肌のぬくもりを感じて―入江甚儀『流れ星が消えないうちに』独占インタビュー

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流れ星が消えないうちに 入江甚儀 インタビュー

2015年11月21日(土)より全国ロードショーとなる映画『流れ星が消えないうちに』で、波瑠が演じる主人公・奈緒子の恋人役を演じた入江甚儀に、シネマズが独占インタビューをおこなった。本作で演じた思いや、俳優としてのこれからについて語ってもらった。

寄り添い、支えないといけないという気持ちが一番にある

―入江さんが今回演じられた巧は、亡くなった親友、加地(葉山奨之)の恋人であった奈緒子(波瑠)と交際するという、複雑な境遇にいる役でしたが、演じるのは難しかったのではないでしょうか?

加地は、若くして達観していて自分の考えもしっかりと持っている人物。死んでしまったことで、その完璧が揺るがない存在になってしまった。奈緒子は、彼を失い、その悲しみに悶えている人物で、その2人の間に板挟みになっているのが巧です。

流れ星が消えないうちに

―ある種の三角関係ですよね?

三角関係のようではありますけど、加地と奈緒子の真ん中にいて、どっちにも転べないような存在ですね。心情がはっきりしない感じの役でしたので、とても難しかったです。

―三角関係ではなく、真ん中にいるというのはどういうことでしょうか?

巧が奈緒子と付き合うことになったのは、加地がいたからこそですよね。親友と付き合っていた女性との交際に関して、後ろめたい気持ちとかではなく、支えてあげたいという気持ちから、彼女に向き合い付き合っているんだと思うんです。そこにはある種の責任を感じている。

―責任ですか?

もしそこに責任がなかったら、巧は奈緒子と付き合ってないと思うし、別れていたと思うんです。巧は責任を感じられる人物で、さらに優しさを持っている人物なんです。そんな人物だから、奈緒子という存在に寄り添い、支えないといけないという気持ちが一番にあると思うんですよね。優しさがあるからこそ、奈緒子と向き合えている。その優しさという部分を大事に演じました。

―入江さん自身に通じるところはありますか?

巧って、巻き添えをくらうタイプなんですよね。自身のことを考える余裕がないくらい、自分以外の人のことをすごく考えて、いつの間にか自分が傷ついてしまうような人物。結構僕も、身近な人が悩んでいたら、どうしてあげたらいいんだろうとかって考えて、一緒に転がっていくところがあります。「俺の話じゃないから」ってなれないんですよね。どうしてあげたらいいんだろうと考えてしまうんです。そういう意味では、通じるところがあったとは思います。

巧のほうがかっこいい

―今回は、高校時代の巧も演じていますが、演じ分けとしてはどんなところを意識しましたか?

さっきも言ったように、現代の巧は僕に近い部分があると、台本を読んだ時点で思いました。大切な親友を亡くした経験は僕にはまだ無いですが、友人や恋人と別れたりとか、上京して家族と離れ離れになったりだとか、そういった小さな“出会いを失う”というのを集めて、巧にアプローチをかけて演じました。

―高校生の巧は?

高校生の頃の巧は、たぶん最初は何も考えていないと思うんですよ。加地と出会ったことで、初めて同い年に悟られ、気づいたら自分には何もないって思い始めて、現代の巧に繋がっていく。だから、高校時代の巧を演じるときは、すごくプレーンというか、まだ何もないまっさらな人物という感じで演じました。

―巧という役は、入江さん自身のイメージと比べると、むさい男のイメージだなと思ったのですが。

いや、巧のほうがかっこいいですよ。僕の中では加地よりも、巧のほうがかっこいいと思っているくらいです。

―それはどうしてですか?

加地はどちらかというと、1人で生きているような人物。奈緒子や巧にとっては神様的な存在だと思うんです。その存在を失ってしまった奈緒子の側に寄り添うことって、心身ともにとても疲れることですよね。でも、それをすごく自然な気持ちで寄り添っていて、とてもかっこいいなと僕は思います。

–{意外な再開が…}–

武蔵野市・三鷹市はとても居心地が良かった

―今回、武蔵野市・三鷹市の協力の元、武蔵野を舞台に映画が紡がれていますが、どんな印象を持たれていますか?

いい意味で生活感を感じる街だなと思います。都心とは違って、すごくおだやかな時間の流れ方をしていて、とても居心地が良かったです。

―地元の人がエキストラで参加されていたりしたと思うのですが、実は今日の撮影を担当している岡部さんも地元の人間としてエキストラで出演し、入江さんと共演されたんですよ。

え?!そうなんですか。どこのシーンですか?

―(岡部)居酒屋のシーンで後ろで帽子を被って座っていました。あとは、波瑠さんが街中を歩くシーンでも出演させていただきました

驚きました(笑)お久しぶりです。

流れ星が消えないうちに 入江甚儀 インタビュー 岡部照将 エキストラ

シネマズの公式ライターでもある岡部照将(左)は本作にエキストラとして参加した

―(岡部)ご無沙汰しております(笑)何か思い出に残った場所ってありますか?

メインとなった商店街ですね。

―(岡部)すきっぷ通り商店街ですね。

そうそう!そこに楽屋としても使っていたプレハブがあったんですけど、毎朝早くに入って、衣装に着替えてそこからバスに乗って出発していたので一番印象に残っています。奈緒子と焼き芋を買っているシーンも、小市慢太郎さん演じる奈緒子の父親と日本酒飲んで酔っ払って、ぶらぶらと歩くシーンとかも商店街で撮影していて、すきっぷ通り商店街には思い出がたくさん詰まっていますね。

なにかを与えられるような俳優でいたい

―奈緒子役の波瑠さんの印象は?

ふわっとした柔らかい印象で、常にナチュラルな方でしたね。でも、しっかりと色々なことを考えていらして、とても頼りになる存在でした。

流れ星が消えないうちに

―入江さんの今後の俳優としての目標をお聞かせください。

「この人見ていて、面白いな」って思ってもらえればいいです。たまたま観た映画に僕が出ていて、面白いなと思ってくれて、僕が出ている次の作品を観てみたいと思ってもらえるような俳優になりたいですね。そう思ってもらえるということは、僕が何かしら、心の揺らぎのようなものを、観た人に与えられたってことですよね。

―心に何かを与えられる俳優ということですね。

ただカッコ良かったとか、そういえば居たなとかじゃなく、役が大小も関係なく、一回一回なにかを与えられるような俳優でいたいです。おじいちゃんになってもやっていきたいですね。

―死ぬまで俳優宣言ですね。

22歳の今の僕にしかできない演技があって、この後さらに色々と待っているわけじゃないですか。30代、40代、50代…と、それなりに大変だろうけど、楽しいんだろうなって思います。

–{肌のぬくもりを感じて}–

肌のぬくもりを感じられる映画

―最後にファンの方、そして映画の公開を楽しみにしているみなさんにメッセージをお願いいたします。

『流れ星が消えないうちに』は、すごく肌のぬくもりを感じられる映画だと思うんです。決して一筋縄じゃいかない映画ですが、必ず共感してもらえる要素がたくさん詰まっていて、自分のことのように感じられる作品だと思います。一回観て消費される映画ではなくて、歳を重ねてから観たら、また見え方が変わってくる映画です。

―肌のぬくもりということは、入江さんのぬくもりもそこに?

もちろんです!ぜひ伝わって欲しいです。

irie07流れ星が消えないうちに 入江甚儀 インタビュー

映画『流れ星が消えないうちに』まもなく公開!

映画『流れ星が消えないうちに』は、発行部数30万部を超え、広く親しまれている橋本紡の同名小説を映画化した、ヒューマンラブストーリー。恋人を事故で失った女性が新恋人や周囲の人々との交流を通して再生していく姿を武蔵野を舞台に綴る。2015年11月21日(土)より角川シネマ新宿ほか全国ロードショー。

(C)2015 映画「流れ星が消えないうちに」製作委員会

(取材・文/黒宮丈治、写真/岡部照将)

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