2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。
沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。
本記事では、その第82回をライター・木俣冬が紐解いていく。
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フォンターナ営業妨害される
矢作(井之脇海)が盗んだフォンターナの権利書を1千万で買い取れと迫る権田(利重剛)。
房子(原田美枝子)は実印がなければ権利書だけでは土地を自由にできないことをわかっているので軽く断ります。
「さすがは天下のフォンターナのオーナーだ」と脅しが効かないことをわかってビジネスの話に切り替える権田。
権利書だけであたふたしてお金を払ってはいけませんよという、沖縄編以来の「ストップザ詐欺被害私達は騙されない」コーナーでしょうか。
みかじめ料を要求されても、房子は毅然と断ります。「書類はいずれ取り戻します」と言う、このときテーブルのうえに乗った権利書をさっと取り返してしまえばいいのにと思いましたが(コピーだったの?)、結局、権利書は権田の手元に……。
戦後の闇市からたたきあげて銀座に店をもった房子。バックに強力な助けてくれる人がいるものと思っていましたが、彼女だけでこれまで一度もこわい目に遭わずにやってこれたのでしょうか。すごいですねえ。
昔は沖縄県人会に入っていたようなので、その頃は、三郎(片岡鶴太郎)の世話になっていたののでしょう。第81回で、揉め事の仲裁が三郎の仕事と言われていました。とはいえ三郎は銀座までは力及ばずとは思いますが。
従業員は、動揺して次の就職先を探すと言う者、お金を払えばいいと言う者、様々です。
オーナー、そっちのけで「闘うんすよ」「金払いましょうよ」と自分ごとのように大騒ぎ。
いまは何時なんでしょうね。少なくとも閉店(10時)以降ですよね。
帰宅した暢子(黒島結菜)は、和彦(宮沢氷魚)に権田の話をします。新聞記者なんだから、社会の闇にも詳しいでしょうし、もっと心配してもいいと思うのですが、和彦の興味は、房子と三郎がなぜ結婚しなかったかなのでした。和彦、意外と恋愛脳。沖縄戦の取材のついでに暢子に会いに行ってちゃっかり結婚を決めてしまったし……。
人間なんてそんなもの。すごい仕事をしている人が恋におぼれていることなどよくあることです。
翌日、重子(鈴木保奈美)が和彦と共に食事に来ます。重子はあまゆといい、なんだかんだ言いながら、来るから、取り付く島があります。
前菜(ペペローネリピエーロ)が出て、一口食べたとき、房子が「いかがですか」とやって来ます。
重子は房子の経歴も調べていました。
いろんなことがありました。いまの法律や常識では考えられないことも。
と答える房子。そのいろいろあった過去を隠すつもりはなく、「過去も未来も含めて私の人生」と毅然と言います。
この”いまの法律や常識では考えられないこと”。は、いまも暢子たちのまわりでは起きているように感じます。
いろいろオブラートに包んでいるので、焦点がぼけてしまうのですが、重子は、暢子の血筋が青柳家とは合わないと考えています。考え直してもらうためのお食事です。
暢子はあえていつもどおりの料理を出します。いつもどおりといったって名店の味なのですから、
自慢の料理に変わりはありません。「特別」とか「いつもどおり」とか「仕込み」とか中身の伴わないセリフばかり。
ただ、沖縄では一回しかレストランに行ったことがないという思い出だけは中身があります。史彦(戸次重幸)につれていってもらったとなぜお礼を言わないのかわかりませんが、その話を聞いた和彦の表情はやさしくて、きっとあのときを思い出しています。
アメリカの統治下にあって、貧しい生活を余儀なくされて、本土と切り離されていた時代に生まれた女の子が、レストランではじめて美味しいものを食べて、美味しいものを作りたいと思った、暢子の仕事の原点。そのとき、共にいた和彦。ふたりには特別な絆があるのです。それをもっともっとドラマティックに描いたものが見たかった。
アコーディオンかバンドネオンの劇伴は、飼ってた豚を食べたときにかかって以来、汚れても懸命に生きる輝きを伴ったすてきな曲で、そこにすべてがこもっているように受け止められるのです。
「汚れつちまつた悲しみに」とうたった中原中也のように、悲しみにもっと向き合ってほしいのだけれど、ざっくりと、猥雑な部分ばかりが強調されていきます。
汚れつちまつた悲しみにの詩がアタマのなかを駆け巡ります。
(文:木俣冬)
–{「ちむどんどん」第17週目のあらすじ}–
「ちむどんどん」第17週目のあらすじ
暢子(黒島結菜)が勤める西洋料理店「アッラ・フォンターナ」に突然やってきたのは、以前フォンターナに勤めていた矢作(井之脇 海)だった。かつて店に多大な迷惑をかけた矢作がいまさらどうしたのか。その矢先、フォンターナには大事件が発生する…。一方で、暢子と和彦(宮沢氷魚)の結婚に反対する、和彦の母・重子(鈴木保奈美)は、なぜか和彦の上司・田良島(山中 崇)のもとを訪ねていた。
–{「ちむどんどん」作品情報}–
「ちむどんどん」作品情報
大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――
ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。
放送予定
2022年4月11日(月)~
<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。
日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。
<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。
出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人
作:
羽原大介
語り:
ジョン・カビラ
音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)
主題歌:
三浦大知「燦燦」
沖縄ことば指導:
藤木勇人
フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子
制作統括:
小林大児 藤並英樹
プロデューサー:
松田恭典
展開プロデューサー:
川口俊介
演出:
木村隆 松園武大 中野亮平 ほか