地球が真っ二つ!三股されて生まれた作品『愛を語れば変態ですか』福原監督インタビュー・前編

映画コラム

編集部公式ライターの大場ミミコです。
さぁ、いよいよです!今世紀最高の波動を放つ映画『愛を語れば変態ですか』の劇場公開が目前に迫ってきました!!

シネマズby松竹では、主役のあさこを演じた黒川芽以さんに引き続き、本作でメガホンを取った福原充則監督にお話を伺ってまいりました。

『愛を語れば変態ですか』でバスと闘う女優・黒川芽以さんインタビュー・前編

特攻服で全力疾走!『愛を語れば変態ですか』黒川芽以さんインタビュー・後編

「愛って何?」「変態って何?」…とどのつまり詰まって、愛=変態ってこと!?
そんな疑問を持ちつつ挑んだインタビューでしたが、福原監督の世界観に触れ、筆者の中で奇跡のパラダイム・シフトが起きました!

もはやインタビューと言うより「講話」「説法」と呼ぶにふさわしい、爆笑必至のインタビューをぜひお楽しみ下さい。

地球が真っ二つに!三股された悲劇が生んだ物語

―― 映画『愛を語れば変態ですか』、じっくりと拝見させていただきました。いやぁ〜スゴかった!!あくまで褒め言葉として聞いていただきたいのですが、これがよく映画になったな〜というのが一番最初の感想でした。

福原監督「(苦笑)ありがとうございます。」

―― この作品は、福原監督がかつて手がけた『キング・オブ・心中』という舞台が原案なんですよね。舞台というと、映画と違って柱(はしら。舞台となる場所のこと)が固定されているのが特徴ですから、ある空間に人が出入りして話が展開していくものだと思ってたんです。だから最初は、カレー屋さんを舞台にした物語かと思っていたんですが…。

福原監督「登場人物全員が、カレー屋を飛び出して戻って来ないという(笑)。」

―― 後半は、主人公のあさこが叫びながら暴走するのですが、登場人物も観客も「あさこは一体どこへ行くの?そして物語もどこへ向かって走ってるの?」と、困惑しながらあさこに付いていくという展開に度肝を抜かれました。

福原監督「ハハハ!まあ、小劇場ではよくある展開です。…よくあるは言い過ぎですけど。」

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―― 舞台『キング・オブ・心中』は、かなり前の作品とのことで拝見できなかったのですが、元々のストーリーをお教えいただけますか?

福原監督「映画とだいたい同じ話です。」

―― えっ?あさこのロング・ダッシュも舞台で演ったんですか?

福原監督「舞台バージョンだと、その表現として店の中に雨を降らせてます。夫の感情が高ぶって雲になり、店の中で雨が降って、妻の方は地球を割って去っていく…。」

―― す…すごいですね。それは映画で見たかったです。地球を割るなんてハリウッドでも見られない試みですが、なぜ妻は地球を割る運びとなったのですか?

福原監督「妻は浮気を繰り返していたのですが、夫は最後の男になりたかったんです。じゃあ、死ぬ瞬間に付き合えば、最後の男になるという理由で、死ぬ直前に出会いましょう。それまでは別れましょう。じゃあ一番遠いところに行きましょうという流れで、妻は地球の反対側に行くんです。でも、妻の性格上、いちいち時間をかけて行ってられないので、地球を割って、真ん中を通って地球の裏側に行くことにしたんです。」

―― 桁違いの世界観に脱帽です! このようなシチュエーション…つまり、愛で地球を救うという大義のもと浮気を繰り返す妻と、それに振り回される夫と個性的な浮気相手達というキャラクターで作品を作ろうと思ったきっかけをお教え下さい。

福原監督「当時、僕が好きだった女の子が三股ぐらいしてましてね。あ、僕が三番目だったんですけど(笑)。」

―― 何と!

福原監督「でも彼女の事を好きなので、肯定的に考えたんです。すると『一度に多くの男を楽しませるなんて、すごい人間力とパワーの持ち主だ!』…みたいな解釈になるわけです。まぁ、簡単には割りれませんでしたけどね。」

―― そりゃそうですよ〜。

福原監督「ただ、作家の端くれとして『これはネタになるな』って発想が出て来まして。彼女とやった人はみんな幸せになるという想像を膨らませたら、思いのほか楽しかったんです。」

―― なるほど。そういう軸で物事を考えると、誰も悪者にならないし、みんなが救われますね。ちょっと切ない気もしますが(笑)。

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走るのは子供だけ。だから大人が走ると面白い

―― 先ほどの質問にも繋がるのですが、演劇の時は“雨が降って、地球が割れて終了”というストーリーを、映画版ではなぜ、あさこの全力疾走という形に変更したのですか?

福原監督「感情の爆発をわかりやすく伝えたいと思いました。舞台だったら、お店のセットをふっ飛ばしちゃったりもしますけど。それは映画なのでね(笑)。ただ、出来上がるまでに色んな話し合いがありました。あのお店、爆発させちゃおうか?…とか。」

―― あの、閑静な住宅街に佇むカレー屋をですか?

福原監督「ええ。出来なくもないとの話で、意外とその案は通りそうだったんです。その代わり、特撮モノとか、ヒーロー戦隊モノの爆破シーンを撮影するような、採石場みたいな場所に店を建てますけど…。って言われまして。」

―― まぁ、お店の設定は不自然になりそうすけど(笑)。

福原監督「それはそれで、最後の方だけなのでアリかと思いましたが、僕は感情の具象化にとても興味があるんですよ。例えば、あさこを演じるのではなくて、あさこが言っている理屈の感情の『精霊』みたいなもの…それを顕してもらおうと考えています。」

―― 解ります。感情とかパッションって、精霊ですよね!

福原監督「そうそう。その人物の背後霊みたいなものですよね。舞台だと伝わりやすいんですけど、映像でどう表現するのか考えた時に、ワンシチュエーションでずっと芝居が続いてて、そこから飛び出す…というのが一番解りやすいかなと思いました」

―― 固定された状況から飛び出すのは確かに解りやすいですが、そのうえ(あさこを)走らせた意図はありますか?

福原監督「走ってる人を見ると楽しくないですか?以前、『大人は、なかなか走らない。走るのは子供だけ。だから大人が走ると面白い』みたいなことを宮沢章夫さんが言ってて。竹中直人さんが監督した『119』も宮沢さんの脚本ですが、色んな大人が走っててすごい楽しくて。」

―― 走る女性が好きな人って、結構多いですよね。

福原監督「なんか魅力的に見えるんじゃないですか。女性が走ってるだけの番組もありますもんね。あと、今回の作品で、ラジオの声として出演してくれた三土幸敏さんという舞台役者が居るんですけど、その人が夜中によく走るんですよ。」

―― それはトレーニングとか、頭をすっきりさせたいからですか?

福原監督「好きな子の事を考えると、感情が止まらないらしくてね。住んでいる阿佐ヶ谷から、中野のドン・キホーテまで走ると気持ちが収まるそうです。たった二駅走っただけで収まるような恋なのかよって思っちゃいますけどね。どうせなら、水道橋ぐらいまで走ってよ!って感じじゃないですか。」

―― 確かに!!

福原監督「主人公のあさこも、こんな感じなのかなーって。三土さんもあさこも、どこに行くか最初は分かってないんですよ。」

―― そう言えば、あさこのセリフでもありました。どこへ行くんだという問いに「さあ?どこだと思う?」って言ってましたよね。

福原監督「そういう感じが出ればいいなと思って表現しました。」

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–{一段ずつ上るところを、三段飛ばしで上がる映画}–

一段ずつ上るところを、三段飛ばしで上がる映画

―― 本作品は、起承転結など映画の定義に当てはまらない上に、「地球が割れる」など映像化が難しい描写も頻出する作品です。普通の映画会社・配給会社は手を出さないであろう、ある種実験的な作品が、結果的に大手配給から映画化されたのは何故でしょうか?

福原監督「舞台(キング・オブ・心中)の映像が残っていたというのは大きいと思いますね。編集の西潟弘記さんにも似たような事を言われました。『コレ、本当に松竹のマークつけて公開するんですか?』ってね(笑)。」

―― 同感です(笑)。

福原監督「映画にも、起承転結のようなセオリーがあるかと思いますが、舞台では、エチュードという、即興で芝居を作るという手法があるんですけど、原作の台本ではそれを取り入れているんです。稽古しながら台本を書いて、話に飽きたら別の話始めちゃうみたいな…。」

―― 現場で思い付いたものに寄せてストーリーを変えていくというやり方ですね。

福原監督「そうですね。原作となった舞台は約120分だったのですが、映画版は73分なんですよ。もし、エピソードの1つ1つをしっかり描けば、起承転結まではいかなくても『序破急』ぐらいはなったと思うんですけど。でも、その辺はあえてすっ飛ばしましたね。勢いが欲しかったので。」

―― またまた映画のセオリー話で恐縮ですが、一般的な映画って「このキャラはこういう人です」と観客に紹介しながら話を進めていく流れがありますよね。この作品でのあさこだったら、エプロン姿で「あなた〜。どっちの器にする?」なんて言ってるのがそれに当たると思いますが。

福原監督「若くて可愛い奥さん、みたいなキャラ紹介ですよね。」

―― でもその後は、どんどんキャラが変動していく。その場合、一般的なドラマだと「今は可愛い奥さんだけど、そのうち激変するからね」と観客への示唆があったりするんです。エプロンのポケットから凶器がチラ見えするとか、予感を前もって植え付けておくみたいなテクニックがあったりするんですけど…。

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福原監督「観客の理解とか一切関係なく、あさこはガンガン変わっていきますからね。逆に観客が『え?え?』と目が離せない状況が続いて、最後に『あ〜。こういう人だったんだ』って解る作りにしたかったんです。本来、階段を1つずつ上るところを、三段跳びで上がる感じになるよう心掛けました。」

―― なるほど。観客が作品に“付いていく”イメージですね。

福原監督「でも、付いて来てもらうには、どうしてもキャラクターを力技で持っていく必要があるんですよね。淡々とした芝居で三段跳びしてしまうと、完全に破綻しているように観られてしまうので…。まぁ、映画にしろ舞台にしろ、登場人物を上から見ていたくないんです。むしろ(登場人物に)引っ張ってって欲しい。」

―― 福原監督も、爆走するあさこに付いていく男性たちと同じ視点ですね。

福原監督「自分の理解の及ばない人がドンドン突っ走っていく。最後に意図が解って、僕達はヨロヨロと付いて行く…。それでいいんじゃないかな。例えば、映画監督って巨匠になるとロリコンになっていくじゃないですか(笑)。」

―― ロリコン…ですか?

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アウトな話が乱れ打ち!続きは後編でどうぞ

「巨匠になるとロリコンになる」という、衝撃発言の意味するものは・・・?!
この後は、さらにアブない世界へと皆さんを連れて行くことを約束しますので、引き続きインタビューの【後編】もぜひぜひお楽しみ下さいね!

演劇界の鬼才・福原充則氏の初監督映画『愛を語れば変態ですか』は、2015年11月28日より新宿ピカデリーをはじめ全国の劇場で一斉公開となります。スクリーン越しに降り注ぐ、愛のシャワーを存分に浴びて、覚醒モードに突入しちゃいましょう!

(取材・文:大場ミミコ)

映画『愛を語れば変態ですか』予告編
https://www.youtube.com/watch?time_continue=1&v=7ckVtCmpm4A