『天空の蜂』脚本プロデューサーティーチインイベント取材レポ!

映画コラム

2015年9月12日(土)に全国公開の映画『天空の蜂』に先駆けて、チケットぴあ×シネマズ合同企画のティーチイン試写会を実施しました。
今回は、脚本を担当された 楠野一郎さんと、松竹映画企画室の福島大輔プロデューサーを迎え、シネマズのコラムニストでもある八雲ふみねさんの司会で、会場に集った映画ファンの方からの質問にお答えいただきました。

「天空の蜂」

観客の方から鋭い質問も飛び出し、笑いを交えながらも心に刺さるイベントとなりました。
その時の模様を全文書き起こしでお届けいたします。

『天空の蜂」ティーチイン試写会公開質問全編書き起こし

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[八雲ふみね(以下・八雲)]楠野さんの方からのご要望で、脚本を読ませて頂いたのですけれども、今日お越しのお客さまの中にはおそらく原作もお読みの方結構いらっしゃるんじゃないですかね?どうでしょう、原作お読みになって、映画ご覧いただいた方どれくらいいらっしゃいますでしょうか?
(3割ほど手が挙がる)
あ~、やっぱりいらっしゃいますよね。あれだけの膨大な原作を、そして読むと専門用語多いですし、人物像も凄く入り組んでて登場人物多いし、結構読んでるうちにアレ?この人誰だったっけ?みたいな感じでこう、戻りたくなっちゃうような(笑)脚本を、本当に見事に一冊にまとめ上げた!っていう所もあるんですけれども、早速質問の方に参りたいと思います。

Q「ビッグBを奪った男に綾野剛で、影のある事件の鍵を握る女性社員に仲間由紀恵を起用したのはどういう意図からでしょうか?」

[福島プロデューサー(以下・福島)]今回綾野さん、仲間さんのキャスティングなんですけれども、順番としましては江口さん本木さんを、当然湯原・三島を最初にキャスティングしながら、その次に行ったのが綾野さんですね。

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綾野さんは、やっぱりまぁ今これだけ勢いがあるのと、何回かイベントで既にもう本木さんから説明があったんですけれども、監督が綾野さんと一回ご一緒したいという非常に強いラブコールがありまして、プロデューサーと監督の意見が一致したというところでもうすぐに持っていって、脚本も製本する前にお持ちしたところ、先方も綾野さん及び事務所の、本木さんと江口さんと堤さんと一緒に出来るという所に凄い魅力を感じて頂いて、本当にほぼ二つ返事で。読んで、1日2日後くらいにお返事を頂いた、というような流れでした。
で仲間さんに関しましては、やはり堤さんとの15年以来のトリックコンビと言いますか、業界でたまにある話しとしまして、堤さんの中の仲間さんの像は固定し過ぎていて、他の堤さん作品で出しづらいんじゃないかないかみたいな。逆に言うと、仲間さんが堤さんの他の作品に出たい!という意識があって、今回オファーしたところ、丁度「花子とアン」のNHK朝ドラ真っ最中でもの凄い忙しかったんですけれども無理言ってスケジュールをこじ開けて頂いて、なんとかスケジュールを調整して頂いたというような流れで決まったという形でした。

Q「どちらかというと、影のある仲間由紀恵さんのほうが凄く魅力的なんですけれども、そういった所も惹かれたという事ですか?」

[福島]そうですね。最初の衣装合わせで、監督の第一声が「とてつもなく地味にしましょう。」と。なんにせよ今までのは全て忘れて、今までの山田ナオコとかそういうキャラクターは一回捨てて、なんにしろ今までの華やかさとか、仲間さんらしさとか、なんかこう内から湧き出るものとかを抑えてもらって、必死に目立たないように目立たないようにしましょう。っていうのを一番最初に監督と仲間さんで話がストンと落ちたという感じでしたね。

[楠野]あと仲間さんに関して言いますと、僕は別にキャスティングには基本的には脚本家って効力は無いんですけれども、僕自身のイメージでいうと、鶴田法男監督の「リング0-バースデー-」ってご覧になってますか?仲間由紀恵さんも出られた。
あの時まだ20-21歳くらいで、「トリック」もやる前で、もちろん「ごくせん」とかもやる前なんですが、仲間由紀恵さんに関して言うと僕「トリック」「ごくせん」も凄く好きなんですが、「リング0-バースデー-」が未だに一番仲間さんのベストアクトだと僕は思っておりまして、異常にもう、ましてや貞子ですから(笑)影もなにもあれだけの怨念を背負って井戸の中で閉じ込められて、それを何十年何百年と怨念をこの世界に残して大変なことになる、という役なんですが、その時の仲間さんが僕は未だに非常に印象に残ってるし、
その後どうしてもコメディーとか、TV連ドラでやってる方が印象に残り勝ちなんでですけども、ああゆう仲間さんやっぱり、たまには見たいなっていうものも、特に映画で見たいなっていうものもあったりもしましたんで、あの仲間さんが赤嶺の役って聞いた時に、あぁそれは凄くいいなと。

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まぁご覧になって頂いた通りの、彼女の怨念というか念というか、秘められた想いとか口には出来ないずっと溜めてきたもの、みたいなものがある種で裏で話を動かす映画なので、そういう事も含めて何か僕は、赤嶺みたいな仲間さんもその流れなのかなとは思っております。
あくまでキャスティングに関しては第三者なんですけれども、ある種映画ファン的な視点としては凄く腑に落ちた仲間さんのキャスティングだなという気が僕はしました。
–{予算、お金のハナシを赤裸々に!}–
Q「映画を作っていく際のことをお聞きしたいのですけれども、脚本を書くときに、予算とかお金に応じてプロデューサーと監督とで色々あるかとは思うのですけれども、そこら辺の製作過程についてお話を聞けたら嬉しいです。」

[楠野]当然映画によっても違いますし、状況によっても違うとは思うんですけれども、『天空』に関して言うと、16か17稿くらいにはなったんです。特にやっぱり本直しの後半になるに従って、例えばこのシーンをこういう風にやるには、これだけの予算がいると。で、それに伴って他のシーンをこういうふうに変えたら、ここの予算がかっぽじれるとか。(笑)例えばそういうことなんです。ホントにそうなんです。
逆に言うとそこまで話が詰まっていく前に頓挫する脚本の方が全然多いんですけれども、それでもホントに細かい予算との戦いとかスケジュールの戦いになっていくっていう事は逆に言うと、あぁこの映画は本当に形になるんだなっていう。当然お金がかかる事ですし人を動かすことですから、それをクリアした上で、なんだろう、頂いた予算なり頂いたスケジュールの中でどうしていこうと、パズルを描いていくみたいな。
これに関して言うと10稿以降はもうこういう大きな直しはほとんど無くって、ホント細かいスケジュール的にとか予算的にとか、なんかしみったれた話になるんですけど(笑)っていうことでしたね。多分他の映画もそんなもんなんじゃないですかね?

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[福島]はい。はい。そうですね。まぁ一般的な話もありますけど、最初っから予算が決まっているので、その予算で何が出来るかっていう。最初はまぁ、当然予算気にせずにガーッと(笑)

[楠野]そうなんですよ(笑)みなさんプロデューサー予算気にしない(笑)でも後の方でもう当然ね(笑)

[福島]はい。で、最後の最後でちょっと印象的だったのが、タカヒコが落っこって上条がガーッと空を飛んで行くシーンが予算上削りましょうって話が一回あったんですが、堤さんが「この映画でそれを削ると色んなモノが損なわれる」と。あと最後の車の二人で湯原と三島が行くシーンとかも、「あのシーンがが無いとやる気失せる」というような(会場笑)で、それに伴いじゃあそれをやるとなると他の予算を削りましょうってなって。例えば削った予算で言うと赤嶺のシーンがそうですね。最初はバスで逃走して警察がそれを追っていくという。で最後は空港で捕物が行われるという台本だったんですけれども、

[楠野]割と原作通りに。

[福島]街の中を見ていくっていう話もあったんですけれども、それはじゃあ抑えて、会社の中で。それこそ赤嶺の会社の中のシーンは2日で撮っているので、それをまぁギュッと抑えて。かけるところはかけて、抑えるところは抑えるという、そういうバランスをみながら、ってもう最後にそんな事をおっしゃったんですけれど(会場笑)

[八雲]最初から予算を気にして書くとなるとそれはそれで窮屈なものになってしまいますものね。

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[楠野]ただホントに最初の2-3稿くらいの段階だと、江口さんがタカヒコを救出しようとするシーンで何か爆発させて欲しいと(笑)僕も爆発大好きなので、予算的に絶対無理だろうと思いつつ書いたら、割と早い段階で「爆発はイイです。。」って(笑)

[福島]はい。全然ダメでした(笑)

[八雲]今回、脚本の制作そのものはどのくらいの期間かかったんですか?

[楠野]最初にお話し頂いたのは2013年の1月末くらいで、実際INしたのが2014年6月なんですよ。まぁギリギリまでやってた、もしくは始まってからもちょっとだけ直しがあったんで、実際1年5ヶ月とかくらいですかねぇ。
–{原作と内容を変えた真相とは?}–
Q「現先との違いについてお聞きしたいのですけれども、子どもが残される理由が原作ではもう一人の子どもがハシゴ外しちゃって、その為にその後自分をずっと責めるという所が好きだったんですが、それをこういう風に変えられた理由を教えて下さい。」

[楠野]原作では、乗っちゃった子どもが湯原の子ではなく、湯原の相棒の子どもなんですよ。仰ってたように最初は二人で行動してて、実はあっちの子どもが残っちゃうんですけれども、それを原作から映画では変えてまして、それは何故かといいますと、原作だとタカヒコ君が自責の念で自分を責めるというところなんですが、やっぱり映画2時間にした時に、なるべくやはり主人公・湯原に色んなプレッシャーを背負わせたいと。
家族関係は見た通り冷ややかであるのも当然ありますし、自分の作ったヘリコプターがあんな事になっているプレッシャー。
更にもう一個、あんなヘリコプター作ってしまったせいで自分の一番大事にしている子どもがそこに乗ってしまって今大変な事になっている。なるべくその色んなプレッシャーを全部湯原集中してグッと圧をかけたかった。っていうのが一番大きいですね。
特に前半、タカヒコが救出されるまではずっと湯原はそのプレッシャーでどんどんこう、なっていくっていうのはやっていかなきゃならないなと思ったので、それが一番大きかったですね。

Q「最初から最後までずっとハラハラドキドキで楽しめました。映画の本編でずっとシリアスが続いていて、愛知県警と福島県警、あと原子炉の3業者が同時進行で展開されていく中で、江口さん本木さんはずっとシリアスに真剣にされている中、愛知の刑事のお二人と福島の刑事のお二人(会場笑)

[楠野さん]手塚さんも真剣にやられてますよ(笑)

Q「ここぞ手塚とおるという、髪の毛をチラチラ弄ってイライラする演技、あと落合さんのポロシャツINも(笑)とても癒やされました。そういうのって脚本の段階で意図しているのか、堤監督の方で演出されているのかが気になりました。」

[楠野]脚本の段階でやることで言うと、所謂コメディーリリーフ、まぁ息抜きですね。『ミッション・インポッシブル ローグネイション』もそうなんですが、やっぱ抜きは必要だと思うんですね。で、脚本の段階で明確に表記していたのは佐藤二朗さん。彼に関してはフザケてはいけないんですけれども、ああいう人いるじゃないですか。必ず「逆に」って言い始めちゃうとか、「わかってますわかってます。」って、わかってねーだろ!みたいな人。二郎さんに関しては明確に意図してたんですが、手塚さんに関しては僕よりも堤監督が現場での演出でニュアンスが濃くなったっていうのはありますね。

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[福島]そうですね。愛知県警は特に監督が愛知ご出身なのでそこは並々ならぬ愛情が降り注がれていて、台本上では方言無かったんですが、衣装合わせとかで手塚さんと松島さんに「尾張弁お願いします。」って突然発注が始まるという所で、まぁ手塚さんはベテランなので当然すんなり受け止めて頂きながら、松島さんは今回映画初なのでビックリされて、ちょっとどうしようみたいな(笑)一瞬ちょっと考え直したいみたいな(笑)雰囲気もあったんですが

[楠野]なんかのインタビューでかかれてましたよ松島さん、あれは辛かったって(笑)

[福島]もの凄い悩まれて、でもまぁ井戸田さんという方言指導の方も付けてもうマンツーマンで、撮影も常に真横に居てずっと外した時には「これこういう感じですか?」みたいな感じで。
で、さっきの赤嶺のくだりがまさしく四日市とか三重・愛知で撮影するはずが無くなっちゃったのでなんとか愛知の色を入れたいという監督の想いが。
で撮影現場、工場も全部群馬なので、実際四日市とか愛知とか全く行ってないということもあり基本関東で全部撮影しているという感じでした。

[楠野]あと落合くんに関して言うと、落合くんと柄本さんの二人の関係そのものがちょっと気が休まる所ではありますよね。いわゆる歳の離れたバディものというか、最初の生クリームやパンだどうのこうのいったのも含めて、原作よりも気持ちが緩むというのはちょっと意識はしました。後はああいう髪型にしてきたっていうのはありますけど(笑)あれは監督の指示?それとも知ってたの?

[福島]監督はもうとにかく警察は短髪、自衛隊は坊主。っていうのにして欲しいとずっと言われていて、キャスティングの都合でキャストによってはそれが全く出来ない人も何人か居て、落合くんも出来ません、永瀬くんも出来ませんってなって監督もちょっとイラッと(笑)ただラッキーだったのが柄本さんが監督は初ご一緒されるんですけれども、そこは凄い監督としては楽しみで、で柄本さんと落合くんって実は家族ぐるみの付き合いで、衣装合わせで「あれ?お前来たの」みたいな感じで落合くんと柄本さんが仲良いのを見て「じゃあキミいいよ」みたいな(会場笑)打ち解けあい。

[八雲]意外なところに救われましたね。

[福島]で、回りからも落合くんいいよねって話しも出てきて、まぁ色々な繋がりは続いていくものだと思いました。

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[八雲]なるほどね。面白いですよねこうやって脚本がどんどん映像になるとそんな風に膨らんでいくんだっていう方向性が

[楠野]脚本は、色々な言われ方しますけど僕的には良く言えば設計図とか地図っていう言われ方しますけれども、僕にとっては下手したら発注書ですから(笑)現場で役者さんもそうですし監督も、美術さんとか照明さんも全部含めて、「こういうものを作って下さい」っていう発注書なので、それを最終的に現場で形にされる現場の方々にとって、よりヤル気が出るような発注書であればいいなぁと思います。
–{訴えたい事とは…楠野脚本家のこだわり}–
Q「前半の子どもが救出される所までは緊迫感があって引きこまれたのですが、後半アクションは派手なんだけれどもちょっと緻密さが無くなってるような気がしたんですが、テーマや訴えたいことは何なのかを教えて頂きたいです。」

[楠野]訴えたい事そのものを脚本家が口にすべきでは無いと思っているので、それはちょっと控えさせてもらいますが、変な話、こういった原発という重いテーマを扱ったものであれ、全然関係ないコメディーであれホラーであれ、このテーマというものを脚本家が口にした瞬間に、答え合わせになってしまうのが映画の本意では無い思うので、それは言わないです。ただもう僕の個人の中では何かって言ったら、あの2時間18分という時間を1800円なり1400円なりお金を払って観て頂いて、実際電車に乗って行って帰ってご飯食べたり4時間5時間、半日潰れるじゃないですか。で、それを観て面白かったと思ってもらうのが一番の目標です。

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その上でそれぞれの気持ちの中でテーマというか、この映画はこういう事を言いたかったのかなとかを、その人にとって賛成できるものか反対なのかはどちらでも良いんですけれども、持って帰ってもらうのが目標と言うかテーマなので、逆に言うと後半物足りないと思われた部分っていうのを、ご自分の中で咀嚼して考えて頂いた時に、じゃあなんで自分は後半腑に落ちなかったんだろうと考える間に、ご自分の映画を観た上で残るテーマっていうのが残ると思うので、それがお客さまにとってのこの映画のテーマ、という事だと思います。まぁ色んな脚本家の方いらっしゃいますので一概には言えませんが、僕個人としては、面白いと思って帰ってもらえれば一番いいなという、それだけですね。

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あとは、これを中高生とか小学生が普通に「なんか原発よくわかんないけど面白かったー」でも全然良いと思っていて、その子たちに対して首根っこ捕まえて「このテーマがわかってるのか!」って言うのは映画として非常に無粋なことだと僕は思っているので、もしその子が例えば10年後、5年後とかに思い返した時に、「もしかしたらあの映画あの時面白いと思ったのはこういう事だったのかな」とか思い返してもらえればそれがその人にとってのテーマになると思いますしね。
僕自身も実際子どもの頃にジョーズとか、似たような個性派アドベンチャーを観て、その時は全然「スゲーな人いっぱい死んでうおー」みたいな感じで観てた人間なので、でも実際大人になって観ると、個性派アドベンチャーは人間と神の戦いであるとかだんだん腑に落ちてくる。そんなの後々の話しでいいと思っているので。さしあたりは、面白いと思って観ていただける事が、少なくとも僕にとっては一番のテーマですね。

[八雲]映画のテーマというところからはちょっと離れますが、福島さんは今回プロデューサーとして、5年後ご覧頂いた方にどんな風に受け止めてもらえると良いなぁと思っていらっしゃいますか?

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[福島]テーマよりはもっと手前の、原作にも書いてある事で、一番焦点を当てた場所になるのですが、「沈黙する群衆」というところに焦点を当てました。そこは原作を撮る時に何を押さえるかというので講談社ともかなり打ち合わせしましたし、先生にもプロットを何十も出した中で、やはりそこを抜かすとそもそも訴えたい事が違うよねっていうことになったので、そこは確実に狙いましたし、江口さん本木さん監督ともみんな意見共通して一致団結して狙ったところなので、そこに関しての皆様のご意見を逆に伺いたいなと思います。
–{東野圭吾のこだわり}–
Q「10年前に原作を読んでいて、原作よりプラスされているところっていうのは、東野圭吾さんに相談して決めてらっしゃるんですか?訴えられる事はないんですか?(笑)」

[福島]先程の沈黙する群衆という焦点を当てたところと、結構東野先生から入れて欲しいというのがやはり3.11を踏まえた上で描きましょうというところで、それを色々最初やる時に3.11が無い95年に差し替えちゃって、95年だけの世界で完結させるという事も出来たんですけれども、それだと今見てる観客の視点からズル過ぎるよね。っていうところで、やはり3.11をなんかしら描いて欲しいと。
一番最初に東野先生から来たのが、例えば3.11の中でヘリコプターに関わっている誰かが、実は95年の天空の蜂のあの事件に関わってた人間っていうのはどお?みたいなのはあって、そういう何かしら今と95年を絡ませるという話があったのと同時に実は楠野さんの方でもそこはやっぱり何かしら入れるべきだというのは、原作者及び脚本家の意見が全く一致したので、まずはそこを確実に。だからそこはまぁ、訴えられない(笑)大丈夫でしたよ。

[楠野]一番最初の段階ですね。根っこはつかみ合ってたという。脚本は17稿18稿あるものを最終的に決定稿に対して東野先生がOKを出して頂いたということは全部OKなんだろうなと僕は受け止めています。もし食い違いがあった場合は、なぜなのかを聞いた上で、なるほどと思ったら修正していく、ということの繰り返しではあるかなとは思います。今回に関してはど頭でそのスタンス合わせが出来ていたので、僕的には全く東野先生からのプレッシャーを与えられたりなんかは無かったです。

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[福島]唯一東野先生からNGが出たのは、ラスト15分湯原がヘリに乗り込んでったら、実は三島がそこに居て、最後二人が上空でアクションを繰り広げるというのを書いたんですが、さすがにそれは無理なんじゃないかって(笑)

[楠野]その時ヘリあんなに小さいと思ってなくて(笑)

[福島]そんなやりとりがあった上で、初号で先生に観に来ていただきまして、物凄く感動されて「もう一回観たい!」と、リップサービスかな?と思ってたら本当にもう一回観に来て頂いて、この前の完成披露の時も来て頂いて3回観られて、講談社以外の出版社の方も連れて来て頂いて、自分の原作を映画化する時はこういう事を見本としてくださいという風におっしゃっていただく程に気に入ってくださったというのは僕らとしては非常にやれて良かったなという感じでした。

[八雲]素晴らしいですね。私も見終わった直後に思ったのが、1995年に書いた小説が、えっ今じゃん!という衝撃というか愕然としたものを感じていて、そういう意味では今やるべき作品ではあったのでしょうけれども、何故今このご時世の中で踏み切る覚悟をしたのか。そこが…

[八雲&楠野]ねぇ!?(笑)

[楠野]そこはもう松竹さんのよくわからない肝っ玉の座った所ですよね(笑)

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[福島]スタートラインはこの原作とかではなく、20億稼げる映像を作ろうと。
1年間の中で目玉作品を何本か作るんですけれどもその中の1本として何か企画を出しなさいというオーダーが僕とプロデューサーチーム5人位いるんですけれども、そのなかで見ていってやはりこの、僕も震災の前で読んだのと後で読んだので印象が全く違う原作になっていたので、会社にプレゼンしたところあっという間にOKを取れて、で後々わかったのがウチの社長は歌舞伎もやっていて、意識としましては歌舞伎は江戸時代のタイムリーな時期の社会問題とかに切り口をもったものが歌舞伎になっているはずだと。
ならば今で言うとそれこそイスラムのああいう事件があった時に今歌舞伎を作っているのであったらあれを歌舞伎にしていてもおかしくはないと。やはり映画らしいのを作ろうと。テレビ曲に出来ない映画を作ろうというのからスタートしました。

[八雲]ゴリゴリの社会派として作ろうと思えば作れたものを、あえてこのエンターテイメント色に堤監督は監督で、楠野さんは脚本で、エンターテイメントとは何ぞやというのを理解してらっしゃる方が作ったという所が、私は凄くこの作品の一番実は大事な所なんじゃないかと思っていまして、今色々漠然と不安だったり不満だったりを抱えていても、実際みんなが国会に行くわけでもなし、でも映画を観ることによって今置かれている現状だったり、この先のことだったりを考えざるを得ないですよね。

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普段何も考えていないわけではないんだけれどもやっぱりなんか見過ごしてるよね、っていう人達が映画を通じて考えるキッカケになるという一つエンターテイメントの大きな役割じゃないかなと私は凄く思うので、そういう意味ではこの作品は普段映画館に足を運ばない人でも、興味ある部分に引っかかってもらえたら嬉しいなと思う作品ですね。

[楠野]エンタメじゃなきゃ駄目だとは全く思わないんですけれども、天空に関する限りは、僕はパニック映画のつもりで書いたんですけれども、パッと観たら沢山人は大変なことになるし、なんかよくわからないけどその瞬間2時間は気持ちが高揚して観る事が出来て、でも最終的に、「じゃあなんで人間こんな高いもの作っちゃうんだろうね、火事になるのに」とか残るじゃないですか。ジョーズにしたって、サメが来たら退治すればいいのになんでみんな退治しようとしないんだろうね」とか。
なんかそれと同じようなものがこの天空の原作にもその映画の芽というのが、エンターテイメントとして成立するものがあったと思ったので。さっきも言ったように、普通に、本当に気楽に中高生が観に来て、楽しんでもらうのが一番良いかなと僕は思います。
–{あなたは気づいた?あの映画のオマージュ(軽くネタバレ?)}–
[福島]そういった意味では楠野さんが本当に映画がお好きなのと、逆に皆さんにお聞きしたかったんですが、この作品の中に「ジョーズオマージュ」があるのは気づかれましたか?(笑)

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[楠野]これ自分で言うの凄い恥ずかしかったんです(笑)ジョーズでも有名な、最後サメに向かって打つ、「笑えよ化け物」っていう、アレですね。ジョーズと新幹線大爆破に関しては脚本のお手本です。

[八雲]この後は懇親会にて、興味深い個々の話を掘り出していただけたらと思います。これにてティーチインを終了とさせて頂きます。皆様、ありがとうございました。

映画『天空の蜂』は2015年9月12日(土)全国ロードショー!
公式サイト http://tenkunohachi.jp/


(C)2015「天空の蜂」製作委員会

(文:apopo)