<かしましめし>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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おかざき真里の同名漫画を原作としたテレビ東京のグルメドラマ「かしましめし」が放送スタート。前田敦子、成海璃子、塩野瑛久が演じる、人生につまずいたアラサー男女3人がどんな日も美味しく“かしましく”ご飯を食べる模様を映し出す。

CINEMAS+では毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・最終話ストーリー&レビュー

・「かしましめし」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー


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上司のパワハラで心が折れ、仕事を辞めた千春(前田敦子)。婚約破棄されたばかりのナカムラ(成海璃子)。恋人との関係がうまくいかないゲイの英治(塩野瑛久)。同級生の死をきっかけに再会したアラサーの3人は、それから定期的に集まっては一緒にご飯を食べるようになり…。仕事でやりきれないことがあっても、恋愛で挫けても、美味しいごはんをみんなで分け合えば救われる。そんな3人の、愛おしく“かしましい”日常生活。

第1話のレビュー

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突然だが、おかざき真里の漫画が好きだ。

仕事、恋人、友達、副業、お酒……。そこにはいつも何かしらに心の拠り所を見つけ、生き延びようとする人々の姿がある。ここで大事なのは、それが「生きるために」という積極的目標ではなく、「生き延びるために」という消極的目標のための営みであるという点だ。

死に向かっていく自分を仕事をすることで、友達とお酒を飲みに行くことで、どうにかこの世に留まらせる。そう聞くと何やら後ろ向きに感じるかもしれないが、裏を返せば、それだけ人は弱い生き物ということだ。本来は誰しも生き延びるだけで精一杯。今日も生き延びた。それだけで十分だと、おかざき真里の漫画は教えてくれる。

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もちろん、中には生き延びることができない人もいる。おかざき真里の漫画「サプリ」には、水原という恋人の裏切りをきっかけに自ら死を選ぶ女性が登場する。初めて読んだときは衝撃だった。直近まで活き活きと仕事をしていた人が“恋人”という手綱を失った瞬間、濁流に巻き込まれていく姿があまりに生々しくて。

前置きが長くなってしまったが、この水原というキャラクターがあのままもし死なずに生きていたら?と思って描いたのが、今回ドラマ化された「かしましめし」の主人公・千春(前田敦子)だという。

上司からのパワハラにより心が折れ、憧れの会社を辞めたデザイナーの千春。退職後、とにかく何かをしなければという思いに駆られる彼女だが、それはきっと生存本能だろう。

何もしなければ、自分の存在を否定する声にいつか殺されてしまう。彼女もまた水原と同様に死へと向かっていくが、息をするのを忘れてしまうほど無心になれる料理に活路を見出したことにより、首の皮一枚でこの世界と繋がった。

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ただ、それだけでは不十分で、千春は栄養たっぷりのご飯を作れても自分一人でそれを食べるのは違う気がしてジャンクフードに手を出してしまう。自分を価値ある人間として大事にできないと、そうやって自分で罰を与えてしまうのだ。千春には料理ともう一つ、一緒にご飯を食べてくれる人たちが必要だった。

その人たちと千春が出会ったのも、自ら命を絶った元彼・トミオの葬儀会場である。同じ美大に通っていたナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)に再会を果たす千春。不謹慎にも二人と会話して久しぶりに笑うことができた彼女は自分の家に彼らを招くことに。食事中、無理に笑顔を作って自分は仕事を辞めたから毎日が日曜日で楽しいのだと語るが、どうしても涙が溢れてしまう千春の姿が胸を打つ。

正直言って、千春役が前田敦子だと発表された当初は違和感があった。だけど、このシーンを見た時に千春役が前田敦子で良かったと思った。頭と心と身体がどれも帳尻合わないあの感じを見事にありのまま表現してくれる。

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物語中盤、ゲイで、トミオとも付き合っていたことがある英治がこんなことを言う。

「演じ続けなあかんねん。人生は楽しいって。そうせんとな、僕みたいな生き方は認めてもらえへんから。何があっても楽しそうに見過ごしたりやり過ごしたり、トミオもこんな風に思ってたんかな」

多分私たちは少なからず、英治と同じように楽しそうな自分を演じている節がある。特に大人はみんな自分の気持ちを隠す名役者だ。ナカムラが言うように最初から寂しいと言えたら楽なのに言えない。千春のように本当は苦しいのになぜか口では楽しいと言っちゃう。そうでなければ惨めだから。

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だから、時々見逃してしまうのだ。急に閉店したお店のように気づいた時には跡形もなくその人は消えていて、もうその人が何を考えていて、どういう人だったのかも分からなくなる。

そんな怖いことが二度と起きないように、千春たちは共にご飯を食べる。無理に全てを分かち合う必要なんてない。ただ楽しい自分を演じることなく、栄養のあるご飯を一緒に美味しい、美味しいと言って食べる。一日の終わりにそんな時間が過ごせたら、人はそれだけで明日に進めるから。

泣きたくなるほどの優しさを携えたこのドラマもきっと、誰かが生き延びるための手綱となる。

※この記事は「かしましめし」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー


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千春(前田敦子)の家に越してきたナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)。片付けがひと段落すると、ナカムラの卓上フライヤーで好きな具を串に刺して揚げる“引っ越し揚げ”で引っ越し初日の食卓を囲む。ある日、千春の提案で花見に出かけた3人。千春は蓮井(渡部篤郎)と会い、英治は友人と合流し、一人になったナカムラの前にナンパもどきの田口(倉悠貴)が現れる。田口の軽妙なやりとりに少し心を開くナカムラだったが…?

第2話のレビュー

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「かしましめし」を観ていたらお腹が減る。もちろんドラマに登場する気張らない料理があまりにも美味しそうだから、というのはあるけれど、多分それだけじゃない。

胸がちくりと痛んだり、胸にブワッとした喜びが広がったり、切なくて胸がキュッと締め付けられたり。千春(前田敦子)、ナカムラ(成海璃子)、英治(塩野瑛久)の日常がゆっくり丁寧に紡がれていく本作では、そうした自分の心の音にいつもより意識的になる。

だから観終わった後には心地良い疲れでグッタリしていて、自然とお腹が空くのだ。なんて、健康的なドラマだろう。

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そんな本作の第2話では千春たちの同居生活が始まった。引越しを無事に終え、卓上フライヤーで好きな具を串に刺して揚げて食べる3人。思えば、彼女たちが囲む食卓に並ぶのはこういうアレンジの効くメニューが多い。

一緒に食べているけど、具材や味はちょっとずつ違う。なんだかそこに、お互い干渉し合わない、だけどゆるく依存し合っている3人の関係性が現れているような気がした。

憧れの会社にデザイナーとして雇われるも、上司からのパワハラにより心が折れて退職した千春。同じ部署の婚約者・志村(白石隼也)が別の女性を妊娠させたことから、婚約破棄したナカムラ。同棲している恋人の辰也(吉村界人)と音信不通中の英治。

それぞれ色んな思いを抱えてはいるが、変に改まって気持ちを打ち明けたりすることはない。ナカムラが言うように、辛かったことを人に説明するのって結構しんどい。説明しながらもう一度傷ついた思い出を再体験しているような気持ちになるから。だから、話したいなら聞くけど話したくないことは話さなくていい、という彼らのスタンスにとても安心感がある。

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一緒にお花見をしに来たのに、互いの知り合いを見つけて自然とバラバラになるのもまた千春たちらしい。家族に見せる顔、職場で見せる顔、友達に見せる顔、好きな人や恋人に見せる顔など、人にはたくさんの顔がある。しかも、家族に見せる顔は職場の人には見られたくないし、職場で見せる顔は友達には見せられなかったりするもの。

だから、それを察してスッといなくなる。一見冷たいように感じられるかもしれないが、千春たちの関係はそういう細やかな気遣いで成り立っているのだ。この人は自分を故意に傷つけたりしない、自分に優しい人。そう信じられる相手が家に帰ったら待っていて、一緒にご飯を食べられる歓びにこの作品は溢れている。

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春。千春たちの新しい日常が、草木が芽吹くように少しずつ動き出す。

「君のその作品は誰のために作るの?俺はね、その中に尊いものがあると思ってる」という蓮井(渡部篤郎)の言葉に“上司からの期待に応えられなかった”という不当な罪悪感に苦しめられていた千春の心は少しだけ軽くなった。

ナカムラは元婚約者の志村に水をぶっかけ、桜の下で田口(倉悠貴)と出会う。社会参加のつもりでやってるセックスを「ごめん、今日はちょっとダメかも」と断れる相手。

冒頭でも書いたように、私たちは良い意味でも悪い意味でも感情が騒がしい日々を生きている。それを自分の中から外に出したい時も出したくない時もあるけれど、とりあえず受け止めてくれる誰かがいるというのはやっぱりいいものだ。

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ただ、そういう平和な日常をいともたやすくぶっ壊してしまう人もいる。連絡がつかなかった英治の恋人・辰也が突然帰ってきた。「スーツなんて似合わねえよ」と辰也は、英治が外で身に纏うものを遠慮なく剥いでしまう。その怖いもの無さが時に心地よく感じてしまえるから、人は厄介だ。怖いものがないから、その人は自分のことも簡単に切り捨ててしまえるのに。

「ご飯を作るのも食べるのも面白くて、もうずっとこのまま続くんじゃないかと思ってた。まさかあんな風に終わってしまうなんて思ってもいなかった」

そんな千春の台詞から漂う不穏な気配は、どうか気のせいであってほしい。

※この記事は「かしましめし」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー


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アラサーの英治(塩野瑛久)は、不本意な異動をさせられても、恋人の辰也(吉村界人)の浮気に気が付いても、笑ってやり過ごしてきた。ある日、音信不通だった辰也が突然帰ってくるが…。一方、新たな仕事が舞い込むも迷いを感じる千春(前田敦子)と職場で思うような仕事ができずにいるナカムラ(成海璃子)。二人が気晴らしにスーパーで買い物をしていると、美大の同級生キクヨ(サーヤ)が雑誌の表紙を飾っていて…!?

第3話のレビュー

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このドラマは、千春(前田敦子)たちに良い時も、悪い時も無作為に訪れるのがいい。

ナカムラ(成海璃子)がお花見でナンパされた田口(倉悠貴)と会社で運命的な再会を果たした時、英治(塩野瑛久)は突然家に戻ってきた浮気者の恋人・辰也(吉村界人)にお金をせびられて心をすり減らしている。一方、千春は新たな仕事が舞い込み、迷いの最中にいた。

フィクションだと仲の良い友達同士に同時に危機が訪れ、同時にそれを乗り越える……みたいな展開になりがちだけど、現実は違う。自分の調子が悪い時は、往往にして友達の調子が良い。

そうなると、“隣の芝生は青い”なんて言うように、友達を羨ましがったり、勝手においていかれた気分になって寂しくなったりする。自分の調子が良くて、友達の調子が悪い時のことは棚に上げて。

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ある日、千春たちがルームシェアする家に初めての客人がやってくる。3人と同じ美大に通っていた同級生のキクヨ(ラランド・サーヤ)だ。

千春とナカムラは買い物中、キクヨが表紙になっている雑誌を見つける。在学中から目立つ存在だったキクヨは己の道をまっすぐに突き進み、今や世界で活躍する現代アーティストになっていた。

人に対して成功とか失敗とか言いたくはないし、そもそも成功も失敗もないのだけれど、あえて記述するのであれば“美大生の成功例”みたいな人。もし自分が美大出身だったら、きっと眩しくて見てられない。

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そんなキクヨが雑誌から飛び出し、突然千春たちの家にやってきた。そして、そのまま一緒にチュクミ、いわゆる韓国式のイイダコ鍋を囲むことに。

すると、どうだろう。“成功した人”というレッテルを貼って心のどこかで自分から遠ざけていたキクヨが一気に近い存在となる。自己プロデュースのために被っているかつらを脱ぎ捨て、会社員のナカムラと変わらない愚痴をこぼすキクヨ。

そうそう、そうなのだ。いわば、雑誌に載っている彼女は私たちにとってインスタグラムの中にいる友達みたいなもの。今の時代、誰しも“人に見せる用の自分”と“人に見せない用の自分”を持っていて、人に見せる用の友達を見て圧倒されることが多いけれど、人に見せない用の友達に会った途端にその人の印象がガラリと変わったりする。

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キクヨが自分の憧れた会社へ就職できた千春に少なからず嫉妬していたように、案外自分も誰かに羨ましいと思われているかもしれない。悲しいかな、私たちは他人を比べて自分にがっかりしたり、逆に誇らしく思ったりもする生き物だ。

けど、例えば何事も笑ってやりすごす英治が、常に冷静で淡々としているナカムラが、心の奥底で抱えているものをこうしてドラマにしたら見ることはできるけど、私たちの日常はドラマじゃないから見ることができない。

キクヨの気持ちを千春は知ることができたけど、あの短い時間の中では自分の憧れた会社に就職した千春がパワハラを受けて退職し、今でもフラッシュバックに苦しめられているなんて事実をキクヨが知ることができないのもまたリアルだ。

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他人のすべてを知ることはできない。それでも知れる部分だけを見て勝手に羨ましくなったり、寂しくなったりもするけど、どこかで千春が言うように「みんな等しく道の途中」だということを覚えておきたい。

そして、たまにはそれを実感できるよう、一緒に食卓を囲み、一年を取る度に道の途中にいる自分たちをお祝いしよう。そうすれば、きっとまた前に進んでいけるから。

冒頭、恋人にすり減らされた英治の心は、美大の同級生・榮太郎(若林拓也)との再会で再び満たされる。良い時も悪い時も等しく人には訪れる。だから、悪い時は支え合い、良い時は喜び合って、みんなで生き延びていけたらどんなにいいだろう。

※この記事は「かしましめし」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー


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千春(前田敦子)とナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)が住む家に、美大の同級生の榮太郎(若林拓也)がやってくる。榮太郎に恋心を抱く英治が自慢の手料理を振る舞い、4人は賑やかなランチを過ごす。そんなある日、家に戻らない英治を彼氏の辰也(吉村界人)が迎えに来て…。一方、ナカムラも恋人の田口(倉悠貴)と過ごす時間にどこか違和感を抱きはじめていた。そして、千春は仕事で取材を受けることになるのだが…。

第4話のレビュー

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「自分で言ったから言うけど、あるあるだね」
『なんだよ、その自分で言ったからって』

「他人から無責任に言われると傷つく言葉じゃない?あるあるって」
『いいね。そうやってほんのり気を遣い合うから一緒に住めるんだろうな』

榮太郎(若林拓也)のその言葉に思わず、うんうんと頷いた。この世界はみんながみんな、自分に優しいわけじゃない。チクっとするような言葉をかけられることも、モノみたいに雑に扱われることもある。

なんでそういうこと言うの? 今の傷ついたんだけど。

そう言えたら楽なのに、傷つけられたのは自分なのに、なんだか場をしらけさせたり、相手を責めた感じになって逆に悪者みたいになりそうだから口をつぐむ。そのうえ、ヘラっと笑ってみたり。

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千春(前田敦子)とナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)は相手にどんな言葉を向けるか、どういう態度で接するか、とても慎重に選んでいるように思う。

3人とも他人に深く傷つけられたことがあるから。そして何より、彼らが出会ったのは自ら命を絶った同級生のお葬式だった。

もう本人に会えない以上、理由を問うことはできない。ただ、人間は強いものだと高を括っていたら、知らないうちに誰かを死の淵に追いやってしまうことだってある。

千春たちの気遣いは「人間は強い」ではなく「人間は弱い」から出発しているからこそ自然と生まれるものなのだろう。

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だけど、自分の気遣いや優しさだけで大切な人を守れるわけじゃないことも千春たちは知っている。英治が取引先の人が何気なく口にした言葉に傷ついたり、ナカムラが恋人の田口(倉悠貴)と過ごす時間にちょっとした違和感を抱いたり、千春がふとした瞬間に蘇る記憶に苦しめられたり。

それぞれの日常に入り込んでまで、痛みや苦しみを取り除いてあげることはできないのだ。

本人だってそれを望んでいない。しんどいことや辛いことがあったって、仕事をしている時間も恋人と過ごす時間もその人にとっては必要なのだから。でも、無理がたたれば自分でも気づかないうちに疲弊していることもある。

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「笑うのってゆっくりした自殺みたいや」

英治の言葉にどきりとした。そう、人は弱いけど、その弱さを隠すのが得意だから怖いのだ。

場合によるけれど、人が自ら命を絶った時、あまりに突然すぎて信じられないことがある。だけど、多分突然じゃないんだろうな。気づかなかっただけで、その人はずっと目の前でゆっくり自殺していたんだろうなと思う。

だから千春たちのように、大切な人にはせめて自分の前だけでは無理に笑わなくてもいいような時間を作ってあげたい。誰かに優しくされることで、自分を優しくできるようになったりもするから。英治が、浮気して自分を傷つけた彼氏の辰也(吉村界人)を「もう好きじゃない」と思えたように。

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そういえば、「かしましめし」第4話は千春への賛美が溢れた回だった。

「あのオレンジはすごかったね。他の人には塗れないよ。初めて見た。度胸あるね。いいセンスだよ」(蓮井(渡辺篤郎))

「何より千春がすごいのはね、普通でいること」(ナカムラ)

「天才!」(お絵かき教室の子供)

お前はダメだダメだと言って千春の自信を奪う人もいれば、彼女が自信を取り戻せるような言葉をかけてくれる人もたくさんいる。お客さんを招いた千春の家のテーブルに並ぶメニューみたく、この世は一貫性がなく色んな人がいる。

だけど蓮井が「一貫性がないところもいいな」と言うように、その多様性を楽しみ、傷つける言葉じゃなく、あれも美味しい、これも美味しいと相手が喜ぶような言葉をかけられたらいい。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー


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蓮井(渡部篤郎)を招待した日の夜、ナカムラ(成海璃子)は蓮井から千春(前田敦子)と再会した夜の出来事を聞く。その中で、自分たちが一緒にいることは千春にとってよくないのでは…と思い始めるナカムラ。
その頃英治(塩野瑛久)は、榮太郎(若林拓也)と仕事上のパートナー・土屋(坂東希)の希望に満ち溢れた夢の話を聞いて、自分も絵を描きたいと決意した矢先、車が飛び出してきて…!?一方、千春は元上司である沢渡(田村健太郎)から連絡が来ていることをナカムラに打ち明けるが…。

第5話のレビュー

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千春(前田敦子)が蓮井(渡部篤郎)に再会した頃、千春の足はゆっくりと死に向かっていた。大雨の中で傘もささず、虚ろな表情で赤信号を渡る千春。そんな彼女の手に蓮井はコンビニの袋をしっかりと握らせる。袋の中には買ったばかりのサンドイッチが入っていて、二人は空っぽのお腹をそれで満たした。

どんなに辛いことがあっても、自分の意思に反してグゥ〜と鳴るお腹ってありがたい。それはまるで身体が生きたがっていることを教えてくれるみたいで。生き物は食べなきゃ死ぬ。そんな当たり前のことを、私たちは時々忘れてしまうから。

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蓮井が千春の手に握らせたコンビニのサンドイッチ。田口(倉悠貴)がナカムラ(成海璃子)に食べさせたかったキッチンカーのお弁当。榮太郎(若林拓也)が英治(塩野瑛久)の口に運ぶ病院食。

それらはどれも命綱みたいだ。毎日崖を登るように生きている彼らが足を踏み外しそうになったとき、それは助けになってくれる。そして同時に、「これを握れ」と命綱を渡してくれた相手の優しさが傷ついた心の細胞まで修復してくれるのだ。

英治が言うように、生きるとは食べて寝ての繰り返し。すべてを一度リセットして、身体を休めたら私たちはまた前に進む。

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「かしましめし」第5話は、千春とナカムラと英治に足を前へ進むきっかけが与えられた回だった。

榮太郎とその仕事上のパートナーである土屋(坂東希)の希望に満ちた夢の話に触発され、自分も絵を描きたいと決意した英治。しかし、いざ机に向かうと思うように絵が描けなくてもがく英治に、同じ部屋に入院するおじさん(ベンガル)が過去の後悔を打ち明ける。

田口との関係性に違和感を持つナカムラに、「一緒に旅行にしてみたら?」と助言するのは同僚の常盤(大沢あかね)だ。それぞれが先送りにしてきた問題に向き合う時がきている。

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一方、千春の元には元上司の沢渡(田村健太郎)から食事の誘いが。沢渡は千春が会社をやめるきっかけとなった人物だ。高圧的な態度で千春の仕事や人格まで否定し、彼女を追い詰めた。ナカムラはそんなやつ、相手にしなくていいと言う。もっともだった。傷つくのがわかっていて、会う必要なんて全くない。

だけど、そんな時に千春はお絵描き教室に通う子供たちのあるやりとりを目撃する。絵を「下手くそ」と言って傷つけてしまった男の子と、傷つけられた女の子。女の子は「どうしてあんなこと言ったの?私、傷ついたんだけど」とはっきり自分の気持ちを伝えた上で、「そもそも芸術って上手とか下手で分けるものじゃないんだよ。大事なのはね、自分が精一杯描けたかどうかなんだよ」と持論を展開し、男の子は「まあ、そういう考え方もあるかもな」と素直に納得する。

そこには、大人になると忘れてしまう大事なことが詰まっていた。

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精一杯やったと自分で納得すること。自分の考えを相手にまっすぐ伝えること。そして、傷ついたら傷ついたと伝えること。こうやって言葉にすれば簡単なのに、いざ実践しようと思ったらどうしてこんなに難しいのだろう。

千春は沢渡に「あなたのせいで傷つきました」とは言えなかった。本人を目の前にすると震えて、ただ笑顔を作ることしかできない。そんな不器用で弱い自分が情けなくて、それでも前に進もうとしている彼女が愛おしくて仕方がなかった。

「その時は救われるって残酷なんだよ」と蓮井は言うけれど、きっと一瞬でも救われるってことは大事なんだ。前に進んだ先でボロボロになったら、絶対にこっちを傷つけないという安心感がある人とまた、千春たちがおいしいごはんを食べられますように。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー


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沢渡(田村健太郎)と会ったことから、過去の傷を思い出し、朝になっても帰って来ない千春(前田敦子)。蓮井(渡部篤郎)と一緒にいると知り、安心する英治(塩野瑛久)だが、ナカムラ(成海璃子)はどこか落ち着かずにいた。その頃、千春は蓮井から思いがけない言葉を聞く。一方、再びイラストを描き始めた英治にも新たな悩みが…。ナカムラは自分の気持ちを確かめるため恋人の田口と旅行にでかけるが…?

第6話のレビュー

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英治(塩野瑛久)が退院し、千春(前田敦子)も蓮井(渡部篤郎)の家に一晩泊まって帰ってきた。またナカムラ(成海璃子)を含めた3人の暮らしが始まる。最初にみんなで食べたのはお好み焼き。餅入り?こんにゃくも?と驚きがいっぱい。

誰かが作ったお好み焼きを食べるのって面白い。大阪風なのか、広島風なのか。豚バラ、シーフードミックス、桜えび、チーズ、キムチ……それこそ、具材を何にするかで味わいも変わってくる。出来上がったお好み焼きをピザみたいに切るか、格子状に切るかで巻き起こるプチ論争もまた一つの楽しみ。お好み焼き一つでその人のことをちょっと知れたみたいで嬉しくなってしまう。

やっぱりお好み焼きは英治の言う通り、キングオブ家飯なのだ。普通なんてどこにもない。自分に対しても、他人に対しても、そう思えたら楽なのに。

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自分が受けた理不尽を忘れず生きていくと決めた千春。一方、英治は絵をまた描き始め、ナカムラは自分の気持ちを確かめるためにたぐっちゃん(倉悠貴)との旅行に出かけていく。「かしましめし」第6話では、3人の日常が静かに動き始めた。

お絵かき教室の子どもみたいに「大事なのは精一杯描けたかどうか」とはまだどうしても思えない英治。自分の絵に納得できず、もやもやする彼に蓮井は「君の目が変わったんだよ」と言う。デザイナーから営業に回されたのは英治にとって望んだことではなかったが、結果的に“選別する側の目”を手にいれた。

でも、それが英治の迷いに繋がっているのだろう。画家として、営業として、それぞれ自分の道をまっすぐ突き進んできた蓮井や上司である園田(福田麻貴)。その迷いのない背中に英治は感化される。英治に今必要なのはどちらかの道を選んで、納得することなのかもしれない。

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だけど、自分で納得していても他人が納得してくれないことも往往にしてある。英治に「僕は誰にも性欲を持てないんです」と打ち明ける蓮井。ああ、だからか、と思った。

千春が蓮井に「この人は絶対に自分を傷つけてこない」という安心感を持てる理由。他人に性欲を持つことはけっして悪いことじゃないけれど、時としてそれは相手に恐怖感を与える。そのつもりは全くなかったとしても、期待させてしまった自分が悪いみたいで答えなきゃいけない圧のようなものを感じてしまうから。

でも千春が夜中に蓮井の家を訪ね、抱きついても彼は一切手を出してこない。何もせず、ただ寄り添ってくれることが千春にはありがたい。だけど、別れた蓮井の妻はそうじゃなかったのだろう。何もしないことがありがたいと思う人もいれば、寂しいと思う人もいる。

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たぐっちゃんは多分、寂しいと思う側の人間だ。ナカムラとの間にある適度な距離に彼は満たされないものを感じている。美味しいものを食べたら真っ先に知らせたくなって、呼び出されたらいつでも駆けつけたくなるほど大好きなナカムラともっと一緒にいたい、同じ布団で朝まで眠りたい……。

たぐっちゃんの純粋さは見ていて微笑ましいものだけれど、それもまた受け取る人によっては怖くなるものなのだろう。彼がナカムラに向ける溢れんばかりの感情はいわば欲であり、期待だから。愛し合っているなら当然という世の中の風潮も相まって、それに答えない自分が何やら薄情に思えてしまう。

たぐっちゃんからの愛情が昼間は嬉しくて幸せだったのに、夜になると突然怖くなる自分を「私、なんかちょっとおかしいみたい」と自分で否定するナカムラ。人に期待されないことはありがたくて、寂しくて。どちらが正しいとか、間違っているとかじゃないのが今は少しだけ切ない。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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蓮井(渡部篤郎)から絵のモデルを頼まれた千春(前田敦子)。“描かれる側”に立つことに戸惑う千春だったが、ナカムラ(成海璃子)と英治(塩野瑛久)に背中を押され引き受けることに。一方、“自分には何もない”という気持ちを抱えるナカムラは、旅行に行って以来、距離を置いていた恋人の田口(倉悠貴)と再会する。更に、再び絵を描き始めた英治は、想いを寄せる榮太郎(若林拓也)から作品を見せてほしいと頼まれるが…。

第7話のレビュー

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想いを寄せる榮太郎(若林拓也)に「あーん」と味見させられ、ドキドキが隠せない英治(塩野瑛久)。それを目の前で見ていた蓮井(渡部篤郎)がボソッと「青春だな」と呟く。その青春というふた文字に、なんだかくすぐったいような気持ちにさせられた。

多分、それはどこかで青春が10代、20代前半の若者のためにあるものだと思っているからなのだろう。だけど、青春は人生に幾度となく訪れる。むしろ私たちは気づかないだけで、生きている間はずっと青春を送っているのかもしれない。

「かしましめし」第7話では、そう思わざるを得ない瞬間がいくつもあった。

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“たぐっちゃん”こと、田口(倉悠貴)が一心に注いでくれる愛情から逃げたくなって旅行を抜け出してしまったナカムラ(成海璃子)。あれからずっと距離を置いていたが、ある日の昼休みに田口から声をかける。

たまたま隣にいた常盤(大沢あかね)に気遣われ、田口と二人きりにさせられたナカムラはまるでこれから告白する女生徒みたいだ。言わなきゃいけないことは山ほどあるのに切り出せなくて、言おうと思ったら今度は邪魔が入って結局言えなくて。そんなもどかしい二人のシチュエーションが、長縄跳びという小学生の青春にじんわりと溶け込んでいく。

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それを目撃した英治は、榮太郎の仕事上のパートナーである種の恋敵でもある土屋(坂東希)にあることを頼まれる。仕事の方向性で榮太郎とすれ違ってしまったため、英治に間を取り持ってほしいというのだ。

英治が気にかかったのは、土屋の「“外側”から言えばあいつも動くと思う」という一言。絵を描き始めたはいいものの、現実を突きつけられて「自分には何もない」と思っている時にこれは辛い。

思わず声を荒げてしまい、お店を飛び出した直後から激しい後悔に襲われる英治。だけど、その姿さえも木の隙間から降り注ぐ光に包まれ、傍目から見ると青春の一コマに見える。

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みんなより遥かに年上で、いつも冷静な蓮井(渡部篤郎)だって思わず千春(前田敦子)に本音を零してしまうこともある。何があっても動じることなく、上手く生きられたらどんなにいいか。だけど、右往左往するその姿こそ、案外人の目には眩しく映るものだ。

蓮井と榮太郎を誘った豚しゃぶパーティーの後、英治は榮太郎に思いを告げる。それに言葉を返すことなく、「めちゃくちゃ綺麗」「魅力的だった」と無我夢中で英治をカメラに写す榮太郎。その行動に納得せざるを得ないほど、ツツジの花をバックにした英治の表情は美しくて、切なくて、愛おしくて……。

この世界はシャッターチャンスで溢れている。本人がそれをどう思うかに限らず、見逃したくない一瞬一瞬を誰もが今日も生きているのだ。

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–{最終話ストーリー&レビュー}–

最終話ストーリー&レビュー

最終話のストーリー


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どんな日も寄り添って、一緒にごはんを食べる。千春(前田敦子)、ナカムラ(成海璃子)、英治(塩野瑛久)のかしましい日常生活は、千春の母・紗栄子(渡辺真起子)の突然の帰国によって岐路を迎える。共に帰国した友人と再びこの家に住むという紗栄子の話を聞き、考える間もないまま家探しを始めるナカムラと英治。そんな中、英治の個展の初日を終え一息ついていると、千春は2人に言えなかった本当の気持ちを打ち明ける…。

最終話のレビュー

©「かしましめし」製作委員会

〈Feed me more 幸せの一匙 大きななりしてても 僕らはまるで雛鳥だ ここはサンクチュアリ 羽を繕うところ 青く濡れた頬を慰めてくれるスープがあるよ〉(KIRINJI/nestling)

ドラマ「かしましめし」主題歌のタイトルには、「雛鳥」ほかに「寄り添う」という意味がある。千春(前田敦子)、ナカムラ(成海璃子)、英治(塩野瑛久)という3羽の雛鳥はどんな時も寄り添い合い、かしましくごはんを食べ、お互いの羽を繕ってきた。

そして、ついに巣立ちの時がやってくる。ピカピカの羽を広げて。

©「かしましめし」製作委員会

自ら命を絶った同級生・トミオの葬儀で再会した頃、千春たちの羽はもうこれ以上飛べないくらい傷ついていた。直感なのか、偶然なのか、はたまたトミオが最期に残した奇跡なのか。さしてお互いをよく知らないまま、3人は一つの巣に身を寄せ合うことになった。

一緒にいること、それは寄り添うことと同義ではない。ナカムラの同僚・常盤(大沢あかね)には、家族を裏切っている夫と無理に生活を続けていた過去があった。

それはかつての英治と元恋人の辰也(吉村界人)、ナカムラと元婚約者の志村(白石隼也)、会社も一つの巣とするなら千春と元上司の沢渡(田村健太郎)の関係に当てはめることもできる。一緒にいればいるほど、傷ついてボロボロになり、しまいには自分の価値も分からなくなってしまうことだって十分あるのだ。

©「かしましめし」製作委員会

その結果、一人でいることを選ぶ人もいる。自分は相手の期待に応えられないことを経験上よくわかっている蓮井(渡部篤郎)は、「みんな一人だよ。関わるだけが人生じゃない」と千春に言う。

でも、それは千春たちも最初から気づいていたことではないか。たとえ同じ巣の中にいても、雛鳥同士が空を飛ぶ方法を教え合えるわけじゃない。自分たちにできるのは雨風の日に身を寄せ合い、身体を温め、一緒に楽しくごはんを食べて、大空に飛び立てるその日までを共に過ごすこと。

たったそれだけ、と言ってしまえばそれまでだが、千春たちには十分すぎるほど大事な時間だった。

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自分には何の価値もない。3人の出発点はそこからだった。仕事に夢に結婚。30歳という年齢を目前にそれぞれが手にしたはずの何かを失い、自分がまるで空っぽになったような気がした。だけど、そんな自分と一緒にごはんを食べて、笑ってくれる人がいる。その事実だけで、お腹も心も満たすには十分だったのだ。

羽を休めた3人は巣立ちの時を迎え、千春はデザイナーとして復帰。その才能を大いに発揮し、デザイン賞にもノミネートされた。英治は榮太郎(若林拓也)に想いを告げ、スッキリした状態で個展開催という夢への一歩を踏み出す。そのおかげか、本業である営業活動の方も上々だ。

そして、ナカムラは真正面から自分と向き合ってくれる田口(倉悠貴)と言いたいこと言い合って、ようやく同じベッドで眠ることができた。それに、自分の気持ちを伝えるのが苦手だった彼女が「常盤さんとも遊びたいな」と素直に言えるようになったのだ。きっともう大丈夫。

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そう考えると、千春の母・紗栄子(渡辺真起子)の突然の帰国は来るべくして来た転機とも言えるだろう。紗栄子は一緒に帰ってきたソニョン(金慶珠)との関係について、「友達っていうことになるのかな。他に言葉がないからそうかな」と語る。

「言語も違うし、背負ってきたものも何もかも違うんだけど、そういう人に出会ったんだからこれからの人生一緒にいようよって。私たちさえよければそれでいいじゃんって。そういう関係」

家族でも、恋人でもない。友達って言うのもなにか違う気がする。名前なんて必要ないけど、一緒にごはんを食べたい相手とでも言うのだろうか。

©「かしましめし」製作委員会

「寄り添う」と言葉で言ってしまえば簡単なことが、実は結構難しい。だから、私たちは一緒にごはんを食べるのかもしれない。愚痴を言いたければ言えばいいし、辛いことを無理に話す必要もない。夢を語り合うのもよし、ただ美味しい、美味しいと言いながら食べるだけでも全然いい。

それが「みんな等しく道の途中=大きななりをした雛鳥」だと気づくことに繋がり、明日を生きる活力になるから。千春たちは巣から飛び立っていった。だけど、これからもきっと道の途中で出会い、かしましくごはんを食べるのだろう。

「また一緒にごはんを食べましょう」
「うん。また一緒に食べよう」

そうやって声を掛け合いながら、私もあなたも生き延びていく。

※この記事は「かしましめし」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「かしましめし」作品情報}–

「かしましめし」作品情報

放送時期
2023年4月10日(月)スタート

放送時間
毎週月曜夜11時06分~11時55分

放送局
テレビ東京、テレビ大阪、テレビ愛知、テレビせとうち、テレビ北海道、TVQ九州放送

原作
おかざき真里『かしましめし』/祥伝社フィールコミックス

出演
前田敦子、成海璃子、塩野瑛久、倉悠貴、若林拓也、工藤綾乃、渡部篤郎

脚本
玉田真也 今西祐子

監督
松本佳奈 ふくだももこ

主題歌
KIRINJI「nestling」

エンディング
kojikoji「頬にひと口」(A.S.A.B / BrothWorks)

チーフプロデューサー
大和健太郎(テレビ東京)

プロデューサー
藤田絵里花(テレビ東京) 白石裕菜(ホリプロ) 宮森翔子(ホリプロ)

音楽プロデューサー
福島節

音楽
東川亜希子(赤い靴)

フードスタイリスト
飯島奈美

制作
テレビ東京 
ホリプロ

製作著作
「かしましめし」製作委員会