『イン・ザ・ハイツ』(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
2021年も残りわずか。家族や恋人と年末を過ごす方もいるだろう。
そんな方にこそおすすめしたいのが今年公開された5本のミュージカル映画だ。「え?ミュージカル?普段見ないし」というそこのあなた、ちょっと待ってほしい。
断言しよう、観ないと絶対に損をする。
実は2021年はいわゆる“当たり”のミュージカル映画が多く、テーマや世界観のバリエーションもさまざまで、かなり豊作の年だった。歌えや踊れのインド映画だけがミュージカルではない。そこで今回は、2021年に日本で公開(配信)された珠玉のミュージカル映画を5本紹介する。サブスクリプションから紹介をする作品は全て追加での購入は不要のものとなっているので、ご安心を。
早速5位から紹介を始めよう。
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第5位『ディア・エヴァン・ハンセン』
ブロードウェイで初めてSNSを題材に扱ったことが大きく話題となったミュージカル「ディア・エヴァン・ハンセン」。全米では社会現象を巻き起こし、2017年にはトニー賞で6部門を受賞、チケットは連日完売する大人気作品となった。
このミュージカルの映画化にあたって楽曲を手掛けたのは、『ラ・ラ・ランド』『グレイテスト・ショーマン』の名コンビ、ベンジ・パセック&ジャスティン・ポールだ。映画版のために書き下ろした新曲が聴けるというだけでも映画館に足を運ぶ価値があるだろう。とくに表題曲の「You Will Be Found」は一度耳にしたが最後、メロディが一日中頭の中を離れない。
(C)2021 Universal Studios. All Rights Reserved.
個人的にこの映画の興味深いところは、観終わった人に感想を聞くと「評価がぱっくりと2局化する」ところだろう。おそらく観た人の中には、この映画が1位でないことに疑問を持つ人もいるだろうし、反対にランクインに首を傾げる人もいるかもしれない。ただひとつ、確実に言えるのはそれだけ人の心に直に訴えかけるメッセージ性の強い作品であるということだ。
映画館に入る前と後では確実に見える世界が変わる、それをどう受け止めるかはあなた次第。賛否両論を巻き起こし、人の心に新しい風を吹かせる作品こそが『ディア・エヴァン・ハンセン』なのだ。
第4位『ジャネット』
国民的英雄となりながら異端審問の末に刑を受けた女性騎士ジャンヌ・ダルクを、対になる2つの視点から描いたのが今年12月に公開したばかりの『ジャネット』『ジャンヌ』だ。
ジャンヌの少女が時代を描いた前編に当たる歴史ミュージカルが『ジャネット』である。
この『ジャネット』、一見お堅めの映画かと思えばジャンヌダルクが音楽に合わせてヘドバンをし、その他の登場人物は謎の振りに合わせて突然ラップを始めたりとかなり自由な怪傑作になっている。しかしただシュールなだけではなく、きちんとそこには幼少期の抱えるやるせなさや怒りといったジャンヌの想いが感じられることもまた魅力の1つだろう。
(C)3B Productions
『ジャネット』は普通のミュージカルに飽きてしまった方、2021年最高の刺激を求めている方に強くおすすめしたい映画である。対となる『ジャンヌ』と合わせて鑑賞するとまた異なる見方ができるところも興味深い。
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第3位『イン・ザ・ハイツ』
(C)2020 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
今年のミュージカルベスト、と聞いて真っ先に『イン・ザ・ハイツ』の名前を思い浮かべた方もいるのではなかろうか。全米の名だたるマスコミが「今年最も観たい映画」に名を挙げた本作。
躍動感に満ち溢れた歌とダンスだけでなく、色彩も豊かで観ているだけで極彩色の映画の世界に引きずり込まれてしまう。ラテン系の音楽が持つ明るくポップなテンポ感は、広大な青空の下で夢を追う若者たちの魂の叫びにリンクしているかのようだ。ニューヨークという土地柄も夢見る若者たちの集いし場所として完璧だ。
かと思えば、信仰や移民問題といった各国が抱える国際的なテーマへの問題提起も含まれているから驚かされる。泣いて笑って考えて。恋人とでも、家族とでも、ひとりでも絶対に見てほしいまさに完璧な映画だ。『イン・ザ・ハイツ』 は2021年を締めくくるにふさわしい作品と言えるだろう。
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–{第2位〜第1位を発表!}–
第2位『tick, tick… BOOM! チック、チック…ブーン!』(Netflix)
『tick, tick… BOOM!チック、チック…ブーン!』は名作ミュージカル『レント』を生み出した実在の作曲家ジョナサン・ラーソンを主人公にしている。そしてなんと奇しくもこの映画は、第3位の『イン・ザ・ハイツ』の原作者であるリン=マニュエル・ミランダの映画監督デビュー作となった。
1つの人生の指標として「30歳までに夢を叶えたい」という目標を抱く人は多いのではなかろうか。主人公のジョナサンもそのひとりだった。そんなジョナサンが成功を掴むまでの道のりを描いたのが本作であるが、実はジョナサンは35歳で息を引き取っている。
しかも『レント』オフ・ブロードウェイ・プレビュー公演初日という夢が叶う瞬間に、だ。もちろん、彼自身は自分の寿命など知る由もなかったはずであるが、夢を追う過程で彼がいつも「時間に追われている」感覚と隣り合わせであったことはタイトルおよびこの映画の大きなテーマにもなっている。夢を取るか、安定をとるか、愛を取るか--。誰もが生きる上で悩んだことのあるテーマへの答えをNetflixを界してわたしたちはジョナサンに重ねてしまうのだろう。
第1位『シンデレラ』(Amazon Prime)
(C)Amazon Studios
今まででディズニーの長編アニメーション「シンデレラ」から派生してさまざまな形で実写化が試みられてきた。あえて声を大にして言いたい。2021年の『シンデレラ』は間違いなく過去最高の『シンデレラ』だ。
グラミー賞ノミネート歴を持つシンガーソングライターカミラ・カベロがシンデレラを演じるということで、その歌唱力が折り紙付きであることは想像に難くないだろう。本編中で歌われているカミラが書き下ろしたオリジナル曲「Million To One」の中毒性も高い。その上で、さらにこの『シンデレラ』は既存の物語をベースに独自のテーマを築き上げている。
この映画の中で最も驚いたシーンの中に、シンデレラの部屋からガラスの靴を見つけた継母が王子との結婚をシンデレラに頼み込む場面がある。しかも、シンデレラはそれを断る(物語終わっちゃうじゃん……!)。わたしの記憶の中にいるシンデレラは、意地悪な継母によってガラスの靴を持っているにも関わらず王子と引き剥がされそうになるはずだった。どうも様子がおかしい。
(C)Amazon Studios
今回のこのシンデレラは「結婚<仕事」という完全に晩婚タイプの女なのだ。さすがは『ピッチ・パーフェクト』の脚本家ケイ・キャノン 。精神的に自立した、強い女性を描くプロだと思った。
地位や周りに流されない、自分だけの幸せを探す旅へ観る者を導いてくれる。2021年公開のAmazon Prime版『シンデレラ』はなめてかかると火傷を負うくらい、凛々しくてキュートな史上最高の姫君を生み出した。
そんな『シンデレラ』に2021年公開のミュージカル映画の、堂々たる第1位を授けたい。
暗い時代を生き抜く光こそ、ミュージカルだ
2021年を振り返ると、まだまだコロナ禍から抜け出しきれない状況で多くのエンタメイベントが中止になった。予定していた海外への旅行が中止になった方も多いだろう。そんななかで観劇でありながらもおうち時間にも楽しめる『ミュージカル映画』の存在に救われた場面は多々ある。外国の彩り豊かな風景をバックに、強く生きる人々の物語は、私たちの心を掴んで離さない。
マスクなしの満面の笑みで歌い、野原を駆け巡る登場人物たちの姿はまさに2021年を明るく照らす光であったと言えるだろう。残り少ない2021年、まだ観ていない方はぜひ、この5本の映画とともに年越しを迎えてほしい。
(文:すなくじら)
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