佐藤優樹が、卒業する。
最後に参加するシングルとなった2021年12月8日発売の「Teenage Solution」は、当て書きの曲ではないものの、彼女にとても合っている曲だと思う。そして、他の13人それぞれが新たな魅力を見せてくれた曲でもある。
本記事では、「Teenage Solution」MVの魅力や、この曲の佐藤優樹っぽさについて語らせていただきたい。
「Teenage Solution」MVの推しポイント解説
※筆者の独断です
佐藤優樹・15期メンバーを中心にしつつ、14人それぞれの見せ場がある素晴らしいMVとなっているので、それぞれ見どころをお伝えしたい。
ストリングスが効いた前奏に合わせ、二人一組になって踊るメンバー。踊るというか、フリーで音に合わせて動いているといったほうがいいだろうか。こういうフリーの動きが様になるのは、彼女たちのスキルのなせる業だと思う。
個人的に特に気になったのは生田衣梨奈(いくたえりな)のほぼ垂直なハイキックだ。濃いピンクにした髪がとても似合っているが、髪と動きがあいまって二次元のゲームに出てくるキャラのようだ。
彼女はもともと派手な色にしていたほうだが、去年あたりからモーニング娘。メンバーが派手な髪色を取り入れるようになってきて、個人的にはいい傾向だと思う。
歌い出しのほまめい(岡村ほまれ、山﨑愛生)、最年少のかわいい2人と思っていたけど、加入から2年以上経ち、こんなかっこいい表情もするようになったんだなと勝手に感慨深い気持ちになる。
その後ソロで「一人で居るの 何も怖くないし」と歌ってカーテンを閉めるのは同じく15期メンバーの北川莉央。もともと歌では目立っていたが、写真でもコンセプトによって印象が変わる彼女は、歌の主人公に合わせて演じ分けるのが上手だと思う。今後のパフォーマンスがどうなっていくのか、とても楽しみだ。
佐藤優樹を中心に並ぶのは年上組の譜久村聖(みずき)・生田衣梨奈・石田亜佑美・小田さくら・野中美希。一人で先にドアのほうに歩いて行ってしまう佐藤がちょっとさみしい。
ここからは中堅組のターン。ドアを開けて出てくるのは羽賀朱音と森戸知沙希。張りのある声で「逃げてるじゃない」と歌うのは加賀楓。2019年を最後に単独ツアーができていない彼女たちだが、この曲は中堅組が頼もしくなったことをあらためて感じる曲でもある気がする。
続く牧野真莉愛と横山玲奈のユニゾンだが、よこやんが歌っている下パート、女性が出すのは結構難しそうな低さだけど難なく歌っていてすごい。
今もハロコンは行われているが、年に2回大きなツアーがあった頃に比べるとメンバーの成長に気づく機会は減ってしまったかもしれない。もうかなり前のことのようで、早くあの頃に戻ってほしい。
「そう言って怒っている」でアップになる石田亜佑美の顔がいい。MVというよりドラマのワンシーンのようである。そういえばあゆみん、演技がうまかったな。ここ数年モーニング娘。の演劇女子部はないけれど、またお芝居もやってほしい。
二列に並んでのサビはこれがモーニング娘。’21だ!という感じで圧巻である。特に前列センターの牧野真莉愛、首をぐるんとまわす動きが誰よりも激しくていい。
間奏、背中合わせで逆の方向を見る10期(石田亜佑美・佐藤優樹)を見るとまーちゃん卒業後は同期の2人の道が分かれるのだなということが連想され、胸が苦しくなる。
工藤遥・飯窪春菜が先に卒業し、モーニング娘。に残った2人。ついに10期はあゆみん一人になってしまうんだな。いちばんはじめが最年少のハルちゃんだったこともびっくりしたけれど、ハルちゃんと同い年のまーちゃんがあゆみんより先に卒業するとも思っていなかった。いつも卒業は突然で予想なんてできないけれど、どのタイミングでもさみしい。
そして二人の後ろで後ろを向いていたリーダー・譜久村聖が振り返って歌いながらこちらに歩いてくるのも最高にかっこいい。しっかりとした歌と柔らかさや母性を感じさせるパフォーマンスの印象があったふくちゃんだが、この曲ではシャープな強さを感じた。
Bメロでは1番と同じく、佐藤優樹をセンターに、後ろに中堅5人(牧野真莉愛・羽賀朱音・森戸知沙希・加賀楓・横山玲奈)がずらっと勢揃いしている。
1番といい2番といい、美少女戦士(女戦士?)感があっていい。歌いはじめのまーちゃんのターンもいい。
そして後半のまーちゃんソロがめちゃくちゃまーちゃんでたまらなかった(何を言ってるかわからないと思うが……)。
「それでもみんなの空気とかをなんとなく
気まずくさせちゃっているなら
やっぱし私 お部屋にいるし」
まずこの歌詞、すごくまーちゃんっぽいなと勝手に思った。
誤解を恐れずに言えば、佐藤優樹はちょっと独特の感性を持ち、常識が通じないところがある女の子だった。同期の飯窪春菜や11期の小田さくらが「破天荒で会ったことがないジャンルの人」「こんな人会ったことがない」と言っていたほどだ。一方で「天才」とも言われていた。
その唯一無二さやパフォーマンスはファンをも惹きつけ、モーニング娘。でもハロプロ全体でも圧倒的な人気を誇るメンバーの一人だった。
自由奔放なように見えて実はいろんなことを考えている人でもあり、卒業が決まった際のコメント「ただ、やはり私はこの歳になっても迷惑を掛ける子なんだと、じわじわ実感しています。」という言葉にも、それが表れていた。
「いるならやっぱし私 お部屋にいるし」の途中までおやすみみたいなポーズを作って笑顔なのに、フッと笑顔が消え、真顔になるのもたまらない。そしてその後また一瞬作り笑いして真顔に戻る。
歌詞といい表情といい、佐藤優樹を見せつけてくれたなと思った。
そしてこういう周りを傷つけてしまう自分に傷つく、みたいな感情、自分も10代の頃にあったなと思う。つんく♂さんの歌詞、やはり女性を共感させる力がある。
「自分でも嫌(や)なの」ののりおめいハモりもいいし、「楽しみたいし」の小田さくらのソロもいい。続いて歌うのは野中美希。ソロフェス2でのMVP獲得・ご褒美として作った特番ではメンバーそれぞれの良さが際立つプログラムを組み、自身が作詞作曲した曲を披露したのが記憶に新しい。北川莉央のセリフ「語りたい」もいい。
「こうノックしてくる」で実際のノック音が入っているところもたまらない。
ピアノの音とともに、冒頭の続きのような映像が流れる。一人向こうを見る(表情は見えない)佐藤優樹と、見下ろす15期3人の映像。3人は手をつないでいる。ここもまた、一人旅立つまーちゃんと、これからモーニング娘。を作っていく3人の対比のように見えてギュッとなった。
大サビの「誰にも解けない」はまーちゃん一人。何にでも答えが出るわけじゃないよな、と思う。この状況だってそうだ。
「見つかりっこない」でおださくが目を覆いながら歌う表現、好きだ。
そしてラストの「今は無理みたい…」もまーちゃんソロで終わる。
10年間のシングル、最後に歌う歌詞が「今は無理みたい…」なのか(トリプルA面なのでどれを最後とするかという話もあるが、一旦置いておく)。いろんなことを考えてしまう歌詞だ。
–{「Teenage Solution」が佐藤優樹っぽいと思う理由}–
「Teenage Solution」が佐藤優樹っぽいと思う理由
このたびの卒業について経緯を知らない方のために簡単に説明しておく。
2月から続いている過敏性腸症候群により、佐藤優樹はほとんどのコンサートをキャンセルせねばならない状況が続いていた。
これ以上メンバーに迷惑はかけられないため、モーニング娘。としての活動に区切りをつけ、体調を直し、また音楽活動を続けたいという決断に至った。
詳しく知りたい方は、こちらのページにコメントが載っているので読んでほしい。
本人がいろいろなことを考え、前向きに決断したことだ。もちろん応援している。だが、病気のことも世の中の状況のことも、もしそうではなかったらと、少なからず悔しい気持ちを感じてしまう卒業ではある。
この曲は、彼女の卒業が決まる前に作られた曲だったため、当て書きで作られた卒業ソングではない。卒業がなければタイトルの通り10代、特に最も直近(2019年)に加入した15期メンバーメインの楽曲となっていただろう。実際、15期メンバーの3人、北川莉央・岡村ほまれ・山﨑愛生(めい)もフィーチャーされている。
希望を言えば、つんく♂から宛書きの卒業曲を作ってあげてほしかった。そう願ってしまうのは、ファンなら願って当然のことだと思う。実際同じ10期の工藤遥はつんく♂作詞作曲の「若いんだし!」また同時にA面となった「邪魔しないで Here We Go!」もつんく♂自身が工藤の卒業の話を聞いて仕上げたと言っている。飯窪春菜はつんく♂作詞作曲ではないものの、「Y字路の途中」という曲をもらっている。今回の状況とタイミング的に難しかったと思うので、仕方ないことだとはわかっているが、残念に思ってしまう。
だが、聴けば聴くほどこの「Teenage Solution」は佐藤優樹にふさわしい曲ではないかという気もする。彼女は現在22歳だが、今もなお無邪気で純粋な部分を持っており、ある意味10代の権化のような存在だし、12歳でモーニング娘。に加入してから10年、10代のほとんどといっていい時間をモーニング娘。で過ごしたメンバーでもある。「Teenage Solution」は直訳すると10代の解決法、意訳すると10代に蹴りをつける、みたいな捉え方もできるかなと思う。
そしてまーちゃんは、活動の中で答えを探し続けていた人でもあるように思う。どうしたらつんく♂さんの楽曲をよりよく表現できるのか。「つんく♂さんの楽曲を深く知りたい」「つんく♂さんの考える音楽に近づきたい」と音楽大学に進んだほどだ。
その答えはモーニング娘。にいる中で見つかるのかなと思っていたけど、「誰にも解けない」「(答えを出すのは)今は無理みたい…」という意味だと考えると、未完成で卒業していくのもそれはそれでいい気もするのだ。
コンサートでのまーちゃんを思い出すと、調子のいいときと悪いときのブレが結構あるタイプだったと思う。でも安定しないからこそ、こちらの予想を超えたパフォーマンスを見せてくれる人でもあったと思う。不安定で未完成なところこそ、佐藤優樹の魅力のひとつだったと思う。
これからは、まーちゃん一人で答えを探していく。そう思うとちょっとワクワクする。そんなこれからのまーちゃんのことも、全力で応援したいし、楽しみだ。
(文:ぐみ)
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