2023年2月17日より『アントマン&ワスプ:クアントマニア』が公開され、5月17日より配信開始となった。
マーベル映画シリーズ第31作として新たなる章・フェーズ5の幕開けとなった本作。鑑賞後に改めて確認したい4つのポイントについて、マーベルファンのライターが徹底解説します!
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※この記事では映画『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の重大なネタバレに触れています。未鑑賞の方はぜひ観賞後に記事をご覧ください。
–{ラストシーンの意味について}–
ラストシーンの意味について
単作映画として見てもシリーズ映画として見ても楽しめる『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。
まずは本作のラストをそれぞれの視点から解説します。
単作映画として
本作はスコットが名声にとらわれず、本当のヒーローとして成長するまでを娘との交流を踏まえて描いていました。
物語序盤ではアベンジャーズの一員として世界を救ったスコット・ラング(アントマン)が娘・キャシーに「次は何をするの」と問いかけられます。ホームレスのためにパトカーを縮ませるなど、キャシーの行動は大胆ですが「人助け」をしようとする気持ちはヒーローの本質を思わせるもの。
物語終盤ではキャシーが悪役・M.O.D.O.K(モードック)を更生させる展開もあり、その姿からスコットは「ヒーローとは何か」を学ぶのです。窮地に立ったスコットが、自身の犠牲を払ってでも強敵に立ち向かおうとするクライマックスはその集大成といえるでしょう。
オープニングとエンディングでは街中を歩くスコットが反復されますが、その大きな違いは彼の心の持ちようです。アベンジャーズの肩書に頼り、ヒーローとしての名前を間違えられてへこんでいたスコット。彼は本作を経て、たとえ量子世界を救った事実が人々に知られずに名前を間違えられようとも気にせずに、ヒーローとして生きることを決意します。
この展開からまさしく本作はアントマンの成長譚と言えるのです。
シリーズ映画として
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では戦いに勝ち、幸せな日常に戻ったはずのアントマンがカーンの言葉に不安を抱え、不穏な空気を残したまま物語が幕を閉じます。
それもそのはず、2025年公開の『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』は(「カーン王朝」という意味のサブタイトルからも)カーンがアベンジャーズの強敵になることが示唆されており、本作のミッドクレジットシーンでも様々な世界の彼が集結していました。また、今作のカーンについても退場シーンには謎が残るため、彼が再登場する可能性もあるでしょう。
果たしてカーンとの戦いを経験したアントマンが今後のアベンジャーズでどのような活躍をするのか。その立ち位置にも要注目です。
–{シリーズ過去作との繋がり}–
シリーズ過去作との繋がり
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』はシリーズ過去作を観ているとより楽しめる一作でした。
ここからは鑑賞後に復習したい3作品を紹介します。
「ミズ・マーベル」
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の冒頭ではスコット・ラングが有名人となり、積極的なメディア活動を行っていることが明かされます。
これは「ミズ・マーベル」第1話でも言及されていた話題です。
「BIG ME LITTLE ME」(大きい私と小さい私)と題されたポッドキャスト番組は『アベンジャーズ/エンドゲーム』でのヒーローたちの活躍を伝える内容で、一般市民にとっては重要な情報源となっている模様。
ドラマの主人公・カマラがキャプテン・マーベルへの憧れを募らせる一因にもなり、ミズ・マーベルの誕生にも少なからぬ影響を与えました。
また、劇中に登場したスコットの自伝「Look Out for the Little Guy」は実際に今秋販売予定。
CM映像まで制作されており、全256ページで彼の人生を振り返る本格仕様となっています。
『アントマン』
『アントマン』シリーズ3作目として、3部作の最後を飾ることとなった『アントマン&ワスプ:クアントマニア』。
そんな本作だけに劇中では第1作『アントマン』を想起する展開が多々ありました。
有名ビールブランド「ハイネケン」とのコラボCMではアリが登場。彼らはシリーズには欠かせない名脇役と言えるでしょう。
サーティワン店長の再出演やアリの大活躍、親子愛というテーマなど挙げ続けるとキリがありませんが、中でも印象的だったのは”ダレン・クロス”の再登場でしょう。
『アントマン』では悪役・イエロー・ジャケットとしてアントマンの愛娘・キャシーを誘拐しようとするなど、スコットを窮地に追いやった好敵手。
彼は戦いの末に消滅したかのように思われましたが、新キャラ”M.O.D.O.K”として再登場することとなりました。
「ロキ」
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』における最大の悪役・カーン。
彼はドラマ「ロキ」シーズン1の最終話に初登場しており、このエピソードは『アントマン&ワスプ:クアントマニア』の序章となる重要な内容となっていました。
「在り続ける者」という名前で初登場した彼は様々な世界に存在する自分(カーン)について、彼らが争ったことで多くの世界が失われたことを明かすのです。
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では戦いに敗れたはずのカーンがミッドクレジットシーンで様々な姿形で登場します。
2025年にはアベンジャーズ5作目となる『アベンジャーズ:ザ・カーン・ダイナスティ』の公開も決定しており、彼が今後のシリーズを暗躍する黒幕になることを決定づけました。
ちなみにエンドロール後には彼の新たな姿・ヴィクター・タイムリーが登場。それをロキと相棒・メビウスが見つめる姿が映し出されました。
「ロキ」シーズン2は2023年の間に配信が予定されており、こちらでは様々な時代に現れるカーンを追ってロキの物語が展開するのもしれません。
–{原作でのキャラクターは?}–
原作でのキャラクターは?
『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では個性豊かな新キャラクターも多数登場しました。特に印象的だった3体のキャラクターについて、原作での彼らを踏まえて解説します。
クライラー
量子世界でピム博士・ジャネット・ホープが出会った謎多き権力者・クライラー卿。
原作の彼はハルクが主人公のコミック『Incredible Hulk』に登場したキャラクターで量子世界の惑星・カイの傭兵でした。出番の少ないマイナーキャラクターでもあり、今回の映画は名前だけを引き継いだ新設定のオリジナルキャラクターとなっています。
ちなみに彼を演じたビル・マーレイは『ゴーストバスターズ』『恋はデジャ・ブ』など、往年の映画ファンにも有名な、アメリカを代表するコメディ俳優。わずかな出演ながらもマーベルきってのコメディ作品『アントマン』シリーズに登場することで、物語に大きな華を添えていました。
M.O.D.O.K.
生まれかわったダレン・クロスことM.O.D.O.Kは、原作では秘密結社A.I.M.(アドバンスド・イデア・メカニクス)の首領。キャプテン・アメリカの活躍するコミック『Tales of Suspens』に初登場しました。
A.I.M.とは悪の組織”ヒドラ”の科学兵器開発部門から分裂した団体(映画では『アイアンマン3』でもその存在が仄めかされていました)。組織の技術者・ジョージ・タールトンが実験台となったことで彼が生まれたのです。
日本では「マーベルツムツム」や「MARVEL VS. CAPCOM 3」などのゲーム、「ディスク・ウォーズ:アベンジャーズ」といったアニメ作品にも登場。インパクト抜群のビジュアルから一部ファンの間では映画シリーズへの参加が待ち望まれていました。
なお、ディズニープラスでは彼を主役にしたストップモーションアニメ『Marvel’s M.O.D.O.K.』も配信中。ブラックジョークや過激な描写なども多い大人向けのシリーズとなっています。
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カーン
原作のカーンはアベンジャーズやファンタスティック・フォーを苦しめたマーベルを代表する大悪党。
様々な名前を持っており、ナサニエル・リチャーズ(30世紀の未来人)、ファラオ・ラマ・タト(古代エジプトの支配者)、スカーレットセンチュリオン(ファンタスティック・フォーの悪役・ドクター・ドゥームの影響を受けた未来人)、イモータス(異次元世界・リンボの支配者)など、異なる時代に多種多様な姿形で現れるキャラクターです。
そのうちの一人・アイアンラッドはヤング・アベンジャーズの一員として活躍するヒーロー。今後の映画シリーズでは若手ヒーローの活躍やカーンとの戦いが描かれることが予想されるため、アイアンラッドが重要キャラクターになることは間違いないでしょう。
ちなみに劇中のミッドクレジットシーンではラマ・タト、スカーレット・センチュリオン、イモータスと思われる3名が登場していました。
–{あわせて観たい映画}–
あわせて観たい映画
『アントマン』シリーズは『縮みゆく人間』『ミクロの決死圏』など、様々な作品からの影響を受けていることが公言されています。
本作に影響を与えたと思われるものや共通点が多い映画3本を紹介します。
『スターウォーズ』シリーズ
監督が過去にお気に入り映画として挙げていたのが『スターウォーズ』シリーズ。『アントマン&ワスプ:クアントマニア』では様々な要素で本作を想起させる部分がありました。
異形の生物が乱立する世界観(彼らが集まるバーなど)、ちっぽけな主人公が世界を救う展開、民衆が力をあわせて権力者に立ち向かうクライマックスなどなどはまさしく通ずる内容です。
ちなみに『アントマン&ワスプ:クアントマニア』のペイトン・リード監督は、スターウォーズのスピンオフドラマ「マンダロリアン」シーズン2の第2話、最終話でエピソード監督を担当。
第2話「乗客」では名作SF『エイリアン』のオマージュを用いて”クモ”のような宇宙生物が襲いかかるモンスターパニックを描いていました。
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『ゴジラ』
現実世界が舞台となった前2作と異なり、本作では量子世界が主な舞台となりました。そのため、サイズ変化の面白みが薄まったことに不満を抱いたファンもいるかもしれません。
しかし、これにより劇中でも言及される『ゴジラ』の再現に力を入れることが出来たのも事実です。
過去のインタビューでもアントマンシリーズの参考として『ゴジラ』や「ウルトラマン」を挙げていたペイトン・リード監督。本作では現実世界ではないからこそ建物を壊す展開にもノイズが生まれず、主人公の大暴走をコメディチックに描くことに成功したのです。
『ナイトミュージアム』シリーズ
『アントマン』シリーズと共通点の多い作品に『ナイトミュージアム』シリーズが挙げられます。
本作はバツイチの冴えない中年男・ラリーが元妻の子供と共に夜の博物館で冒険を繰り広げるファミリー向けファンタジー映画。親子愛といった作品のテーマからミクロ化した人間描写、ファンタジックな展開まで、様々な部分で重なる部分が多い作品です。
『ナイトミュージアム2』の冒頭では主人公・ラリーが夜警から自身の会社を立ち上げ成功している姿が描かれていましたが、これは『アントマン&ワスプ:クアントマニア』冒頭におけるスコットの変化にも通ずるでしょう。
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以上、『アントマン&ワスプ:クアントマニア』鑑賞後に確認したい“4つ”のポイントを紹介しました。
フェーズ5の幕開けとして様々な要素が詰め込まれていた本作。そのため、今後のシリーズ展開を予想しながら観ることで新たな発見もあるかもしれません。
ぜひ、シリーズの手がかりを見つけるためにも映画館の大きなスクリーンで繰り返し『アントマン&ワスプ:クアントマニア』を楽しんでみてはいかがでしょうか!
(文:TETSU)