矢崎仁司監督の最新作・映画『XXX』(KISS KISS KISS)が公開となり、初日となった2015年9月5日、東京・新宿 K’s cinemaで、矢崎仁司監督と主要キャスト11名が登壇する舞台挨拶がおこなわれた。
新人脚本家×矢崎仁司監督“キス”がテーマの5本の短編
映画『XXX』は、新人脚本家ユニット・チュープロの5人の脚本家が、それぞれ「キス」をテーマに描いた5つの短編を『三月のライオン』や『ストロベリーショートケイクス』などで知られる矢崎仁司監督のメガホンで映像化したもの。
舞台挨拶冒頭、矢崎仁司監督は本作が完成したのがおとといだと明かし「まだ僕観てないんですよ」としておきながらも「撮影が終わった後にラッシュフィルム(本編集前の映像)を観ていたら無性にキスしたくなったんで、きっとみんな早く家に帰ってキスしたいんじゃないかなと思います」と自信をみなぎらせていた。
–{同性愛者の役で…}–
『儀式』(脚本:武田知愛)で主人公・兎雨子を演じた松本若菜は「今日初めて5作品みたんですが、それぞれのキスの色というのがあって、とても見応えがありました」としながらも「でも一番儀式が好きだな」と語ると、恋人役の晴日斗を演じた加藤良輔は「僕はまだ観れてないんで、感想は難しいんですが、キスがしたいです。やっぱりそこに尽きるなと思います」と照れくさそうにコメントをした。
『背後の虚無』(脚本:朝西真砂)の主人公・夏男役の柿本光太郎は「僕の役は同性愛者の役で、少しヘビーじゃないかなと思っていたんですが、他の5作品を初めてみて、そんなに僕のも重いわけじゃないんだなと思いました」と実際に他の作品を観ての率直な感想を述べた。
また、夏生が思いを寄せる成生役・安居剣一郎は「状況によってキスの仕方も違うんだなって思って興奮しました」と同様に他作品で描かれたキスに対しての感想を述べました。
–{◯◯のキスが一番エロかった…}–
『さよならのはじめかた』(脚本:中森桃子)で主人公夫婦の夫・浩一役を演じた中丸新将は「最年長でございます」と恥ずかしそうにコメントし「70歳とういう役を自分ができるかなと思ったんですが、完成した作品を観て正直グッときました」と自信を見せた。
また妻・綾子役の塚田美津代も「自画自賛ですけど、とても素敵な映画だと思いました。本当に平凡な人が出ている話ですが、最後のシーンのキラキラ感、とてもよかったです」とコメント。
同作で鍵をにぎる少女・明里役を演じた涼香は「大きいスクリーンに自分が映るのがまだ慣れてなくて、まだ恥ずかしくて、出れたことが嬉しくて感謝でいっぱいです」と映画初出演における感動を口にした。
『いつかの果て果て』(脚本:五十嵐愛)で主人公・美玖を演じた荻野友里は「撮影当時の虚無感というか、ふわふわした感じがそのまま映像になっているなと思いました」と自信の作品の感想を述べたあと「個人的にはタバコとタバコのキスが一番エロかったなと思います」と『背徳の虚無』の1シーンが一番興奮したことを明かした。
美玖を追いかける客・安川役の草野康太は「役者の数と比べてみてもスタッフの数が少数だったので、映画全編を観て、現場の大変さとか苛酷さが全く映ってないことが感動でした」と仕上がった作品を観て率直な驚きを述べた。
『初恋』(脚本:大倉加津子)で主人公・トムラを演じた川野直輝は「見終わった今、まだ余韻があるのですが、いろんなキスがあるんだなと思いました。また観たいと思います」とコメント。
ヒロイン・京子役の吉田優華は「矢崎ワールドの画の美しさを感じました。最後の場面に映る青空が、自分の中で大好きなシーンです」と矢崎仁司監督ならではの映像美について語った。
–{誰か代表してキスしたら?}–
脚本家もスタッフとして参加。監督の自宅も撮影現場に
それぞれの出演者の挨拶のあと、コメントを求められた矢崎仁司監督は、この日舞台挨拶のスタッフとして参加していた本作の脚本家たちを紹介し会場は拍手に包まれる。さらに「今日こんな感じで写真撮ったりしてスタッフになっていますけど、撮影現場でも手作りのおにぎりゃサンドイッチをリアカーで運んだり、脚本を書いただけでなく一緒に現場を作ってくれました。そういった意味ではあったかい現場でした」と脚本家陣への感謝の言葉を述べた。
全編山梨県で撮影された本作について聞かれると中村新将は「最後の寝床のシーンは、監督のお母様の寝床で撮らせていただいたものです」と明かすと、荻野友里が「お昼ごはんは監督の家に集まって食べてたんですが、到着すると監督が居間で大の字で寝ていて、その隣でお母様がお茶を飲んでいるというシュールな光景でした」と語るなど、矢崎仁司監督の自宅が撮影現場や休憩所として使われた撮影秘話を明かした。
「素敵なキスは見て…」宣伝も配給もない異例な作品
さらにキスシーンの演出について聞かれた矢崎仁司監督は「スタートをかけてキスがはじまると、どこでカットかけたらいいんだろうなっていうことばかり考えてました。このまま放っておこうかなと思いました」と笑い混じりで語り「素敵なキスは見て得した気になるんですね。なんとかそういう思いのキスをみんなが心に抱いてくれたらいいなって」とコメント。
舞台挨拶最後の挨拶では「すごい珍しい作品で、宣伝も配給もないので」と述べた監督は満員の観客席に、感謝の気持ちを伝え、トレードマークのハットを脱ぎ深々と感謝のおじぎをした。
フォトセッションタイムでは、集まった一般観客にも撮影タイムが設けられ、その際に監督は「誰か代表してキスしたら?」と話すと、観客たちからもどよめきとともに笑いがおきるなど、終始笑顔の舞台挨拶となった。
映画『XXX』は東京・新宿K’s cinemaにて都内独占公開中。また、同映画館では本作の公開を記念して『三月のライオン』『ストロベリーショートケイクス』やソフト化されていない『花を摘む少女 虫を殺す少女』など矢崎仁司監督作5作品の特集上映も実施中。
矢崎仁司監督へシネマズが独占インタビューを行いました!続編についても語ってくれています
おおらかなキスをしてみたい―映画『XXX』矢崎仁司監督独占インタビュー
(取材・文/黒宮丈治)
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