<アバランチ>最終回までの全話の解説/考察/感想まとめ【※ネタバレあり】

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綾野剛主演のドラマ「アバランチ」が2021年10月18日に放送開始した。

カンテレ・フジテレビ系で月曜夜10時の新たな連続ドラマ枠がスタート。第1作目となる本作は、破天荒な謎の集団“アバランチ”の活躍を描くピカレスクエンターティンメント。7年ぶりのフジテレビ系連ドラ主演となる綾野剛が主人公・羽生誠一を演じる。共演は福士蒼汰、千葉雄大、高橋メアリージュン、田中要次、利重剛、堀田茜、木村佳乃ら。

cinemas PLUSでは毎話公式ライターが感想を記しているが、本記事ではそれらの記事を集約。1記事で全話の感想を読むことができる。

もくじ

・第1話ストーリー&レビュー

・第2話ストーリー&レビュー

・第3話ストーリー&レビュー

・第4話ストーリー&レビュー

・第5話ストーリー&レビュー

・第6話ストーリー&レビュー

・第7話ストーリー&レビュー

・第8話ストーリー&レビュー

・第9話ストーリー&レビュー

・第10話ストーリー&レビュー

・「アバランチ」作品情報

第1話ストーリー&レビュー

第1話のストーリー

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「東京の新たな大規模都市開発プロジェクトのリーダーが謎の失踪」。そんなニュースが報じられる中、警視庁捜査一課から左遷された西城英輔(福士蒼汰)は、誰も寄り付かない地下室に設けられた新たな配属先を訪れる。「特別犯罪対策企画室」と記された扉の先にいたのは、室長・山守美智代(木村佳乃)ただ一人。ここで自分は何の仕事をするのか? 状況が飲み込めない西城は山守に命じられるまま、とある雑居ビルまで山守を車で送り届ける。

山守から車での待機を命じられたものの、興味本位でビルのエントランスまで出てきた西城は、郵便ボックスに記された見慣れないマークを見つけた矢先、羽生誠一(綾野剛)から声をかけられる。初対面のはずなのに西城の素性や経歴を知り尽くした羽生は、薄気味悪さを感じる西城を尻目にビルの階段を上っていった。

その後、ビルの一室に集結した山守、羽生、牧原大志(千葉雄大)、明石リナ(高橋メアリージュン)、打本鉄治(田中要次)の5人。「みんなそろったわね。では始めましょうか」。モニターに映し出されたのは、例の失踪事件のニュース。山守の一声で始動したアバランチが起こす行動とは——?

第1話レビュー

迫力あるアクションに、少し薄暗い空間、タバコがジジッと音を立て火の色を明るくする。画面から不穏さが漂う、新ドラマだった。

フジテレビの月曜22時と言えばバラエティ、というイメージが強い。その枠で初回となるドラマは一体どんな作品なのか。具体的な作品な内容が明かされていなかったこと、意味深な予告映像で期待は高まるばかり。逆にこの期待に応えてくれるのか、と不安になったが、杞憂に終わった。

綾野剛演じる主人公・羽生が所属する謎の集団・アバランチ。そのアバランチに仕事を依頼するのが、警視庁特別犯罪対策企画室・室長の山守だ。今回の依頼は、行方不明となっている大規模都市開発プロジェクトリーダー・風間の生死の確認。そして生きているならばどこにいるのか。山守の指示のもと、アバランチが動き出す。

シリアスで影のある笑みを浮かべる綾野剛。おちゃらけたことを言っていても影がある。『MIU404』で演じていた伊吹のような光がない。けどいい。
サイバー班の牧原大志を演じるのは千葉雄大。基本はアジトで遠隔による仕事のようだ。仕事の腕はピカイチのようで、羽生たちに何度となく感嘆の声をあげさせていた。笑顔と話し方がかわいく、これぞ千葉雄大! と思わせつつも、この人も絶対に何か抱えているな……ということは想像に難くない。

明石リナを演じるのは高橋メアリージュン。人妻も、頼りになる会社の同僚もいいけれど、強い高橋メアリージュンは問答無用でカッコイイ。特殊部隊にいたそうで、アバランチの中で一番強いのかもしれない。

一癖も二癖もありそうなメンバーの中で、一番、常識人間っぽく見えるのが田中要次演じる打本。でももう分かっている、アバランチにまともな人はいないだろうし、何かしらを抱えているであろうことは。

そんな中に紛れ込んでくるのが福士蒼汰演じる西城だ。警視庁捜査一課から特別犯罪対策企画室に左遷され、成り行きでアバランチの存在を知ることになる。あっというまに拘束される身になるあたり、作中でどういったポジションなのかが伺える。
最初はアバランチがやっていることに異論を唱えるものの、1話ラストでは見守ることを宣言していた。これからどのように役割が変化していくのか気になるところだ。

風間の安全の確保、風間を誘拐した黒幕の悪事を暴き、生配信で世界に発信したアバランチ。今回の依頼は解決したものの、その根底では別の事件の解決を目指していることは確かだ。羽生が過去に公安だったことは示唆されている。山守はそのときの事件の真相を探ろうとしているのか。
これからどのよう物語が展開していくのか楽しみだ。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第2話ストーリー&レビュー}–

第2話ストーリー&レビュー

第2話のストーリー

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山守(木村佳乃)は、半年前に転落死した夏川洋子(中島亜梨沙)についての調査をアバランチメンバーに命じる。東南アジアの開発途上国支援に精力的に携わってきた彼女の死について、警察は残された遺書の存在から自殺と断定するが、山守の調べでは不審な点やある大物政治家との関係が疑われていた。

夏川の身辺を調査するうちに、死の直前までやり取りをしていた永井慎吾(久保田悠来)というジャーナリストの存在を知った羽生(綾野剛)、西城(福士蒼汰)、リナ(高橋メアリージュン)は彼の自宅に向かうが、予想外の事態に遭遇する。一方、その頃、大山(渡部篤郎)は内閣情報調査室のエース・桐島雄司(山中崇)を呼び出し、アバランチについての調査を依頼していた。

次第に明らかになっていく夏川が近づいていった“大きな闇”。そんな中、牧原(千葉雄大)はこの事件に対して、メンバーの中でもひときわ特別な感情を抱いていた…。

第2話のレビュー

少しずつ、メンバーたちが「なぜアバランチにいるのか」が明かされていくのだろうか。

今回、アバランチが調査することになったのは半年前に転落死した夏川洋子。しかし、初動から牧原の様子がおかしい。1話でのニコニコ笑顔が揺らぎ、駄々っ子のように感情をあらぶらせる。そんな牧原の肩を抱き、どうしたのか問いかける羽生。優しいトーンの声にグッと来る。なだめるわけでもなく、問い詰めるわけでもなく、胸のつかえをとってやろうとするかのような話し方だ。
ためらいながらも牧原が口にしたのは、夏川が自分の姉だということ。その姉の無念を晴らすためにここにいる、と話す。

だからと言って、大きくアバランチのテンションが変わらないというのが彼ららしいところなのかもしれない。
そんな中で動揺し、同情するのが西城だ。スペシャリスト揃いで常人離れした感覚を持っているアバランチの中で、西城の反応は一番常識人に近い(警視庁の人だけども……)。いまのところあまり戦力になっていないように見えるが、「それは違うのでは?」「どうしてそんなことをするんですか?」と視聴者側の疑問を投げかけるようなキーパーソン的な立ち位置にいると言ってもいいのかもしれない。
最近は「強い福士蒼汰」を見ることが多かったので、へっびり腰で「えーっ!? えーっ!?」と言いながらオロオロする姿はなんだか新鮮だ。

その一方で、羽生の落ち着きっぷりは恐ろしささえ感じる。1話冒頭――爆破事件が起きたときの羽生はもっと熱く、無鉄砲なところがあるように感じられたが、そういった部分がそぎ落とされているように思う。が、冷静さと洞察力は並外れているものがある。
重要人物のマンションを訪れ、そこですれ違った引っ越し業者に違和感を覚える。だいたい、「あそこで気がついていれば!」と後悔する場面なんだが、そういうところがスルーされない。証拠は確実に掴み、黒幕を追い詰めていく。

思っていたより話のテンポが速い。アバランチの正体を突き止めようとしている内閣官房副長官の大山は、すでにその尻尾を掴みかけている。
大山はあの爆破事件にも関わりがあるようだし、今回はラストに牧原が距離はあるものの大山と対面している。そして意味ありげな牧原の笑み。最終的な敵は大山なのか、それともさらに“何か”があるのか。
この物語、一筋縄ではいかなそうだ。二転三転を覚悟しておいたほうがいいかもしれない。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第3話ストーリー&レビュー}–

第3話ストーリー&レビュー

第3話のストーリー

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六車(板尾創路)と黒田(嶋田久作)の汚職を暴いたものの、黒幕である大山(渡部篤郎)がなかなか尻尾を出さないことを受けて、山守(木村佳乃)は、各界の超VIPが通う高級会員制サロン・悠源館を経営する黄月蘭子(国生さゆり)に次の狙いを定める。蘭子は、悠源館で交わされた密約や談合といった情報を利用し、総理大臣の郷原(利重剛)の信用をも得ていた。山守は、蘭子が隠し持つと言われる極秘情報が詰まった通称「Kファイル」を手に入れ、裏で糸を引く大山をあぶり出そうと考えたのだ。

牧原(千葉雄大)でも手出しできないほどのセキュリティーが導入されている悠源館に、身分を偽ってホステスとして潜入することになったリナ(高橋メアリージュン)。ここ数年、従業員のホステスが何人も不審死を遂げている悠源館に対し、リナはある特別な思いを抱えていた。そんなリナの怒りと悲しみを察した羽生(綾野剛)は、彼女を心配するが…。

その頃、西城(福士蒼汰)からアバランチの真の目的を問い詰められた山守は、3年前に起きた事件について語り始める。その一方で、アバランチの正体を突き止めようと暗躍する大山の手が、山守のすぐそばまで伸びてきて……。

第3話のレビュー

今回、メインとして描かれたのは元自衛官の明石リナだ。

各界の大物が通う高級会員制サロン・悠源館。高いセキュリティーが導入されていることもあり、リナがホステスとして潜入することになる。ここでは大物たちが密談を交わしており、悠源館の経営者である黄月蘭子はその情報を握っていたのだ。
実は、リナの友人・花音もかつて悠源館で働いていたが、違法ドラッグを服用し苦しんだのちに自殺していた。その死に悠源館が関わっていたことは明白で……。

普段はクールなリナ。今回もその表情を崩さない。ただ、どこか不気味さを感じさせる。潜入のために受けた面接では、ニッコリと笑顔を張り付け、全く感情が読めない。なんというか、目に表情がないのだ。動揺などが出てこず、サイボーグみがある。だからこそ、感情を爆発させたときとのギャップが激しい。ゾッとしてしまうが、こうさせたのは悠源館を経営している蘭子――。リナを通してその罪を表現しているかのようだ。
そしてそんなリナを抱き寄せる羽生の包容力よ。いまは優しい表情を見せることが多い羽生だが、リナ以上にギャップがありそうだ。今はまだ怒りを溜めこんでいるような雰囲気さえある。

また、第3話にして活躍の場ができたのは西城だ。アバランチの面々が入り込めないところに、警察手帳を使って侵入。監視カメラの映像をゲットしてくるわけだが、わかりやすいドヤ顔がかわいい。ピリピリしている作中で西城は毎回、数少ない和みポイントになっていのかもしれない。
ただ、西城って嘘がつけなさそうというか、ポーカーフェイスが装えなさそうというか……。不用意にアバランチのほころびにもなりそうでソワソワする。

そして、内閣官房副長官の大山もアバランチの調査を進めている。内閣情報調査室の山中がアバランチの情報を集め、その確信に迫ろうとしているのだ。3話ラストでは、アバランチが使用している車両のナンバーも掴んでいた。彼らが能力は高いけれど、プロではないことも把握済みだ。山中は「大山に恨みを持っていそうな人間のリスト」も用意していた。その中には山守や牧原たちの名前も……。

第4話では、さらに大山がアバランチに肉薄しそうだ。早くもひとつの山場を迎えそうである。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第4話ストーリー&レビュー}–

第4話ストーリー&レビュー

第4話のストーリー

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蘭子(国生さゆり)に接触した羽生(綾野剛)は、リナ(高橋メアリージュン)が体を張って手に入れた動画で蘭子が管理する“Kファイル”を渡すよう、取り引きを持ちかける。悠源館の実態が公になれば、築き上げてきた地位や名声を失うが、かといって簡単にファイルを渡すわけにはいかない。焦る蘭子がとった行動が、大山(渡部篤郎)も巻き込み、山守(木村佳乃)も予想していなかった事態に発展する…。

一方、打本(田中要次)は、大山とも懇意の仲で、長年にわたり関東医師連合の会長を務める神崎龍臣(中丸新将)に目をつけていた。神崎の病院に向かった打本とリナは、ある女性が患者の治療の優先順位を巡って医師に詰め寄る現場に出くわす。

「いよいよ俺の出番」と意気揚々と作戦に当たる打本。その過去を山守から聞いた羽生、西城(福士蒼汰)、牧原(千葉雄大)は驚きの声を上げる…。さらに、山守は大山を切り崩すため、西城に大山の秘書で大学の同級生でもある優美(堀田茜)に近づかせるが…。

第4話のレビュー

穏やかそうな人が実は一番やばかったりする。

1話完結かと思われていたアバランチ。先週、初めて週をまたいだ悠源館の話は、経営者の蘭子が内閣官房副長官の大山に切られることで終結した。
羽生も飄々としているんだけれど、大山のつかみどころのなさよ。なにを考えているのかわからない、感情が見えない。情などあるのか? と思ってしまう。潜り抜けてきた修羅場が違うのか、重ねてきた年齢のせいか。

一方、アバランチの中で年長者と言えば、打本だ。リナも牧原も大切な人を失ったという経験があった。それなら、打本も……おまけに意味ありげに墓参りのシーンもあった。が、実は打本、山守のスカウトだったという。
打本は元警視庁の爆弾処理班のメンバーだった。直属の上司が暴力団から賄賂を受け取ったことが許せず、横流しされたものが載っている上司の車を爆破し、首になっていたのだ。
そう、アバランチの中でも特にぶっ飛んでいる人物と言える。

しかし、当の打本は非常に穏やかだ。次のターゲットである関東石連合の会長・神崎に近づくために病院へと向かうが、そこでも看護師さんと仲良さげな様子。強面だが、ニコニコと物腰が柔らかい。
今回の事件には特に気合いが入っているようだが、「いつも羽生がいいところを持っていく…」としょんぼりしたりと、なんだか憎めない。親しみが持てる。
それでいて熱い一面を見せたり、「仲間っていいもんだな」と語ったり……。上司の車を爆破するというのはなかなかにヤバイ行動だ。しかし、悪事が許せなかったという点で、他の人よりピュアなのかもしれない。

今回も爽快に悪事を暴き、動画で発信したわけだが、大山もアバランチの正体を追い詰めるために本気を出している。大山からアバランチの調査の命を受けている桐島がリナの存在を突き止める。それぞれの現場から髪を採取していたなんて、捜索への執着がすごい(長い髪は落ちていると見つけやすいとは言え)。
ここから、徐々に切り崩されていくことになるのか。
また、週刊誌の記者がアバランチの動きに注目し、調べてみようとしている。どうやら、スクープを飛ばしているらしい記者だし、アバランチにはどちらかというと良い感情を抱いてなさそうだ。今後どのように物語と関わることになるのか気になるところだ。

初回では完璧な集団のように見えたアバランチだけれど、ところどころに隙が見える。その隙はなんのためにあるのか。
来週はアバランチ結成の秘密が明らかになりそうだ。どんどんアバランチの深部にハマッていく西城のこれからについても気になる。

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–{第5話ストーリー&レビュー}–

第5話ストーリー&レビュー

第5話のストーリー

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「もう戻れないぞ」。西城(福士蒼汰)を前に、羽生が語るアバランチ発足の理由と真の目的とは――?

3年前、日本で開催される国際会議を前に、国際テロリスト集団からの爆破予告に対し、官邸は対応に追われていた。大山(渡部篤郎)が警備局長としてトップに立つ公安部はいち早くテロリストの潜伏先を確認するものの、情報提供者が拘束されてしまう。情報提供者の救出作戦にあたった公安部外事三課の羽生(綾野剛)は先輩の藤田高志(駿河太郎)の静止を振り切って現場に突入するものの、それは仕組まれたワナで…。

テロリストによる爆発から奇跡的に命を取り留め、病院で目を覚ました羽生を待ち受けていたのは過酷な現実だった。失意の中、警察を辞めた羽生は、和泉卓司(森下能幸)が営む小さな町工場で働き始める。娘のあかり(北香那)は不条理な手段で工場を切り盛りせざるを得ない父親に反発し、羽生の前で怒りをあらわにするが、もはや正義の力など信じられない羽生は心ここにあらずだった。そんな矢先、羽生の居場所を追っていた山守(木村佳乃)が工場を訪れて……。

第5話のレビュー

今回明かされたのは羽生と山守の過去、そしてアバランチが結成されるまでの過程だ。

時は3年前。公安部外事三課に勤務していた羽生。山守は羽生の先輩である藤田の婚約者だ。羽生の誕生日を祝う藤田と山守。幸せな光景だった。
しかし、その直後、拘束された情報提供者の救出にあたった羽生と藤田は、現場で爆発に巻き込まれる。爆発は罠だったわけだが、藤田が止めるのを聞かず突入したことを悔いる羽生。何より、藤田を含めた5人が爆発で亡くなったことに、羽生は大きなショックを受けていた。

その後、警察を辞め、アバランチを結成するまでの羽生の姿がまるっと1話分かけて丁寧に描かれる。
熱くてやんちゃだった公安時代の羽生。警察を辞め、自分の無力を痛感し、生きる気力をなくした状態で勤めていたのは小さな町工場だった。
公安時代も、アバランチが始まってからも、常にギラギラしたものがチラついていたが、町工場で働く羽生にはそれがない。背中を丸め、声も小さく、覇気がない。……が、どの羽生もあまりに綾野剛すぎてたまらない。

町工場では、工場長が仕事を受けるために取引先の担当者にお金を渡していた。それに怒る工場長の娘・あかり。「こんなのはおかしい!」と声をあららげるあかりに、「世界は正しいことだけで回っているわけじゃない」と羽生は無気力に答える。
町工場を訪れた山守に協力を頼まれても、羽生は動かない。

そんな羽生の心を動かしたのはあかりだった。取引先の担当者のもとを訪れ、父親に謝れ、金を返せと迫る。もちろん、返すはずがない。殴られ、蹴られ、ボロボロの状態で戻ったあかりだったが、彼女は動画を撮っていた。自分に暴力をふるう男の姿を。
弱弱しく微笑みながら「正義は勝つよね」というあかりに、羽生は感銘を受ける。
正義は何の役にも立たない。一度、そう思ってあきらめた羽生だったが、再び、その瞳に光が灯る。

悪を暴いた動画を撮り、公開するのはあかりの行動がヒントになっているのだろうか。町工場での時間を経て、「アバランチ」の羽生があるのは確かだ。

今回、大山が黒幕であることはより明確になった。さらに大山を追い詰めるべく、アバランチは動く――が、大山も反撃に出る。
テロ事件の容疑者として羽生が指名手配される。そして、アバランチを追う週刊誌の人間が牧原に迫る。
ここから、アバランチはどう動くのか。アバランチの正体に迫った内閣情報調査室の山中は、想像していたよりも山守と距離が近しいように見えたけれど、何か裏があったりしないだろうか。大山に恨みがある人物のリストアップも、優秀だから、だけではないような気もする。

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–{第6話ストーリー&レビュー}–

第6話ストーリー&レビュー

第6話のストーリー

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3年前、多くの犠牲者を出した偽装テロ事件を足掛かりに、権力の階段を上っていく大山(渡部篤郎)。大きな野望を胸に秘めた大山が画策する“次なる最悪の一手”を防ぐため、羽生(綾野剛)たちはキーマンである元公安部長の戸倉(手塚とおる)への接触を図る。しかし、これまで情報収集に徹していた大山も、ついにアバランチに対して反撃に出て…。

そしてある日、日本列島に緊急ニュースが流れ込む――。アナウンサーが報じたその内容は、「警視庁が、アバランチのメンバー・羽生誠一容疑者をテロ事件の容疑者として全国に特別指名手配」。

羽生の身に一体何が? ついに、アバランチと大山の正義がぶつかり合う壮絶な戦いの幕が開く。

第6話のレビュー

今週から2部に突入。
冒頭から羽生の指名手配。アバランチのアジトへの家宅捜索。と、怒涛の展開だ。

なぜそんな事態になったのか。
時間は遡り、2週間前。

事態は一気に動き出す。
情報屋で、羽生を裏切り、仲間を殺したアルベルト・ガルシアが海外逃亡から帰国。そして彼に関連する人物として浮かび上がったのが神奈川県警の刑事部本部長。西城の父親だ。元公安部長で羽生の元上司である戸倉が接触し、アルベルトを確保するように指示したのだ。

当然、西城は大きな動揺を見せる。少しでも力になれれば、と自ら協力を申し出るが、自分は山守に利用されたのではないか、と思ってアバランチから降りると宣言。
父親を尊敬していて、父親のような刑事になりたいと思っていた西城。アバランチと父親の間で揺れる。

一方、アルベルトは羽生にコンタクトをとる。戸倉に騙されたのだということ、羽生に会うために日本へ戻ってきたということ。
しかし、アルベルトは県警に確保され、大山が手配したという極東リサーチに引き渡されてしまう。
その現場にアバランチも乗り込み、アルベルトを助けようとするが、極東リサーチはプロの集団。やり方がえげつない。
しかし、車にひかれても生きている羽生……。その上で殴り合いして走るトラックにつかみかかるってどんな身体能力なんだ……。

今回、大きな動きを見せたのは戸倉だ。アルベルトに戻ってこられるのはまずい、どうにかして処理しなければ、と焦りを見せる。
しかし、アルベルトを確保したことによって、彼から「羽生」の名前が引き出されてしまった。
羽生の行方を追い、アバランチ前に勤めていた工場を訪れるなど、執着を見せる。

ここで先週登場したあかりが出てくるのがいい。
「どこに行ったか知らない」「携帯の番号も変わってて繋がらない」とシレッと戸倉に答えたあと、羽生に電話しているのが好きすぎる。
「靴がきれいな刑事なんてろくなやつじゃない」と言い放ち、「いつも配信見てるよ」ですって……。全て知っていた上であの振舞い、たまらない。

「立場が変われば正義が変わる」と言ったのは西城の父だ。
毎日、父の汚れた靴を磨く母の姿を見ていたという西城。靴の汚れを気にする戸倉とは違い、確かに西城の父は尊敬する警察官の姿だったのだろう。
立場が変わったことによっていくらか変形してしまったのか(見た感じ、悪い人には思えない)。
その姿を見た西城はどういう判断を下すのか。

迷う西城を迎えに来たのは羽生。
「自分の正義は自分で決めてよ」
同じ警察官として、羽生と西城が出会っていたら、どのような関係になっていたのだろう、とふと考えてしまう。

寂れた港で海をバックに煙草をくわえて「世界は想像以上に残酷だ」と言う綾野剛が200点満点だった。
2部に入って、スピード感はさらにアップ。「これは本当に日本だろうか」と思わせられる画角がグッとくる。
同時に綺麗じゃないばかりの世界は、考えさせられる部分も。

追い詰めるはずが逆に追い詰められているようにも見えるアバランチ。
次回はどのように動くのか。そしてどのように羽生の指名手配へとつながるのか。

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–{第7話ストーリー&レビュー}–

第7話ストーリー&レビュー

第7話のストーリー


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公安時代の上司・戸倉(手塚とおる)と素顔で対面した羽生(綾野剛)。ドローンカメラを通じて、山守(木村佳乃)らがその模様を見守る中、3年前に5人の仲間を死に追いやった偽装テロ事件の真相と、黒幕である大山(渡部篤郎)の真の狙いについて証言するよう迫る。しかし、戸倉はその答えの代わりに、「3年前の事件を終わりにしよう」と銃口を羽生に向けて…。

日本版CIA創立のため、犠牲や手段をいとわない大山によって張り巡らされていくアバランチ包囲網。正義のヒーローから一転、テロリストとして非難の的となっていく彼らが打つ、次なる一手とは?

第7話のレビュー

大山が怖い、怖すぎる。

公安時代の上司である戸倉と対峙した羽生。3年前の偽装テロ事件の真相、そして大山のたくらみについて迫る羽生だったが、戸倉は何者かによって狙撃される。

アバランチは戸倉殺しの犯人としてテロリスト扱いに。
更に、アバランチのチャンネルも乗っ取られ、極東リサーチによってフェイク動画を流される。
世の中のヒーローだったはずのアバランチは一気に凶悪犯と認識されてしまう。
そして、SNSにまことしやかに流れる「アバランチ、総理大臣暗殺説」。明らかに大山側が意図して流したものだが、アバランチはそれに乗ることにする。総理大臣を助けるために。

アバランチが動かず、総理大臣が殺されても彼らの罪になる。ならば、アバランチが総理を助けてしまえ、という考えである。
もちろん、大山は想定済み。むしろ、エサとしてちらつかせていた。アバランチは、総理を誘拐するというアイディアで、大山側にとっての想定外を引き起こす。しかし、それも大山にとっては些末な問題。

総理大臣暗殺を目論むスナイパーを確保しようと、リナと現場に向かった牧原が極東リサーチに捕らわれる(おまけにスナイパーは逃げたあとだった)。山守は大山にお茶に誘われ、その身柄を“拘束”される。
ある種、2人はアバランチの頭脳だ。そんな中、アバランチを騙る極東リサーチは民間人も巻き込んだ爆破を匂わせ……。

気になるのは牧原を拉致した理由だ。
極東リサーチは、牧原を拉致するため、計画的に動いていたように見える。大山側はアバランチのメンバーを把握している。その中で、拉致しやすいのは牧原と考えたのだろう。
牧原からアバランチの情報を得ようとしている可能性もあるが、おおよそのことはすでに把握されているようにも思う。
羽生たちとの交渉の材料にするのだろうか。
あとは牧原が実は大山側の人間だった、という可能性がなくもない。が、イマイチ、スパイの必要性が感じられない気もする。とはいえ、2話のラストで牧原が大山に微笑みかけるシーンもあった。何かしらの繋がりはあると考えるのが妥当?

日本をさらに強固な国にするために偽装テロを起こし、その罪をアバランチになすりつける。次回予告で大山が羽生に手を組まないか、と提案しているシーンがあったが、大山は一体アバランチをどうしたいのか。
アバランチは大山の手のひらで踊らされているように見えるが、打開策は?

これまでも、要所でアバランチの詰めの甘さというものが見てとれた(序盤でそのためプロの集団ではないと判断されている)。このままだと、追い詰められるばかりのように思う。
もしかすると、アバランチの“外”にいる人間たちの動きが鍵になるかもしれない。
大山の指示を受けて動いている内閣情報調査室の山中、アバランチを追う記者、西城の父。彼らにはそれぞれの正義がある。自分たちの正義のために、今一度動き出すか。

いま、アバランチの計画が雪崩を打って崩れて行っているが、彼らの想いで周りに雪崩を起こせるのだろうか。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第8話ストーリー&レビュー}–

第8話ストーリー&レビュー

第8話のストーリー

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牧原(千葉雄大)が大山(渡部篤郎)直轄の秘密組織・極東リサーチによって拘束された。動揺する山守(木村佳乃)が次の手を考えているところへ大山が現れ、山守は身動きがとれなくなってしまう。さらに、アバランチの名を語る偽の集団が新たな予告動画をアップ。それは、山守や西城(福士蒼汰)がいるイベント会場の爆破をにおわせる内容で、リナ(高橋メアリージュン)たちはアバランチを呼び寄せるための大山の罠だと勘ぐるが、それでも、テロによって人命が奪われることを避けたい羽生(綾野剛)は、急いで会場へ向かう。

爆破予告時間が迫るなか、西城と打本(田中要次)は会場に仕掛けられた爆弾を探し、羽生とリナは牧原の救出を急ぐ。一方、大山からある動画を見せられた山守は、映像を見て思わず息をのんで…。

第8話のレビュー

一瞬たりとも、気が抜けない第8話。

大山の管轄下である秘密組織・極東リサーチによって拘束された牧原。
山守は大山からの“お茶の誘い”によって身動きがとれなくなる。

羽生とリナは牧原を助けに、西城と打本は会場に仕掛けられているであろう爆弾を探す。
爆弾は、牧原に仕掛けられていた。
その様子が撮影された動画を山守に見せ、大山は「アバランチのメンバーを渡せ」と迫る。
山守がここで「はい、そうですか」と頷くはずがない。さらに、その場に羽生が乗り込み……。

羽生と大山の対峙にまず息を吞む。普段、どちらかというと動の羽生の静かな怒り。自分の感情を抑え込んでいないと、何をしでかすのかわからない。そんなことを羽生自身も感じているのかもしれない。
それに対して大山の表情は変わらない。羽生と大山の対峙なのだけれど、俳優同士の演技のぶつかり合いにも見える。殴り合っているわけでもない、血が流れているわけでもない。なのにあまりにも殺気立つシーンだった。

一旦は西城のアイディアで形勢逆転したかのようにも思えた。が、爆弾を巻き付けられた牧原のもとにアバランチのメンバーがたどり着いたのは爆破3分前。
ここからが怒涛の展開である。

爆破解除が間に合わないと判断した打本は、爆弾を抱えて屋上へ。爆弾を空に向かって高く放り投げた瞬間の打本の表情よ。
打本の死に打ちひしがれるアバランチメンバーだったが、彼らにも極東リサーチが迫る。
そこに救いの手を差し伸べたのは内閣情報調査室の桐島だった。アバランチのメンバーの逃走を指示する。
桐島は最初からアバランチのメンバーで、そのことを知っていたのは山守と羽生だけのようだった。

桐島の手引きでその場から逃げ切ったアバランチメンバーだったが、羽生は主犯格として、そしてリナ、牧原は指名手配がされる事態に。山守と西城は警察署内で変わらない日々を過ごしていたが、もはや敵の手中から出る術がない。
更に桐島を従えて山守を呼び出した大山が2人に引き合わせたのは、3年前の偽装テロ事件で死んだはずの藤田だった。

藤田と再会したときの山守の驚きの表情がなんとも形容しがたい。打本を失った瞬間、大山からの勝利宣言を受けて流した涙。山守の表情は豊かだが、それが哀しみと怒りによるものなのが切ない。

バラバラになったアバランチ、藤田の登場。
桐島はすでにアバランチのメンバーだと大山にバレている(大山に正体がバレたシーンでの桐島の表情もすごかった……)。
ここから、どんな起死回生の一手があるのか。そして、藤田が生きていることが隠されていた理由とは。
大山が羽生に「君も仲間にならないか」と言ったけれど、すでに藤田が自分の仲間だから発せられた言葉だったのかもしれない。

しかし、藤田が生きていたのだとしたら、山守の3年って……彼女の心中を思うと、やるせない。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第9話ストーリー&レビュー}–

第9話ストーリー&レビュー

第9話のストーリー


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日本版CIA創立を目論む大山(渡部篤郎)によって、テロリスト集団に仕立て上げられたアバランチ。羽生(綾野剛)は主犯格として指名手配犯にされ、打本(田中要次)は一般市民を救うために犠牲となった。さらに、暗躍していた桐島(山中崇)の正体をも見破った大山は、それでもなお正義の灯を消そうとしない山守(木村佳乃)のもとに、ある人物を連れてくる。それは、3年前に偽装テロ事件で命を落としたはずの藤田(駿河太郎)だった――! 驚きのあまり言葉が出ない山守に、藤田は…。

その頃、桐島の手引きで極東リサーチから逃げ延びた羽生は、アバランチの後ろ盾である大道寺(品川徹)の屋敷にいた。大山に完敗したことを認め、もう一度立ち上がろうとする羽生は、藤田が生きていることを知ると…。

第9話のレビュー

今回、出演シーンはないのに大山の存在感ときたら……まさにラスボスである。

3年前の偽装テロ事件で亡くなっていたと思われていた藤田が、山守たちの前に現れた。
「全部お前のために」と桐島が言っていたけれど、そのとおり……。藤田が生きていると分かっていれば、山守はアバランチを結成することもなかっただろう。
そして藤田はいま、大山のもとで、極東リサーチのメンバーとして動いていた。藤田は大山の「正義」に賛同したということなのだろう。

羽生はテロリストとして指名手配。アバランチの後ろ盾だった大道寺は逮捕される。
もうアバランチはおしまいだ、と思うが、誰もまだ諦めていないのはその表情でわかる。しかし、山守としては自分が巻き込んでしまった責任もあるのだろう。どうにかして仲間を守ろうと頭を悩ませる。しかし、やめろと言われて「はい、そうですか」と引き下がるようなら、そもそもみなメンバーには加わっていない。

西城だって一緒だ。山守に手を引くよう言われるが、独自に動き出す。週刊誌記者の遠山と接触し、極東リサーチについて暴こうとし始めたのだ。
やはり、極東リサーチに所属しているのはかつて警察官や自衛隊員に所属していた人間らしい。
それを署内のパソコンとネットワークを使って調べている西城、大丈夫かなと少し不安になるが……彼も目をつけられているはずなんだが。
西城はともかく、遠山は大山側にバレれば危険ではないか。でも、西城の熱くなるところ、真っすぐなところが突破口になるかもしれない、と信じたい。

そして9話は綾野剛に圧倒された。1話から一貫して、「羽生」という役は綾野剛にしか演じられない、と思わせられるが、今回は特にすごかった。
藤田が生きていると知らされたときのその表情の動き。藤田を失ったと知った3年前から、今までのあらゆる感情が言葉ではなく表情で表されていた。こんなにも人間の表情とは雄弁なのか、と思い知らされる。
だからこそ、9話ラストでの羽生と藤田の対峙は辛い。大山の正義は受け入れられない羽生。なら、今の藤田が取るべき選択肢はひとつだ。羽生にむかって、迷いない発砲。それでも、少しだけ期待してしまう。本当は羽生たちの味方ではないのか、と。

大山のたくらみも、ある人たちから見れば正義だ。最終的に、社会にとってプラスになるのは大山の正義かもしれない。しかし、その正義の実現のために誰かの命が奪われてもいいのか。視聴者の正義もまた、試されているような気がする。

来週、最終回。本当に決着はつくのか。

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{第10話ストーリー&レビュー}–

第10話ストーリー&レビュー

第10話のストーリー

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藤田(駿河太郎)は山守(木村佳乃)ではなく、羽生(綾野剛)の前に現れた。
3年前の偽装テロ事件以来の再会を果たした2人だったが、喜びもつかの間、羽生は自らの直感から大山(渡部篤郎)側にはつかないことを宣言する。かつての同志が、それぞれが信じる“正義”の食い違いによって、今は全く別の道を歩んでいることを感じた藤田は、「3年前、俺も含めて全員死んでいれば、お前と敵にならずに済んだのにな」とつぶやき、非情にも羽生に向けて銃弾を放つ。

一方、西城(福士蒼汰)は父・尚也(飯田基祐)の元を訪れていた。息子として、同じ警察官として、父の不正を許せない西城は、週刊誌記者の遠山(田島亮)と共に調べ上げた証拠を使って、尚也を告発しようとするが…。

それぞれが己の“正義”を信じ、最後の戦いへ――。はたして、アバランチが起こした雪崩の結末は?

第10話のレビュー

雪崩は、起きた。

藤田と対峙した羽生。藤田は発砲したものの、羽生の命は奪わなかった。二度と姿を現すな、とだけ言い残して。
明らかになったのは、藤田が今に至るまでの経緯。実は大山から偽装テロのことを聞かされていた。犠牲になる部下をただ見送ればいい、と言われていた藤田だったが、共に現場へと向かった。生き残ったのは自分以外には羽生ひとり。本当は、藤田は部下たちと死にたかったのではないか……。生き残った藤田は、部下たちの命が奪われた責任を共に負わされる。きっと、藤田は責任感が強い人間のはずだ。仲間を失った十字架をずっと背負っていくだろうし、裏切ることもできない。だからと言って、羽生を殺すこともできない。中途半端だと言われてたとしても、すごく、人間らしいように思う。

山守はアバランチのメンバーの命を守るため、大山に寝返る。全員に出頭するように求めるが、おとなしく聞き入れるような面々ではない。
まさかここで山守が裏切る? 巻き込んだのは山守なのに、そんなことあり得る? あり得るわけがない。「寝返ったように見せた」のもすべて作戦だった。
そして鍵となったのは西城。極東リサーチに武器を横流ししていた父・尚也に「正義」を突き付ける。尚也に自身の口から真実を明らかにしてほしい。もしそれが叶わないなら、自分が告発する。そう決意していた西城だが、尚也本人の口から語られなければ、もみ消されるだろう。きっと、尚也も分かっていたはずだ。尚也が真実を語る会見から“雪崩”は加速する。

尚也の会見と合わせて遠山が週刊誌で事件を記事化。世間でも話題になり始めるが、大山は歯牙にもかけない。彼にとって、国民の声などどうでもいいのだ。アバランチに全ての罪を着せて、自分は日本版CIAを作る。その野望を果たすまであと一歩。
そこで、梯子を外される。まさかの、総理大臣に。

大山は突如、内閣官房副長官を解任される。総理自身が羽生に話を聞き、下した決断だった。羽生は、藤田と対峙したときに、大山が黒幕であると話させ、その様子を記録していた。それが決定打となっていたのだ。

「国民の話を聞くのが総理の役目だからね」
「やりすぎちゃったね」

アバランチに誘拐され、どこか頼りなく、警察官にも顔を認識されていない総理。ここで大逆転ホームランである。

危機は去った。藤田がいたころの時間には戻らない。けれど、それぞれ前を向けただけでもアバランチの存在意義はある。
ところどころ、「アバランチ詰めが甘いのでは?」「極東リサーチ、非道になりきれないな!?」などと思ったけれど、それもまた人間だからだろう。藤田が羽生を殺せなかったのも、尚也が武器の横流しをごまかしきれなかったのも、人間だから。殺伐としているようで、意外と食事のシーンが多かったのもそんな現れなのかもしれない。
そして、人間の心を忘れると、取返しのつかない大きな過ちを起こしてしまう。
ハードでクールな物語だと思っていたが、実は誰よりも「人間の心」を信じていた作品だったのかもしれない。

(文:シネマズ編集部)

※この記事は「アバランチ」の各話を1つにまとめたものです。

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–{「アバランチ」作品情報}–

「アバランチ」作品情報

放送日時
2021年10月18日(月)スタート
毎週月曜22:00~22:54放送 ※初回15分拡大

出演

綾野剛/福士蒼汰/千葉雄大/高橋メアリージュン/田中要次/利重剛/堀田茜/渡部篤郎(特別出演)/木村佳乃

監督
藤井道人
三宅喜重(カンテレ)
山口健人

脚本
丸茂周

音楽
堤裕介

主題歌
UVERworld(ソニー・ミュージックレーベルズ)

プロデュース
安藤和久(カンテレ)
岡光寛子(カンテレ)
笠置高弘(トライストーン・ピクチャーズ)
濱弘大(トライストーン・ピクチャーズ)

制作
カンテレ
トライストーン・ピクチャーズ

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