2015年11月14日より公開となる、映画『ラスト・ナイツ』の紀里谷和明監督に独占インタビューをおこなった。構想から5年もの歳月をかけた本作への監督の思いや、今後の作品について話しを伺ってきた。
そこまでしないと“世の不条理”には立ち向かえない
―『CASSHERN』『GOEMON』そして『ラスト・ナイツ』と、これまでの作品も含めて、多くの“死”が描かれている印象なのですが、“死”は監督にとって、ひとつのテーマなのでしょうか?
“生きていく”ということに、執着してもしょうがないっていうのが俺の中にあります。「自分の命を代償にしても、残さないといけないものがある」というのが、ずっとテーマになっていますね。
―『CASSHAERN』『GOEMON』と主人公が命をかえりみずにラストへ進んでいきますよね。
例えば『CASSHAERN』は、葛藤した主人公が、実は自分が悪だったということに気づき、自分の命と引き替えに何かを残そうとした話。『GOEMON』も、群衆のために言葉を残して去る話です。
―今回の『ラスト・ナイツ』も、予告編の映像でも見られるとおり、鮮烈な“死”が描かれていますね。
それぞれ『CASSHAERN』『GOEMON』そして今回の『ラスト・ナイツ』と自分の中で定義がありました。
–{全てをシンプルにした}–
―それぞれの作品でなぜ“死”を描いたのでしょうか?
これまでの3作品が僕の中で表現したい共通する定義があったという事だけなんです。
―死と引き換えに何かを継承していくという点では「継承」自体もテーマですか?
それは世の中のテーマじゃないでしょうか。世の中的にみれば、お金や文化財と、形があるものでの継承が多い気がします。でも、俺はそこに興味がなくて、内面的な部分、心とか、精神とか哲学を継承していくということが大事だと思っています。
―監督にとっても、映画を撮りつづけることが“継承”になっている?
映像作品と言われるものの中で、映画が他と違うのは、そこに“物語”があることなんですよね。物語があることで、お客さんに何かを感じていただきたいというのがあります。そこには「世界というのは、願わくばこうあってほしい」という俺の願いを込めています。
―世界がこうあってほしいというのは?
平和というものについて、問いかけています。『CASSHAERN』にしても『GOEMON』にしても「なんで争いがおこるのか」に対しての問いかけなんです。ちょっとだけ考えてもらえないかなということですね。「こういう見方もある」というのを言い続けているつもりなんです。
ミスキャストはない。100%のキャスティング
―試写を拝見させていただいて、個人的には観終わった後に、ぐっと胸に残るものがありました。劇場を出たあとに、歩道橋の上で思わず立ち止まって、ずっとなんとも言えない感情に包まれて、しばらく放心状態になりました。
嬉しいですね。ありがとうございます。
―作品的には、これまでの2作と比べると、派手なCGなどもなく、よりヒューマン・ドラマが強くなったと感じたのですが?
そぎ落としていくというのが今回のテーマだったんです。CGとか、過剰なデザインもないし、全てをシンプルにしました。映画としては当たり前のことですけど、“物語”と“役者のお芝居”を徹底的にやろうと決めて、それを実現しました。
–{自分自身を見つめてほしい}–
―キャスティングはどういった基準で選ばれたのですか?
単純に好きな役者ばかりを選んだという感じですね。すごくシンプルな発想で、主役は最初からクライヴ・オーウェンだと決めていて「やってほしい」と言い続けていた。モーガン・フリーマンにしても、受けてもらえるかどうかは分からないけど、あの役は彼しかいないと思っていました。
―伊原剛志さんも出演していますが、素人考えで「日本人監督だと、ついつい日本人をフューチャーしようとか考えるのかな?」と思っていたんです。けれど、全然そんなことなくて、人種も肌の色も全く関係ない世界がそこにありましたね。
その通りですね。ミスキャストはないですよ。全員確実にハマっていたと、100%のキャスティングだと思っています。
観終わったあとに、見つめてほしい。
―今回はマイナス20度の極寒の地でも撮影されたとのことですが、どうしてそんな過酷な撮影をされたのですか?
役者にとって、グリーンスクリーンでの撮影※というのは、ストレスが大きいんですよね。実際に生身で感じられるところにいたら、それをしっかりと演技で返してくれる生き物が役者だと思っているんです。だから、そういう環境が欲しかったんですよね。今回は、それができるだけの予算をいただいたので、できました。
※CGで作られた映像を背景として使う際、CGと差し替えやすくするために、緑色の布の前で役者に演技をさせ撮影する手法。
―つまり、監督にとっては悲願だという感じでしょうか?
スタートラインに立たせてもらったという感じでしょうか。欲しいツールが全部揃って、ようやくここからがスタートラインです。
―今後の展望をお聞かせください。
3部作が終わって、ここから先はもっともっと内面を掘り下げていく作品になると思います。派手なものはもっと排除されていく。
―内面を掘り下げるというと、どういうことでしょうか?
自分の心のなかに入っていくということですね。人って世界を探求するんですよね。しかし、外側は探求するけど、どこまでもいっても何も見つからない、そうじゃなくて、内面を探求していかないといけないんだという話を次にやります。今までとは全然違うものになりますよ。
―最後にこれから『ラスト・ナイツ』を観るひとたちへメッセージをお願いいたします。
とにかくシンプルに観ていただきたい。映画って劇場を出た後、どう感じてもらえるのかしか無いと思うんです。次の日に少しだけ社会へとの向き合い方に“勇気”が出るようなものになれればいいなって思ってます。この世の中って、個人対社会の向き合い方でしかなくて、3部作では、そこをずっと問いかけているだけなんです。
―そこを感じ取っていただけたらということでしょうか?
観終わったあとに、もうちょっとだけ、自分自身を見つめてほしいということですね。
映画『ラスト・ナイツ』は11月14日より公開!
映画『ラスト・ナイツ』は、『ミリオンダラー・ベイビー』などで知られる名優モーガン・フリーマンと『シン・シティ』のクライヴ・オーウェンを主演に迎え、紀里谷和明監督が5年の歳月をかけ完成させた意欲作。
戦士の時代が終わりを迎え、よこしまな政治が栄誉に取って変わろうとしていた封建的な帝国で、忠誠を誓った主君の不当な死に報いるために、気高い騎士たちが立ち上がる―
映画『ラスト・ナイツ』は2015年11月14日(土)よりTOHOシネマズスカラ座ほかにて全国ロードショー。
(C)Luka Productions
(取材・文/黒宮丈治)
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