「インシデンツ2」“地上波では流せないコント番組”はなぜ面白い?

お笑い

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DMM.comの定額制動画配信サービス「DMM TV」で、オリジナルコンテンツ「インシデンツ2」(全6回)が独占配信中だ。

ズバリ、「閲覧自己責任!豪華メンバーが織り出すきわどすぎる完全新作”脱法コント“!」。

企画総合プロデューサーを務めたのは、前回の第1シーズンに引き続き佐久間宣行。森田哲矢・東ブクロ(さらば青春の光)・伊藤健太郎・ヒコロヒー・みなみかわといった旬の芸人・俳優が集結して、地上波では放送できない過激なお笑いが繰り広げられる。

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コント冬の時代

いま、コントは冬の時代だ。80年代・90年代はザ・ドリフターズの「8時だョ!全員集合」(1969年〜1985年)、ビートたけし、明石家さんま etc.の「オレたちひょうきん族」(1981年〜1989年)、ダウンタウン、ウッチャンナンチャン etc.の「夢で逢えたら」(1988年〜1991年)といった番組が百花繚乱を誇っていた。

だが21世紀に入ると、次第にコント番組は影を潜めていく。伝説の番組として一世を風靡した「ダウンタウンのごっつええ感じ」(1991年〜1997年)が、2001年に「ものごっつええ感じスペシャル」として一夜限りの復活を遂げたとき、視聴率が1ケタにとどまったことは象徴的といえる。

同じく怪物的な人気を誇っていた「とんねるずのみなさんのおかげです。」(1988年〜1997年)も、「とんねるずのみなさんのおかげでした」(1997年〜2018年)にリニューアルされてからは、「仮面ノリダー」に代表されるコントから、「新・食わず嫌い王決定戦」のようなトーク番組へと緩やかに移行していった。

今やお笑いは高度に競技化し「IPPONグランプリ」(2009年〜)や「千原ジュニアの座王」(2017年〜)のような、芸人の発想力・瞬発力が問われる時代に突入。カネも時間もかかるうえに、視聴率も取りにくいコント番組は、すっかりマイナーな存在へと押しやられている。これは筆者の体感だが、一般視聴者層でコントが話題にのぼるのは「キングオブコント」(2008年〜)や「THE CONTE」(2022年〜)くらいではないだろうか。

いま現役の人気コント師といえば、東京03・シソンヌ・アルコ&ピースといった名前があがるだろう。だが彼らのコントをテレビで観る機会は非常に少ない。(年末に放送される「爆笑問題の検索ちゃん」で、東京03がコントを披露するくらいか?)

アンダーグラウンドな“脱法コント”

そんなコント冬の時代にあって「DMM TV」はあえてコント番組を……しかも、タブーとされているような過激なネタを取り上げたコント番組に力を入れている。国内サブスク後発組として、あえてアンダーグラウンドな“脱法コント”に挑戦したのだ。

第1シーズンでは、ドラッグや反社やエロを織り込んだ過激なコントが繰り広げられていた。それでも、アドリブっぽいやりとりやスタッフの笑い声がインサートされるなど、オーソドックスなコント番組としてのフォーマットは踏襲していたといえる。(コントが劇中劇という設定にも起因していたのだろうが)

だが今回の「インシデンツ2」は、よりドラマとしてソリッドになり、犯罪をモチーフにした群衆劇という色合いが強い。佐久間宣行もインタビューで、『スナッチ』(2000年)や『ジェントルメン』(2019年)などを手がけた映画監督ガイ・リッチーが撮ったようなクライム・ストーリーをイメージした、と語っているくらいだ。

佐久間宣行がプロデュースしたNetflix「トークサバイバー!」も、ドラマ仕立てのバラエティだった。だがこの作品の場合、ドラマ・パートはあくまで芸人たちが大喜利をするまでのフリであり、(笑い飯・西田幸治の演技が大根すぎて笑ってしまうということはあるものの)基本的にはコントとは異なる構造を有している。

それだけに「インシデンツ2」の本気のドラマっぷりは、非常に新鮮だ。

–{“芸人・俳優たちの生身の面白さ”}–

芸人・俳優たちの生身の面白さ

もうひとつ特徴として挙げられるのが、キャラクター憑依型コント番組ではないこと。「LIFE!~人生に捧げるコント~」(2012年〜)のように、芸人・俳優たちが奇抜なキャラクターを演じ、その人物造形の面白さで笑いを誘う“型”が、長らく主流の時代があった。

だが「インシデンツ」シリーズは、あくまで台本の面白さにフォーカスした作品。いや、正確には出演する芸人・俳優たちの生身の面白さを活かしたうえで、綿密なシナリオを作り込んでいる、というべきか。おそらくアテ書きで割り振られたであろうキャラクターを、各々がその人間力で演じている。

今回の「インシデンツ2」にも、⼩宮浩信・相田周二(三四郎)、岩崎う⼤・槙尾ユウスケ(かもめんたる)、平⼦祐希(アルコ&ピース)、渡部建(アンジャッシュ)、酒井貴⼠(ザ・マミィ)、サンシャイン池崎 、春⽇俊彰(オードリー)、ファーストサマーウイカ、東出昌⼤、野呂佳代といった強烈な演者たちが集合。

彼らが、策士・佐久間宣行の掌で気持ちよく遊ばれている。(個人的には、極楽とんぼ・加藤浩次が久々に狂犬的キャラクターで登場してくれたことが嬉しかった)

さらば青春の光がいてこその「インシデンツ」シリーズ

これは筆者の個人的な感想だが、とはいえこのコンテンツは、さらば青春の光の森田哲矢・東ブクロあっての番組であることをつくづく感じさせられた。もともと彼らは、東ブクロの不祥事、松竹芸能との契約解除トラブルなど、スキャンダラスなイメージが強かった。

その後個人事務所「ザ・森東」を設立し、今では地上波でも活躍中。だが彼らは汚れのイメージを払拭することなく、むしろヒール的な立ち振る舞いで独自のポジションを確立している。アンダーグラウンドなコンテンツに、ぴったりの人材なのだ。森田はガサツなテンパリキャラ、東ブクロはエロいことばっか考えているキャラと、本人たち(?)をそのまま引き写したかのような役なのも、非常に確信犯的。

構成と脚本を務めているのは「ゴッドタン〜The God Tongue 神の舌〜」(2005年〜)などで佐久間宣行と仕事をしている構成作家のオークラで、2022年に行われた「東ブクロをプロデュースしたい5人の者たち」というライブでもプレゼンターとして登場するなど、さらば青春の光とも繋がりが深い。

“地上波では流せないコント番組”「インシデンツ」シリーズは、佐久間宣行とオークラの緻密な戦略によって、さらば青春の光の“アンダーグラウンドな笑い”が爆発している。いや、それはコンプライアンスに慎重的な地上波とのゾーニングの問題であって、もはやアンダーグラウンドではないのかもしれない。

いま最も攻めているコント番組こそ、最もコントらしいコントなのだから。

(文:竹島ルイ)

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