まさにプレミアムな『グラスホッパー』大ヒット御礼舞台挨拶!そして、じっくり味わいたいアート系映画2選

INTERVIEW

 

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はじめましての方もそうでない方もこんにちは。

いやぁ、間に合って良かった!!!!!!

八雲ふみねです。

 

 

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今日、11月19日は、ボージョレ・ヌーボー解禁。
ボージョレ委員会の発表によると「2015年は偉大なヴィンテージ」だとか。
私はパリ同時多発テロへの「献杯」の思いも込めて、今夜いただく予定。
今年の出来が楽しみです ♪

 

 

さて…。

 

 

「間に合って良かった!!!!!」

 

 

と、言えば…。

 

 

『グラスホッパー』大ヒット御礼プレミアム上映会での出来事。

 

この日、博多 ⇔ 東京 弾丸舞台挨拶ツアーを敢行していた、主演の生田斗真さんと瀧本智行監督。
私は東京での舞台挨拶で司会を務めるため、新宿ピカデリーでお待ちしていたのですが…。
雨の影響で飛行機が遅れ、お二人が到着したのは、なんと本番10分前!
いやもぅ、ハラハラでした~。
満員のお客様をお待たせしないよう、生田さんは私服姿で登壇。
(これがまた、オシャレでカッコいい!)
博多での様子をお話して下さったり、ファンの方々からの質問に直接答えたりと、ライブ感あふれるトークを繰り広げて下さいました!

 

 

そして、何よりも圧巻だったのが…。

 

 

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映画『グラスホッパー』をご覧いただいたお客様のアツイ想いがこもった感想コメント、合計1000人分!
全長9メートルのボードに所狭しと並べられたコメント。
ひとつひとつ読み耽る生田さんと瀧本監督、感激しきりといった様子でしたよ。

 

実は『グラスホッパー』については、私個人的にも

 

間に合って良かった!!!

 

なんです。

 

 

何度となく司会のお声がけをいただきながらも、諸般の事情でお受け出来ず、涙を飲むことしきり。
最後の最後、大ヒット御礼の舞台挨拶で本作の魅力に “巻き込まれる” コトが出来、感謝です。

 

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…というコトで。

 

 

八雲ふみねの What a Fantastics! ~映画にまつわるアレコレ~ vol.41

 

今回は…。

 

 

じっくり味わいたい!アート系映画を2本ご紹介します。

 

–{稀代の日本画家・フジタの世界に触れる映画『FOUJITA』}–


 

 

 

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2015年11月14日から角川シネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国ロードショー
監督・脚本:小栗康平
出演:オダギリジョー、中谷美紀、アナ・ジラルド、アンジェル・ユモー、マリー・クレメール、加瀬亮、りりィ、岸部一徳、青木崇高、福士誠治、井川比佐志、風間杜夫 ほか
©2015「FOUJITA」製作委員会/ユーロワイド

 

第43回カンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞した『死の棘』などを手がけた小栗康平監督の10年ぶりの新作、『FOUJITA』。
1920年代からフランスを中心に活躍した日本人画家・藤田嗣治を主人公に、彼が生きた激動の時代を描いた意欲作です。

藤田嗣治は1886年に東京で生まれ、27歳の時、単身渡仏。
パリで「乳白色の肌」の裸婦を描き、エコール・ド・パリの寵児に。
ピカソやモディリアニらと共に注目されました。
第二次世界大戦中は日本に戻り、「アッツ島玉砕」といった作風が全く異なる「戦争協力画」を発表。
日本美術界の中で重鎮として登り詰めていくも、疎開先の村で敗戦を迎えることに。
戦後は再びパリに戻り、カトリックの洗礼を受け「レオナール・フジタ」として晩年を過ごし、さらにフランス国籍を取得。
二度と日本の土を踏むことなく、その生涯を終えました。
波乱の人生を送った日本人画家・フジタを演じるのは、オダギリジョー。
フジタの5番目の妻・君代役は、中谷美紀。
ほか、フランスからはアナ・ジラルド、日本からは加瀬亮、岸部一徳ら、日本とフランスの実力派キャストが集結しています。

フジタの生涯を追ったいわゆる伝記映画ではなく、1920年代のパリと1940年代の日本を並べ、文化・歴史の違いを浮かび上がらせる作りとなっている本作。
スクリーンに映し出される、絵画や彫像の佇まい。
静と動、光と影のコントラスト。
息をのむような美しさと得も言われぬ不気味さが共存した映像。
どれを取っても、2つの国と時代に翻弄されながらも自らの表現を追求したフジタの “内なる世界” に触れているかのよう。

そんな映画『FOUJITA』は、芸術家を目指す現代の若者の目にはどのように映ったのでしょうか…。
全国公開に先駆けて、美大生50人をお迎えしたティーチイン試写会を都内にて開催。
小栗康平監督、オダギリジョーさん、中谷美紀さんが出席しました。

 

 

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上映終了直後、シーンと静まり返る会場。
まだまだ映画の余韻に浸りながらも、目の前にズラリと並んだゲストにちょっぴり緊張した面持ちの学生さんたち。
オダギリさんの「今日はお手柔らかに…」という茶目っ気あるご挨拶で、一転、場が和みました。

 

 

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まずは、劇中にも登場するフジタが描き上げた「五人の裸婦」「アッツ島玉砕」について、神奈川県立近代美術館の水沢勉館長が解説。
西洋と日本、2つの文化を生き抜いたフジタの絵画的アプローチについてのお話は、とても興味深いものでした。

 

 

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その後、学生さんとのティーチインタイム。
「非説明的で物静かな画面に、独特な会話がすっと入ってくるのが印象的」
「絵は1人で描くけれど、映画は大勢で作る。そんな中で役者が監督に反抗する手段は?」といった感じで、率直な感想、鋭い質問が飛びます。
メディアでは、オダギリさんが「今回は(小栗監督に対して)ゼロ反抗」と答えた場面が多く取り上げられていましたが、ゲストの方のお答えはどれも表現者としての核心に触れるものばかり。

「映画を見る時、人は言葉と動きだけで『わかる』『わからない』という判断をしがち。しかし映画の醍醐味とは、選ばれたフレームの中で言葉が散ったり沈んでいったり、日常会話とは違う響きが画面の中でよみがえることだと思います」と、小栗康平監督。

「この映画はフジタの教科書でもなければ歴史を学ぶものでもないということを、今日あらためて感じました」と、オダギリジョーさん。

「感動の涙や笑いでなく、見終わったあとの沈黙こそがこの映画に対する賛辞だと思います」と、中谷美紀さん。

静かに語る言葉ひとつひとつに、私も目からウロコが落ちる思いで司会を務めさせていただきました。

 

 

–{遺産相続をめぐった家族の再生の物語『パリ3区の遺産相続人』}–

 

 

  • パリ3区の遺産相続人

 

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2015年11月14日からBunkamuraル・シネマほか全国ロードショー
監督:イスラエル・ホロヴィッツ
出演:ケヴィン・クライン、マギー・スミス、クリスティン・スコット・トーマス、ドミニク・ピノン ほか
©2014 Deux Chevaux Inc. and British Broadcasting Corporation. All Rights Reserved.

 

パリの旧市街、マレ地区。
亡くなった父から相続した高級アパルトマンを売却し、その金で人生をやり直そうとニューヨークからやって来た一文無しのマティアス。
父が遺してくれたアパルトマンは、部屋数が多く、庭も付いている。
これは高く売れそうだと期待するが、誰もいないはずに部屋にはイギリス生まれの老婦人マティルドが娘のクロエと共に住んでいた…。
しかもこのアパルトマン、フランス伝統の不動産売買制度「ヴィアジェ」によって、元の所有者であるマティルドが亡くなるまで売却できないうえに、彼女に年金を払い続けなければならないと言う。
なんとか金策に走り、アパルトマンを売るチャンスを虎視眈々と狙うマティアスだったが、ある1枚の写真がきっかけで、隠された家族の秘密が明らかになっていく…。

ブロードウェイの舞台劇として書き上げた戯曲を元に、誰もが一度は抱えるであろう家族の葛藤や和解、再生を描いた人間ドラマ。
日本でも人気の英国ドラマ「ダウントン・アビー」でおなじみの大女優、マギー・スミス。
映画『ラストベガス』で健在ぶりを見せつけた名優、ケヴィン・クライン。
そして、映画『サラの鍵』での感動的な演技が記憶に新しい、クリスティン・スコット・トーマス。
豪華キャストによる極上のアンサンブルで、時にユーモラスに時に辛辣にドラマを盛り上げます。

この映画の中で重要なポイントとなってくるのが、フランス独特の不動産売買システムである「ヴィアジェ」。
「終身」という意味を持つこのシステムは70才以上の身寄りのない老人に多く利用されており、最大の特徴は持ち家やアパルトマンを売却しても、元の持ち主が亡くなるまで住み続ける権利があるということ。
反対に買い主は家を購入してもすぐに住むことは出来ず、売買契約が成立したときに前払い金を支払い、その後は月々、定額を売主に支払わなければいけません。
我々日本人からすると、なんだか人が亡くなるのを待っているような不謹慎な制度のようにも感じますが、買主側は通常の手続きで購入するより安く買え、売主にとっては月々の生活費が手に入り、老後の安定を手にすることが出来るというメリットも併せ持つ。
考え方によっては、合理的なシステムですね。
遺産を相続しても国が違えば相続事情も違う。
文化の違いも面白く見ることが出来る映画です。

そんな「遺産相続」をテーマに、スペシャルトークイベントが開催されました。

 

 

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ゲストは、カスタネット芸人の前田けゑさん。
なんとこの方、祖母の知人だった女性から15億円の遺産を相続してしまったというリアル遺産相続人。

 

まぁ、うらやましい!!!!

 

…という声が聞こえてきそうですが、いろいろとご苦労もあるようで…。
税金の支払いやら嫌がらせを受けた経験談やら、なんともリアルな遺産トークを繰り広げて下さいました。

 

とは言え、前田さんご自身は、とても真面目で誠実な方。

決して、

 

軽~いノリで養子縁組した相手が資産家で、あっという間に遺産が転がり込んできちゃった!

 

…というワケではなく、

 

養母となったおばあちゃんが息を引き取るまで一緒に暮らし、献身的に介護もなさったとのコト。

「子供が親の面倒を見る。当然のことをしただけです」と話す、前田さん。

やっぱりいちばん大切なのは、人と人とのつながりなんだなぁ~と、再認識するひと時となりました。

 

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奇しくも、ご紹介した映画は2作品とも、フランスが舞台の映画になってしまいました。

 

それではまた次回、お会いしましょう。
お相手は、八雲ふみねでした。

 

八雲ふみね fumine yakumo

八雲ふみね

大阪市出身。映画コメンテーター・エッセイスト。
映画に特化した番組を中心に、レギュラーパーソナリティ経験多数。
機転の利いたテンポあるトークが好評で、映画関連イベントを中心に司会者としてもおなじみ。
「シネマズ by 松竹」では、ティーチイン試写会シリーズのナビゲーターも務めている。

八雲ふみね公式サイト yakumox.com