が一番満足できるように書きたい。何よりも、その小説を私自身が読みたいので!」
優秀賞は中西悠歌さん(中2/埼玉県)の『たとえ忘れてしまっても』。
「初めて最後まで書き切ることができた作品。今回で自信がついたので、これからも書き続けていきたいです」
奨励賞は降籏唯さん(高3/長野県)の『tu fui,ego eris』。
「高校3年間、ずっと文章を書いてきて、その最後のシメとしてとても良い賞をいただけたと思っています」
同じく奨励賞は山口薫さん(高2/熊本県)の『ひきこもりすーぱーひーろー』です。
「私には意欲があります。来年もまたこの場に立ち、次こそは最優秀賞を獲れるように頑張りたいと思います」
●キャラクター部門(資格:中学1年生~高校3年生)の最優秀賞は、志賀美月さん(高2/東京都)。
前列左から小森田有香、志賀美月(最優秀賞)、木幡有紀乃、梅田青奈、後列左から庄司千春、辻彩香のみなさん
昔から絵は好きだったとのことですが、本格的に描き始めるようになったのは高校1年の後半からで、今回は先生の勧めで応募してみたとのこと。
「描く対象が人でなくてもいいということでしたので、人を描くのが苦手な自分でも、それなら描けるかなと思ったんです。受賞の報せを聞いたときは、叫びました!(笑)というか、最初は疑っていたのですが、本当だとわかってからは、自分に自信が持てるようになりましたね。これからはもっと自分の実力を上げたいです。今よりもいっぱい教えてもらって、上手になって、いろいろな人から『いいね!』と言ってもらえるような絵を描きたいです」
優秀賞は3名。まず、梅田青奈さん(高2/東京都)。
「これを糧に発想力などを培い、ひとつでも多くの作品を描き続けていきたいです」
同じく優秀賞、木幡有紀乃さん(高3/茨城県)。
「世にイラストがあふれている中、誰かひとりでも心をつかむことができたのは、とても誇りに思う出来事でした」
同じく優秀賞、小森田有香さん(高1/東京都)。
「このような賞をいただけたことを大変嬉しく思います。今後も自分の目標に向かって精進します」
奨励賞は、庄司千春さん(中1/東京都)
「こういう賞をとるのは初めてで、とても嬉しいです。将来にこの賞を活かしていきたい!」
そして審査員応援賞は、辻綾香さん(高2/東京都)。
「まだ未熟ですが、このような素敵な賞をいただき、励みになります! これからも一生懸命頑張ります」
–{喜びのコメント}–
声優部門各受賞者の喜びのコメント
いよいよ声優部門の発表です。
●インターナショナルカテゴリー(資格:中学1年生~制限なし)優秀賞は3名。
インターナショナルカテゴリー優秀賞受賞のイ・ダソムさん(左)とイ・キップンさん
まずはイ・キップンさん(中2/韓国:大阪府在住)。
小3のときに日本に来て、日常での日本語は大丈夫だそうですが、まだ漢字は苦手。また学校では関西弁なので、標準語は難しいとのこと。
「本当は私、今回は遊び気分で受けたんです(笑)。でも、こんなに大きな大会だったなんて全然知らなかったし、しかもすごい方々ばかり集まっていて、そんな中で自分が賞をいただけるなんて本当に思っていませんでした。最初にマイクの前に立った時は頭が真っ白になり、心臓の音が横の人に聞こえるんじゃないかってくらいバクバクしていましたが、自分を捨てて頑張りました。まだまだ足りない部分はいっぱいありますが、やはり声優になれたらと思います」
続いて、イ・ダソムさん(韓国)。
日本語は家事をするときなどに日本語ラジオを聴いたり、日本の友達と話したりしながら勉強しているとのこと。
「でも日本語はアクセントやイントネーションが難しく、耳で聞いても違いがよくわからなくて、そのうち日本語も韓国語も、どちらも駄目じゃないかと落ち込むこともあります(笑)。今回もいろいろと駄目なところがすごく多かったのに、こんな賞までいただいて、本当に来てよかったと嬉しく思っています。日本にもまた来られて幸せな気持ちでいっぱいですし、今後は日本と韓国を行き来できるような声優になれたらいいなと思いますね。これからも精進いたします」
最後にリュウ・タビンさん(高1/韓国:東京都在住)。
声優部門最優秀賞受賞のリュウ・タビンさん
「今日はとても良い環境の中で自分のことを見ていただけて、とても嬉しかったです!」
●そして、第四回声優魂声優部門最優秀賞は……、リュウ・タビンさんがインターナショナルカテゴリーと併せて、二冠の受賞となりました!
「手汗でトロフィーを落としてしまいそうです!」と興奮気味の彼女は、審査前の挨拶で『今日は精一杯楽しませていただきます』とコメントしていたのですが、その楽しみがさらに膨らむ結果となったようです。
「夏休みの頃の自分は、大会に出ようといった実感が全然なくて、でも、それでも応募してみようと思ったあのときの自分を、今は褒めてあげたい気分です(笑)。今日の自分を採点するなら100点! 日頃は上がり症なのですが、今日は本当に環境が良くて、楽しくやらせていただくことができました。私は演劇をやっているのですが、ぶりっ子とか可愛い子の役が多いんですよ。でもこれからは悪役も老人もやれるような、そんな意外性を秘めた声優さんであり女優さんを目指して頑張っていきたいと思います」
優秀賞は武亮介さん(高2/福岡県)。
彼は昨年も「声優魂」を受けたものの受賞はならず。その悔しさから今回の応募となりました。
「今年は期待せず、ただ楽しもうと思いながらここに来ましたので、本当にありあまる幸福です! また去年は全然褒めてもらえなかったのですが、今年は掛け合い台詞のときに審査員の方々からテンポ感やキャラ作りなどを良しとしていただき、昂揚しました。審査員の方々のアドバイスも、本当にありがたかったです。ずっと初心を忘れずにいられる声優になりたいと思っています。また自分はドラムをやっているので、ドラマーと声優を両立させていきたい。でもバンドのメンバーには、今回のことはまだ話してないんですよ(笑)」
同じく優秀賞、山田美鈴さん(高2/鳥取県)。
鳥取大会代表者の山田さんは、ずっと自分に自信が持てないまま応募し、ここまで来たのだといいます。
「私は自分の声にも自信がなくて、みなさんみたいに可愛い声も出ないから、ずっと不安に思っていたのですが、審査員の方から『声は作らなくていいから、自分が思う通りにやって』と言われて、自然な演技が大事なんだということに気づかされて、すごく救われましたし、そして今、こうやって自分の名前を呼ばれたということは、これからは自信をもっていいんだと勇気づけられました。これからは幅広い役を演じられる、そしてキャスティング未発表の段階で、あの役なら私だな、と思っていただけるような声優になれたら嬉しいです」
左からイ・キップン、山田美鈴、リュウ・タビン、武亮介、イ・ダソムのみなさん
この後、10月24日に上海で開催された「声優魂」初の中国大会(何と応募者3万人!)の受賞者もゲストとして登壇し、挨拶。
中国大会受賞者のシュウ・スミンさん(左)とニン・カさん
中国語部門優勝のシュウ・スミンさんは、これまで演技などの経験はないものの、
「この賞を機に声優への道を邁進していきたい。将来は聞く人の心まで感動させる、いろいろな声を出せる声優になりたいです」
日本語部門優勝のニン・カさんは、何と日本語は日本のアニメやゲームを見ながら独学で覚えたとのことで、
「日本に来たのも初めてで、楽しみにしていました。これからも声優という夢に向かって頑張っていきます」
およそ7時間にもわたる第四回「声優魂」は、こうして幕を閉じましたが、こういった若者たちの熱い情熱と想いが、なにがしかの形で報われたらいいなと思います。
まずはトライしてみること。
本大会の南沢道義理事長が閉会の挨拶で述べた「挫折しやすい若者たちが、あえてこの大会に応募するという“挑戦”そのものが立派であると讃えたい」という言葉の通り、こちらも讃えたいと思います。
(C)国際声優育成協会
(文:増當竜也)