シネマズ公式ライターのアスカでございます。
広島県福山市に実在した日本で最も古い映画館の1つシネフク大黒屋を描いた『シネマの天使』の完成披露試写会が2015年10月13日に東京・池袋で開催されました。ゲストに主役の藤原令子さんと本郷奏多さん、阿藤快さん、ミッキー・カーチスさん、時川英之監督が登壇し、映画館での思い出や本作品の撮影を通じてどう感じたか、観客にどう観てもらいたいかなどを語っていただきました。
122年続いた広島県福山市の映画館「シネフク大黒屋」
『シネマの天使』に登場する大黒座は広島県福山市の映画館「シネフク大黒屋」をモデルにした、122年という歴史ある映画館です。
時川英之監督は撮影することになったきっかけとして、2014年5月ごろにシネフク大黒屋の方から大黒座を壊すことになったので撮影してくれないかと依頼があったときのエピソードを話してくださいました。
「大黒座のスタッフさんとの打ち合わせの席で気軽な感じで、大黒座を舞台にした短編映画でも作ったらいいんじゃないですかね?と言ったら、大黒座のスタッフさんがドッ泣き出されて、こんなにも思い入れがあったんだと気づきました。
それでいたたまれなくなって、閉館する映画館のために何ができるだろうかと考えたところ、もし、壊す前に長編の映画を作ることができたら、大黒座が作品として生き続けられたら素晴らしいんじゃないかと思って提案しました。」とのこと、提案したのが6月で、そこからが本当に大変だったそうです。
「壊すと決まったのが9月半ばだったので、そこから脚本を書いて撮影しました。」といい、撮影が間に合わなかったら大黒座そのものがなくなってしまうわけですから、監督も出演者もスタッフも皆さん本当に忙しい撮影だったのですね。。。
また、この作品は実話をベースにしたフィクションではあるものの、「できるだけリアルに近づけたいと思って、撮影場所も大黒座だし、働いてる人やお客さんの話を聞いてセリフは実際の方をモデルにしている。」とのこと。大黒座を知っている人は懐かしみながら作品を楽しめるのではないでしょうか。
–{久し振りに温かい作品に出た}–
本郷「久し振りに温かい作品に出た」
主役の明日香を演じ、映画初主演の藤原令子さんはどんな思いで撮影に臨んだかを問われると、「ドタバタ始まったので、初主演だけどそんな心の準備ができずにただ一生懸命に仕事をしたって感じです。」と、大黒座の壊される期日が迫るなか、初めての主演に戸惑いながらも無事に明日香を演じ切ったことにホッとした様子を言葉にしていました。
もう一人の主役であるアキラを演じた本郷奏多さんは、「この映画の主役って大黒座であって、歴史ある本当にあったものを使って作ったからこそすごくメッセージ性があると思います。実際に足を運んでいる方々の想いが込められています。」と、あくまでも主役が大黒座であることを強調しながらコメント。続けて、「すごくいい作品に久し振りに出させていただいたな〜と思います。いや、(困った様子で)“温かい作品”に久し振りに出たな〜といった意味です!」と、壁の外から巨人が出てくる激しい作品に出演した後だっただけに、そのコメントから感じられる様子に会場全体が笑いに包まれました。
藤原「映画館にいっぱい観に行きたい」
『シネマの天使』にちなんて、映画館にはどんな思い出がありますか?と問われた藤原令子さんは、「映画館は実家から遠くてぜんぜん行けなかったので、そういった思い出がないんです。(謎の老人を演じた)ミッキー・カーチスさんが作品内でお話していることに感銘を受けて、こういった映画館にいっぱい見に行きたいと思いました。」とコメント。
続けて、本郷奏多さんは「僕自身あまり映画を観ないので映画館へは舞台挨拶で来ることの方が圧倒的に多いんですけど、我々は出る立場ですが観る人たちは映画館に対してこのように思っているんだと知れて良かったです。」と、本郷奏多さんが映画をほとんど観ないことに驚きましたが、今後はぜひたくさんの作品を観てほしいです!映画選びの参考にはぜひシネマズ by 松竹をご覧くださいね(笑)
そして、大黒座の映写技師、大久保を演じた阿藤快さんは「昔は週に2本、1ヵ月で8本の映画が流れていました。(住んでいた)小田原市内には松竹、東宝、東映など映画館は全部ありました。あんなに街の中にはいっぱい映画館があったのに、今や小田原市内にはそういった映画館がなくなってシネコンしかない。近くになくなったのが寂しい。」と、大黒座のように消えていったたくさんの映画館を思い出しながらコメント。そういえば筆者の住んでいた埼玉にも小さな映画館がたくさんありましたが、今はぜんぜん残っていません。キレイで便利なシネコンが増えるのは嬉しいんですけど、そういった寂しい思いもありますね。
–{饅頭をみんなで!}–
大ヒット祈願の饅頭をみんなで!
さて、舞台挨拶の終盤には広島県福山市からお祝いの特製饅頭が届き、映画『シネマの天使』のヒット祈願として登壇者のみんなでパクっと。和菓子が苦手だという本郷奏多さんもヒットのために食べていました!
ヒット祈願の饅頭は会場の観客やマスコミ陣にも配られまして、これで大ヒット間違いなしですね!
実在したシネフク大黒屋は1892年に開館した日本最古級の映画館。多い日には1日で7回も上映した人気映画館です。幾度となく改築を繰り返しましたが見えない部分の老朽化やシネコンの台頭を理由に2014年8月に閉館。122年というたくさんの人の思い出が詰まったシネフク大黒屋はもうありませんが、時川英之監督の手により映画作品として生まれ変わりました。『シネマの天使』は11月7日より全国公開です(※広島では10月31日より先行公開)。
公式サイト:http://cinemaangel.jp/
(c)2015 シネマの天使製作委員会
(取材・アスカ)