「silent」1話〜最終話まで名言&名場面を総復習!

国内ドラマ

ついに最終回を迎える「silent」。登場人物やストーリーはもちろん、数々の名ゼリフが視聴者を心を掴んできた。第1話からこれまでのストーリーと名ゼリフ(手話含む)を、あらためて一緒に振り返りたい。

<目次>

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  1. 1話:本気で愛した彼は音のない世界で生きていた
    1. ■制服で待ち合わせするシーン
    2. ■告白シーン
    3. ■紬の回想モノローグ
    4. ■つらすぎる再会シーン
  2. 2話:好きになれてよかった…そう思いたい
    1. ■想だけが知っている別れのシーン
    2. ■湊斗が彼氏として完璧すぎる
    3. ■手話を覚える紬、また想と話す
  3. 3話:今はもう、好きじゃない…今好きなのは…
    1. ■高校生のとき、紬と想が付き合ったときの湊斗
    2. ■ブラック企業で疲弊した紬を救った湊斗
    3. ■湊斗がいちばんつらかったのは……
  4. 4話:戻れると思う。元に戻れたら嬉しいなぁって
    1. ■湊斗の名前を呼んだ想
    2. ■湊斗の尽力で高校時代の友人たちと再会する想、そして……
  5. 5話:無意識に名前出ちゃうくらいほんとに好き
    1. ■キラキラとポワポワ
    2. ■涙の電話と、回想
    3. ■ノートに書いて「再会できてよかった」と伝える想
  6. 6話:音のない世界は悲しい世界じゃない。
    1. ■想に手を差し伸べた奈々
    2. ■取り乱し、ひどいことを口にする奈々
    3. ■奈々の“叶わない夢”がつらい
  7. 7話:自分にだけ飛んでくるまっすぐな言葉
    1. ■「振らなくていいよ」
    2. ■「おすそ分けしたって気持ち」
    3. ■“叶わない夢”の続き
    4. ■想と紬のハグ
  8. 8話:一緒にいたくているだけなのに
    1. ■奈々と正輝の過去
    2. ■「一緒にいたくているだけなのにね」
    3. ■プリンの手話
  9. 9話:誰がどうやって力になってくれるの?
    1. ■佐倉家の苦悩
    2. ■東京に戻り、CDを買う想
  10. 10話:また何も伝えずにいなくなるのは許さない
    1. ■湊斗の笑顔がかわいい
    2. ■それぞれ前に進む光・萌・奈々
  11. 最終話「変わったもの、それでも変わらないもの」
    1. ■ハッとした、湊斗の言葉
    2. ■背中を押した、奈々の言葉
    3. ■想と紬の黒板のシーン・体育館のシーン
    4. ■花束の「おすそ分け」かすみ草の花言葉
    5. ■登場人物それぞれの「気持ち」が見えた
  12. ありがとう、「silent」

1話:本気で愛した彼は音のない世界で生きていた

紬(川口春奈)と想(目黒蓮)が高校時代に付き合うまでの甘酸っぱすぎる青春シーンと、再会後のつらすぎる涙ながらの手話シーン。視聴者の心を初回からグッと鷲掴みにした。

■制服で待ち合わせするシーン

駅で待ち合わせする、高校時代の紬と想。「雪降ると静かだね」と大声ではしゃぐ紬に、笑顔で「青羽の声うるさい」と言う想。多くの視聴者は、予告などですでに想の耳が聞こえなくなることがわかっている。切ない一方で、制服で待ち合わせは「いいな~!」と思った。

■告白シーン


イヤホンをしている想には言えたけど、いざ外されると言えなかった「好きです、付き合ってください」。でも想から「好き、付き合って」「好き!付き合って!」と言われて、その後スピッツの「魔法のコトバ」を聴かせてもらう、ものすごくいい青春……!

スピッツの曲が数多く出てくるところも、刺さる人は多いだろう。(曲まで絞ると限られるが、スピッツはなにせ30年以上活動しているため、青春時代にスピッツを聞いた人は少なくないのだ)

■紬の回想モノローグ

「好きな声だった、好きな声で好きな言葉をつむぐ人だった」
「名前を呼びたくなる後ろ姿だった」

紬のモノローグは、声にしろ、名前を呼ぶということにしろ、耳が聴こえる前提。結果的にそうなってしまただけなのだが、残酷で切なかった。

■つらすぎる再会シーン

好きだった人との再会。喜んで駆け寄った紬だったが、想はその場を去ろうとした。追いかけて話しかけた紬への想の反応は、見ているこちらも苦しくなるものだった。

「言葉で話しかけないで、一生懸命話されても、何言ってるかわかんないから、聞こえないから」
「楽しそうに話さないで、嬉しそうに笑わないで」

「高校卒業してすぐ、病気がわかった。それから少しずつ聞こえにくくなって、3年前、ほとんど聞こえなくなった」

「何で電話出なかったのか、わかったのか、これでわかっただろ?」
「もう青羽と話したくなかったんだよ」

「いつか電話もできなくなる、一緒に音楽も聴けない、声も聞けない」
「そうわかってて一緒にいるなんてつらかったから」
「好きだったから」

「だから、会いたくなかった」「嫌われたかった」「忘れてほしかった」

「何言ってるかわかんないだろ?」「俺たち、もう話せないんだよ」
「うるさい」「お前うるさいんだよ」

冒頭の待ち合わせシーンでも出てきた「うるさい」という言葉。想から出た同じ言葉でも、あまりに違う状況であることがつらさを後押しする。

本シーンの2人の演技が神がかっていた。長回しの手話をしながら表情や息遣いでも感情を表した目黒と、手話はわからずとも想の表情を見て状況を察し、悲しげな表情になりつつも話しかけるときは一生懸命笑顔であろうとする、紬の性格をよく表現した川口。

多くの人が「silent」にハマったきっかけを作ったと言っても過言ではない、ものすごい初回だった。
–{2話:好きになれてよかった…そう思いたい}–

2話:好きになれてよかった…そう思いたい

衝撃的なラストシーンの初回の後迎えた第2話は、切ない回想から始まった。病気が発覚し、遺伝性のため「自分のせいでは」と悲しむ母・律子(篠原涼子)。

スポーツ推薦で入った大学に行くため、上京する想が車を降りるときに「ごめんね」と言うのが切ない。誰も悪くないんだから、謝る必要なんてないのに。

■想だけが知っている別れのシーン

そして帰省した想は、紬との別れを決めていた。そんなことは知らず、明らかに元気がない想を気遣って励ます紬。

「佐倉くんに向けられる悪意ってね、全部嫉妬だから気にしなくていいんだよ」

「悪口って言っていい人には言っていいんだよ。私言っていい人だから、寝たら忘れるから」

「泣いとこ泣いとこ、男の子だって泣いていいんだよ。私、寝たら忘れるから」

「何かあったら電話して。何もなくても電話して。佐倉くんがしたいときに電話して。私、電話したくないときないから。24時間体制だから」

背中を撫でながら伝える言葉に、じーんとくる。紬は明るいけど、絶妙に押しつけがましくない、まっすぐな言葉をかけられる人だ。いい子だ。

自分だけ最後だと決めている想は、自分の名前を呼んでほしいと頼む。「想くん」と初めて言って照れる紬。でも想はたぶん、スピッツの「楓」のように、“この声を抱いて”生きていこうとしているんだろうなとわかってしまってつらい。

「またね、想くん」と手を振る紬に背を向けた瞬間、泣きながら帰る想。切なすぎてつらい。

■湊斗が彼氏として完璧すぎる

電話をかけた紬が普通の状態じゃないと察した湊斗。

「お迎え行くから待ってて、乗り換えるとこだよね」
「この電話切ったら、動画、検索して」
「パンダ スペース 落ちる って。可愛いの出てくるから、それ見て待ってて。わかった?」

そして到着。
「コーヒーとココア、どっちがいい?」と聞き、「コンポタ」と答えた紬に優しく微笑み「コンポタもあります」と鞄から出す。

いや、もう完璧すぎない……!?優しすぎない?

それだけではなく、元彼である想と再会した紬に、手話教室を紹介してしまうのだ。いい人すぎて心配になるレベル。絶対幸せになってほしい。

■手話を覚える紬、また想と話す

紬のイヤホンを誤って持ち帰ってしまい、返すために待ち合わせした想(真面目)。硬い表情だったが、音声変換アプリ相手にあせる紬を見て思わず笑ってしまう。

紬は正輝(風間俊介)の手話教室に通い始める。物腰の柔らかい正輝だが、突然「すごく好きだけど両想いになれなかったり、なれても別れてしまったり。そういうとき思いません? 初めから出会わなければよかったって。この人に出会わなければ、こんなに悲しい思いしなくてすんだのにって思いません?」と言い出す。ちょっと怖い。

だが紬は「好きになってよかったって思います、思いたいです」と答えるのだ。強い子。
–{3話:今はもう、好きじゃない…今好きなのは…}–

3話:今はもう、好きじゃない…今好きなのは…

紬と想がいるところに湊斗が居合わせてしまう、気まずいシーンから始まる第3話は湊斗回だった。

バチバチの三角関係に突入するのかと思いきや、湊斗がつらかったのは、想が自分に何も言ってくれなかったこと、想が病気になったことだとわかった。予想が外れたと同時に切なく、2話と3話で湊斗を好きになった人は多いのではないだろうか。

■高校生のとき、紬と想が付き合ったときの湊斗

高校生の頃、紬が想を好きになる瞬間を見て、2人をそれとなく近づけた湊斗。ゆるやかな失恋ではあったが、うれしくもあったという。いい人すぎる。

「すごく仲の良い友達とすごく好きな人だったから、すごくうれしかった」
「すごく切なくて、ちょっとだけうれしかった」
「ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ、うれしかった」

■ブラック企業で疲弊した紬を救った湊斗

同窓会で再会した紬が、ブラックな企業で精神的におかしくなっているのを見て、必死に訴えかけた湊斗。頑張り続けていた紬は、彼の言葉で会社を辞めた。優しいけど大事な人のために言うべきことはちゃんと言う、いいやつだな湊斗。

「やればできるって、やらせるための呪文だよ」
「期待と圧力は違うよ」
「俺、人を殴ったことないし殴ったこともないのね。でも、その青羽の職場にいる青羽に挨拶するやつは、俺多分殴っちゃうと思う」

■湊斗がいちばんつらかったのは……

想が紬の家を訪れたとき、居合わせた湊斗。家で待っていてと言われ、2人きりになる。想の背に向かって話しかけるけど、もちろん彼には聞こえない。泣き出した湊斗の気配を感じたのか、振り返る想。

「何で俺に何も言ってくれなかったの?」
「力になれ……なれないけど、何かできるかもしれなかったのに」

紬と光が帰ってきたのと入れ替えに、泣きながら家を飛び出す。追ってきた紬にこう言った。

「取られるんじゃないかって、そういうこと気にしてイライラしてるほうが楽だったから」
「想のこと悪く思えば、楽だったから」
「友達の病気受け入れるより、ずっと楽だったから」
「名前呼んで、振り返ってほしかっただけなのに」

しゃがみこんで泣く湊斗にもらい泣きしてしまったし、この物語が視聴者の予想を裏切り始めたのもこのあたり。



泣きながら湊斗が思い出すのが、高校時代に想を呼んだけど聞こえないふりして行ってしまい、すぐにいたずらっぽく振り返った想と笑い合うシーンだったのがまた切ない。

ちなみにサブタイトル「今はもう、好きじゃない…今好きなのは…」は、紬が想に言った言葉。「湊斗に悪いからもう2人で会うのはやめよう」と言われ、「私、湊斗のことすごい好きなんだよね」「佐倉くんは違う」「好きじゃない」と言った。

告白されたわけでもないのにそこまで言わなくとも……と思うけれど、想が帰った後に泣いていたので心中は複雑なようだ。
–{4話:戻れると思う。元に戻れたら嬉しいなぁって}–

4話:戻れると思う。元に戻れたら嬉しいなぁって

湊斗がつらかったのは、想に紬を取られるかもしれないことではなく、想が自分に何も言ってくれなかったこと、病気になったことだとわかった第3話。

紬はなんと「直接伝えないと伝わらない」と、湊斗と想を自分の家に2人きりにし、自分は弟の光と食事しに行くという強硬手段に出る。さすが紬。

■湊斗の名前を呼んだ想

スマホアプリで会話し、かなり盛り上がる2人。飲み物を取りに台所に行って、つい話し続けてしまう湊斗。でも想からは聞こえない。想は思わず「湊斗」と声に出して名前を呼んだ。耳が聞こえなくなって以来、家族以外の前で声を出さなかった想からするとかなり珍しいことだ。

「しゃべったほうがいい?」と声で聞いた想に「ぜんぜん変わんない」「なんか、久しぶりでびっくりしただけ、名前呼ばれるの」「しゃべりたくなかったからしゃべんなかったんでしょ、だったらいいよ、想の好きなほうで」想も笑顔になった。

■湊斗の尽力で高校時代の友人たちと再会する想、そして……

そして湊斗は高校時代の友達を誘って想とフットサルをやる。はじめは想に会うことに戸惑いをあらわにした同級生だったが「会えば想が変わってないってわかるから」という湊斗の言葉に押され、当日は言葉が分からなくても笑顔で楽しそうに交流していて、少しグッときた。

そして湊斗は、紬に別れを告げた。途中から何となくそんな予感はしていたが、このタイミングで湊斗から……!? 

サブタイトルにもなっている、湊斗の「元に戻れたら」には想と紬の仲も含まれていたというのか……でも湊斗の幸せはどうなるんだよ……。そしてちょっと一方的すぎないか?

でも、湊斗が想に言った内容にハッとする。

「紬、想の横にいるときが一番かわいいんだよね。知らなかったでしょ」

湊斗が一番かわいいと思う紬が自分といるときの紬ではないのなら、それは無理なのかもしれないなぁ……。

「耳、聞こえないんだよ」と泣きそうな顔で声を出して言う想に、「耳、聞こえないだけでしょ。他に何にも変わってないから」と答える湊斗。
–{5話:無意識に名前出ちゃうくらいほんとに好き}–

5話:無意識に名前出ちゃうくらいほんとに好き

湊斗に別れを切り出されたものの、自分は湊斗が好きなのにと納得のいかない紬(そりゃそうだ)。4話では「本当に別れるの!?」と思っていたが、5話で「ああ本当に別れるんだ、この2人」と思い知らされた。

紬の親友・真子(藤間爽子)が話す、想と湊斗のそれぞれの良さの話が印象的だった。

■キラキラとポワポワ

「想といるときの紬はキラキラしてたけど、湊斗といるときの紬はポワポワしてた」という真子の言葉が、すごく印象的だった。

「ポワポワして落ち着いてて、うれしいこと教えたくなる感じ、無意識に戸川くんが基準になる感じ」
「女の子のこと、キラキラさせる男もすげえなって思うけど、ポワポワさせるのも才能」

真子は考え直してほしくて言ったのかもしれないが、湊斗に「紬の隣にいるべきなのは自分ではないな」とあらためて思わせてしまったのかもしれない。湊斗がかわいいと思うのは“キラキラした紬”だったということか。

■涙の電話と、回想

なかなか納得できなかった紬だが、光が気を利かせてつないだ電話で、腹が決まったように見えた。

「私なんか、ポワポワしてたと思う。好きだったよ、戸川くんのこと。好きだったよ、この3年間、ずっと一番好きだった人だよ。知らなかったでしょ」
「うん、知らなかった」

2人とも涙を流していて、観てるこちらも泣きそう。

電話を切って、ベッドに横になる湊斗。朝になって明るくなり、目を開けると、隣には紬が。
どういうこと!?と思うが、なんと初めて紬が家に来た日の回想なのだ。なんでこのタイミングでこんなもの見せるんだよぉ……。

湊斗の幸せそうな顔がつらい。

■ノートに書いて「再会できてよかった」と伝える想

自分と再会したせいで2人が別れたなら、再会しなきゃよかったと思った。でも、紬と手話で話せて、湊斗たちとフットサルできて、うれしかった。だから、2人には悪いけど、再会できてよかった。

全体的に切ない回だった一方で、想の心境の変化だけはうれしかった。
–{6話:音のない世界は悲しい世界じゃない}–

6話:音のない世界は悲しい世界じゃない。

一人ぼっちだった想を救ってくれた奈々(夏帆)。想に思いを寄せていた奈々は、紬と想が接近することで取り乱す。

■想に手を差し伸べた奈々

大学時代、耳が聞こえなくなっていき、部活も辞め、苦しい毎日を送っていた想。就活セミナーで出会った奈々に救われる。「ただ話を誰かに聞いてほしかった。静かに話だけ聞いてほしかったんです」と言う想に「声出さないから大丈夫。静かに話聞いてあげられる」と言う奈々。若干ズレている気もするが、想にとってはこの上なくうれしかったと思う。

1話のラストの激しさとはまた異なり、絞り出すように苦しみを伝える想に、奈々はこんな言葉をかける。

「私は生まれつき耳が聞こえない。でも、幸せ」
「音がなくなることは悲しいかもしれないけど、音のない世界は悲しい世界じゃない」
「私は生まれてからずっと悲しいわけじゃない。悲しいこともあったけど嬉しいこともいっぱいある」
「それは、聴者もろう者も同じ。あなたも同じ」

■取り乱し、ひどいことを口にする奈々

大事な人である奈々に、きちんと向き合おうとする想。「ずっと気持ち無視して曖昧な態度だったけど」と言われて察した奈々は、ひどいことを言ってしまう。

「昔の恋人と昔の親友、想くんと再会したせいで別れちゃったんだ、可哀想だね」
「どうしたの?手話わかんない?筆談しようか?」
「あの子(紬)に聞こえない想くんの気持ちはわからないよ」
「18歳で難聴になって23歳で失聴した女の子探して恋愛しなよ」

そもそもが想の態度がきっかけとはいえ、口にするべきではないことを言ってしまっている。

■奈々の“叶わない夢”がつらい


ショーウインドーで眺めていた”青いハンドバッグ”を持つ奈々。想から電話がかかってきて、話しながら前に目をやると、同じく電話を耳に当てた想が笑顔でやってくる。ここで、夢だと気づく。生まれつき耳が聞こえない奈々は、電話できないし、したこともないはずだからだ。

電話することだけでなく、ハンドバッグを手に持つことも、手をつなぐことも、奈々にはできない。それを思い知らされる映像だった。

ばったり会った紬をカフェに連れていく奈々。自分が想に教えた手話を、想にも教えてもらっているという紬に「プレゼント使いまわされた気持ち」「好きな人にあげたプレゼント、包み直して他人に渡された気分」と言う。

想の声を聞いたことがある紬に「いいね」と言い「たまに夢に見る、好きな人と電話したり手繋いで声で話すの。 憧れるけど恋が実ってもその夢は叶わない」と告げる奈々が、苦しそうでつらかった。

カフェを飛び出し、想の前で泣きながらスマホを耳に当てる奈々がつらい。
–{7話:自分にだけ飛んでくるまっすぐな言葉}–

7話:自分にだけ飛んでくるまっすぐな言葉

想に失恋した奈々が、少し立ち直る姿に涙を誘われた第7話。

■「振らなくていいよ」

前回のいきさつがあり、想に借りていた本をそっと返して帰ろうとした奈々。だが、ちょうど帰宅した想に会ってしまった。

「振らなくていいよ」「振ったほうが悪者みたくなるでしょ?勝手に好きになられただけなのに」「悪者にならなくていいよ」と伝える。

奈々は取り乱すと余計なことまで言ってしまいがちだが、根は悪い人ではなさそうだ。

■「おすそ分けしたって気持ち」

「奈々さんと話したいんだけど、連絡先教えてもらっていい?」「奈々さんてどんな人?」と想に言う紬。いや、さすがに奈々は今会いたくないだろ……とツッコみたくなるが、奈々は一生懸命な紬を見て悪く思わなかったようだ。

図書館で想を見つけ、思わず隠れる奈々。小さな男の子に話しかけられ、耳が聞こえないため困った想が、男の子を抱き上げることで解決するのを見て、いい意味で驚く。

紬が下手くそな手話で一生懸命話してるのがすごく愛おしかった。奈々は「プレゼント使いまわされた気持ち」と言ってしまったが、今は「おすそ分けしたって気持ち」「あげてよかったって気持ち」だと言う。まだそんなに時間が経ってないのに、天使なのか……?

■“叶わない夢”の続き

前回つらかった、奈々のできないことばかりが出てくる夢。

想も同じように奈々としゃべって荷物を持って話す夢を見ると聞いて、「よかった」「私も似たような夢見るけど、音がないから」「想くんの夢のほうでちゃんと声出てるならよかった」「私にも想くんの声、聞こえてるならよかった」と伝える奈々にも泣いた。

■想と紬のハグ

紬が持っている想の高校時代の作文を読みに、紬の家に行くことになった想。

お互い意識してぎこちなさはありつつも、「声が好きだったのは本当だけど、声以外も好きだから。しゃべんなくても好きだから、大丈夫」と手を握られた状態で声を出し、手話で伝え直そうとする紬を抱きしめる想。

「伝わった? 伝わってる」と言う紬。ちょっと感動した。
–{8話:一緒にいたくているだけなのに}–

8話:一緒にいたくているだけなのに

ついに奈々と正輝の過去が明かされる。想は紬が自分といることで、我慢することも多いのではと申し訳なく思い「ごめんね」と言うことが増えた。紬の母・和泉(森口瑤子)が登場。

■奈々と正輝の過去

就職がうまくいかず、下心ありで耳が聞こえない学生のパソコンテイク(音声情報をPCで文字に変換すること)のボランティアをしていた正輝。

はじめは「相手は耳が聞こえないから、コミュニケーションを取る必要もなくて楽」くらいに思っていたが、毎回「ありがとうございました」とノートに書いて見せてくる奈々と出会い、次第に惹かれていった。

ありがとうと書いておいて毎回見せればいいのに、と伝えると「ありがとうって使いまわしていいの?」と聞き返してきた奈々を好きになった正輝。「顔を見て話したいと思った。彼女の言うありがとうをそのまま受け取れる人になりたかった」と、真摯な思いを持つようになった。

声が聞こえない奈々が、正輝に名前を呼ばれて振り返ったシーン。実際のところは偶然だったのかもしれないが、振り返って「私の名前呼んだの?」「声が聞こえた」と言う奈々が本当にかわいかった。

でも、正輝が手話サークルを立ち上げて手話を仕事にしようとしていたことに、奈々は傷つき言い合いになってしまう。

「言葉は通じるようになったのに、顔を見て話せるようになったのに、押し付けた善意で終わった」

正輝が時折見せる闇落ち感(?)の正体は、切ない思い出だった。

■「一緒にいたくているだけなのにね」

帰省し、和泉と再会した紬。紬の父親は、紬がまだ小さく光がお腹の中にいるときに亡くなったらしい。ある日「もうお見舞いに来なくていいよ」と言った夫を思い出し「病気を治せるわけじゃないし、お父さんのために行ってるわけじゃないのにね」「いたくているだけなのにね」と、想のことで悩む紬と意気投合。

和泉は早くに夫を亡くして苦労しただろうし、子供たちが巣立って1人で暮らしていても、明るく趣味も見つけて楽しそうだ。和泉に育てられたから、紬がまっすぐに育ったんだなぁと納得した。

■プリンの手話

第8話に何度も出てきたプリンの手話。お皿の上で揺れるプリンを表したような様子に、思わず覚えてしまった。
–{9話:誰がどうやって力になってくれるの?}–

9話:誰がどうやって力になってくれるの?

久しぶりに里帰りした想。2話でも出てきた、学生時代に紬と会うのが最後だと知っていて、公園で背を向けた後に泣くシーン。その続きをはじめ、想や佐倉家の苦悩をあらためて振り返る回だった。

■佐倉家の苦悩

交友関係を断ち、聞こえなくなっていく自分を受け入れられず、CDを割ってしまう想。そんな想を間近で見ていた母・律子。大事な人には伝えたほうが、と言おうとした律子だが「誰がどうやって力になってくれるの?」と言われてハッとする。

心配な想を最優先にし、結果的に娘たちをないがしろにしてしまう。妊娠した想の姉・華(石川恋)は、生まれてくる子供のための買い物の約束より想の家に行くことを優先する律子に、自分の子供も耳が聞こえなくなる可能性があるんだよねと言ってしまう。何とか場をおさめようとする萌。誰も悪くないのに、想の病気をきっかけに、それぞれが傷ついていてしまった。

久しぶりに帰ってきた想が、たまたま同じタイミングで帰っていた湊斗と楽しそうに話すのを目撃し、うれしくなる律子。想は、萌が湊斗に耳のことを言ってくれたおかげでまた話せるようになってよかった、なんで隠そうとしてたんだろう、と伝えるのを聞いて驚いた。

「親だからってなんでも話さなきゃだめ、じゃないし。親だから話したくないことだってあるだろうし」

そう言った律子は、もう大丈夫そうだ。萌が守ったCDを、あらためて眺める想。3人きょうだいで騒がしく楽しむ。2階から聞こえてくる声を聞き、うれしそうにする両親。

■東京に戻り、CDを買う想

東京に戻った想は、紬の職場のタワレコへ。買っていなかったスピッツのCDを買うという。紬は持っているので貸そうかと言ったが、「自分で持ってたい」と言う想に納得する紬。好きなCDは自分で持っていたい気持ち、わかる。

地元で湊斗に返してもらった、高校時代に紬が想に借りたCDに挟んだ手紙。紬はそのまま湊斗に貸したため、湊斗が捨てたと言っていたが実は捨てずに持っていた。

手紙を返す代わりに好きなCDを貸して、と伝える想のお願いに、彼の中でも整理がついて、前に進めたのかなとうれしい気持ちになった。
–{10話:また何も伝えずにいなくなるのは許さない}–

10話:また何も伝えずにいなくなるのは許さない

9話までにさまざまなことが解決し、紬と想の仲にはじめは難色を示していた弟・妹たちも歓迎ムードに変化。前向きに進んでいると思いきや、想の中であらためてつらい気持ちが生まれてしまったことがわかった第10話。

サブタイトル「また何も伝えずにいなくなるのは許さない」は、そんな想の心情を察した湊斗が想に伝えたセリフだ。本当に仲がいい友達だからこそ言える本音は、想の胸にも響いたようだったが……。

湊斗の言葉を受け、想は紬の家に訪れる。2話で想が、最後だと決意して紬に呼んでもらった自分の名前。耳に焼き付けたはずのその声が、思い出せないという。あらためて1話のラストで自分が言った言葉の意味を伝え、やっぱりつらかったと吐露する。

「やっぱりつらかった。一緒にいたいだけって言ってくれて、顔を見て一生懸命手話で話しかけてくれてうれしかった」
「でも一緒にいるほど、話すほど、好きになるほどつらくなっていく」
「青羽があのころのままだってわかるほど、自分が変わったことを思い知る」
「声が聞きたい。もう聞けないなら、また好きになんてならなきゃよかった」

1話ラストの後、5話で想が「再会できてよかった」という心境になったのがうれしかったが、そんな簡単な問題ではなかったのだと思い知らされた。

想の言葉を聞き「手話で話せるよ」と伝えてもおさまらない彼の苦しさに、静かに涙を流す紬がつらい。

■湊斗の笑顔がかわいい

想と紬の関係がつらい一方で、湊斗のいい顔を久々にたくさん見られた回でもあった。奈々に、好きなのに紬と別れたことについてバカと言われたが、想と仲がいいんですねと言われたと途端、嬉しそうに「はい!」と笑顔になる様子がかわいい。

見かけた想にLINEで「想!」と送ると想も振り向き、2人でじゃれ合いながら湊斗の家に向かう姿は、3話のラストで湊斗がもう叶わないと思って泣いた高校時代の光景と一緒だった。「湊斗よかったね」という気持ちで泣きそうになった。

■それぞれ前に進む光・萌・奈々

別れた後の姉・兄の苦しみを知っているからこそ、2人が再会した直後は難色を示していた紬の弟・光(板垣李光人)と想の妹・萌(桜田ひより)。だがそれぞれの変化を見て、ツンデレ全開でも想に甘える光と、紬にお礼を言いにきた萌。

湊斗に「湊斗くんがいいって言ったくせに」 と言われて「姉ちゃんが幸せなら誰でもいいの!」と言う光の言葉に、姉への想いを感じた。「俺が湊斗くんと結婚したいよ」という言葉に「わかる」と思った人も多いだろう。

奈々は再会した正輝に手紙を渡し、昔のことを謝り当時の気持ちを告げる。居酒屋で居合わせた湊斗に(わからないように手話で)「お前が紬ちゃんのこと引き留めてたら、こうはならなかったのに」「なんで好きなのに自分から振るの?バカなの?」と強めな言葉を浴びせる。

それでも、湊斗が紬に手話教室を教えたおかげで正輝と再会できたことにお礼を言う。奈々はもう前を向いているんだな、と感じたシーンでもあった。

–{最終話:変わったもの、それでも変わらないもの}–

最終話「変わったもの、それでも変わらないもの」

10話ラストは涙で終わったが、最終話はあたたかな感動に包まれた。紬と想はもちろん、登場人物それぞれがそれぞれの大事な人へ、言葉の花束を贈るような素敵なラストだった。

■ハッとした、湊斗の言葉

光に言われ(ハメられ)、自分の部屋に置きっぱなしだったパンダグッズたちを紬に渡しにきた湊斗。

「想の見てる青羽ってさ、高校生の紬ちゃんで止まってるんだよね」「見てる時間が8年分ずれてる」

この指摘にはハッとさせられる。一瞬、もしやここで湊斗とよりを戻すとか……?と思ったけれど、玄関から先には入ってこずに、2人のことだけ考えて話すところがすごく湊斗らしい。

湊斗くん、絶対幸せになってね!!!
高校時代の友人、野本(井上祐貴)のセリフだが、おそらく全視聴者の総意だ。

■背中を押した、奈々の言葉

想にかけた奈々の言葉も響いた。

「彼(正輝)と私がうまくいかなかったのは、聴者とろう者だからじゃないよ、私が勝手にそう思いたかっただけ」
「私たちはうつむいてたら、優しく声かけてもらっても気付けない。見ようとしないとダメだよ」

「うつむいてたら」は、多分物理的だけでなく心理的な意味も含まれているだろう。かつて自分もうつむいていた奈々だからこそ言える言葉だ。

2人への恋を諦めた湊斗と奈々が2人でいることを後押しする流れはなかなかない展開であり、心にくるものがある。

■想と紬の黒板のシーン・体育館のシーン

2人でそれぞれ思ったことを書、「好きになれてよかった」と書きながら涙を流して想を見つめ、「元気でね」と書いて去っていこうとした紬。筆談が手話になり、ついに想は、「それでも今は、一緒にいたい」と伝えた。

「人それぞれ違う考え方があって、違う生き方をしてきたんだから、分かり合えない事は絶対にある。それでも一緒にいたいと思う人と、一緒にいる為に、言葉があるんだと思う」という紬の言葉は、すべての人に当てはまる。

そしてその後に行った「紬の行きたいところ」は、体育館だった。紬が想を好きになった、彼が「言葉」についての作文を読んだとき、実は想も自分のほうを見ている紬に気づいていたことが判明。紬に頼まれてその作文を手話で伝える想、紬も手話で拍手する。

手をつないで歩く2人も、想が昔紬に貸したiPodの曲を、紬に聴かせるのもよかった。

告白したときに聴いた「魔法のコトバ」、そして「スカーレット」。
「離さない このまま 時が流れても ひとつだけ 小さな赤い灯を守り続けていくよ」という歌詞は、あらためて紬と一緒にいたいと伝えた想の今の気持ちを表しているようで、じーんとした。

■花束の「おすそ分け」かすみ草の花言葉

湊斗が待っていたバスから、大きな花束を抱えて降りてきた奈々。
もうこの光景がかわいい。笑顔で差し出しながら(花束を)あげるんだ、とジェスチャーで説明する奈々がとんでもなくかわいい。

奈々がお花屋さんに聞いた「お花は音がなくて、言葉があって、気持ちを乗せられる」という言葉がとってもよくて、誰かにお花をあげたくなる。これからお花を見るたび思い出しそうだ。

1本「おすそ分け」をくれるという奈々に、湊斗ははじめは遠慮するけれど、笑顔で勧められて受け取る。選んだかすみ草を、紬に渡した。ほかのお花もあったのにかすみ草を選ぶところ、人にあげようと思うところ「俺の分はいいよ」「そういう人だよね」という会話が湊斗という人を表している。湊斗くん、絶対幸せになってね(2回目)。

待ち合わせした想も、奈々からかすみ草をもらっていて、2人はかすみ草を交換する。
かすみ草の花言葉は「感謝」「幸福」「無邪気」「親切」、そしてお別れに使われる花でもある。これまでの話を考えて、くぅ~となった。

この「かすみ草のおすそ分け」や、「(背中や腕を)さする」など、言葉じゃなくても気持ちを乗せられることが出てくるのが、この物語の最終回だからこその演出だと思った。

花束をもらった正輝が、ものすごくうれしそうな優しそうな顔だったのもよかった。

■登場人物それぞれの「気持ち」が見えた

これまで出てきた人、ほとんどが出てきて、それぞれ大切な誰かへの言葉(気持ち)を表していた。

紬の母・和泉(森口瑤子)が、想とこれで最後になるかもしれないという紬にかけた「お別れするときこそ、全部相手に渡さないとだめ。中途半端にすると、自分の中に残っちゃうから」という言葉、「(お父さんが)死んじゃう前に全部投げつけたの?」と聞く紬に「ううん、とってある。すっごい美化されてるから、思い出すたび楽しい」と笑うお母さん、強い……。

大変だったであろうお母さんが明るくて楽しそうなのは、こんな風に考えていたからなのか。「それもいいね」という紬もいい。

「私に何かできることある?」「背中さする練習しとくわ」と言う真子、紬と話して「楽しいことよりも傷つかないことを優先してほしいと思っていたけど、楽しそうなのがやっぱりいちばんほっとする」と言った想の母・律子、想よりも先に手話を覚えたという妹の萌、紬には内緒で手話を勉強しようとする光……。みんなみんな、幸せになってほしい。

「青羽の声、思い出せないしもう聴けない。でも、青羽の声が見えるようになってよかった」という想の言葉に、この物語もここまで観てきた自分も報われた気持ちになった。

最後、内緒話みたいにこっそり紬に話しかける想。なんて言ってるかわからないけど、高校のときにも同じやり取りがあり、紬にしかわからない「魔法のコトバ」だからこれでいいんだ。

想は紬とまた話せたし、手もつなげたし、ビデオ通話で電話もできた。奈々は、正輝にお花のお返しにあのハンドバッグがほしいと言った。できないことはあるけど、できないと思ったけどできることもあるかもしれない。

ありがとう、「silent」

私たちを3か月夢中にさせてくれた「silent」。振り返ると一人ひとりの登場人物が、みんなそれぞれ愛おしいし、幸せなラストでよかった。物語はここでいったん終わりを迎えたけれど、「silent」の言葉や気持ちをずっと思い出すのだろうなと思う。やさしい花束のような、宝物のような作品に、感謝の気持ちでいっぱいだ。

(文:ぐみ)

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「silent」作品情報

  • 「silent」

    キャスト
    川口春奈 目黒 蓮(Snow Man) 鈴鹿央士 桜田ひより 板垣李光人
    夏帆 風間俊介 篠原涼子

    脚本:生方美久
    音楽:得田真裕
    主題歌:Official髭男dism 「Subtitle」(ポニーキャニオン)
    プロデュース:村瀬 健
    演出:風間太樹/髙野 舞/品田俊介
    制作著作:フジテレビ