映画が観客の目に届くまでの間には、監督や脚本家、出演する俳優陣以外にも、様々な人が関わっています。今回はその中から、公開開始となった映画『劇場霊』の大庭闘志(おおば・たけし)宣伝プロデューサーに、その仕事の魅力や、映画『劇場霊』について、お話を伺いました。
映画の宣伝プロデューサーとは、どんな仕事?
―今回は、お時間をいただきありがとうございます。最初にお伺いしたいのが、そもそも映画の宣伝プロデューサーとはどういったお仕事なのかお聞かせください。
完全に定義付けをするのは難しいのですが、映画の宣伝の仕事って、例えばパブリシティであったり、タイアップや広告、ポスター・予告などのクリエイティブだったりに分かれています。その中枢にいるのが、宣伝プロデューサーです。まず、宣伝コンセプトとなる軸を立てることが一番の仕事で、色々なチームの人が意見を仰ぎにくるのですが、その軸にそって、良し悪しをジャッジすることになります。
―お客さんと映画をつなげるという意味では、非常に重責な仕事ですよね?
自分の判断ひとつで決まってしまうことも多いので、一番プレッシャーがかかるところでもあります。
―先ほど「宣伝コンセプトとなる軸を立てる」と言われていましたが、今回宣伝プロデューサーをされた映画『劇場霊』の軸とは何でしょうか?
本作では「ジェットコースター・ホラー」という言葉を使っています。数あるホラー作品の中でも、特に近年はアトラクション的に楽しめるホラー作品がヒットしています。映画『劇場霊』もアトラクション・ホラーとしての路線があって、ゆっくりじわじわときながら、最後は猛スピードで恐怖が駆け抜けていく、その様を一言で表すのに、撮影がはじまった頃から中田秀夫監督が発言していた「ジェットコースターみたいなホラー」という言葉がぴったりハマっていたので、その言葉を使っています。そういうアトラクション感というところを軸に様々な判断をしています。
―自身では初の宣伝プロデューサーを務める作品だとお伺いしましたが、初めて経験してみて、ご自身が感じた苦労などはありますか?
統率とその判断ですね。今までは、パブリシティの人間として媒体や芸能事務所とのみやり取りしていたものが、宣伝プロデューサーとなると、製作委員会などの、それぞれのチームをまとめないといけない。答を見つける作業の中心にいるので、即断即決で判断しないと、全てが後手に回ってしまって、何もできなくなってしまうんです。けれども僕自身が、元々は優柔不断な人間でして…。意識はしているんですけど、なかなか判断ができないところがあって、苦労しています。
―今回、4DXでの上映もありますね。ホラー作品としては、まだ目新しい試みですよね・
最近だと『貞子3D』が1館でやっていましたが、同時期に13スクリーンという規模感でやるのは初です。アトラクション感を出すという意味では、最適な上映方法のひとつだと思っていて、当初からやりたいと願っていただけに、実現して嬉しいです。
–{不安からの開放で得られる喜び}–
「楽しみたいし、楽しませたい」それがテーマ
―松竹に入られる前から映画は大好物だったのでしょうか?
そこまで深く大好きというよりは、人並みに好きぐらいだったと思います。
―色々お調べさせていただいたんですが、以前“映画監督”になりたいと発言していたのをお見かけしたのですが…
どこで聴いてきたんですか(笑)大学の頃に、宮藤官九郎さんにすごく憧れていたんです。色々作品を観させていただいて、映画を観ながらこんなにも笑うことができる作品があるんだなと感動したんです。宮藤官九郎さんが脚本家から監督までされていて、ヒーローに憧れるように映画監督になりたいって思っていました。
―今はどうなのですか?
宣伝の仕事をするようになってから、あまりそちらの道を目指そうという気持ちはなくなったんですよね。純粋に目先のことではあるんですが、この宣伝の仕事で、映画をいかにヒットさせられるかというところに、情熱がシフトしています。
―どうして変わっていったんでしょうか?
宣伝の仕事をずっとしていると、それがどんどん中毒みたいになっていくんですよね。映画『ホットロード』の宣伝担当をさせていただいたんですが、あれだけの大ヒットをしたことで快感みたいなものを経験して、この仕事により魅力を感じるようになりました。宣伝の仕事をはじめた頃は、夜中まで働いて大変だな、しんどいなって思っていたところもあったのですが、今になってみると、魅力ばかり感じていますね。「楽しみたいし、楽しませたい」それがテーマになっています。
不安からの開放で得られる喜びを強く感じてほしい
―宣伝プロデューサーをつとめられた映画『劇場霊』のみどころをお聞かせください。
「ジェットコースター・ホラー」と銘打っているだけあっての、今までのJホラーにはなかったスピード感です。「何かいる…」という怖さよりも、爽快感を楽しんでもらえればと思っています。
―爽快感ですか?
自分の経験になるんですけど、このまえ携帯電話を失くしてしまったことがあったんです。手元にないって分かってからずっと不安になって、その後、警察にいって一緒に探してもらったら、失くしてから2時間後ぐらいに見つかったんですよ。その直後30分くらい、身体が軽くてスッキリしたんです。
―それは恐怖体験ですね。
後でその時のことを思い出して、不安というものを感じたあとのスッキリした開放感って、ホラー映画と同じだなと思ったんです。「ホラー映画は怖くて避けている…」という人も決して少なくはないと思うのですが、恐怖感とか不安を作品を通して感じてもらって、観終わった後に、不安からの開放で得られる喜びを強く感じてほしいなと思います。
―映画『劇場霊』は、まさにその爽快感を感じられる作品だということですね。
ぜひ、怖がらずにチャレンジしていただきたいです。
映画『劇場霊』は現在公開中!
(C)2015『劇場霊』製作委員会
大庭闘志さんが宣伝プロデューサーをつとめられた映画『劇場霊』は、『リング』や『クロユリ団地』で知られる巨匠・中田秀夫監督によるJホラー最新作。主演にAKB48の島崎遥香さんを迎え、劇場を舞台に女優同士の壮絶な争いとともに、球体関節人形が巻き起こす救いようのない惨劇が描かれます。
映画『劇場霊』は、現在絶賛公開中!
映画『劇場霊』オフィシャルサイト
http://gekijourei.jp/
(取材・文/黒宮丈治)
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