中村倫也『仮面ライダーBLACK SUN』インタビュー|カリスマを演じる不安と愛を感じた監督からのプレゼント

INTERVIEW

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プライム・ビデオで配信中の『仮面ライダーBLACK SUN』。『凶悪』『孤狼の血』シリーズなどで知られる白石和彌監督がメガホンを取り、仮面ライダーBLACK SUN/南光太郎役は西島秀俊、仮面ライダーSHADOWMOON/秋月信彦役を中村倫也が演じることも話題となった本作で、シャドームーン役を熱望していたという中村倫也さんに撮影秘話や見どころを聞いた。


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——シャドームーン、秋月信彦役でオファーが来たときのお気持ちをお聞かせください。

中村倫也(以下、中村):プロデューサーさんからこの企画の話を聞いたとき、真っ先に「俺、シャドームーンやりたい!」って挙手したんです。子供の頃に『仮面ライダーBLACK RX』をリアルタイムで見ていたんですが、シャドームーンの唯一無二の存在感は、子供ながらに強烈に印象に残っていましたから。

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——本作でも信彦は物語中盤以降、下級怪人たちを率いるカリスマ的存在になっていきますが、彼のカリスマ性を中村さんはどのようにとらえて演じましたか?

中村:そこがクランクイン前に一番悩んだところでした。大勢の怪人たちを前に、どうやって信彦のカリスマを表現するのか。実はクランクインは信彦が怪人たちに演説をするシーンだったんです。特報第二弾で最初に出てくるシーンですね。クランクインの日も「どうしようかな~、どうしたらいいのかなぁ」って思い悩みながら撮影に入ったんです。

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でもリハーサル前に白石監督が、「車の上に立とう!」って言ってくれて。「これでいける! 車の上なら怪人たちに勝てる!」って、安直ですが安心しました(笑)。いやでも、僕の不安を察してくれた白石さんからのプレゼントなのかなと、監督の愛を感じましたね(笑)。そこからはもう、信彦のキャラクターがつかめたので、悩むことはありませんでした。

——70年代の信彦と現代の信彦の両方を演じられたわけですが、設定上、外見の若さはほとんど変わっていません。50年間の信彦の変化をお芝居でどのように表現されたのでしょうか?

中村:信彦と光太郎は幼いころに怪人にされて、兄弟同然に育ちました。彼らは不遇な境遇にあるにもかかわらず、とてもピュアなやつらなんですよ。お互いの存在が糧になっていた部分もあると思います。

(C) 石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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そんなふたりが、ゆかりという女性に出会って運命を分かつ出来事があり、それぞれ違う人生を歩むことになる。その信彦の行動というか選択が、ピュアな人間だからこそできるんだろうと思ったんです。それで、70年代の信彦はすごくピュアなイメージで演じました。そこから50年間、信彦はゴルゴムに幽閉されるわけですが、純粋だった信彦の信念が50年の時を経て、怨念に近いものに変化していく。そう感じたので、現代の信彦は怨念のようなものを抱えているイメージで演じました。

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——70年代前半は中村さんはまだ生まれる前ですが、当時の時代背景をどのようにとらえて演じられましたか?

中村:白石監督は若松孝二監督から直接聞かれているでしょうから、さらに深くご存じだと思いますが、僕も蜷川幸雄さんからいろいろお話をお聞きしました。「日本の未来をよくしよう」という強い気持ちとパワーを持った若者たちがたくさんいたという印象です。その時代に生きていた人たちの危機意識なのか、何かに突き動かされて時代を切り開こうとする意志があったんだろうと思います。

–{光太郎を演じた中村蒼・西島秀俊の印象は?}–

——70年代の光太郎、現代の光太郎それぞれを演じられた中村蒼さん、西島秀俊さんの印象は?

中村:西島さんはこれまでも何度も共演させていただいているので、人柄は存じているんですが、蒼くんはほぼ初めましての状態でした。それで今回、二人に共通して感じたものが、どこか朴訥とした雰囲気というか…。

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僕なんかが軽々しく語っていいことなのかわかりませんが、素朴というか肩の力が抜けているところがあって。70年代の光太郎、現代の光太郎、どちらに会っても納得がいくというか、キャスティングの妙ですよね。見た目が似ているというよりは、内面から醸し出すものが何か通ずるんですよ。それが対峙していて面白かったです。どっちの光太郎と会っても、同じ光太郎だと感じました。

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——中村さんは白石組には何度も参加されていますが、本格的な特撮作品はお互い初挑戦となりましたね。

中村:あんなに苦労されてる白石監督を初めてみました。白石さんでも困った顔するんだなと思ったほどです。

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——それだけ特撮は大変でしたか?

中村:時間がかかるんですよね。CGでやっているところもありますが、基本的には人間を吊ったりして戦闘シーンも撮ってるので。思ったとおりになかなか進まなかったので、撮影序盤は特に、監督は大変だったと思います。後半に行くにつれ、特撮のテンポに慣れてきて、だんだんスムーズに進むようになったと思います。

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——中村さんご自身はいかがでしたか?

中村:僕は楽しかったです。撮影現場で怪人を見るのも楽しかった。個人的にはスズメ怪人とか好きですね。現場で見る度「なんで怪人なのに、こんなにスズメなんだろう」って思ってました(笑)。あとは『仮面ライダーBLACK』ファンなら、ビルゲニアにはぜひ期待してもらいたい。あれを三浦貴大くんが演じるというのがまたツボなんですが、変身後は必見ですよ。

(C) 石森プロ・東映 (C)「仮面ライダーBLACK SUN」PROJECT

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——シャドームーンの変身シーンはいかがでしたか?

中村:ブラックサンと対になる変身シーンを撮影したのですが、同じような型をとっていてもまったく違う雰囲気になっていて。それは映像で見ても「こんなに違うんだ」と印象的でした。

——今回の『仮面ライダーBLACK SUN』ならではの見どころと言えば?

中村:それはもう、ブラックサンが西島さんで、監督が白石さんで、脚本が髙橋泉さんなわけですから、ただの勧善懲悪がテーマのヒーローものになるはずがないですよね。「日本の歴史の中に怪人がいたら、現代はどうなっているのか」というのが主たるテーマでもあると思います。特撮作品という枠にとらわれず、人間と怪人の群像劇を見る気持ちで楽しんでもらいたいです。

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(スタイリスト:戸倉祥仁、ヘアメイク:Emiy、撮影:HITOMI KAMATA、取材・文:NI+KITA)

–{『仮面ライダーBLACK SUN』作品情報}–

『仮面ライダーBLACK SUN』作品情報

プライム・ビデオにて全10話配信中。

1987年から1988年に特撮テレビドラマとして放送された『仮面ライダーBLACK』のリブート作品。2022年、国が怪人と人間の共存を掲げてから半世紀を経た、混迷の時代。差別の撤廃を訴える若き人権兼活動家・和泉葵は南光太郎と出会う。彼こそは次期創世王の候補「ブラックサン」と呼ばれる存在であった。そして、幽閉されしもう一人の創世王シャドームーン。彼らの出会いと再会は、やがて大きなうねりとなって人々を飲み込んでいく。

出演
南光太郎/仮面ライダーBLACK SUN:西島秀俊
秋月信彦/仮面ライダーSHADOWMOON:中村倫也
ビルゲニア(古代甲冑⿂怪⼈):三浦貴大
コウモリ怪⼈(⼤蝙蝠怪⼈):音尾琢真
クジラ怪⼈(⽩⻑須鯨怪⼈):濱田岳
バラオム(剣⻭⻁怪⼈):プリティ太田
ビシュム(翼⻯怪⼈):吉田羊
ダロム(三葉⾍怪⼈):中村梅雀
和泉葵:平澤宏々路
ノミ怪人:黑田大輔
新城ゆかり:芋生悠
井垣 渉:今野浩喜
堂波真一(過去):前田旺志郎
小松俊介:木村舷碁
アネモネ怪人:筧美和子
仁村 勲:尾美としのり
堂波真一:ルー大柴
光太郎(過去):中村蒼

監督
白石和彌

脚本
高橋 泉

音楽
松隈ケンタ

美術
今村 力

コンセプトビジュアル
樋口真嗣

特撮監督
田口清隆

主題歌
「Did you see the sunrise?」(超学生)