鈴木亮平の“演りぬく力”——『シティーハンター』から『エゴイスト』まで

俳優・映画人コラム
Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

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日本では初の実写化となった映画『シティーハンター』が、Netflixで配信されている。

鈴木亮平が演じた主人公の冴羽獠(さえばりょう)が、非常に素晴らしかった。本記事では、『シティーハンター』をはじめとした、鈴木亮平の役になりきる力について、過去作品も振り返りつつ語りたい。

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『シティーハンター』冴羽獠が“冴羽獠”すぎた

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

「シティーハンター」が鈴木亮平で実写化されると聞いた際、正直に言うと期待と不安が両方あった。鈴木亮平の演技力や役に寄せて肉体までをも作り込むところは信頼していたものの、演じるのはあの冴羽獠である。アクションに関しては何の心配もないが、あのエロバカとかっこよさが共存する感じがどこまで成立するのだろう?と思ったのだ(ちなみに筆者の冴羽獠のイメージはアニメ版からです)。

だが実際に映画を観始めてすぐ「余計な心配してすみませんでした!!!」「というかあの……好きです」という気持ちになった。そこには期待していた以上の冴羽獠がいた。あまりに冴羽獠だったので何度も“冴羽獠”を連呼してしまうが許してほしい。

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

なんといってもアクションが素晴らしかった!そりゃ鈴木亮平なので難なくこなしてくれるだろうとは思っていたが、“できている”だけではなく“冴羽獠そのもの”だった。

特に感動したのは銃さばきだ。撃つシーンはもちろん、冒頭の銃の解体、リボルバー装填、薬莢を落としていく様子、全部ど真ん中に当てる射撃、複数の銃を構えてカチャッとやるシーン………基本ノールックで鮮やかに行われていて、子どもの頃かっこいいと思った冴羽獠を思い出した。

こんな動き、実写で可能なんだ……。本人も何度も練習したと明かしていて、あらためて鈴木亮平の役作りの凄まじさにひれ伏したい。

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

ガンアクション以外ももちろんよかった。殴る蹴る避ける、アクロバティックな動きなど、どれをとっても完璧だ。

そして、おちゃらけているところと真顔の表情の切り替わりも想像以上によかった。陰があるというか背負っているものの大きさというか、本当の想いは口にしない大人なところがたまらなくて心底惚れた。

声も所々でCV神谷明に思えるほどで、喋り方も冴羽獠だった。これこれ、冴羽獠ってこうだったよ……! 

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

あとは、立ち姿が完全に冴羽獠だった。特にぴったりしたハイネックとパンツ姿で立つシーンはアニメで観た彼そのもので感動してしまった。

実写はさらに色気が増していてドキドキしてしまう。無言のときのほうが色気があるので、エッチでバカなことを言ってるシーンがむしろその色気を緩和させている気がする。

そう、おそらく多くの方が気になっていたと思う「“もっこり”はどうなるのか」という不安。違和感なくもっこりを連呼していて最高だった。

もっこり連呼しているシーンの声が、まるでCV神谷明かのように思えるほどだった。「もっこりショー」なるものも披露しており、鈴木亮平本人が裸芸人たちを参考にしながら振り付けを考えたという徹底っぷり。やりきる力ってすごい。

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

そうでなくても彼の役作りが素晴らしいことは間違いないが、鈴木亮平自身が冴羽獠の大ファンだということが、解像度をより上げたのかもしれない。令和に新たな、そしてオリジナルに忠実な冴羽獠に出会わせてくれて本当にありがとうございましたと言いたい。

今回映画になったのは獠が香(森田望智)と出会い、相棒となるまで。これは続編を期待せざるを得ない。もっともっと鈴木亮平の冴羽獠に会いたい。

–{あらためて振り返る、鈴木亮平の演技がすごい作品たち}–

鈴木亮平の演技がすごい作品たち

ここからは、個人的に感動した彼の演じた役たちを振り返りたい。

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『HK/変態仮面』

(C)2013「HENTAI KAMEN」製作委員会

この作品が実写化されると誰が思っただろうか。股間をギリギリ隠した服(?)網タイツ、そして顔を覆っているのは女物のパンティ……そして独特すぎる歩き方と動き。

どこをどう見ても変態な主人公を演じた『HK/変態仮面』。変態なのだが、肉体美も完璧ですごかった。鈴木亮平にしかできない役であることは間違いないが、こんな役やっちゃっていいのか……!?と思った作品でもある。個人的に、彼の演じ抜く力に度肝を抜かれた最初の作品だった。

ちなみに、後にバラエティで松坂桃李・林修・岩本照などがこのウォーキングをすることになるという、さまざまな意味で罪深い作品だ。

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『俺物語!!』

(C)アルコ・河原和音/集英社
(C)2015映画「俺物語!!」製作委員会

この作品が実写化されると誰が思っただろうか(本記事2度目)。いかつい見た目と巨体、ほぼゴリラでモテないが、強くて優しい高校生・剛田猛男の恋を描いている。

とにかく実写の再現度がすごい。この役のために30kg増量したため、一瞬「これが鈴木亮平なの!?」となる。話し方が猛男のイメージそのままだったことも印象に残っている。

「鈴木亮平、本当にすごいな」と再び思った作品だった。

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『ひとよ』

(C)2019「ひとよ」製作委員会

子どもたちの幸せのため、暴力を振るう夫を手にかけた母(田中裕子)と三兄妹(鈴木亮平・佐藤健・松岡茉優)が再会する物語。鈴木が演じているのは、長男の大樹。吃音症があり、夫婦関係に悩んでいる内向的な人物で、きょうだいの中でも勝手をする弟や末っ子の妹の陰にいるイメージがあり、彼が演じる役の中では新鮮だった。

ちなみにこの作品に関わっていた高橋信一が『シティーハンター』のプロデューサーであり、当時から鈴木亮平に「いつか冴羽獠を演じてみたい」という話を聞いていたのが今回につながったというから胸熱だ。

未見の方は、ぜひこれを機にチェックしてほしい。

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「レンアイ漫画家」

同じく文化系キャラとして印象的だったのが、「レンアイ漫画家」で演じた漫画家・刈部清一郎だ。前髪全降ろしで挙動不審な感じ、人付き合いが下手でぶっきらぼうなのだが、このビジュアルは結構好きだった。

少しずついい一面が見えてきて恋に発展する様子がよかったし、吉岡里帆演じるあいことの掛け合いにも注目だ。

関連記事:「レンアイ漫画家」全11話感想

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『孤狼の血 LEVEL2』

(C)2021「孤狼の血 LEVEL2」製作委員会

「鈴木亮平史上、最恐・最悪」だと思うのが、『孤狼の血 LEVEL2』の上林だ。敵対する相手や気に入らない相手を次々と残忍な方法で殺していく。

話し合いが通用するタイプではない、人の命を何とも思っていない、根本的な「やばさ」に観ているこちらも震え上がる。少し尖った耳の形すら上林の怖さを増幅させる。殺し方に独特の癖があって、ものすごく嫌。

怖すぎるが、どちらかというと正義のイメージがあった鈴木亮平の新たな境地を見せてくれた素晴らしい役だと思う。クライマックスの松坂桃李との対決シーンの見応えが抜群なので、そちらにも注目してほしい。2人ともやばい。

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「エルピス—希望、あるいは災い—」

(C)カンテレ

「ずるいけど好きになっちゃう男」として世の女性たちが悲鳴を上げたのが、「エルピス—希望、あるいは災い—」で演じた斎藤。

一見すると人当たりはいいが、仕事でも恋愛でも打算的でのし上がっていく感じ。「なんでベッド買ったの?」というセリフが特に注目を集めていた。

キャラクターとしては結構クズなので、的にはあまり好きではないのだが、周りに「エルピスの鈴木亮平好きすぎる、たまらん」という人がとても多かった印象がある。

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『エゴイスト』

(C)2023 高山真・小学館/「エゴイスト」製作委員会

直近で素晴らしかったのが『エゴイスト』で演じた斉藤浩輔。

異性愛者である彼はこの作品を演じるにあたって、事前にインタビューやリサーチを重ねただけでなく、撮影期間中も確認を続けながら役に臨んだという。

確かに同性愛を描いた作品としても真摯に演じられていたと思うが、それだけではない、浩輔を取り巻く恋愛だけではない“さまざまな愛のかたち”や孤独が表現されていて、心にくるものがあった。

まだ観ていない方がいたら、四の五の言わずに絶対に観てほしい作品だ。

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今後も衝撃を与え続けてほしい

Netflix映画『シティーハンター』Netflixにて独占配信中 ©北条司/コアミックス 1985

新たな役を演じるたび、私たちに期待以上の感動を与えてくれる鈴木亮平の演技と役作り。次はどんな役で驚かせてくれるのか、これからも楽しみしかない。

そして繰り返しになるが、『シティーハンター』の続編、よろしくお願いします!!

(文:ぐみ)