[※本記事は広告リンクを含みます。]
2022年1月12日(水)、結婚を発表した役者・桜井ユキ。相手は同じく役者であり、ドラマ「リコハイ!」(paraviオリジナル配信ドラマ)で共演している黒羽麻璃央である。
役者デビュー10周年の節目に、自身初の写真集『Lis blanc(リス・ブロン)』を刊行。刊行記念のインタビューにおいて「30代のうちに結婚や出産を経験したい気持ちがある」と明言していた。
それから間を置かずに発表された結婚。そして、ドラマで共演経験のある黒羽麻璃央が相手であること。大きな驚きとともに、改めて「役者・桜井ユキ」に対する注目度が上がっている。
初主演となった映画『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』(2017)や『娼年』(2018)そして『真っ赤な星』(2018)など、少し影のある役柄の印象が強い彼女。しかし、直近では日曜ドラマ「真犯人フラグ」において、奇行が目立つママ友・菱田朋子役を演じ、話題となっている。
表現の幅を広げ続けている桜井ユキ。今だからこそ見ておくべき名作について語りたい。
1. 『真犯人フラグ』(2021)
2. 『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』(2017)
3. 『真っ赤な星』(2018)
4. 『だから私は推しました』(2019)
この脱皮は序章に過ぎない!?「真犯人フラグ」奇行のママ友で真骨頂
2021年〜日曜22:30放送中の日テレドラマ「真犯人フラグ」にて、失踪してしまった相良家の妻・相良真帆(宮沢りえ)のママ友である菱田朋子役を演じている桜井ユキ。その何とも言えない”奇行”が話題となっている。
【関連記事】<真犯人フラグ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】
最初こそ「家族がいなくなった凌介(西島秀俊)を心配する優しいお隣さん」くらいの立ち位置だった朋子。怪文書を入れられ頭を悩ませる凌介を気に掛ける様子には、決して不可解な点は見られなかった。
その後、どんどん”奇行”がエスカレートしていく。「お互い何かあったら困るから」といった理由で真帆と自宅の合鍵を交換している、と語る朋子は、凌介の都合もお構いなしにやりたい放題。
勝手に入り込んで洗濯や掃除をするまでは序の口だ。「身体が歪んでいる」と言ってはマッサージを申し出たり(朋子は整体師の設定)、「冬至だから」と言ってはゆず湯を沸かしたり。
ここまでは百歩譲って「ちょっとお節介が過ぎる変なお隣さん」レベルと捉えられるかもしれないが、彼女は確実に相良家の失踪事件に関与している。菱田家の押し入れに”何か”が隠されているシーンが繰り返し描かれ、朋子の息子・キヨくんは、その”何か”に怯えっぱなしだ。
2021年1月23日に放送された真相編3話では、フグ毒を盛られ死にかけた凌介を懸命に看病している描写もある。まるで、ママ友である真帆と何でも同じものを持ちたい(夫も共有したい)と願っているかのように。
果たして、朋子の真の目的は何なのか。
ここまで凌介に懸命に尽くす(見方によっては執着している)様を見ていると、相当、彼のことが好きなのだろうと勘繰ってしまう。しかし、その愛情は歪だ。凌介の気持ちや都合をまったく顧みないその言動や行動には、思いやりがあるようで、ない。
その不可解な背景について、朋子を演じる桜井ユキ自身も「最初は変な人だと思った。台本の文字だけで読んでいると、ますます変な人に思えて」と語る。
朋子に対して「気持ち悪い」「怖い」といった感想も聞こえてくるようだが、それと同時に「愛してほしいとも願っている」とインタビューで心境を吐露した。
【関連記事】<単独インタビュー>桜井ユキ、ドラマ「真犯人フラグ」で怪しいママ友を怪演「怖がられながらも、朋子を愛してほしい」
確かに、桜井ユキが演じる朋子は、得体が知れなくて怖い。しかし、心のどこかで彼女の登場を楽しみにしている視聴者の方も多いのではないだろうか。次に何をしでかすのか予想ができない、本心では何を考えているのかわからない……そんなミステリアスさが、魅力として付加されているように見える。
言わずもがな、それは彼女の表現手腕によるものだろう。少し影のある役柄のイメージが強かった桜井ユキだが、本ドラマで確実に、その表現の幅と奥行きを増してきている。
–{音楽と色彩が織り混ざる倒錯的な世界で、本能のまま”狂う”桜井ユキ初主演映画}–
音楽と色彩が織り混ざる倒錯的な世界で、本能のまま”狂う”桜井ユキ初主演映画
桜井ユキの映画初主演作『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』(2017)。桜井ユキを語る上で、最も外せない作品である。
最初に申し上げておきたいのが、この映画は少々、刺激的で過激なシーンが多い点。とくに中盤以降は絡みのシーンや、トラウマになってもおかしくないような、精神的にキツいシーンもある。鑑賞の際はご理解のうえ、ぜひとも「一人で」見ることをお勧めしたい。
本作で桜井ユキが演じるのは、女優になることを夢見て上京したオリアアキ。家出同然でやってきた彼女は、たまたま知り合った写真家の青年・カイト(高橋一生)と惹かれ合い、女優を目指す傍らで愛を育てる。
……と書くと、実に純粋な恋愛映画のあらすじのようだ。このままのイメージで本編を見ると、ガツンと頭を殴られたような心地になるに違いない。
画面は常に色彩と音楽が入り乱れ、織り混ざり、観客に息をつかせる間もなく物語は濁流のようにチップスピードで落ちていく。食らいつこうと必死になればなるほど、その倒錯的な世界観に絡めとられるのだ。
気づいたらもう、何が本当で何が妄想なのか、区別が付かなくなっている。
桜井ユキ、高橋一生それぞれのルックスや、元来持ち合わせているミステリアスな空気感が、怖いほどこの映画にマッチしている。地に足がついておらず、ふわふわと浮遊しているようで不安感を煽られるが、カイトがアキの写真を撮るシーンや、ベッド上でじゃれ合うシーンなどは、確かに「ふたりは愛し合っているのだ」と感じさせてくれる。
オリアアキは、女優になることを夢見て上京する少女だ。図らずも、桜井ユキ自身のキャリアを彷彿とされる。彼女自身も、女優の夢を追うために19歳で上京、一度は挫折し地元に戻って飲食店の手伝いをしていた過去があった。
繰り返すが、鑑賞の際は充分な注意を払ってもらいたい。しかし、この作品にしかない独特な魅力や、この作品でしか見られない桜井ユキが存在しているのも確かだ。
この映画を見た前後では、物事の捉え方が180度変わるほどの影響力があることは間違いない。
→『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』をAmazon Prime Videoで観る
→『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY-リミット・オブ・スリーピング ビューティ-』をU-NEXTで観る
–{昏い愛の形を全身で表現『真っ赤な星』で演じる救われない女}–
昏い愛の形を全身で表現『真っ赤な星』で演じる救われない女
桜井ユキにとって二度目の主演作となる映画『真っ赤な星』(2018)は、人間同士の”愛の形”について極限にまで迫った作品だ。
14歳の少女・陽(小松未来)と27歳の元看護師・弥生(桜井ユキ)の交流を描いたラブストーリー。最初こそ、怪我をして入院した陽に優しく世話をしてくれた弥生だが、訳あって看護師を退職した後は、つっけんどんな態度を貫くようになる。
自宅には居場所がない陽、売春で生計を立て始める弥生。歪で不安定なふたりが、土台をグラつかせたまま始める共同生活は、最初から終わりが見えている悲しさに満ちていた。
特筆したいのは、弥生の自宅である狭いアパート、暗いキッチンでお互いの欠落を埋め合うように、身体を求め合う陽と弥生のシーン。どこか艶やかで、しかし限りなく寂しい。二人にとってのハッピーエンドを想像しながら、やるせない気持ちでラストシーンを迎えることになる。
従来、役者・桜井ユキには、どこか影のある役柄のイメージが強かった。そのイメージは、先述した『THE LIMIT OF SLEEPING BEAUTY』や、本作『真っ赤な星』に由来するものだろう。
余談だが、2018年に公開された松坂桃李主演映画『娼年』にも、桜井ユキは主人公の同級生役で出演している。娼婦ならぬ娼年として仕事を始めた同級生に対し、憤りを隠せない純な女性の役だ。
先に紹介した二作と合わせて見ることで、また彼女の引き出しの深みを知れるかもしれない。
→『真っ赤な星』をAmazon Prime Videoで観る
–{地下アイドルにハマるオタク女子『だから私は推しました』}–
地下アイドルにハマるオタク女子『だから私は推しました』
桜井ユキの初主演連続ドラマ『だから私は推しました』(2019/NHKよるドラ)。第46回放送文化基金賞・番組部門の演技賞を受賞している、知る人ぞ知る名作である。
とあるきっかけで、地下アイドルグループ「サニーサイドアップ」のメンバー・ハナ(白石聖)の追っかけオタクになったOL・遠藤愛(桜井ユキ)。仕事も友人関係も恋愛も、なんとなく上手くいかない。人生このままでいいんだろうか……と漠然とした悩みと不安を抱える中で、通称「サニサイ」のハナは突如現れたオアシスのような存在だった。
この作品の妙は、全編を通してサスペンス風味になっている点だ。ファンとしてサニサイを応援する愛の様子と、警察の取調室で事情聴取を受ける愛の様子が、交互に描かれる。1話の冒頭から、愛は取調室にいるのだ。
「推しって知ってます?」と愛が刑事へ問いかける意味深なシーンから、誰かが病院へ緊急搬送されている様子が描き出される。ものものしい空気感と、愛がサニサイと出会い、オタク仲間たちと交流するハートフルな展開とのコントラストが、中毒的な魅力を醸し出す。
果たして、愛の身に何が起こったのか? 続きが気になりすぎて、ふと我に返ったら最終回までノンストップで見ているに違いない。
→「だから私は推しました」をAmazon Prime Videoで観る
桜井ユキの引き出しの深さを最短で知れる名作を紹介してきた。さらに桜井ユキの演技を見たい方には『G線上のあなたと私』(2019)そして『イチケイのカラス』(2021)をおすすめしたい。
前者では、中川大志演じる理人が好意を寄せる音楽教室の講師・眞於を。そして後者ではクールな書記官・浜谷澪を演じる。どちらもメインキャラクターではないものの、なくてはならないエッセンスを作品に加味しているため、必見のドラマだ。
これまでの桜井ユキと今後の桜井ユキ、果たして、どんな変化を見せてくれるのだろうか。
(文・北村有)