2023年11月10日(金)、ついにマーベルドラマ最新作『ロキ』シーズン2の最終回が配信されました。
2011年に公開された『マイティ・ソー』での初登場後、屈指の人気キャラクターとして、約12年間に渡る旅路を歩んできた悪戯の神・ロキ。
幾度も死の淵から蘇り、いつしかヴィラン(悪役)からヒーローへと成長した彼に、本作では思わぬグランドフィナーレが描かれました。
マーベルの配信ドラマ史上、最も壮大でエモーショナルなラストが待ち受ける本作。
この記事ではそんなシリーズの見どころ、そして、今後の展開などについて徹底解説していきます!
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【目次】
1. 『ロキ』シーズン2のあらすじ
2. 時間ものとしての面白さ
3. ロキの変化
4. あの女性の秘密
5. これからのシリーズ
『ロキ』シーズン2のあらすじ
かつて、ヒーロー集団”アベンジャーズ”に立ちはだかり、NYに大混乱を引き起こした悪戯の神・ロキ。
偶然にも死の運命から免れた彼は、時間と次元を統治する謎の組織・TVAに迷い込む。
組織職員”メビウス”や別次元で女性となったロキ”シルヴィ”といった仲間たちと共に、組織の陰謀を明らかにした彼だったが、それが発端となり、今回は世界崩壊の危機に?!
過去や未来、はたまた異なる次元を旅しながら、彼は世界を救うことが出来るのか……。
タイムトラベル、マルチバース、自由意志、世界の秩序……etc。
様々な言葉が飛び交う中、混沌とする旅路でロキが手に入れた大切なものとは?
そして、彼が見い出した「大いなる目的」とは一体?
壮大なスケールで誰も予想できない摩訶不思議な冒険譚が描かれる!
※これ以降は、ドラマ『ロキ』シーズン2の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください
–{時間ものとしての面白さ}–
時間ものとしての面白さ
今回のシーズンでは、タイムトラベルやループといった時間ものならではの面白さが印象的でした。
思えば、「ロキ」のドラマ製作発表時には、1970年代にいるロキのコンセプトアート(彼の背後には『ジョーズ』の看板が!?)が話題になりました。
しかし、シーズン1では別次元の世界を駆け回る物語が大半を占めていたため、今回満を持して「時間旅行」を中心に据えた物語が実現したのです。
前シーズンで衝撃を与えたラストが「過去」の世界だったと明かされる冒頭に始まり、物語はカギを握る男を追って1893年へ……。劇中では過去・現在・未来、様々な時間をロキが駆け巡ります。
特にその魅力が凝縮されたのが最終話です。
第5話のラストで時間コントロール能力を得たロキは、世界崩壊の運命を変えるため、何度も同じ場面を繰り返します。
この展開はまさにループ系作品の醍醐味といえるものでしょう。
洋画では『恋はデジャ・ブ』、『オール・ユー・ニード・イズ・キル』、『ハッピー・デス・デイ』、日本では「ブラッシュアップライフ」や『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』などなど。
例として挙げるにもキリがないほどにこの手のジャンルには名作が多いです。
最終話では短時間ながらも、その魅力である「異常な手際の良さから生まれる笑い」や「失敗から成長していくサクセスストーリー的快感」がテンポよく描かれているのです。
また、シーズン1の物語を反復するタイムトラベル展開もお見事でした。
ロキの物語に一区切りをつける本作において、懐かしい場面の数々はファンにとってはたまらないエモーショナルな気持ちを呼び起こしてくれます。
–{ロキの変化}–
ロキの変化
ロキというキャラクターはこれまでの物語を経て、どのように変化したのでしょうか。
その手がかりとして重要なキーワードが「大いなる目的(=Glorious Purpose)」です。
この言葉は「ロキ」シーズン1の第1話とシーズン2の最終話につけられたタイトルであり、ロキがたびたび口にする言葉でもあります(『アベンジャーズ』冒頭におけるロキとニック・フューリーの会話シーンなどでも登場)。
それでは、これまでの彼にとって「大いなる目的」とは何だったのでしょうか。
雷神・ソーの弟でアベンジャーズの敵として登場したロキ。
当時の彼の大いなる目的は「人々を支配すること」でした。
ロキを演じたトム・ヒドルストンは「崇拝させることで争いを亡くし、平和をもたらそう」としていたと語っていますが、その振る舞いは間違いなく利己的で典型的な悪役と言えるものでした。
そんな彼に大きな変化が訪れたのが「ロキ」シーズン1の第1話です。
自身の行動によって両親の死、果ては身を滅ぼすことになる未来を知ったロキ。
己の虚栄心が人々を傷つけてきたことを自覚した彼は、ひとまず「TVAに協力すること」を新たな目的に冒険を始めるのです。
以降、ロキはたくさんの仲間たちと出会います。
時には愛する者をみつけ、別次元の自分との別れを経験し、次第に「悪役(ヴィラン)」から「英雄(ヒーロー)」としての心が芽生えていくのです。
その変化が明確になる場面が、シーズン2の第5話におけるロキとシルヴィの会話シーンです。
仲間たちが散り散りになった世界で、ロキは「友達を取り戻したい」と切実な思いを口にするのです。
最終話ではロキが大切な仲間たちを救うため、数百年の時をかけて未来を作り変えようと奮闘します。
しかし、唯一の解決策は、彼自身が多元宇宙を束ねる存在となり、仲間たちと永遠に別れる選択肢をすることでした……。
ロキの物語は、彼が人生の「大いなる目的」をみつけるまでの旅路とも言えます。
利己的だった彼は次第に利他的な心を育み、最後には「(自身を犠牲にしてでも)仲間たちの命と世界の秩序を守ること」を選ぶことになるのです。
この物語は、まさしく「本当のヒーローとは何か」を描いており、本作は長きに渡るマーベル作品のひとつの到達点と言えるのです。
–{あの女性の秘密}–
あの女性の秘密
ロキの旅路における終着点として見事な結末が描かれた本作。
しかし、登場人物の中には違和感のあるラストを迎えた人物もいました。
それはラヴォーナ・レンスレイヤーです。
最終話では、第4話で剪定されてしまった彼女が虚無空間と思われる場所で目覚め、生ける嵐”アライオス”に襲われることが示唆されます。
しかし、あえて、その場面が描かれたことには何らかの意図を感じざるを得ません。
ここで気になるのが、コミックにおける彼女の立ち位置とこの場面で映し出されていたピラミッドです。
ロキにとって最大の脅威として立ちはだかった「あり続ける者」ことカーン。彼が主人公となったコミック「征服者カーン」では、ラヴォーナが彼の人生を狂わせるほどの最愛の人物として描かれています。
この設定はシーズン2の劇中でも示唆されていたため、そこまで重要ではないのかもしれませんが、エジプトと紐づける演出があったことは見逃せないポイントです。
というのも、コミックにおける彼女はエジプトの戦士「ムーンナイト」として登場。
カーンの変異体であるラマ・タトとも因縁の関係が描かれているのです。
「ムーンナイト」は過去にドラマ化もされたため、この物語が何らかの形で繋がってくる、あるいは、2人のムーンナイトがなんらかの形で共演するという可能性もあるかもしれません。
【関連記事】「ムーンナイト」第1話レビュー:謎が謎を呼ぶダークヒーロー誕生譚
また、ラマ・タトは『アントマン&ワスプ:クアントマニア』で既に登場しているため、彼がラヴォーナと合流する展開もあるかもしれません。
【関連記事】<解説&考察>『アントマン&ワスプ:クアントマニア』鑑賞後に確認したい“4つ”のポイント
ちなみにコミックではヒーローチーム”ファンタスティック・フォー”も登場。
ラマ・タトの正体”ナサニエル・リチャーズ”は彼らの物語から生まれた人物であり、今後公開が予定されている『ファンタスティック・フォー』でも、なんらかの形でラヴォーナが関わってくるのかもしれません。
これらはあくまで予想の範疇を超えませんが、「征服者カーン」は今後の物語に繋がるような要素が多い作品。
ぜひ、マーベル映画ファンの皆様には、一度読んでいただきたい一冊です。
–{これからのシリーズ}–
これからのシリーズ
ロキが「マルチバース」の支配者となる衝撃的なラストを迎えた「ロキ」シーズン2。
果たして、この展開は今後のシリーズにどのような影響を与えるのでしょうか。
実はマーベルの次回作『デッドプール3』では、メビウスとミス・ミニッツが登場するのではという噂があります。
『デッドプール3』は元々MCU(現行のマーベル映画シリーズ)とは異なり、FOXのX-MENシリーズの世界観を有する作品として制作されてきたシリーズ。
そのため、どのようにMCUと繋がるのかには未だに謎が多いのですが、現在公開中の映画『マーベルズ』である場面が登場したことで、この噂の信憑性が少しずつ高まってきているのです。
※これ以降は、映画『マーベルズ』の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください
映画『マーベルズ』では、物語のクライマックスで登場人物の一人・モニカが別次元の世界に迷い込んでしまいます。
そこは、まさしくFOXのX-MENシリーズの世界でした。
この場面が描かれたことでMCUとX-MENのキャラクターが合流することが確実になったのです。
彼女が別次元に迷い込んだことはもちろん、アメコミヒーロー屈指の暴れん坊・デッドプールの世界に「マルチバース」が開かれてしまったことで、TVAが目を光らせることになるのは何とも自然な展開な気もします。
また、ロキの再登場が今後あるのかも気になるポイントです。
これからのシリーズではカーンがラスボスになることも予定されており、それを踏まえると彼が再びヒーローとして活躍する可能性は高いでしょう。
時間と空間を操り、多くの変異体を持つカーン。
そんな人物に対抗できるのは、彼に匹敵する能力を手に入れたロキだけではないでしょうか。
つまり、彼がアベンジャーズにとって、最後の切り札になる、なんてこともあるのかもしれません。
さて今回は、壮大かつ衝撃のシーズンフィナーレを迎えた「ロキ」シーズン2の魅力とこれからのシリーズの予想を解説しました。
壮大な旅路の果てにロキが辿り着いた「大いなる目的」。
かつての悪役(ヴィラン)が偉大な英雄(ヒーロー)へと成長していく物語は、まさしくマーベル作品の新たな可能性を切り拓いたと言えます。
10年以上にわたるロキの物語はまさしくMCUの歴史そのものでした。
これまでのヒーローたちの物語と、これからも拡大を続ける彼らの物語。
今回のシリーズでは、そんな歴史が物語の神・ロキによって束ねられたとも言えるのです。
マーベル作品の分岐点となるであろう本作は、今後の物語にどのような影響を与えることになるのか……。
その動向を見守る中で、そっと心の奥にとどめておきたい傑作ドラマでした。
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(文:TETSU)