漫画原作の実写映画化に見事成功した 『バクマン。』

映画コラム

■「キネマニア共和国」

今年も漫画やアニメを原作とする実写映画が多数公開されていますが、その出来不出来の激しさが問題になっている中……。

《キネマニア共和国~レインボー通りの映画街 vol.35》

大根仁監督の『バクマン。』は大成功の部類でしょう!

映画 バクマン。

漫画家を目指す二人の高校生の快活でリアルな青春群像劇

『週刊少年ジャンプ』に連載された原作・大場つぐみ、作画・小畑健の人気漫画『バクマン。』は、漫画家をめざすふたりの高校生がコンビを組んで漫画家をめざす物語ですが、彼らが漫画を持ち込むのが少年ジャンプ編集部であったり、現実の漫画業界を織りなす要素の数々が実名で登場し、そのリアルな世界を暴露しているのも大きな特徴のひとつです。

これを基にしたTVアニメ・シリーズも、そのラインを忠実に守り、人気を博しました。

そして今回の実写映画化も、漫画界の熾烈な状況を露にしながら、漫画家を目指す若者たちの青春群像を快活に描いています。

バクマン。 映画 実写

叔父が漫画家であったことから自身も漫画家の道を志すようになる真城(佐藤健)と、彼に声をかけられ、原作を担当することになる高木(神木隆之介)のコンビネーションが実に豊かに描かれているのが、本作の最大の長所でしょう。
主演二人の好演も、まさに漫画から飛び出てきたかのように違和感なく(ファンの中には二人の役柄を逆にしたら、もっと似合ってたという意見もあるようですが、完全否定の意見は少ないようです)、それだけでも漫画という二次元の世界を疑似的三次元の世界たる映画へ置き換える作業に成功していると言えます。
(これがうまくいかないと、漫画の実写映画化はほぼ成功しないといっても過言ではない!)

真城が恋する声優志望のヒロイン亜豆美保役の小松菜奈も、原作から飛び出してきたかのようでしたが、それ以上に彼女をモチーフにした漫画の画にも仰天してしまうこと必至。

バクマン。 映画 実写

彼らを取り巻く年齢差を超えた漫画家の友人やライバルたちの描写も、誇張されたものではあれ、リアリティをベースに置いているので違和感はなく、むしろそのコミカルさが映画のリズムにもなり得ています。

少年ジャンプ編集部のセットが実物そっくりに組まれているあたりも、見る人が見れば感動的に映えることでしょう。

主人公たちの担当編集者となる山田孝之の自然体の演技も、とかく編集者という生き物(!)とずっと付き合い続けてきている我々としても(漫画と文章との違いこそあれ)なかなか感慨深いものがあります。

バクマン。 映画 実写

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–{エンド・タイトルを見逃すな!?}–

見逃し厳禁のエンド・タイトルの見事な仕掛け

漫画家という仕事を実際に画にしていく上で、動きの少なさなども含めて映画の題材になりえないのではないかといった危惧も鑑賞前にはありましたが、大根仁監督はそのあたりのこともきちんと計算ずくのようで、CGやアニメを効果的に用いながら、エンタテインメントとしての見せ場たる漫画執筆シーンの数々を見事に具現化しているのも見逃せないところです。

漫画やアニメの実写化は、何よりも原作に対するリスペクトなり批評精神なりの想いをもって取り組むことが肝要ですが、そこにどれだけ作り手の意思を盛り込むのかもキモになっていて、そこを勘違いしたり慢心したりすると原作ファンからそっぽを向かれることになります。

バクマン。 映画 実写

その点、今回の大根仁監督は原作に対するリスペクトを基軸に、いかに映画的な面白さへ転換させるかを慎重に腐心していますので、少なくとも原作ファンの想いを踏みにじるような行為など微塵もなく、映画ファンも納得できる青春映画としても屹立させています。

サカナクションによる音楽も従来の日本映画とは一味違う効果を醸し出しており、また特筆すべきは彼らの主題歌が流れるエンド・タイトルの画面!

ぼーっとしてると見逃しかねないくらい自然に、その実なんともいえないほどにとてつもない行為をやらかしています!

エンドタイトルを見ないで途中で退席する観客は今も多いですが、これに関しては最後の最後までちゃんと凝視しておかないと、入場料のもとをすべてとれたとは言えないほどに優れた仕上がりとなっています。

バクマン。 映画 実写

個人的には、今年でいうと『暗殺教室』『ピース・オブ・ケイク』『合葬』『先輩と彼女』などと並ぶ、よくできた漫画原作の実写映画でした。

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(文:増當竜也)

『バクマン。』
公式サイト http://bakuman-movie.com/
https://www.youtube.com/watch?t=17&v=aSAlJQvfNs0
(C)2015 映画「バクマン。」製作委員会