閲覧注意!『リアル鬼ごっこ』のパンチラ(?)がこちらになります!

映画コラム

編集部公式ライターの大場ミミコです。

プロフィールにも書かれていますが、筆者は救いのない映画おバカな映画が大好きなんです。青春活劇やハッピーエンドもモチロン好きですが、そういったジャンルの場合、ものすごく振り切ったもの…例えば『巨人の星』や『スクールウォーズ』など、感動を通り越して思わず笑ってしまうものに手が伸びてしまいます。

さて、この「救いがない」「おバカ」「熱量が高い」という3つのツボを同時に押してくれる神のような映画監督がいらっしゃいます。それが“園子温”さんです。
このたび封切りとなった『リアル鬼ごっこ』でも、「救いのなさ」と「おバカさ」、そして「表現に対する熱量」を存分に盛り込み、観る者を否応なく非日常へと引きずり込んでいきます。

そして今回の『リアル鬼ごっこ』では、園子温作品の代表的なモチーフである「流血」と「疾走」、そして「パンチラ」が、これでもかと炸裂しまくっています。“過ぎたるは及ばざるが如し”という故事成語がありますが、彼の作品を観ていると「程々なんて言ってるから小さくまとまっちゃうんだよ!やり過ぎ、盛りすぎ、上等じゃねーか!!」という、園監督の魂の叫びが聞こえてくるから不思議です。

リアル鬼ごっこ

噴水のように吹き上がる鮮血と純白のパンチラで、貴方の、日本映画界の、そしてこの世の固定観念に揺さぶりをかける園子温監督。観る者に対し、「それは本当に正しいのか?」「実在する証拠はあるのか?」というメッセージを、彼は一貫して訴え続けています。そして、それが自分の使命だと自覚された上で表現活動をしているようにも感じます。

ギリギリまで『パンチラ』しちゃいます

園子温監督の作品というと「エロ」「グロ」の類として単純に分類されがちですが、ただの色物映画に収まらないのが素晴らしいところです。なぜなら、残酷さやコミカルさの下には、「愛」や「命」といった人間のベースが息づいているからです。

しかし園監督は、それを明確に表現せず“チラ見せ”する姿勢を貫いています。コアな部分をあえて隠しつつ、その奥にある真髄を観客に気づかせたい・・・その思いを『パンチラ』というアイコンに込めたのかもしれないと筆者は勝手に思っています。

そんな持論を、配給会社の担当さんにお話していたところ、「そんなに好きなら…」と差し出していただいたのがコチラ。

リアル鬼ごっこ

ドーン!

『リアル鬼ごっこ』のパンフレット(劇場用プログラム)です。
前回の『トイレのピエタ』に続き、またしても同じ手段でパンフレットを入手したわけですが、このパンフがあまりにも秀逸だったので、チラッと中身を紹介させていただきたいと思います。そう。「パンフ」を「チラッと」でパンチラ…(笑)。

ということで、映画『リアル鬼ごっこ』の世界をそのまま切り取ったような、劇場用パンフレットの見どころを紹介させていただきますね。

–{ネタバレ注意!充実の34ページ}–

ネタバレ注意!充実の34ページ

さて、映画『リアル鬼ごっこ』の内容ですが、簡潔にまとめると「女子高生たちが、得体の知れない何かに追われ、ひたすら逃げまくる話」という感じになるでしょうか。しかし、その設定以外は“すべて謎”という斬新な作りに、観客は思いっきり置いてけぼりを食うこととなるでしょう。

しかし、ある時点からだんだんと、点と点が繋がっていきます。そのタイミングはきっと、観る者の経験や好みによって違ってくると思いますが、それら全てを巻き込んで物語は終盤へと突入します。そして…。
「マジか!こう来たか!」という明快なラストが用意されています。

もうね、本当にビックリなんですよ。あの人が突然現れて、しかもあんな格好であんなことをしちゃっ・・・(*゚パ)ハッ!

リアル鬼ごっこ

『衝撃の結末解禁 鑑賞後にお読み下さい』

・・・おっと!危うく、衝撃の結末を晒してしまうところでした(汗)。

しかもこのパンフレットは、何と34ページという大ボリュームでありながら、文字も画像も目いっぱい詰まっているんです。メガホンを取った園子温監督のインタビューはもちろん、主演のトリンドル玲奈さん、篠田麻里子さん、真野恵里菜さんの3人が、それぞれの役や作品に対する思いを熱く語っているのも見どころです。

リアル鬼ごっこ

ご覧下さい、この文字数!! そしてマリコ様のウェディングドレス姿!!
割れたワインボトルとのコラボレーションは、『キル・ビル2』でユマ・サーマンがウェディングドレス姿で血みどろのアクションを披露した姿を彷彿とさせます…というか、この『リアル鬼ごっこ』という作品には、他にも多くの映画のオマージュと思われるシーンが登場します。

そのあたりのアレコレもパンフの終盤に載っていますので、映画ファンはぜひ購入することをおすすめします。

–{「この世の仕組み」を超えて行け!}–

「この世の仕組み」を超えて行け!

先ほど、名画へのオマージュ的なシーンの解説が掲載されていると書きましたが、作品全体のテーマは『マトリックス』シリーズに近いものがあると感じました。映画『マトリックス』は、この世はバーチャル(かりそめ)という視点で描かれていますよね。

劇中で主人公はアンダーソンと呼ばれていますが、本当の自分は「ネオ」なのです。でも、ネオであることを忘れて、自分を「アンダーソン」だと思い込んで生活しています。そしてこの現象が、地球上のあらゆる人間に起こっていると『マトリックス』シリーズは映画を通して訴えています。

そして園監督も「“(思考の)自分”と“(本当の)自分”の関係性を見失わないよう、自分の頭では考えも付かないことをやる」と、様々なメディアで発言しています。…あ、この発言は、『リアル鬼ごっこ』の結末の重要な鍵になりそうですので、これ以上は言及せずにそっとしておきましょう(笑)。

『マトリックス』でも『リアル鬼ごっこ』でも、本当の自分(真我)を思い出させないよう、多くの敵キャラ(自我・エゴ)が狡猾に邪魔をしてきます。どこまでも追ってくる敵キャラ。その様子は、まさに私達の脳内世界そのものです。そんな『リアル鬼ごっこ』のパンフレットも、どこかシュールで、別次元に迷い込んでしまったような危うさというか、美しさみたいなものが感じられるアートな一冊となっています。

リアル鬼ごっこ

とことんやると、見える世界が変わる

記事の冒頭でも触れましたが、今回の『リアル鬼ごっこ』では、ビックリするくらいの血糊と、死体の人形が使われています。適量の血糊と数体の死体だったら、相当リアルに感じるものを、おびただしい量を魅せることで、怖さや気持ち悪さを通り越して滑稽さが顔を出してくるから不思議です。

そう言えば、筆者がシナリオ学校に通っていた時、授業でこんなことを学びました。

「懸命な姿に、人は心を動かされる。しかし度が過ぎると、たちまち喜劇に変わる」

例えば窮地に立たされた政治家が、懸命に弁明する場面があったとします。程よい匙加減で聴衆を感動させる事もできますが、必死さが度を超えると、そのシーンは立ちどころにコメディと化したりします。つまり、何事も行き過ぎると、意図した事とまったく別の効果が得られるということです。

『リアル鬼ごっこ』のパンフレットでは、死体などの特殊造形物を作っている西村喜廣さんが、流血シーンの裏話や、園監督の血糊への凄まじいこだわりと美学についてお話されています。劇場でたっぷりの血と死体を観たあとにパンフレットを読んでいただくと、面白い発見や気づきがあるはずです。ぜひ手に取ってみてくださいね。

リアル鬼ごっこ

血液というより、洗練されたポップアートのようです

–{役者の未来を見抜く目、育てる目}–

役者の未来を見抜く目、育てる目

園子温監督といえば、全く無名の俳優さんや演技経験のない人を抜擢して、一流の役者に育て上げることでも有名ですよね。吉高由里子さん、二階堂ふみさん、満島ひかりさん…彼女たちは園子温監督に見出され、今や日本を背負って立つ大女優となりました。

今回の主役の1人である元・ハロープロジェクトメンバーの真野恵里菜さんは、今年(2015年)に公開される園子温監督のすべての作品に起用されていますし、トリンドル玲奈さんと篠田麻里子さんも、この『リアル鬼ごっこ』で一気に演技力が開花したともっぱらの評判です。

他にも、元AKB研究生の冨手麻妙(とみてあみ)さん、桜井ユキさんは、映画『リアル鬼ごっこ』の中でもかなり重要な役どころを演じており、真野恵里菜さん同様、園子温作品の常連でもあります。お二人とも素晴らしい演技力&存在感の持ち主ですので、きっと今後はお茶の間や劇場で頻繁に見ることになるでしょう。

パンフレットには、キャストとして登場した女性たち33人が、顔写真付きで紹介されています。これから誰がブレイクするか予想するのも面白いと思いますよ!

リアル鬼ごっこ

衝撃の結末をあなたも劇場で!!

今年2015年は、園子温監督の映画がなんと5作品もの公開が決定しています(7月10日現在)。その中には、優しいファンタジーや社会派の作品もあり、実力と表現の幅を世界に見せつけてきました。
そういった意味ですと、今作『リアル鬼ごっこ』は、久しぶりに園子温イズムを炸裂させた、生々しくもシュールな作風となっています。今まで溜め込んできた「血への枯渇感」が一気に吹き出したかのような映像は圧巻で、誰もが度肝を抜かれることでしょう。

そんな園子温らしい新作『リアル鬼ごっこ』は、全国の映画館で絶賛上映中です。時空と内面、アートとスリルが交錯する世界観を堪能したあとは、劇場用パンフレットでしっかり復習しながら、園ワールドの余韻に浸ってみてくださいね!

映画『リアル鬼ごっこ』は2015年7月11日より全国の映画館にて絶賛上映中です。

(C)2015「リアル鬼ごっこ」学級委員会

(文:大場ミミコ)