予告編が公開されると、瞬く間にその数々の過激な描写が話題となった映画『木屋町DARUMA』が先日公開を迎えた。本作で体当たりの演技を見せてくれた武田梨奈さんが、シネマズの独占インタビューに応じてくれた。堕ちていくヒロインという新境地に挑んだ彼女の撮影秘話や、今後の展望についてなどを伺った。
「アクション=闘うだけの人」というイメージ自体を覆したい
―今回武田さんが演じた新井友里という役は、脚本を見た段階でもハードな内容だと想像がつきましたよね?
正直に言うと、最初は何も理解できなかったんですよ。なんかもう、大人の社会すぎて。「この世界観はなんなんだ!」っていう感じでした。
映画『木屋町DARUMA』より
―どちらかというと、清楚なイメージがある武田さんにとって、新境地だと思うのですが、この役はどんな経緯でオファーがあったんですか?
2年半くらい前なんですが、俳優の島津健太郎さんに「お花見やるからおいでよ」って、役者さんとか映画関係者が集まるお花見に呼んでもらったところが、そもそものきっかけになっています。
―お花見ですか?
そこに、今回キャスティングプロデューサーもされた木下ほうかさんもいらっしゃって、「あれ?あんた武田梨奈?」と、ほうかさんから声をかけてくださったんですよね。そこで「今度、映画撮ろうと思ってるんだけど、台本見てみない?」といきなり言われたんですよ。
キャスティングプロデューサーもつとめた木下ほうか(映画『木屋町DARUMA』より)
―それが今回の『木屋町DARUMA』の台本だった?
そうですね。どんな作品かも説明がないままでしたが「見させてください!」って言ったんです。そしたら、ほうかさんに「感想を教えて」と言われたので、感想を伝えた感じですね。
―なんとお伝えしたのですか?
「すごい作品すぎて感想が言えないです」って伝えました(笑)
―随分とストレートに伝えたんですね(笑)
それで「このヒロインの子を探してるんだけど、やりたいと思う?」と言われたので、「やりたいです」と伝えて話が進んでいったという感じですね。
武田梨奈さん演じる新井友里
―しかし、事務所的には今回の役に反対はありませんでしたか?
そうですね、きっと事務所はダメと言うだろうなと私も思いました。マネージャーさんに、こういう話を頂いたと話した時も最初の反応が「うーん…」という感じだったんです。でも「梨奈はどう思うの?」って言われて、そのとき心の底から「本当にやりたい!」って思っていたんですよね。
―それはどうしてですか?
その頃、映画のオーデションに行った時、アクション映画じゃない作品だと「なんでアクション映画じゃないのに、君ここに来ているの?」と言われたりすることがあったんです。それで「アクション=闘うだけの人」というイメージ自体を覆したいと思っていたのもあって、これは今勝負したい作品だと思ったのが1つです。
―他にも理由が?
さきほどのと基本的には同じにはなるのですが、木下ほうかさんに「なんで私を選んだんですか?」と聞いたとき、ほうかさんが「アクション女優のイメージが強いから、違う武田梨奈を見てみたかった」と言ってくださったんですよ。「こういう風に精神的に闘っている役も、お前だったらできると思った」とも言ってくれて。
―それは嬉しいですね。
すごく嬉しかったです。だから「是非やりたい」って思ったんですよね。最終的には事務所も理解してくれて、出演させていただくことになりました。
–{何をすることもアクション}–
理想の役者像は武田鉄矢
―先日、ロサンゼルス日本映画祭で最優秀主演女優賞を受賞した『かぐらめ』もアクション作品ではないですよね? 他のインタビューなどでは「日本の空手アクションを世界に広めていきたい」と語られているのをお見かけしたのですが、そこは変わらないのでしょうか?
もちろんです。ただ「アクションとお芝居どっちが好きなの?」という質問が一番疑問符の浮かぶ質問でして、さきほども言った通り「アクション=闘うだけの人、格闘技」というのは、嫌だなというのがあるんです。
―アクションは闘うだけじゃない?
何をすることもアクションだと思っています。セリフのようなしゃべること、走ること、泣くこと、それら全てがアクションだと思うんです。
映画『木屋町DARUMA』より
―それは目標とする俳優さんに武田鉄矢さんがいらっしゃることも影響があるのでしょうか?
ありますね。そもそも武田鉄矢さんを見てお芝居をやりたいと思ったのもあって、私の役者像の中で、一番の理想なんです。いい意味で武田鉄矢さんって、お芝居なんですけど、お芝居しているように見えないんですよ。ドラマとか映画を観ているというよりも、そのリアルを目の当たりにしている感覚になるんです。そういうのを見て、心が揺さぶられる自分がいつもいて、そういう役者になりたいなと思っています。
―そして、闘うアクションも?
空手だったりの闘うアクションも、もっと盛り上げていきたいのでもちろんやっていきたいです。
―ブログを最初からチェックしていると、あるところからブログタイトルが全部英語に変わっているんですけど、それは海外を意識しているところも理由にありますか?
よく見てくれていますね!TwitterとかinstagramとかのSNSで、海外の方からコメントが来るようになって、中国の方にも言われたんですけど「日本語じゃなくてせめて英語で」という方もいて、海外を意識する上でも英語に出来るだけ触れていようとなったのもありますね。
―英語は元々得意ですか?
実は、小中高と英語の成績がずっと“1”だったんです。それで、英語を勉強する上で、まずは単語からと思って、単語帳とかを作って勉強してます。それで、単語を学んでいく上で、その日書くブログのテーマとして英単語をタイトルにして、それで覚えていくというのをやっているんですよ。
–{漫才を参考にした}–
関西弁は漫才を参考にした
―それにしても、本作で演じた友里という役は、武田梨奈さんにとって本当に新境地ですよね。過激なセリフも印象的でしたが、特に表情の演技で圧倒されました。役作りをする上で参考にするものは何かありましたか?
正直、参考にできるものがなかったんですよね。なので、何かを参考にするというよりかは、自分自身でもそうでしたが、監督たちが精神的に追い込んでくれたのが役作りをする上で大きかったと思います。
―現場では随分といじられていたようですね。
そうですね(笑)
―誰が一番怖かったですか?
難しい質問ですね…主演の遠藤憲一さんは、正直すごく怖かったです。撮影でカットがかかると「ごめんね、やりすぎたね、ごめんね」ってすごく優しく接してくれるんですが、役になりきった遠藤さんは、見られているだけでも「怖い…」って思ってしまうほどでした。あと…監督が怖かったですね。
主演の遠藤憲一(映画『木屋町DARUMA』より)
―その他に役作りをする上で気をつけた点などはありますか?
関西弁ですね。ほうかさんが「今回の役は全員この木屋町っていう街に住んでいる人たちの話なので、エセ関西弁だけは本当に嫌だ」と言われたんです。
―ということは、かなり勉強されたんじゃないですか?
実は、撮影が始まるギリギリに私が演じることが決まったので、ほうかさんにマンツーマンで関西弁を教えていただきました。サイゼリヤとか、会議室みたいなところを借りて。そこで、あんな言葉を発してました(笑)
映画『木屋町DARUMA』より
―他のお客さんなどもいる場所で、予告編で発してるような過激なセリフをそのまま言ってたんですか?
そうなんです。周りからみたら「何やってるんだろう?」と思われたんじゃないですかね。あと、ほうかさんに漫才のライブとかに連れていってもらいました。
―漫才ですか?
関西弁の映画などもいくつかピックアップしていただいて、事前に観たりもしたのですが、それと併せて漫才をいっぱい見て欲しいと言われたんです。「日常会話に一番近いから」との理由で。今回の私の役のセリフは、どんどんしゃべりのテンポが上がっていくものだったので、リズム感が一番勉強になるのは漫才だって言われて、漫才の動画も随分みました。
―どんな方を特に観られましたか?
今いくよ・くるよさんとか、ハイヒールさんあたりを観て参考にさせていただきました。
–{ただエグい作品ではない}–
ただエグい作品ではない、今までにない作品。
映画『木屋町DARUMA』より
―作品を拝見させて頂いたんですが、友里という役はとても重要な役どころですよね。特に最後の方は驚きました。
最後の方は、想像も出来ないところですよね。女性目線としてはすごくスカッとする作品です。
映画『木屋町DARUMA』より
―それにしても、作品を通して友里が変わっていく様はすさまじいものがありましたね。
最後は完全に吹っ切れている感じですよね。大きく分けて4つのシーンがあるんですけど、最初少しずつ堕ちていく感じの時は、無理矢理笑顔を作ってて、次に寺島進さんが演じた父親に「私こんなことやっているんだよ」と絡んでいくところは、若干諦めかけている感じになって、そこからどんどん吹っ切れていく。
映画『木屋町DARUMA』より
―そこからどんどん過激にというか、本当に壮絶ですよね。
“クスリ”とかもやってしまうので、感情が単純に度を越えてしまっていくんです。最後の方は、あんまり考えずに出来たというか、「もう最後はこうなっちゃうだろうな」というのが、私の中にも感情的に芽生えていったというのがありました。
―それでは、最後にシネマズの読者に一言お願いいたします。
この作品は、どういう映画なのかというのが、言葉じゃ伝えられないような作品です。予告だけを見ると、ただエグい作品だと思われがちですが、それぞれの人間の生き様が描かれていて、観る人の年齢や性別によって、誰目線で観るのかで、全然変わってくる作品だと思います。今までにない作品になっていると思いますので、「楽しんで観てください」とは言いづらいんですけど…楽しんで観ていただきたいなと思います。
―公開になってこれからの反応が楽しみですか?
そうですね。どういう感想が来るのかドキドキしています。
(取材・文/黒宮丈治)