「ちむどんどん」第23回:比嘉家の貧しさレベルはどれくらいなのか。借金につぐ借金でもなんとかなってしまう

続・朝ドライフ

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2022年4月11日より放映スタートしたNHK朝ドラ「ちむどんどん」。

沖縄の本土復帰50年に合わせて放映される本作は、復帰前の沖縄を舞台に、沖縄料理に夢をかける主人公と支え合う兄妹たちの絆を描くストーリー。「やんばる地域」で生まれ育ち、ふるさとの「食」に自分らしい生き方を見出していくヒロイン・比嘉暢子を黒島結菜が演じる。

本記事では、その第23回をライター・木俣冬が紐解いていく。

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優子、どれだけ働くんだ

やらかした賢秀(竜星涼)が家を出ていって、比嘉家は母と三姉妹の4人の生活になりました。暢子(黒島結菜)は東京行きを諦めて、地元で就職することにします。

1972年になり、友人・早苗(高田夏帆)が東京の大学に行くことになりうらやましい気持ちになった暢子。春休みに東京に旅行に行きたいと優子(仲間由紀恵)に相談してみますが、比嘉家にはそんな金銭的余裕がなく、暢子はもう食事を作らないとふてくされます。

ぎくしゃくする比嘉家でしたが、優子と良子(川口春奈)は給料を前借りし、賢吉(石丸謙二郎)にいくらか借金を返し、暢子を東京に行かせようとします。なんて麗しい家族愛! 暢子のつくったフーチャンプルーの卵のやわらかそうな感じには食欲がそそられ、賢吉を説得する優子と、ひとり芝居する良子の真剣な表情には胸を打ちました。

比嘉家の夕飯はボロボロジューシー(雑炊)やフーチャンプルーと一品のみ。貧しいことがわかります。
父が亡くなって7年、その間、優子が朝昼晩と働き、家と畑を買った借金を返しつつ、日々の生活を賄ってきて、暢子は小学生の頃から食事当番をずっとやってきて……。歌子(上白石萌歌)は病弱でなにもできません。良子はいまは働いて家にお金を入れていて、したいおしゃれもなかなかできません。高校時代までは良子も家の仕事をしていたのでしょうか。セリフによればいまも畑の手伝いをしているようです。

長男・賢秀が何もしないどころかお金をマイナスにしてしまうことを深く追求することなく、家族の誰かが補填しようとする。家族愛といえば聞こえはいいですが……。

なぜか破産するようなことはなく、960ドルを失ったあとも300ドル、給料の前借りをしたりする。「もっと内職増やします」と言う優子。朝から晩まで働いているのにこれ以上??? 比嘉家はお金も時間も意外となんとかなってしまう不思議な力に護られているようです。「なんくるないさー」の精神で、意外となんとかなってしまうものということなのでしょうか。だったらすてきですけれど。

「この先ずっとやんばるで働くだけだよ」という暢子の絶望の言葉を聞いて、比嘉家の人々は自分の好きなことが何なのかもわからないし、たとえ気づいてもそれができない不自由な世界に閉じ込められているのだと感じます。

優子や良子は身を犠牲にして、暢子だけでも自由な世界に羽ばたかせようとしているのでしょう。これまでの朝ドラのヒロインはたいてい家族のために働きに出る自己犠牲を強いられてきました。「ちむどんどん」では家族がヒロインを苦しい世界からひとり逃がそうとしているのです。哀しいけれど、誰かひとりでも生き残れば未来に続いていく。そんな切実な祈りを感じます。
歌子の歌う「翼をください」の歌は、希望に向かう願いの歌のように聞こえます。

鉛筆削りと貝殻(?)を行李のうえに置いて、お金を渡す稽古をする良子が健気で良かったです。
こういう小道具の使い方はいいなと感じます。その一方で「今日はなに?」「フーチャンプルー」という暢子と歌子のやりとりは、台本上では問題ないのでしょうけれど、実際現場では、歌子の目にフーチャンプルーがはっきり見えていて、その料理は馴染みのものという状況なので、どこか不自然です。良子のひとり芝居に涙したのを隠すために不自然なことを言ってるという解釈も可能ですが、ここは現場の状況を鑑みて、その場にふさわしいセリフに変えてもいいのではないかという気がしました。

作家の書いたセリフを一語一句変えない精神も大事ですが、頭のなかで書いたものと現場環境で相違が出ることはよくあるもので、作家がその場にいたら書き換えることもありますし、演出家や俳優が提案することもあります。何かひと手間、かけることで、もっと生き生きと多くの人に伝わるものになるような気が余計なお世話ながら致します。

(文:木俣冬)

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–{「ちむどんどん」第5週目のあらすじ}–

「ちむどんどん」第5週目のあらすじ

暢子(黒島結菜)は助っ人として参加した料理大会の会場で、「東京に行き、料理人になりたい」と爆弾発言。すっかりその気になってしまう暢子だったが、そのころ、比嘉家には暗雲が近づいていた。兄・賢秀(竜星 涼)が投資話だと思ったものは、実はだまされていただけと分かってしまった。絶望した賢秀は大荒れに荒れてしまう。そしてその余波は大きく家族にのしかかってくることになる。

–{「ちむどんどん」作品情報}–

「ちむどんどん」作品情報

大好きな人と、おいしいものを食べると、誰でも笑顔になる―――

ふるさと沖縄の料理に夢をかけたヒロインと、支えあう兄妹たち。
“朝ドラ”第106作は個性豊かな沖縄四兄妹の、本土復帰からの歩みを描く
笑って泣ける朗らかな、50年の物語。

放送予定
2022年4月11日(月)~

<総合テレビ>
月曜~土曜: 午前8時~8時15分 午後0時45分~1時(再放送)
※土曜は一週間を振り返ります。

日曜: 午前11時~11時15分(再放送)翌・月曜: 午前4時45分~5時(再放送)
※日曜、翌・月曜は、土曜版の再放送です。

<BSプレミアム・BS4K>
月曜~金曜: 午前7時30分~7時45分
土曜: 午前9時45分~11時(再放送)※月曜~金曜分を一挙放送。

出演
黒島結菜
仲間由紀恵
大森南朋
竜星涼
川口春奈
上白石萌歌
宮沢氷魚
?山田裕貴
前田公輝
山路和弘
片桐はいり
石丸謙二郎
渡辺大知
きゃんひとみ
あめくみちこ
川田広樹
戸次重幸
原田美枝子
高嶋政伸
井之脇海
飯豊まりえ
山中崇
中原丈雄
佐津川愛美
片岡鶴太郎
長野里美
藤木勇人

作:
羽原大介

語り:
ジョン・カビラ

音楽:
岡部啓一 (MONACA)
高田龍一 (MONACA)
帆足圭吾 (MONACA)

主題歌:
三浦大知「燦燦」

沖縄ことば指導:
藤木勇人

フードコーディネート:
吉岡秀治 吉岡知子

制作統括:
小林大児 藤並英樹

プロデューサー:
松田恭典

展開プロデューサー:
川口俊介

演出:
木村隆  松園武大 中野亮平 ほか