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2021年も残りわずか。そろそろ年間ベストテン企画が出回る時期だが、単純なベストテンじゃあつまらない。「予告編と本編のギャップがすごい!」とか、「途中から映画のジャンルが別のジャンルへと越境する」とか、「このシリーズでこんなにやりたい放題やっていいの?」とか、ここでは「鑑賞者の想像斜め上をいく映画」ベストテンを勝手に紹介したいと思います。完全に筆者の独断と偏見による選考のため、異論・反論は認めません!では、第10位から。
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第10位『由宇子の天秤』
(C)2020 映画工房春組合同会社
今年度、最も衝撃を受けた邦画のひとつが、この『由宇子の天秤』(2021年)。女子高校生自殺事件を取材中のドキュメンタリー監督・木下由宇子(瀧内公美)が、隠蔽された真実を白日のもとに晒そうとする「正義の鉄槌を食らわす系映画」と思いきや、由宇子自身にものっぴきならない事情が発生して、右往左往。最終的には、彼女自身が究極の選択を迫られる。“正義”という曖昧模糊としたものの正体を暴く、社会派映画の新しいスタンダード・フィルム。
日本公開日/2021年9月17日
監督/春本雄二郎
出演/瀧内公美、光石研、河合優実ほか
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第9位『エターナルズ』
(C)Marvel Studios 2021
最近のMCU映画の中では、ぶっちぎりで斜め上だったのが『エターナルズ』(2021年)。監督は、 『ザ・ライダー』(2017年)が批評家から絶賛を浴び、『ノマドランド』(2021年)でアカデミー賞に輝いたクロエ・ジャオ。硬質なドキュメンタリー・タッチの作風がどうMCUと化学反応を起こすのかと思っていたら、神様同志の三角関係にキュンキュンすべき、直球ど真ん中な萌え映画だった。彼女は『スラム・ダンク』や『幽遊白書』が好きだと公言しているが、この作品はクロエ・ジャオのオタク気質が濃厚に刻印された、二次創作系ムービーなのでは。
日本公開日/2021年11月5日
監督/クロエ・ジャオ
出演/ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、アンジェリーナ・ジョリーほか
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第8位『Swallow/スワロウ』
Copyright (C) 2019 by Swallow the Movie LLC. All rights reserved.
大企業の御曹司リッチー(オースティン・ストウェル)と、玉の輿結婚を果たした新妻のハンター(ヘイリー・ベネット)。満ち足りた生活を送っているはずの彼女だったが、ひょんなことからビー玉だのガビョウだの異物を飲み込む“異食症”になってしまう。そして次第に彼女の精神バランスも崩れていって…と書くと、いかにも異常心理を描いたサイコ・サスペンスを想像してしまうが(実際にそのような要素も大きいのだが)、意外にも終盤はしっとりとした感動系にシフトチェンジ。通奏低音で流れている、男権的社会からの女性の解放というテーマも興味深し。
日本公開日/2021年1月1日
監督/ネイサン・ハルパーン
出演/ヘイリー・ベネット、オースティン・ストウェル、エリザベス・マーヴェルほか
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–{続いて第7位〜第4位まで発表!}–
第7位『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』
(C)2021 WBEI TM & (C)DC
ハーレイ・クイン(マーゴット・ロビー)、ブラッドスポート(イドリス・エルバ)、ピースメイカー(ジョン・シナ)、ラットキャッチャー2(ダニエラ・メルシオール)、キング・シャーク(シルヴェスター・スタローン)…。落ちこぼれヴィランたちが一致団結してミッションを遂行する、景気のいいアクション映画。と思ったら、クライマックスになると突然“怪獣映画”に様変わり!監督を務めたジェームズ・ガンといえば、特撮マニアで知られるオタク系。メイド・イン・ジャパン特撮映画へのリスペクトに溢れた、テンションアゲアゲの一作。
日本公開日/2021年8月13日
監督/ジェームズ・ガン
出演/マーゴット・ロビー、イドリス・エルバ、ジョン・シナほか
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第6位『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』
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シリーズ第一弾『ヴェノム』(2018年)は、監督ルーベン・フライシャーの作家性もあってしっかりホラー風味だったのに、アンディ・サーキスがバトンを受け継いだシリーズ第二弾『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2021年)は、まさかのコメディー路線。ニール・サイモンの戯曲を映画化した『おかしな二人』(1968年)を参考にしたこともあって、エディ(トム・ハーディ)とヴェノムのやりとりがひたすら楽しい。バディ・ムービーというよりも、むしろこれは倦怠夫婦のラブコメなのでは!?
日本公開日/2021年12月3日
監督/アンディ・サーキス
出演/トム・ハーディ、ウディ・ハレルソン、ミシェル・ウィリアムズほか
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第5位『東京自転車節』
(C)2021水口屋フィルム、ノンデライコ
スマートフォンとGoProで撮影しながら、青柳拓監督自らウーバーイーツ配達員としてコロナ禍の東京を駆け抜ける、社会派ドキュメンタリー。“宿無し金なし状態”の境遇をユーモアをたっぷりに描きつつ、終盤には青柳拓監督が狂気に蝕まれ、ジョーカーとして覚醒(?)する場面も。現在のTOKYOがもはやゴッサムシティであることを暴く、トンデモ展開に目を見張る。
この作品については解説記事も書かせていただきましたので、詳しくはコチラをどーぞ。
日本公開日/2021年7月10日
監督/青柳拓
出演/青柳拓ほか
第4位『Arc アーク』
(C)2021映画「Arc」製作委員会
ケン・リュウの短編SF小説を、『愚行録』(2017年)や『蜜蜂と遠雷』(2019年)で知られる石川慶監督が独特のタッチで映像化。人類で初めて不老不死となった女性リナ(芳根京子)の人生を描いているのだが、決して一大叙事詩的なスーパースケールの作品ではなく、むしろ非常にミニマルな手触り。そこに、極めて普遍的な親子の物語が折り重なっていく。温かくも不思議な余韻が残る、新しいヒューマンSF映画。
日本公開日/2021年6月25日
監督/石川慶
出演/芳根京子、岡田将生、寺島しのぶほか
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–{いよいよベスト3を発表!}–
第3位『サマーフィルムにのって』
(C)2021「サマーフィルムにのって」製作委員会
女子高校生がビッグバンドを組んでジャズを演奏する『スウィングガールズ』(2004年)、地方高校の弱小演劇部が全国を目指す『幕が上がる』(2015年)、天才少女が競技かるたに奮闘する『ちはやふる』シリーズ…。夏休みに仲間と自主映画に興じる『サマーフィルムにのって』(2021年)も、「女子高生がナニかに熱中して青春を燃やす」系映画なんだが、そこにSF的要素がミックスされているのがミソ。クライマックスでは「映画とは何か」という根源的な問いも突きつけてみせる、2021年を語るうえで外せない一作。
日本公開日/2021年8月6日
監督/松本壮史
出演/伊藤万理華、河合優実、金子大地ほか
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第2位『ファーザー』
(C)NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINE-@ ORANGE STUDIO 2020
認知症の兆候が見え始めたアンソニー(アンソニー・ホプキンス)と、その娘アン(オリヴィア・コールマン)との交流を描いた感動系ムービーに非ず。アンソニーの認知の歪みを、そのまんまスクリーンに映し出してしまおうとする、驚天動地の体感型映画。手触りとしては、記憶を10分間しか保てない主人公が、最愛の妻を殺害した犯人を探し出そうとする『メメント』(2000年)に近いかも。これが映画監督デビューとなるフローリアン・ゼレールの、卓越した手腕に脱帽。
日本公開日/2021年5月14日
監督/フローリアン・ゼレール
出演/アンソニー・ホプキンス、オリヴィア・コールマン、イモージェン・プーツほか
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第1位『マリグナント 狂暴な悪夢』
(C)2021 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved
んで、映えある第1位はこれしかないでしょう。我らがジェームズ・ワンの『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)。ダリオ・アルジェント監督の大傑作『サスペリアPART2』(1975年)を彷彿とさせる猟奇スリラーと思わせておいて、後半になると痛快すぎるアクション映画に変貌するという、「とにかく観てください!」としか言いようのない仕上がり。言いたいことはヤマほどあるけれど、ネタバレを回避しようとすると無言になってしまうのが口惜しい。まだ未見の方は今すぐ映画館に駆けつけて、“狂暴な悪夢”体験を心ゆくまで味わってください。
日本公開日/2021年11月12日
監督/ジェームズ・ワン
出演/アナベル・ウォーリス、マッケンナ・グレイス、マディー・ハッソンほか
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2022年も期待をたくさん裏切られたい
特に若い人のあいだでは、ネタバレサイトで内容を確認してから映画を鑑賞するという方もいらっしゃるようですが、筆者はできるだけ情報をシャットアウトして映画館に行きたいタイプ。だからこそ、勝手に妄想してたものとのギャップで衝撃を受けたりする訳で。
ではでは、2022年度「鑑賞者の想像の斜め上をいく映画」ベストテンで、またお会いいたしましょう!
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(文:竹島ルイ)